2019-05-20(令和元年) 松尾芳郎
2019-05-21 Rev. (2ページに予算説明の追加と誤字の訂正)
図1:(Lockheed Martin)”月周回宇宙基地「ゲートウエイ」縮小版”に接続した月着陸船(Lunar Lander)の想像図。「ゲートウエイ」左には「オライオン」宇宙船とそのサービス・モジュールが描かれている。縮小版ゲートウエイは、右端の「[PPE]モジュール:「動力・推進力装置」/ [Power and Propulsion Element]と多用途モジュール(Utilization Module)のみで構成する。
米国は月面に有人基地を建設する
米国の宇宙飛行士が月に着陸してから45年以上になるが、このほどトランプ大統領が新たな国家目標として「有人宇宙探査を拡大発展させる」と言明した。発表された“宇宙政策指令第1号(Space Policy Directive-1)には「NASAが主導して関係政府機関、民間企業、それに国際協力を組織化し、新たな宇宙探査を実施すべし」と述べてある。これで新らしい市場が生まれ、科学と経済の両分野で活躍の機会が広がることになる。
- 打上げロケットの再利用技術を確立し、早急かつ継続的に進める
- 探査を急ぐため民間企業の力と国際協力を活用する
- 新知識と新しい機会を導入する
- 深宇宙探査のために月に埋蔵されている資源を利用する 将来火星以遠の探査をするための技術取得を目指す
続いて3月26日にはマイク・ペンス(Mike Pence)副大統領が”米国宇宙会議(National Space Council)”で「米国は有人月面着陸実施を、これまでの2028年予定から2024年に前倒しする」と発言した。NASAとしては、有人月面探査関連予算として2020年度分210億ドルを計上していたが、計画前倒しによりこれに16億ドルの追加が必要になった。
報道によるとこれを巡って議会で論争が起きている。政府は、追加費の財源として大学学士課程学生を対象にする給付型奨学金(ペル奨学金)の2020年度予算39億ドルを減額し、これに充当することを検討しているためだ。
ロッキード・マーチンとNASAの共同案
ロッキード・マーチンは4月10日にコロラド スプリングス(Colorado Springs, Colorado)で開かれた第35回宇宙シンポジューム(35thSpace Symposium) で「”ゲートウエイ(Gateway)“宇宙基地と”オライオン(Orion)” 宇宙船で2024年までに月の南極付近に有人着陸」する構想を発表した。そして実現するには、直ちに関連機器の製造を始める必要がある、と述べた。
(Lockheed Martin says it has developed an approach to achieving the goal of landing humans on the south pole of the moon by 2024, but warns that construction of essential hardware would have to start soon to meet that deadline.)
続けて開発中の「月を周回する宇宙基地“ゲートウエイ”」の縮小版と2段式月着陸船(lunar lander) の建造に早急に着手したい、と述べた。
これは3月26日のペンス副大統領の発言に対するロッキード・マーチンからの回答で、実現に向け解決すべき問題は多数あるが挑戦したい、という意味である。
ロッキード・マーチンの”有人宇宙飛行開発部門(human spaceflight strategy and business development)“担当役員のロブ・チャンバー(Rob Chamber)氏は「実現にはいろいろな方法があるが、開発済みの確実な技術を組合わせることが、結局は最も成功への近道だ」と語っている。
有人月着陸に向けた予定
2020年―「探査ミッション(EM-1 / Exploration Mission 1)」
NASA/ロッキード・マーチンの計画は、2020年に、開発中の大型ロケット“スペース・ローンチ・システム(SLS=Space Launch System)”を使い、[EM-1] として無人の“オライオン” 宇宙船を打上げ、月を周回して再び地球に帰還させる。“オライオン”には「サービス・モジュール(SM=Service Module)を取付けて飛行する。
2022年―「探査ミッション(EM-2)」
2022年に最初の有人飛行となる「EM-2」ミッションを行う。[EM-2]は[SLS]で打上げられるが[EM-1]とは異なる軌道で月に向かい周回飛行を行う。
2022年―「ゲートウエイ・モジュール(Gateway element)」
2022年12月には「ゲートウエイ」の基本部分である“動力および推力部分(PPE=Power & Propulsion Element)を一般ロケットで打上げ、1年間掛けて先進システムである「太陽電力推進装置」(solar electric propulsion) の実証試験を行う。「太陽電力推進装置[PPE]」は「ゲートウエイ」の運用に必要なすべての電力、推進装置、通信機能のエネルギーを賄う装置である。
2023年―科学探査用ローバー(Science & Exploration Rover)
開発中の月面探査用のローバーは各種計測機器を搭載し、水や氷の存在を調べる。これを通じて水/氷を燃料に利用できないかを調べる。また酸素を分離し、飲料水に使える可能性についても調べる。
2024年―宇宙飛行士の月面着陸(Astronauts on the Moon)/探査ミッション(EM-3)
2024年中に宇宙飛行士の月面着陸を実現する。有人月面探査ミッション[EM-3] の打上げ準備は2023年9月に完了する。このため有人モジュールの準備を今年秋から始める。着陸船(lunar lander)上昇段は2020年初めから製造を始める。[EM-3]に合わせて2024年までに縮小版「ゲートウエイ」を月周回軌道に乗せる。
2028年―月面長期滞在技術の確立(Lunar Surface Missions)
2028年までに月面に長期間滞在する技術を確立する
2030年代―有人火星探査(Astronauts on Mars)
ロッキード・マーチンは、月着陸船(lunar lander)について上昇(ascent)、着陸)descent)の2段階モジュール方式を提案している。着陸段(descent stage)は、NASAがNextSTEPプログラムで検討した案を基にして開発する。上昇段(ascent stage)は、”オライオン“で開発した与圧室構造やサービス・モジュールの推進システムを使う。
予定では、これら2つの段/モジュールは2024年初めに個別または一緒に打上げられ、月周回中の宇宙基地“ゲートウエイ”に接続/ドッキングされる。
2024年には有人月面着陸用[EM-3] ”オライオン“が打上げられるが、4名の宇宙飛行士が搭乗し”ゲートウエイ“宇宙基地に向かい、ドッキングする。そして全員または数名が着陸船(lander) に移乗、月面に降り立つ。これら宇宙飛行士は数日を月の南極付近で過ごした後、”上昇段モジュール(ascent module)で月面を離れ“ゲートウエイ”宇宙基地に戻り、それから“オライオン”で地球に帰還する。
ロッキード・マーチンは、ペンス副大統領が“月再着陸”を宣言してから15日後に計画の概要を発表したが、同社の宇宙探査部門担当の専門家テイム・チチェン(Tim Cichan)氏は「2024年の目標に如何にして間に合わせるか、これは極めて挑戦的な課題だ」と話している。
オライオン宇宙船(Orion Spacecraft)
計画の中心となるオライオン宇宙船は、ロッキード・マーチンが開発中で、NASAが主導する長期間の有人宇宙探査が行えるよう様々な工夫が施されておる。
特に非常事態に遭遇しても乗員が安全に帰還できるようフライト・コンピューターは3重装備、姿勢制御用エンジンは45個も装備している。
宇宙空間で遭遇する恐れのある”致死量の放射線嵐(deadly radiation storm)”に対処するため、構造には先進放射線嵐防護シェルター(advanced storm shelter)が組み込まれる。
オライオン宇宙船は月への往復飛行だけでなく、1,000日が必要とされる火星飛行にも対応するよう考慮されている。
オライオン宇宙船本体[CM=Crew Module]は、宇宙空間で遭遇する外気温度/-300度Fから大気圏突入時/+5,200度Fの範囲で、室内は常時快適な72度F (22度C) に保たれる。
組み込まれている生命維持装置は、乗員の運動で発散する熱、湿度にも対応し長期間のミッションでも乗員が快適かつ安全に過ごせるようにしてある。
“オライオン”は、すでに1号機が[EFT-1](Exploration Flight Test-1)として2014年12月に打上げられ4時間の飛行を実施済みなので、[EM-1]は2回目の飛行となる。
図2:(NASA)宇宙空間を飛行するオライオン宇宙船とサービス・モジュールの想像図。右から、輝いている部分がオライオン乗員室(CM=Crew Module)、白色のリングが乗員室アダプター(CMA=Crew Module Adapter)、白色の筒状部分がサービス・モジュール(SM=Service Module)である。[CMA]の下側に灰色の鍵のようなものが描かれているが、これは[CM]と[SM]の間の物理的、電気的な結合をする[CM/SM接合部]である。
図3:(NASA)オライオン乗員室(CM=Crew Module)の解説図。
図4:(NASA)オライオン乗員室(CM)を支援するサービス・モジュール(SM=Service Module)の解説図。[SM]頂部には[CM]と[SM]を結合する[CMA] Crew Module Adapterが取付けられる。
無人探査[EM-1]ミッションの準備状況
記述したが探査ミッション[EM-1]は、無人探査で地球から月を超える(地球―月間の距離は385,000 km) 遠方まで、3~4週間を費やして往復する。[EM-1]用の“オライオン”は、ロッキード・マーチンのケネデイ宇宙基地内にある施設で組立中である。
“オライオン(CM)“と”クルー・モジュール・アダプター(CMA =Crew Module Adapter)”、その下に付くヨーロピアン・サービス・モジュール(ESM = European Service Module)は、今年2月14日に結合済み、試験が終わり次第”オライオン”に取付けられる。今年末には「[CM]・[CMA]・[ESM]の結合ユニット」がオハイオ州の宇宙環境試験設備で試験される。
ヨーロピアン・サービス・モジュール(ESM = European Service Module)はドイツ・ブレーメン(Bremen, Germany)にあるエアバスの防衛宇宙部門(Space & Defence Dept.)で組立てられ、フロリダに送られる。サービス・モジュール(SM = Service Module)全体の開発は、ヨーロッパ宇宙機構(ESA = European Space Agency)に移管されたので、エアバス/ドイツ、エアバス/オランダ、イタリアの“タレス・アレニア・スペース(TAS-I = Thales Alenia Space Italy)” の3社が新たに開発に参加している。
図5:(NASA Spaceflight com) オライオン宇宙船の構造概要。
月周回の宇宙基地「ゲートウエイ(LOP-G = Lunar Orbit Platform -Gateway)」
有人着陸のために月を周回する小型の宇宙基地「ゲートウエイ」の開発が進んでいる。
この宇宙基地は地球から遥か離れた(38万km+)宇宙空間で宇宙飛行士が休息したり仕事をしたりするオフィスとして使われる。宇宙基地には居住区、科学実験室、“オライオン”などの宇宙船と結合するドッキング・ポート(docking port)、がある。“ゲートウエイ」”は有人月探査の基地として使われるが、将来は火星への有人飛行の基地にもなる。
「ゲートウエイ」は、現在地球周回低軌道(LEO)上にある国際宇宙ステーション(ISS)よりずっと小型で、6人居住用のアパートくらいの大きさ。4人ほどの宇宙飛行士が乗り込み3ヶ月間滞在が可能、科学実験をし、月との往復に利用する。また、着陸船に燃料や交換部品を供給、さらに食料や酸素の補充も行う。無人状態でも内外のデータを収集、地球に自動送信する。
今の計画では、完成までに5~6回の運搬打上げが必要と考えられている。(現在の[ISS]の建設では34回の貨物打上げが必要であった。)
「ゲートウエイ」はNASA主導で、[ESA]/ヨーロッパ宇宙機構、[Roscosmos]/ロシア宇宙開発機構、[JAXA]/日本宇宙開発機構、[CSA]/カナダ宇宙開発機構、が参加し、2028年の完成を予定している。
「ゲートウエイ」の月周回軌道は、月との近接点1,500 km・遠距離点70,000 kmの長楕円軌道で、6日間で一周する。
「ゲートウエイ」宇宙基地を構成するモジュールは次の通り。
- [PPE]モジュール:「動力・推進力装置」/ [Power and Propulsion Element]
太陽電池からの電力で宇宙基地の電力需要を賄い、またイオン・スラスター(ion thruster)の推力で 軌道調整などを行う。2022年に一般打上げロケットで打上げられる。NASAが開発している。
- [ESPRIT]モジュール:「燃料補給・通信・科学装置に関わるヨーロッパ・システム」/ [European System Providing Refueling, Infrastructure and Telecommunications]
キセノン(xenon)およびハイドラジン(hydrazine)燃料の予備タンク、追加の通信装置、科学計測装置用気密室を収納するモジュールで、重量は約4 ton、全長3.9 mの大きさ、「ESA/ヨーロッパ宇宙機構」が開発している。
- 米国製多用途モジュール:[U.S. Utilization Module]
1人乗りの気密室で、「ゲートウエイ宇宙基地」組立の最初の段階で使うモジュール、初期の作業に必要な食料などを積み込み、有人月面着陸の[EM-3]ミッションで[ESPRIT]と一緒に打ち上げられる。
- 国際共同開発居住区および米国製居住区モジュール:[International Partner Habitat and the U.S .Habitat]
2つの接続する居住区のモジュールで、合計すると125 m3の容積になる。[EM-4]と[EM-5]ミッションで打ち上げられる。国際共同開発居住区の開発には日本の[JAXA]が協力している。
- ゲートウエイ補給モジュール:[Gateway Logistics Modules]
ゲートウエイに燃料補給、物資補給、など兵站業務をするためのモジュールで、基地建設の最初にカナダ宇宙機構が用意するロボットアームと一緒に輸送される。開発には[JAXA]が協力している。
- ゲートウエイ気密室モジュール:[Gateway Airlock Module]
宇宙基地から外に出て船外活動をする際に必要な出入口。将来火星など深宇宙探査の際の宇宙船接続に使われる。
図6:(NASA)「ゲートウエイ」宇宙基地の完成予想図。それぞれのモジュールの開発担当を示している。日本の[JAXA]はNASAに協力して「国際共同開発居住区モジュール」と「補給モジュール」の開発に参加する。2028年完成予定で開発されてきたが、有人月面着陸[EM-3]が2024年に早まったので、[EM-3]には本図の[PPE]と[U.S.居住モジュール]だけの縮小版「ゲートウエイ」が使われる。
月着陸船(Lunar Lander)
2024年に有人の月着陸を実現し、2028年には月面滞在を可能にするための着陸船(Lunar Lander)の構想は未だ確定していない。このほどNASAは有人月着陸船の研究・試作をする企業11社を選定した。
NASAの「次期宇宙探査技術協力/[NextSTEP=Next Space Technologies for Exploration Partnerships]」規約に基づき、選定された企業は6ヶ月以内に有人着陸船に関わる研究と試作開発を行い、結果を提出することになる。
NASAの計画では、月着陸船は飛行士を「ゲートウエイ」宇宙基地から月面に送り活動の後再び宇宙基地に戻す、併せて燃料補給可能なシステム、となっている。
11社は「月着陸船」の試作をする企業から燃料補給システム開発だけを担当する企業まで幅が広いが、ここではNASAの例示する「着陸船」想像図、それに「ロッキード・マーチン」と「ブルー・オリジン」が提案する構想を示す。
図7:(NASA) NASAが5月17日に公表(Release 19-040)した「月着陸船」の想像図。
- ロッキード・マーチン案
ロッキード・マーチン提案の着陸船は、昨年同社が発表した一体型とは異なり、着陸降下する(descent)部分と月面から離昇し「ゲートウエイ」に戻る上昇部分(ascent)の二つから成る。「オライオン」で開発済みの装備を使い信頼性の高いシステムを目指している。しかし開発には新しいリソースが不可欠だとしている。
図8:(Lockheed Martin)
- ブルー・オリジン案
「ブルー・オリジン」開発の着陸船は「ブルー・ムーン[Blue Moon]」と呼ばれ、人員だけでなく大小様々な貨物合計3.6 tonを輸送できる。大型燃料タンクを搭載した改良型は最大6.5 tonまで運搬できる。貨物は天井に搭載し、取り付けてあるダビット(davit)/小型クレーンを使って月面に下ろす。天井部分には乗員が宇宙基地に戻るための上昇段(ascent stage)を搭載できる。「ブルー・ムーン」には、同社が「ニュー・シェパード(New Shepard)」有人軌道飛翔体用として開発した、推力10,000 lbsのLH2/LOX燃料使用のロケット[BE-7]、および精密誘導着陸システム、を使う。
すでに3年を掛けてNASAと連絡しながら開発を進めており、CEOのジェフ・ペゾス(Jeff Pezos)氏によれば、2024年の月着陸に間に合うのは唯一[ブルー・ムーン]だけ、と言っている。
図9:(Blue Origin) ブルー・オリジン社が開発する「ブルー・ムーン」月着陸船のモックアップ。天井に貨物3.6 tonを搭載する。天井には乗員が「ゲートウエイ」宇宙基地に帰還する際に使う上昇段(ascent stage) も搭載する。月着陸船として最も開発が進んできる。
スペース・ローンチ・システム(SLS=Space Launch System)
図10:(NASA April 25, 2019 by Jennifer Haugh) 想像図はスペース・ローンチ・システム[SLS]のBlock 1貨物型(SLS Block 1 Cargo)の発射の様子。固体燃料ブースター2基とコア・エンジン合計で880万ポンドの推力で打上げられる。ブースター燃料が燃え尽きると分離されコア・エンジンの推力で月に向かう。SLS Block 1 Cargo型は月周回軌道にペイロード26 tonを打上げる。
スペース・ローンチ・システム[SLS]は次世代型の強力な打上げロケットで、地球周回軌道より遥か遠方の有人探査飛行に使われる。[SLS]は安全な有人宇宙探査をするためだけでなく、様々なミッション、例えば火星、土星、木星などへの無人科学探査に使う装置類などの輸送にも使われる。
[SLS]は;―
- 既存の大型ロケットより打上げ可能な重量、容積、そして速度が優れている
- オライオン宇宙船、乗員、大型貨物を一回の打上げで月に運搬できる唯一のロケット
- 米国製ロケットで、NASA各センターが支援し1,000社以上の米企業が開発に参加している
[SLS]は全て米国製の打ち上げロケットで、今回の月探査ミッションから使われる。月探査は国際宇宙ステーション(ISS)が回る低地球周回軌道 (高度約400 km)よりも1,000倍近くも遠い距離への飛行となる。
初期型の[SLS ]Block 1は、SLS本体(core stage)に4基のRS-25エンジンを装備、2本の固体燃料ブースターの推力と合わせて26 tonのペイロードを月周回軌道に向け打上げる。宇宙空間に達した後は、切り離した上段(ICPS=Interim Cryogenic Propulsion Stage)ロケットでオライオンを月周回軌道に送る。
改良型Block 1Bは、有人の[EM-2]ミッションで使い、上段を[ICPS]ではなく新型で強力なEUS (Exploration Upper Stage)に変更、オライオンと居住区などの他の装備を一緒に輸送する。Block 1Bは37 tonの輸送能力がある。
さらに性能向上した[SLS ]Block 2は、45 tonの輸送ができる。
[SLS] Block 1は全長/高さは322 feet (98 m)。[SLS]の重量は575万ポンド(約260 ton)、離昇時の推力は880万ポンドでこれは以前使われたサターンV (Saturn V)ロケットより15 %大きい。
[SLS]の2本のブースター
[SLS]の固体燃料ブースターはこれまで作られた最大のブースターである。高さは17階建てのビルに相当し、毎秒5 tonの個体燃料を燃焼する。これでそれぞれ360万ポンドの推力を発生する。
[SLS]本体(core stage)の推力
「SLS」のコア/ 本体は、RS-25エンジン4基を装備する。RS-25は、液体水素(LH2)と液体酸素(LOX)を燃料とし、スペース・シャトルのメイン・エンジン(3基束ねて)として30年間135回の飛行に使われ、地上試験を含め3,000回以上のスタートを行い、合計運転時間は100万秒以上の実績を持つ信頼性の高いエンジン。エアロジェット・ロケットダイン社(Aerojet Rocketdyne, Sacrament. Calif.)が改良を加えながら製作している。
諸元は次の通り
推力………512,000 lbs (230 ton)/ 67%から107%の範囲で推力調整可能
自重………7,775 lbs (3.5 ton)
作動時間… 8 分
図11:[SLS]コアに4基装着されるRS-25エンジン。
図12:(NASA)スペース・ローンチ・システムの概要。高さ98 mで発射時の重量はおよそ260 ton、コア・ステージ内部に196,000ガロンの液体酸素(LOX)と537,000ガロンの液体水素(LH2)を入れるタンクがある。
図13:(NASA) スペース・ローンチ・システム[SLS]の能力向上予定を示す図。左から順に、Block 1 /[EM-1]無人ミッション、Block 1B/[EM-2]有人周回ミッション、Block 2/貨物輸送ミッション、などとなっている。月周回軌道(TLI)への輸送能力は、それぞれ26 ton、37 ton、40 ton、45 tonと順次増加していく予定。
終わりに
トランプ大統領の決断で、新しい月面有人着陸、探査、さらに火星有人探査を含む壮大な宇宙開発計画がスタートした。反トランプと安倍嫌いで凝り固まっている我国一部マスコミは、計画を矮小化して伝えているが、事実は記述のように綿密に計画され目標に向かって着実に進んでいる。折からのトランプ大統領の訪日と合わせて5月27日の日米首脳会談では、月周回宇宙基地「ゲートウエイ」の建設に我国が協力する旨の合意が発表される運びとなった。人類の夢に向けての第一歩が成功裡に進むことを期待したい。弱者救済だけが政治ではないことを思い知るべきである。
―以上―
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
Space News 30 Yeas @April 12, 2019 “Lockheed martin offers architecture for 2024 human lunar landing” Jeff Foust
NASA “Explore Moon to Mars”
NASA Spaceflight.com February 28, 2019 “Lockheed Martin getting NASA’s EM-1 Orion modules ready for final mate” by Philip Sloss
NASA press release “America to the Moon by 2024 NASA’s FY 2020 Budget Amendment Summary”
JAXA press release平成31年3月12日”月近傍有人拠点(Gateway)の開発に向けた多数者間調整会合(MCB)共同声明“
The Verge Apr 10, 2019 “Lockheed Martin unveils lunar Lander design to get humans to the Moon by 2024” by Loren Grush
NASA May 17, 2019 “NASA Taps 11 American Companies to Advance Human Lunar Landers”
Space News May 9, 2019 “Blue Origin unveils lunar lander” by Jeff Foust
NASA “Space Launch System RS-25 Core Stage Engines”
NASA “Space Launch System (SLS) Overview”
Aerojet Rocketdyne “RS-25 Engine”