2019-09-14(令和元年) 松尾芳郎
2019-09-15改定(誤字訂正など)
図1:(SpaceX) 2019年8月27日、スペースX社のボカ・チカ試験場で「スターホッパー」は、高度150 mに上昇した後、着陸パッドに安全に着陸した。飛行時間は57秒間、短い時間だったが、「ラプター」エンジンは安定した作動をし、推力制御システムが完成の域にあることを実証した。
図2:(SpaceX) 飛行する「スターホッパー」の拡大写真。「スターホッパー」は、胴体の直径9 m、高さ20 mの大きさで宇宙船「スターシップ」の下部3分の1に相当する部分。エンジンは1基装着で試験された。
「スペースX社」が開発する有人火星探査宇宙船「スターシップ(Starship)」試作機は9月中に完成する。「スターシップ」試作機の前段となる試験機「スターホッパー(Starhopper)」はこのほど離着陸試験に成功した。
(Starship prototype expected to be completed in September. And Starhopper paves way for prototype Starship flight test in two months.)
「スペースX社」は、テキサス州ブローンズビル(Brownsville, Texas)近くにある同社のボカ・チカ(Boca Chica)試験場で8月27日に実施した「スターホッパー」のテストで57秒間の垂直離陸・着陸の試験に成功した。これを受けて、10月には宇宙船「スターシップ」の試作機1号機[Mk-1] が高度20 kmに上昇する試験を実施する。
「スターシップ」試作機はステンレス鋼製で直径9 m 、高さ55 m、「ラプター」ロケットを7基装備、人員100名収容できる。打上げ時の重量は133.5 tonになる。
図3:(SpaceX) 月面に着陸した「スターシップ」の想像図。遠くに地球が浮かんでいる。今回の試験機「スターホッパー」は、「スターシップ」の下部ほぼ3分の1に相当する部分。
「スターホッパー」は、7月25日の試験飛行では高度僅か18 mしか上昇しなかったが、今回8月27日は150 mまで上昇、安定した姿勢を保ち、近くの着陸パッド上空に移動してから、ゆっくり降下して着地した。短時間の飛行だったが、着陸制御は最も重要な試験で、これで機体の安定性が実証され、大推力の「ラプター(Raptor)」ロケットの推力調整が適正に行われたことを証明できた。
「ラプター」は、「スペースX社」開発の新型エンジンで、同社の新しい打上げロケットに使われる。今回の試験飛行では「姿勢制御システム」の試験も併せて行われたが、このシステムは10月予定の高度20 kmまで上昇する「スターシップ」の初飛行試験にも使われる。
「スペースX社」は、これまで使ってきた大型打上げロケット「ファルコン9 (Falcon 9)」を、今後は「スターシップ」に置き換える方針。「スターシップ」を使って高度約400 kmの低地球周回軌道(LEO)から8,000 万km遠方の太陽周回軌道上にある火星を含む深宇宙へ100人を輸送することを目指している。
(注)太陽を周回する地球の軌道は、太陽から約1億5,000万km (これを[ 1 AU・天文単位]と呼ぶ)の距離にある。火星の太陽周回軌道は太陽から約2億3,000万kmで、地球軌道より約8,000万km遠方にある。
「スターシップ」の概要
「スターシップ」は、エンジンを含む全て回収、再利用(目標は1,000回)可能にする予定。今回試験に成功した「スターホッパー」は、「スターシップ」の下部3分の1に相当する部分で高さは約20 m、エンジンは「ラプター」を1基、3本の着陸用脚(Landing Pad)を備える。これを大きくし高さ55 mにした[Mk 1]、[Mk 2]と呼ぶ試験機を製作中で、これらには「ラプター」を3基搭載する。
図4:(SpaceX Elon Musk氏講演(2019-09-08))「スターシップ」完成想像図。与圧室容積は1,000 m3以上あり、人員100名と貨物を搭載する。前部可動フィン2枚備え、全長55 m。
図5:(SpaceX Elon Musk氏講演(2019-09-08))後方から見た「スターシップ」の姿。着陸用脚を兼ねた3枚のフィンの後部には姿勢制御用の可動フィンがある。エンジンは「ラプター」7基を搭載、その周には後部貨物室を円筒状に配置する。
図6:(SpaceX) Elon Musk氏講演(2019-09-08)で示した「スターシップ」完成型の全容。「ビッグ・ファルコン・ロケット[BFR = Big Falcon Rocket] とも呼ぶ。「スターシップ」と「ブースター」は「ラプター」エンジンを7基ずつ搭載する。合計推力が違うが、「ブースター」は海面上推力、「スターシップ」は真空中推力を示すため。ZoZo前澤友作社長は「スペースX」社と、2023年予定の「スターシップ」月周回飛行に参加する契約をしている。
図7:(Business Insider) 「ビジネス・インサイダー」誌の掲載図を加工したもの。左端が今回試験に成功した「スターホッパー」。「スターシップMk 1」は2019年10月に飛行試験の予定。このあと「スターシップ」完成型を建造、2023年に月周回飛行を予定している。「スターシップ」は、60年前初の月着陸に使われた「サターンV」やNASAがボーイングと共同で開発中の「スペース・ローンチ・システム[SLS Block 1B]」と比べて大きい。
「ラプター」エンジンとは?
「ラプター」は、「ファルコン9」に使っている「マーリン-1D (Merlin-1D)」エンジンの2倍の推力・真空中で430,000 lbsを出すロケットで、燃料には液体メタン[CH4] / 液体酸素[LOX]を使い、燃費に相当する「Isp=比推力(specific impulse)」は真空中で375秒、海面上で300秒になる。メタンは燃焼の過程でケロシンより堆積物(deposits)の発生が少なく、取得価格も安い。また月や火星でも入手可能と考えられている。
前述したが「スターシップ」完成型(operational version) は「ラプター」を7基搭載する。将来は、第1段に「ラプター」を35基取付けた「スーパー・ヘビー・ロケット」を開発し、第2段に「スターシップ」を乗せる計画があるが、この場合は合計41基の「ラプター」が使われることになる。
「スペースX」がこれまでに実用化した最大の打上げロケットは「ファルコン・ヘビー」で、これには1段に27基の「マーリン」エンジンを装備、2段に1基を使用している。従ってこれは夢のような話でもない。
図8:(SpaceX) 「スペースX社」の「ファルコン・ヘビー」で「アラブサット(Arabsat)-6A」を打上げた時の様子。2019-04-11に初の商業打上げに成功した。真ん中が1段目、両側には1段目と同じ形のブースターを1基ずつ、いずれも「マーリン1D」地上推力5,600 kN (1,260,000 lbs)を9基ずつ備え、打上げ時は合計27基の「マーリン1D」が一斉に炎を噴き出す。
今回の「スターホッパー」試験は、「ラプター」エンジンにとっても最長の試験飛行だったが、運転中排気噴流には6個の大きなショック・ダイヤモンド模様が常時見られ、安定した運転状況を示していた。
「フルフロー」サイクルとは?
「ラプター」は[Full flow Staged Combustion Cycle /フルフロー2段燃焼サイクル]と呼ばれる方式のロケットで、燃費に相当する比推力/ [Isp]=specific impulse が他のサイクルより良い。
このサイクルでは、燃料[CH4]の大部分は僅かの酸化剤[LOX]により「予燃焼室」で燃焼・高温となり「燃料ポンプ」駆動用タービンを回す。これで燃料[CH4]は高圧となり熱交換器を通り「予燃焼室」経由タービンを回し“燃料リッチガス”となり、300気圧(bars)以上の高圧(30MPa)で「主燃焼室」に噴射される。これまでの主燃焼室圧力の記録は[RD-170]ロケットの[25.74MPa]であった。酸化剤[LOX]も同様な方式で、専用の「予燃焼室」、「タービン」、「酸化剤ポンプ」を経由して「主燃焼室」に送り込まれる。
図9:(Wikipedia)「ラプター」が使う[Full flow Staged Combustion Cycle /フルフロー2段燃焼サイクル]の概念図。酸化剤系統と燃料系統のタービン・ポンプが別々の系統になっている。推力の調整は「コントロール・バルブ」の操作で行う。燃料、酸素共に全量が予燃焼室経由で主燃焼室に送られることから「フルフロー」と名付けられた。
「フルフロー2段燃焼サイクル」はかなり複雑なサイクルだが、これで燃料[CH4]と酸化剤[LOX]を全て「タービン」・「ポンプ」に投入するので、「主燃焼室」の圧力を高くできる。
「主燃焼室」内の圧力を高くすればエンジンの効率、比推力[Isp=specific impulse]が上がる。しかも「酸化剤系統」と「燃料系統」を分離しているので周囲のパイプ類が少なくなり、全体を小さくできる。この結果「ファルコン9」の「マーリン」エンジンとほぼ同じ大きさだが、推力は2倍になる。
「ラプター」はメタン燃料の[full flow staged combustion cycle]エンジンだが、これは開発が難しく実用化されなかった。スペースXの現主力エンジン「マーリン」、「スペースシャトル」の[RS-2]、[RD-180]、ブルーオリジンの[BE-4]、そして「F-1」エンジン、などはいずれも[full flow cycle]ではない。スペースXはこれを実現したのである。
燃料をメタンにしたのも初めてのことである。
主燃焼室内のガス圧力と温度を高くすれば、効率が上がり、高い推力が得られる。燃焼室内のガス圧を高めるには、燃料と酸素(酸化剤)をポンプで高圧力にして送り込む。ロケットの開発ではこの部分の改良の多くの努力が注がれてきた。以下のその概要を述べて見よう。
図10:(Everyday ASTRONAUT)「オープン・サイクル(open cycle)」ロケットの概念図。「ガス・ジェネレーター・サイクル(gas generator cycle)」とも呼ぶ。燃料ポンプ・酸素ポンプと駆動用タービン(ターボ・ポンプと呼ぶ)があり、「予燃焼室」で燃焼したガスはタービンを回して外気に排出される。両ポンプの出口圧は主燃焼室の内圧より高く、システム中で最も高くなる。
液体燃料を使う「オープン・サイクル」ロケットの構造は固体燃料ロケットよりかなり複雑だが、次の「クローズド・サイクル(closed cycle)」より簡単である。
実際には、タンク加圧のためのヘリウムを送るパイプ類、燃料を燃焼室やノズルの周りに導き冷却する熱交換器のパイプ、それらに関係する多数のバルブがあり複雑であることに変わりはない。
「マーリン」エンジンを含む多くの打上げロケットはこの方式で、写真では黒い煤を含んだ「予燃焼室」の排気ガスが良く見える。燃料・酸素の混合比を最適にすれば煤は出ないが、これは酸素を多く使うことになり、また高温になりタービンの劣化を早める。従って温度を下げるために燃料の割合を増やす「燃料リッチ」の状態で使われる。これで煤、コーキング(coking)があちこちに生じる。
図11:(Everyday ASTRONAUT) 「クローズド・サイクル(closed cycle)」ロケットの概念図。「2段燃焼サイクル(staged combustion cycle)」とも呼ぶ。燃料ポンプ・酸素ポンプと駆動するタービン・予燃焼室があるのは前図と同じだが、タービンを回した燃料リッチの排ガスは外に捨てないで主燃焼室に導き、そこで完全燃焼する。これで燃費効率が向上する。
「クローズド・サイクル」方式はソビエト時代のロシアでNK-15として実用化され、改良されてNK-33となり、それを大型化した[RD-180]は米国の「アトラスV (Atlas V)」打上げロケットに使われているのはご存知の通り。
これらは「マーリン」と同じく燃料に[RP-1]、酸化剤に液体酸素(LOX)を使い、予燃焼室へは酸化剤リッチのガスを供給している。これは全てを溶かす超高温になることなり、不可能と考えられていた。しかし実際には、酸素は全量を予燃焼室に送るが、燃料は適量を送る事で超高温化を回避している。
これで酸素は「主燃焼室」で燃料と反応、煤・コーキングのないクリーンで効率的な燃焼をする。しかしこのサイクルでも、主燃焼室内圧はポンプ圧より高くはできない。ポンプ圧を高めるためには、ポンプは大型で重くせざるを得ない。
米国では、一時諦めていた“酸化剤リッチ”の「クローズド・サイクル」方式を見直し、燃料にカーボンの多い[RP-1]ではなく「水素」を使うことを検討した。ところが「水素」は密度(重さ/容積の比) が[RP-1]や酸素より著しく低いため「主燃焼室」に送るポンプが大きくなる。
[RP-1]と酸素[LOX]はほぼ同じ密度で燃焼比率も同程度なので、送り込むポンプ駆動には一本のタービン軸と1個の「予燃焼室」で対処できた。しかし、燃料を水素にすると、量が大きくなり同じポンプでは処理できない。そこで「予燃焼室」を別々にし、ポンプも別にする方式が生まれた。つまり「クローズド・サイクル」の変形、改良型である。
図12:(Everyday ASTRONAUT) 「スペース・シャトル」に3基搭載された「ロケットダイン(Rocketdyne)」製[RS-25]エンジンは、燃料に「水素」を使い燃料リッチ「予燃焼室」を2個備える「クローズド・サイクル」方式で、高い推力:重量比と高効率を得ている。
図13:(Everyday ASTRONAUT) 「フルフロー2段燃焼サイクル」の拡大図。
「フルフロー2段燃焼サイクル(full flow staged combustion cycle)」は、「燃料リッチ」と「酸素(LOX)リッチ」の2個の「予燃焼室」を備えるサイクル。「燃料リッチ・予燃焼室」は「燃料ポンプ」を、「酸素(LOX)リッチ・予燃焼室」は「酸素(LOX)ポンプ」を、それぞれ駆動する。前述したが「酸素リッチ」では超高温になるので高性能の耐熱材が必要だ。
スペースX社では[SX500]と呼ぶ新素材を開発し、800気圧(bar)の高圧「酸素リッチ」ガスを得るのに成功した。
このサイクルでは、燃料も酸素も全て予燃焼室を通るので、「主燃焼室」に入る時にはすでに高温になり、ここでの燃焼でさらに高温となる利点がある。また燃料と酸素が完全に分離されているので、系統にリークが生じても問題が少なく、再使用時に整備が少なくて済む。
2000年代に入り「フルフロー2段燃焼サイクル」エンジンは、エアロジェット(Aerojet)とロケットダイン(Rocketdyne)で試作されたが実用化に至らず、スペースX社が「ラプター」で初めて成功した。
なぜ「メタン」?
「燃料リッチ予燃焼室」を使う「フルフロー・サイクル」では、ケロシン [RP-1]はコーキングの問題があるので燃料に使えない。このためスペースXは「メタン(CH4)」を燃料に選んだ。
打上げロケット第1段設計の最大のポイントは、推進剤、つまり燃料と酸化剤(LOX)の密度(重さ/容積の比率[gram/liter])、である。推進剤の密度が高ければタンクを小さく、軽く出来る。
図14:(Everyday ASTRONAUT) 燃料の比較表。[RP-1]ケロシン、[CH4]メタン、[H2]水素、の特性を示す。
【「密度(Density) 」(gram / liter)】は、1リットル当たりの重量を示す。ケロシンは813グラムで最も重く水素70グラムの11倍もある。
【酸素:燃料 比 (Oxidizer : Fuel Ratio)】は、燃焼するときの酸素(LOX)と燃料の比率を表す。ケロシン1グラムに対しては酸素2.7グラムが必要で、水素の場合は水素1グラムに対し酸素6グラムが必要である。メタンはその中間で酸素3.7グラムで燃焼できる。
酸素(LOX)は1リットル当たり1,141グラムの重さがあり、ケロシンより多少重い。従って酸素(LOX)とケロシン(RP-1)を[2.7 : 1]の割合で燃焼させるには、酸素(LOX) 1リットルに対しケロシン(RP-1)を0.5リットル使うことになる。同様にしてメタンは0.7リットル、水素は2.7リットル、を使う。これでタンクの容量・大きさを決めている。つまり水素燃料ロケットでは、水素タンクの容量は酸素(LOX)タンクの2.7倍になる。「デルタIV」打上げロケット1段目の[RS-68]エンジンは水素燃料なのでタンク容量は酸素(LOX)の2.7倍ある。
メタン(CH4)燃料では、酸素(LOX) 1リットルに対し0.73 リットルを使うのでタンク容量はケロシン(RP-1)より40 % 大きくすれば十分だ。
【比推力(Specific Impulse [ Isp]】は、度々述べるように自動車でいう“燃費”に相当する値である。[Isp]とは、推進剤(燃料+酸化剤)1 kgが、何秒間 [ 9.81ニュートン(N)] の力を出し続けられるか、を表している。従ってこの秒数が高ければ燃料の効率が良い。表中の値は理想値で、実際はずっと低くなる。ケロシン(RP-1)は350秒(マーリン1D真空中)、メタン(CH4)は380秒(ラプター真空中)、水素は465秒(RL-10B真空中)となっている。
【燃焼温度(Combustion Temp.)】は、絶対温度「ケルビン( 1 Kelvin= -273 ℃)」で示してあり、燃焼温度が低ければ燃焼室やタービンなどの痛みが少なくなり好都合、しかし推進効率を高めるには高温が望ましい。ケロシン(RP-1)とメタン(CH4)がほぼ同じ3,500 Kである。
【沸点 (Boiling Point)】は、液体から気体・ガスに変わる温度で、ケロシン(RP-1)は常温から217℃に加熱しないと気化しない。しかし水素は20 K (-253 ℃)の極超低温で気化するため、タンクは厳重な断熱材で覆う必要がある。メタン(CH4)は111 K (-162 ℃)なので超低温だが、酸素(LOX)の沸点( -183 ℃ )に近いのでタンクには同じドームを使えるので好都合。
【燃焼生成物 (byproducts)】では、ケロシン(RP-1)は3者の内で唯一未燃焼のカーボンと水蒸気を排出し、大気を汚染する。メタンは2酸化炭素と水蒸気を多少排出するがケロシンほどではない。
【火星での生成の可能性(Manufacturable on Mars? )】スペースX社がロケット燃料にメタン(CH4)を選んだ理由は、天然ガス(natural gas)とほとんど同じで価格が安い事もあるが、それよりも「スターシップ」は、有人火星探査、しかも繰り返し実施、を究極の目標にしているためである。火星では、大気は2酸化炭素[ CO2]を多く含み、表面近くには大量の水が存在する。将来これらを採取しメタン(CH4)を合成することは十分可能で、燃料として使用可能になると見ている。
図15:(SpaceX)「ラプター」と「マーリン1D」の比較。「マーリン」の左にある筒状のものは「予燃焼室」からの燃料リッチガスの排気管である。“推力”はメガ・ニュートン(MN=Mega Newton)で表示。” 1 MN ” は ” 220,000 lbf “に相当する。ノズル面積と主燃焼室出口の面積の比を示す「ノズル膨張比(expansion ratio)」は、「ラプター」の海面上型で“40”、真空中型で”200”になる。今の予定では主燃焼室圧力を“300 bar (4,400 psi) ”に保持し、およそ推力200 ton (2,000 KN=440,000 lbf)を出そうとしている。最新の案では、真空中で使うことの多い「スターシップ」本体も“海面上型”ノズル付き「ラプター」を7基装備するようだ。
最後にSpaceX CEO Elon Musk氏が2019-09-08に発表したビデオを紹介する。
https://youtu.be/4VX5tqjrHo8
―以上―
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
Aviation Week September 2-15, 2019 “SpaceX’s Starhopper Verified Raptor Performance for Starship” by Guy Norris
NASA Spaceeflight com. October 3, 2016 “ITS Propulsion – The evolution of the SpaceX Raptor engine” by Alejandro G. Belluscio
Wired Update August 1, 2019 “The wild physics of Elon Musk’s methane-guzzling super rocket” by Jonathan O’Callaghan
Everyday Astronaut May 25, 2019 “What is Full Flow? Why use Methane?”
Elon Musk: 2019-09-08 “Next Generation SpaceX Starship could be Twice as Big!”
NASA July 25, 2019 “Starhopper successfully conducts debut Boca Chica Hop” by Thomas Burghardt