2020-09-08 (令和2年) 松尾芳郎
北方4島の返還を要求する我が国に対し、「領土割譲を禁ずる」憲法改正を行って明確な拒否の意思を示し、去る9月3日に第二次大戦戦勝記念日祝典を行なったロシアは、近年ますます空軍力の強化に力を注いでいる。本稿では、近着のエビエーションウイーク・ネットワークに掲載されたロシア空軍に詳しい軍事専門家ピョートル・ブトースキー(Piotr Butowski)氏の記事を中心に紹介する。
(Against the territorial issue on the Kuril Islands of Japan, Russia has refused clearly by revising its Constitution to add a text “prohibit ceding any territories to the other countries”. On September 3rd, Russia conducted military parade celebrating the anniversary of WW II victory, instead of August 15., trying to justify the Kuril Island occupation by Russ Forces. The article by Piotr Butowski on Aviation Week Network, “The Most Dangerous Russian Military Aircraft”, warn against Russian ambition to expand the military power to the world.)
Tu-160 Blackjack戦略爆撃機
図1:(Aviation Week/Piotr Butowski)ツポレフ(Tupolev) Tu-160ブラックジャック(Blackjack)は世界最大の可変後退翼の超音速爆撃機で、航続距離6,000 km、射程4,000 kmの巡航ミサイルKh-101/Kh-102を発射して基地に帰還できる。空中給油をすれば航続距離はさらに伸びる。現在Kh-BD巡航ミサイル搭載のための改修中だが、このミサイルは射程が6,000 kmに達する。
ロシア東部ボルガ連邦直轄区のサラトフ(Saratov)市郊外のエンゲルス2(Engeles-2)空軍基地の第121重爆撃機連隊(121stGuards Heavy Bomber Aviation Regiment)に配備されている。Tu-160は乗員4名、長さ54.1 m、翼幅55.7 m、最大離陸重量275 ton、兵装は胴体内2箇所のウエポンベイに合計45 ton搭載できる。ここには2個のロータリー・ランチャーがあり巡航ミサイル12発を搭載する。
ロシア空軍は17機のTu-160を保有、2018年1月に新型のTu-160Mを10機発注し、2021-2027年に取得を予定している。
Tu-95MS Bear-H 戦略爆撃機
図2:(Aviation Week/Piotr Butowski)ツポレフ(Tupolev) Tu-95MSベア(Bear) – Hは、改修が完了し、2014年から新型の射程4,000 kmの通常弾頭巡航ミサイルKh-101 (AS-23A)および核弾頭Kh-102 (AS-23B)運用が可能になった。これら巡航ミサイルは翼下面のパイロン4箇所に合計8発搭載する。ロシア空軍は約60機を運用中。現在はさらに新型のTu-95 MSMへの改修が始まりこの8月22日に初号機が飛行した。
Tu-95MSは、ロシア空軍が戦力誇示あるいは仮想敵国に圧力を加えるためしばしば飛行している。日本周辺やアラスカ近海への頻繁な接近飛行、インドネシア空域への飛行(2017年12月)、ベネズエラへの飛行(2018年12月)、南アフリカへの飛行(2019年10月)、など枚挙にいとまがない。先般はシリア攻撃にTu-160爆撃機とともに参加、Kh-101およびKh-555巡航ミサイルを発射した。Tu-95は1956年から就役し始めたがロシア空軍は2040年まで使う予定。
エンジンはクズネツオフ(Kuznetsov) NK-12ターボプロップ軸馬力15,000 shpでプロペラは2重反転式を4基、最大速度830 km/he、航続距離15,000 km、最大離陸重量188 ton、兵装は尾部に23 mm自動機関砲を搭載する他、翼下面のパイロンに合計15 tonの各種ミサイルを搭載できる。
Tu-22M3 Backfire-3戦術爆撃機
図3:(Aviation Week/Piotr Butowski)ツポレフ(Tupolev) Tu-22M3 バックファイヤーC (Backfire -C)は全備重量126 tonの可変後退翼の大型戦術爆撃機。大型超音速のKh-22およびKh-32ミサイルを、敵の重要目標、司令部、橋梁、鉄道集合地点、空港、ロケット発射機基地、大型艦船、などに向け発射する。ロシア空軍では60機ほどを保有し、2021年からは射程距離1,500 kmの超音速ミサイルを含む新型システム・兵装を搭載可能にするTu-22M3M型への改修が始まる。
原型のTu-22M-0の初飛行は1969年だったが、M1、M2と改良を重ねたTu-22M3は1995年のチェチェン(Chechnya)紛争に初めて投入された。
全長42.4 m、最大翼幅34.2 m。乗員は4名、それぞれ個別のドアから出入りする。
兵装は前述の他にレーダー攻撃用のKh-15核弾頭ミサイルまたはKh-15P通常弾頭ミサイル、さらに通常爆弾FAB-250やFAB-1500を搭載する。搭載兵装は、主翼下面とウエポンベイに合計24 tonになる。
エンジンはクズネツオフ(Kuznetsov) NK-25 ターボファン推力25 ton、を2基胴体両側に装備する。巡航速度900 km/hr、最大速度2,300 km/hr、航続距離7,000 km。
Su-57 Felon多目的戦闘機
図4:(Aviation Week/Piotr Butowski)スーホイ(Sukhoi) Su-57は第五世代双発の多目的戦闘機で、空中戦機能と対地・対艦攻撃能力を併せ持つ。アフタバーナーを使わずにマッハ2の超音速巡航・航続距離1,500 kmが可能。超高機動性能、ステルス性を備え、先端アビオニクスを搭載する。構造は複合材を多用し、最新の電子装備、センサー類を装備する。水平尾翼・垂直尾翼はいずれも全翼可動式で垂直尾翼はエアブレーキの機能を持つ。先進フライトコントロールとエンジン推力偏向ノズルで機体の超高機動性を実現している。
エンジンは、サターン(Suturn)AL-41F1ターボファン・ドライ推力21,000 lbs、アフタバーナ推力33,000 lbs x 2基が使われている。推力増強型のイズデリエ(Izdeliye) 30型に将来換装されるかも知れない。
ミサイルは胴体下部にある広い2箇のタンデム・ウエポンベイに収納する。各ウエポンベイは長さ4.6 m、幅1 mあり、ミサイル2発重量700 kgを搭載できる。搭載するミサイルは、AESAシーカー付きのK-77MまたはR-77の射程250 km空対空ミサイル、あるいは射程500 km の対地攻撃ミサイルKh-38M、または精密誘導爆弾KAB250、KAB-500を搭載できる。
Su-57は開発に10年を要したがこのほど完成、今年から空軍に納入が始まり2027年までに76機が配備される。
機体の長さ20.1 m、翼幅 14.1 m、最大離陸重量35 ton、航続距離は亜音速時3,500 km。
Su-35S Flanker-M戦闘機
図5:(Aviation Week/Piotr Butowski)スーホイ(Sukhoi) Su-35Sフランカー(Flanker)-Mはロシア空軍が運用する戦闘機の中で最も優れた機体、超高機動性を備え、空軍は2009年に発注しSu-57が配備されるまで主力を務める。
空力的にはカナードを廃した点を除き、基本形のSu-27の形を受け継いでいる。操縦系統はSu-57と同じデジタル・フライ・バイ・ワイヤ方式。推力偏向ノズルを備えたエンジンAL-41-1Sは、Su-57のAL-41F-1と同系列だが、やや単純化されている。Su-35のレーダーなどのセンサー類はSu-57とほぼ同じで低価格、火器管制装置は同じものを使っている。
兵装も同じだが、違いはウエポンベイでなく外部装着となっている点。対地攻撃ミサイルKh-38M、対艦ミサイルKh-35U、空対空ミサイルR-77およびR-73、およびKhibiny-M対電子戦装置(ECM=electronic countermeasures)を備える。ロシア空軍は2011-2020間にSu-35S型戦闘機を98機導入した。
同型機は、中国に24機、エジプトに31機輸出している。1990年代初めに中国の求めに応じSu-35Sを24機輸出する協定を結び2016年12月から引き渡し開始、中国では2018年4月広東省にSu-35S部隊を編成した。
Su-35Sは、全長21.9 m、翼幅15.3 m、最大離陸重量34.5 ton、最大速度2,400 km/hr・マッハ2.25、巡航速度1,400 km/hr・マッハ1.13、航続距離3,600 km、兵装は翼下面ハードポイント12箇所に各種ミサイルを合計8 ton搭載できる。
Su-34 Fullback戦闘爆撃機
図6:(Aviation Week/Piotr Butowski)スーホイ (Sukhoi) Su-34 フルバック(Fullback)戦闘爆撃機は、双発、複座、超音速、中距離攻撃用の、前線部隊の補給路を遮断する目的の戦術爆撃機。厳重な防空網を突破して通信指令の中核地点、輸送車列および貨物集積地、などを攻撃破壊する。
防弾鋼板で覆われた並列複座コクピットを装備、昼夜・天候にかかわらず防空網を突破、目標を攻撃できる。
2014年から配備が始まりこれまでに129機が空軍に引き渡され、2020年8月にはロシア国防省は追加24機を発注、3年以内に受領する。旧型のSu-24フェンサー(Fencer) 100機のSu-34への更新も検討している。
図7:(Aviation Week/Piotr Butowski)スーホイ (Sukhoi) Su-34 フルバック(Fullback)は、最大12 tonの兵装を携行した場合戦闘行動半径は1,000 km、フェリー飛行では4,000 km以上を飛べる。
ロシアのシリア問題関与はもっぱら本機で行われた。現在Su-34M型への改修が最優先事項として行われている。
Su-34は、サターン(Saturn) AL-31 FM1ターボファン推力アフタバーナ時30,000 lbs x 2基を装備、マッハ1.8以上で飛行する。翼下面にはハードポイントが12箇所あり合計8 tonのミサイル、精密誘導爆弾などを搭載できる。
機首レーダーは、AESA型で最大探知距離250 km、同時に10目標を追跡・4目標を攻撃でき、さらに地形追随(terrain-following)、地表衝突回避(terrain avoidance) 機能を備える。尾部にもレーダがあり飛来する敵機・ミサイルを監視する。
対空戦闘用にR-77およびR-73 空対空ミサイル合計12発、対地攻撃爆弾として射程250 kmのスタンドオフ爆弾4 tonサイズを携行できる。
MiG-31K Foxhound-D 迎撃戦闘機
図8:(Aviation Week/Piotr Butowski)ミコヤン・グレビッチ(Mikoyan-Gurevich) MiG-31Kフォックスハウンド-D(Foxhound-D)の最初の試験飛行中隊が、2020年2月ロシア南部のアクツビンスク(Akhtubinsk) 基地に12機で編成された(ロシア中央郡区司令官アレキサンダー・ラピン空軍中将談)。
写真は、Kh-47M2 Kinzhal ALBM (空中発射型弾道ミサイル)を搭載したMiG-31 BMの改修型・MiG-31K戦闘機。Kh-47M2 Kinzhal弾道ミサイルは射程2,000 km、マッハ10の極超音速で飛行、目標に着弾する。
空軍は現在120機のMiG-31 BM迎撃戦闘機を保有している。
MiG-31は、世界最速の超音速迎撃戦闘機としてミコヤン設計局が開発した機体でMiG-25 フォックスバットの後継機とされる。1981年から配備が始まり、途中MiG-31BMへ改修をしてきた、2030年以降まで使う予定。
設計目標は、飛来する巡航ミサイル、無人機(UAV)などを捕捉・撃破すること、長距離飛行をする戦略爆撃機を護衛すること。生産は1994年に519機で終了、内訳は基本型が349機、2次改良のMiG-31DZが101機、最終型のMiG-31Bが69機となる。これらが順次改修され、現在のMiG-31 BM、120機体制になっている。
機体構造はニッケル鋼を多用しマッハ2.83の高速飛行で生じる高熱に耐えるようにしてある。エンジンはD30-F6 推力152 kN x 2基、低空での最大速度はマッハ1.2。
電子装備では、MiG-31は探知距離200 kmを超えるフェイズド・アレイ・レーダー (Zaslon S-800 PESA型)を最初に搭載した戦闘機として知られる。S-800レーダーは、4目標を搭載の対空ミサイル(Vympel R-33)で同時攻撃が可能。またデータ・リンク(RK-RLDN)を備え友軍基、地上レーダーと情報を共有、飛来するミサイル、高速機を迎撃できる。
コクピットはタンデム複座で、前席がパイロット、後席はレーダー・兵装を担当する。
MiG-35S戦闘攻撃機とグロム滑空ミサイル
図9:(Aviation Week/Piotr Butowski)モスクワ郊外で行われたMAKS 2019航空ショーでの写真。ミコヤン・グレビッチ(Mikoyan-Gurevich) MiG-35S戦闘攻撃機の前に並べられたミサイル群。手前からグロム(Grom) 有翼滑空ミサイル、Kh-38M 空対地ミサイル、Kh-35U 空対艦ミサイル。
MiG-35Sフルクラム-F戦闘機
図10:(Aviation Week/Piotr Butowski)ミコヤン・グレビッチ(Mikoyan-Gurevich) MiG-35Sフルクラム-F (Fulcrum-F)は高能力の戦闘機だが、生産は6機で打ち切られ、低価格のSu-30SM、改良型のSu-35および最新型のSu-57の配備を進める方針が決まった。MiG-35Sはクビンカ空軍基地(Kubinka Air Force Base) の曲技飛行チーム・ストリジ(Strizhi / Swifts)所属となる。今後は輸出に向けられる予定。
ミル(Mil) Mi-28NMホバック(Hovc)
図11:(Aviation Week/Piotr Butowski)ミル(Mil) Mi-28NMホバック(Hovc)はMi-28N 戦闘ヘリコプターの改良型で、目標視認装置を改良し兵装を新しくした機体。最大の改良点は、従来使われていた射程7 kmのアタカ&クリザンテマ(Ataka and Khrizantema) 対戦車ミサイル(ATGM)の搭載を廃し、新しく射程15 kmのLMUR (lightweight multitarget guided missile)/軽量多目標誘導ミサイルに変更した点。LMURは未公表だが熱線映像シーカー(thermal imaging seeker)付きで、その映像がコクピットに転送され、パイロットはこれを通して目標を視認できる。2019年3月にMi-28NMはシリアで実戦に使用しテストされた。そして同年6月27日に、ロシア国防省は98機を発注、2020年8月-2027年の間に引き渡される。
メイン・ローターは複合材製5枚羽根、胴体上部側面にはターボシャフト・エンジンTV-3-117VM 2,200 hp が 2基付く。防弾鋼板装備のタンデム複座コクピットで、機首下面には口径30 mm自動機関砲 (対地攻撃射程1,500 m +) を装備する。
Mi-28Nでは、パイロットはヘルメット・マウンテッド・デイスプレイ(helmet mounted display) を着装、計器を見ずにゴーグル上の指標で操作・攻撃できる。ゴーグルは全て夜間視認可能ゴーグル(NVG=night vision goggle) になっている。
搭載ミサイルは4種類あり目標により使い分けられる。対戦車用は9M120 HEAT弾、地上目標用は9M120F thermobaric弾、対ヘリコプターには9M120O expanding rod弾、いずれも射程6 km。新型の9M120Mは射程を8 kmに伸ばしたミサイル。
カモフ (Kamov) Ka-52 ホクム(Hokum)-Bヘリコプター
図12:(Aviation Week/Piotr Butowski)カモフ(Kamov) Ka-52ホクム(Hokum)-B ヘリコプターは並列複座式。これで正面が広くなり、強力なレーダーとその下に電子・光学目標探知センサーの装備か可能となり、レーダー警報受信装置などの装備と併せて自機防御機能が充実した。Ka-52は、コクピット周辺と重要部にチタン合金とセラミック板装甲を装備。胴体下部の両側には赤外線ジャマー(jammers)があり、翼端にはフレアまたはレーダー・デコイ発射装置を備える。
ロシア空軍は2011年からカモフKa-52の導入を開始、現在までに約125機を保有、年平均15-20機の割合で増強している。エジプトは輸出型Ka-52Eを46機購入した。ロシア国防省は2022-2027年間に114機を追加取得する。ロシア海軍では、折り畳み式ローター・ブレードを備えたKa-52K型の試験をしている。
同軸反転ローターの採用で高度4,000 mでのホバリングができ、尾部ローターがないので全速度域で水平反転ができる。
兵装は、胴体右側面に口径30 mm自動機関砲1門と、主翼下面のハードポイント4箇所と翼端に合計2 tonのミサイルを搭載可能。
エンジンはクリモフ(Klimov) Vk-2500ターボシャフト 2,400 hp x 2基、ローターは直径14.5 m、巡航速度270km/hr、航続距離550 km。
ミル (Mil) Mi-8MTPR1ジャミング・ヘリコプター
図13:(Aviation Week/Piotr Butowski)ミル (Mil) Mi-8MTPR1はMi-8輸送ヘリコプターではない。数百km離れたところから、敵の対空ミサイルの誘導レーダーにジャミング攻撃をする特殊ヘリである。
Mi-8輸送ヘリの貨物室にL187A ライチャグ(Rychag)-AV 電子装置を搭載、胴体両側面に取付けた箱型のAESA (active electronic-scanning antennas)アンテナから電子ビームを発射、敵レーダーにジャミングを行い完全にメクラにする。ロシア空軍では約50機を配備している。
イリューシンIl-80 マックスドーム(Maxdome)
図14:(Aviation Week/Piotr Butowski)一見普通のIl-86旅客機に見えるイリューシンIl-80 マックスドーム(Maxdome)は、ロシア国防軍の空中戦略指揮司令部(airborne command and control)である。米空軍のボーイング747-200を改修したE-4B 空中作戦センター(National Airborne Operations Center Aircraft) に相当する機体。核弾頭付きミサイルの発射指令はここから発せられる。4機のIl-86旅客機がIl-80に改修され、モスクワ近郊のチカロフスカヤ(Chikalovskaya)基地に配備されている。
主翼下面の2つのポッドは長さ9.5 mあり、発電用ジェネレーターを内臓している。胴体上部にある大きいドーサル・カヌー(dorsal canoe)には衛星通信装置があり、胴体後部下面には弾道ミサイル潜水艦と連絡するための超長波(VLF)通信アンテナが装備されている。
クロンシュタット(Kronstadt) グロム(Grom)無人機
図15:(Aviation Week/Piotr Butowski)有人戦闘機が敵の防空網を突破するため編隊列機(royal wingman)として随伴する無人機グロムが発表された。写真は、ロシア・クロンシュタット製グロムUAVのモックアップ。クロンシュタット社は、入手した米国ジェネラル・アトミックス製MQ-1プリデーター(Predator)を基にロシア初の大型無人機 “オライオン”(写真奥の機体)を開発、2020年からロシア国防軍に納入を始めている。同社は2020年8月にクビンカ(Kubinka)で行われたモスクワ陸軍兵器展示会で実物大のグロム無人機のモックアップを公開した。グロムは有人機の先陣を切って防空網の奥深く侵攻、レーダー攻撃ミサイルを発射、有人機の攻撃路を開くのが任務。長さ13,8 m、翼幅10 m、離陸重量7 ton、兵装搭載量500 kg、最高速度1,000 km/hr、戦闘行動半径700 km。
終わりに
約8年にわたる安倍首相の主導で日米同盟強化が進み、防衛予算は削減から増加に転じ、特定秘密保護法の制定で情報の抜け道を塞ぎ、安保法制の改定で集団的自衛権の限定的行使が可能となり、我が国の防衛体制がやっと普通の国に一歩近ずいた。安倍首相退陣発表後の世論調査(朝日を含む)では安倍内閣支持率が70 %を超えたが、これは多数の国民がその施政に共感したことに他ならない。一国民として安倍首相の功績に敬意を評したい。
しかしそれでも十分でないのが現実だ。
米国防総省は9月1日に中国の軍備増強に言及した報告書を発表した。潜水艦を含む海軍艦艇は、中国は350隻に達し米国の293隻を凌駕、世界最大の海軍国になった。また中距離弾道ミサイルの保有は1,200発を超え、対する米国はゼロ、と報じた。
中国に加え、我が国を敵視するロシアも軍備拡張を続け、上述したように空軍力の拡張は質、量ともに日本を遥かに超え、米国に迫るものがある。
このように我が国周辺の安保環境が激変する中、国内ではまだ「敵基地攻撃能力の保有」の是非について議論が繰り返されている。中露両国に「日本与し易し」の印象を与えないよう、新政権、国会、マスコミは毅然とした対応を採るよう願いたいものである。
―以上―
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
Aviation Week Network Sept. 01, 2020 “The Most Dangerous Russian Military Aircraft” by Piotr Butowski, author of numerous book about Russian aircraft, discusses what makes a dozen Russian military aircraft so threating.
Aviation Week Network Sept. 04, 2020 “Russia Reveals Loyal Wingman Concept” by Piotr Butowski
Air Force Technology “Tupolev Tu-22M Strategic Bomber