2020-12-06(令和2年) 松尾芳郎
令和2年11月、我が国周辺における中露両軍の活動と、それに対応する我国自衛隊および同盟諸国軍の動きに関し、各國の関係機関から多くの発表があった。以下にその項目と内容を記する。
(On November 2020, there have been many military exercises and threats around Indo-Pacific region conducted by Chinese and Russian Forces. Responding these threats, Japan and U.S. allied forces executed practical counter actions.)
統合幕僚監部発表
11月6日 ロシア海軍艦艇の動向について
11月21日 ロシア機の日本海のおける飛行について
陸上幕僚監部
11月19日 陸幕長より:日米共同方面隊指揮所演習(YS-79)・米海兵隊との実動訓練(フォレストライト)について
海上幕僚監部
11月10日 令和2年度機雷戦訓練(日向灘)及び総会特別訓練(日米共同)について
11月13日 日豪共同訓練について
11月17日 日米印豪共同訓練(マラバール2020)について
11月18日 日加共同訓練(KAEDEX 20)について
11月19日 平成30年度計画護衛艦「くまの」の命名式・進水式
航空幕僚監部
11月21日 米軍との共同訓練の実施について
米第7艦隊ニュース(Commander, U.S. 7th Fleet)
11月07日 米ミサイル駆逐艦(イージス艦)「ジョーン・S・マケイン」、海自護衛艦「おおなみ」、豪海軍フリゲート「バララット」と共同訓練
11月11日 米海軍、インド洋・フィリピン海で日・豪・印・各海軍と実弾射撃訓練
11月17日 ニミッツ空母打撃群、豪・印・日・各海軍と共に「マラバール」演習に参加
11月20日 米海軍、海自と共同で機雷掃海訓練を実施
11月20日 ニミッツ空母打撃群、豪、印、日、各海軍と実施した「マラバール2020」演習を終了
11月21日 米イージス艦バリーが台湾海峡を通過
11月24日 米イージス艦ジョン・S・マッケインがピョートル大帝湾で航行の自由作戦を実施
ロシア海軍情報管理局ニュース
11月01日 ロシア太平洋艦隊旗艦の巡洋艦ワリヤーグと大型対潜艦アドミラル・バレンテーエフは中型給油船ペチェンガを伴いアジア太平洋地域への遠距離航海に出発
11月06日 ロシア太平洋艦隊コルベット艦アルダル・ツジェンジャポフは日本海で艦砲の試射を実施
11月24日 ロシア太平洋艦隊大型対潜艦アドミラル・ビノグラードフ、ピョートル大帝湾で米イージス艦ジョン・S・マッケインの領海侵犯を阻止
11月25日 ロシア太平洋艦隊コルベット艦アルダル・ツジェンジャポフは対艦ミサイル“ウラン”の発射実験を実施、同26日には日本海で対潜/対魚雷複合ミサイル“パケートNK”の発射試験を実施
チャイナ・ミリタリー・ニュース
11月10日 中国海軍艦艇は10日-17日の間、渤海湾で実弾射撃訓練を実施
11月15日 中国海軍艦艇は16日-20日の間、揚子江河口海域で実弾射撃訓練を実施
11月16日 中国海軍艦艇は17日-30日の間、南シナ海で実弾射撃訓練を実施
11月25日 中国海軍艦艇は25日-29日の間、黄海で実弾射撃訓練を実施
以下に各國関係機関が発表した内容を個々に説明する。
統合幕僚監部発表
・11月6日 ロシア海軍艦艇の動向について
11月6日(金)午前9時、上対馬北東50 kmの海域を南西に進むロシア海軍スラバ級ミサイル巡洋艦1隻、ウダロイ1級駆逐艦1隻、およびドウブナ級補給艦1隻を発見した。発見追尾したのは海自第3ミサイル艇隊佐世保基地所属の「おおたか」および厚木基地第4航空群所属の「P-1」哨戒機である。その後ロシア艦艇は東シナ海に向けて立ち去った。
ロシア海軍情報局は、「ロシア太平洋艦隊旗艦巡洋艦ワリヤーグと大型対潜艦アドミラル・バレンテーエフは中型給油船ペチェンガを伴いアジア太平洋地域への遠距離航海に出発した」と報じた。
図1:(統合幕僚監部)スラバ級ミサイル巡洋艦「ワリヤーグ (011)」。1989年就役、2008年に近代化改修を完了。満載排水量11,300 ton、強力な防空力と打撃力で空母機動部隊攻撃が主任務。同級は3隻が配備中。両舷4本ずつの筒には、射程700 km、速度マッハ2の「P-1000ブルカーン(Vulkan)」対艦ミサイルを各筒に2基ずつ計16基を搭載。
図2:(統合幕僚監部)ウダロイI級駆逐艦「アドミラル・バンテレーエフ (548)」。ウダロイ級駆逐艦は、満載排水量8,500 ton、全長163 m、速度35 kt、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年に作られ8隻が就役中で太平洋艦隊には内4隻を配備。西側のイージス艦に近い性能を持つ。
図3:(統合幕僚監部)中型給油線「ペチェンガ」。ドウブナ級補給艦4隻の3番艦で1979年に完成、太平洋艦隊に編入された。満載排水量11,500 ton、速力15 kt、燃料約4,000 tonなどを搭載できる。
・11月21日 ロシア機の日本海のおける飛行について
11月21日(日)、ロシア空軍IL-20情報収集機1機が北海道西岸から本州能登半島沖に沿って飛行し舞鶴北上空で北西に変針、シベリア方面に立ち去った。空自では戦闘機を緊急発進させ、領空侵犯を防いだ。
図4:(統合幕僚監部)11月21日のロシア軍IL−20情報収集機の飛行経路。
図5:(統合幕僚監部)、北海道-本州の日本海沿いを飛んだロシア空軍「IL-20」情報収集機。6月10日、8月14日、にもほぼ同じコースを飛行した。「IL-20M」とも呼ばれ、通信傍受をするCOMINT/ELINT偵察機。1957年代から600機生産されたイリューシン(Ilyusin) IL-18旅客機がベース。IL-18は離陸重量64 ton、イブチェンコAl-20Mターボプロップ4,250 hp 4基を装備する。胴体下には電子戦ポッドのようなものが見える。
陸上幕僚監部
・11月19日 陸幕長より:日米共同方面隊指揮所演習(YS-79)・米海兵隊との実動訓練(フォレストライト)について
陸幕長湯浅悟郎 陸将から本件につき次のように説明があった;―
① 令和2年度日米共同方面隊指揮所演習(YS-79)
12月2日-15日の間、熊本県建軍駐屯地、東京都練馬区の朝霞駐屯地、沖縄県うるま市キャンプ・コートニー等において、YS-79演習を実施する。
この演習は陸自が米軍と共同で行う最大かつ最重要な演習で、陸自西部方面隊と米太平洋陸軍第1軍団が参加する。指揮所演習なのでテレビ会議等を活用して陸自と米陸軍との連携を強化していく。
② 令和2年度国内における陸自と米海兵隊との実動演習(フォレストライト)
12月7日-18日の間、新潟県上越市関山演習場、群馬県相馬原演習場等において実施する。この演習は空中機動性を高めた陸自の相馬原を本拠とする第12旅団第30普通科連隊要員と米海兵隊第3海兵師団所属の1個海兵大隊要員が、沖縄県普天間基地から飛来した6機のMV-22オスプレイを使い空中機動作戦を実施し、敵の島嶼部侵攻に対処する日米共同の訓練をする。参加兵員は、陸自から400人、海兵隊から500人、早朝から夜間11時まで行う。
図6:(U.S. Marine Corps / Sgt Brendan Custer)海兵隊が使用するMV-22 オスプレイ(Osprey)。乗員4名と武装兵員24-32名を乗せ、巡航速度440 km/hrで3,500 km輸送できる。海兵隊では360機を配備している。
海上幕僚監部
・11月10日 令和2年度機雷戦訓練(日向灘)及び掃海特別訓練(日米共同)について
海自は機雷戦能力の維持向上と米海軍との一層の連携強化を図るため、11月18日-28日の間機雷戦訓練と掃海特別訓練を実施した。場所は九州東方の日向灘海域。参加部隊は海自から艦艇19隻、内訳は掃海母艦2隻、掃海艦2隻、掃海艇15隻、人員1,200名。米海軍からは掃海艦2隻、水中処分員10名。
・11月13日 日豪共同訓練について
海自は戦術技量の向上と豪海軍との連携強化のために11月12日に九州西方海域/東シナ海で戦術訓練を実施した。参加部隊は海自護衛艦「しまかぜ」と豪海軍フリゲート「アランタ」である。
図7:(海自幕僚監部)手前が海自「しまかぜ」、奥が豪海軍「アランタ」。
- 11月17日 日米印豪共同訓練(マラバール2020)について
海自の戦術技量の向上と米・印・豪・各海軍との連携強化を図るため、前段として11月3日-6日と後段として11月17日-20日の両期間、インド洋ベンガル湾海空域とアラビア海北部海域で演習を行う。
参加兵力は;―
前段:海自 護衛艦「おおなみ」
米海軍 イージス艦「ジョン・S・マケイン」
印海軍 駆逐艦「ランビジェイ」、フリゲート「シバリク」、補給艦「シャクテイ」、潜水艦「シンドーライ」、対潜哨戒機P-8I
豪海軍 フリゲート「バララット」
後段:海自 護衛艦「むらさめ」(17日のみ)、第51航空隊(17-18日)
米海軍 空母「ニミッツ」、巡洋艦「プリンストン」、駆逐艦「ステレット」、対潜哨戒機P-8A
印海軍 空母「ビクラマデイチャ」、駆逐艦「コルカタ」、「チェンナイ」、フリゲート「タルワー」、潜水艦「カンデリ」、補給艦「デイパック」、哨戒機P-8I、戦闘機MiG-29K、など
豪海軍 フリゲート「バララット」
・11月18日 日加共同訓練(KAEDEX 20)について
11月17日、海自間の戦術技量向上とカナダ海軍との連携強化を図るため、九州西方の東シナ海で共同訓練を実施した。参加したのは海自護衛艦「しまかぜ」とカナダ海軍フリゲート「ウイニペグ」。
図7A:(海上幕僚監部)左が「しまかぜ」、右がカナダ海軍フリゲート「ウイニペグ」。「しまかぜ(DDG-172)」は1988年就役、満載排水量6,000 ton、非イージス艦として艦隊防空を担う最後の鑑となった。対空ミサイル発射は埋め込み式のVLSを使うのが今や普通だが、本艦は旋回式発射機を使っている。カナダ海軍の「ウイニペグ」は満載排水量5,000 ton、速力30 kt、1995年就役の艦で、CH-124シーキング・ヘリコプター1機を搭載する。
・11月20日 平成30年度計画護衛艦「くまの」の命名式、進水式について
11月19日、三井E&S造船KK玉野艦船工場において、平成30年度計画護衛艦「くまの/FFM-2」の命名式・進水式が行われた。「くまの」は次世代型多機能護衛艦で大幅に自動化され乗員90名で運用できる。基準排水量3,900 ton、満載排水量5,000 ton、全長133 m。就役は2022年3月の予定。建造費は約470億円。
兵装は、62口径5 inch砲1門、中近距離対空ミサイルSeaRAM 1基、17式対艦誘導弾(SSM-2)4連装発射筒2基、各種ミサイル垂直発射装置Mk.41 VLS(16セル)を装備する。対潜機能も充実しVDS、TASS 1式、機雷排除用として無人機雷排除システムUSV+UUV1式を搭載する。これはOZZ-5と呼ばれ防衛装備庁で開発した無人潜水艇。簡易型機雷敷設装置1式、SH-60K哨戒ヘリコプター1機を搭載する。
本艦は、中期防に基づく平成30年度計画に示された多機能護衛艦(FFM)、つまり「フリゲート」に位置付けされ、それに多機能/Multifunctionの[M]を付けて「FFM」級と呼ばれる。三菱重工を通して三井E&S造船に発注された同型艦の2番艦になる。1番艦は三菱重工長崎造船所で建造中である。
有事に際しては対潜戦、対空戦、対水上戦、さらに従来掃海艦艇が担っていた対機雷戦も行える。
図8:(海上自衛隊)11月19日、三井E&S造船KK玉野艦船工場で進水式を挙行した30FFM級2番艦「くまの」。同型艦は2037年までに22隻を建造する計画。主機関は川崎重工がライセンス生産するロールスロイスMT30ガスタービン1基とドイツMAN社製デイーゼル・エンジン2基を装備する。合計軸出力は7万馬力。三菱重工で建造中の1番艦に予定されいたMT30ガスタービン・エンジンが運転中に異物を吸い込み破損、このため完成が遅れている。
図9:(三菱重工)敵が上陸した島嶼を艦砲射撃するため、艦首には強力な62口径5 inch (127 mm)砲を装備する。また機雷の掃討能力として、機雷探知用ソナーがあり、機雷探知用無人潜水艇(UUV)と発見した機雷を処理する機雷排除システムを搭載する。
米第7艦隊ニュース(Commander, U.S. 7th Fleet)
・11月07日 米ミサイル駆逐艦(イージス艦)「ジョーン・S・マケイン」が海自護衛艦「おおなみ」、豪海軍フリゲート「バララット」と共同訓練
米イージス艦「ジョンS.マケイン(DDG 56)」は、豪海軍フリゲート「バララット(FFH 155)」、および海自護衛艦「おおなみ(DD 111)」と11月6日にインド洋で共同訓練を行なった。これはインド海軍と共同でベンガル湾で実施する「マラバール演習(MALABAR)」の最初に実施されたもの。インド・太平洋において脅威を及ぼす行動に対し、米国と同盟諸国が直ちに対応できることを世界に示した演習となった。
図10:(7th Fleet/MC2 Markus Castaneda)第7艦隊イージス駆逐艦「ジョン・S マケイン(DDG 56)」から豪海軍フリゲート「バララット(FFH 155)」とそれに続く海自「おおなみ(DD 111)」を写した写真。「マケイン」は米海軍最大規模の艦隊、第15駆逐艦隊(DESTRON 15 =Destroyer Squadron 15) に属し、第7艦隊の傘下にある。
・11月11日 米海軍、インド洋・フィリピン海で日・豪・印・各海軍と実弾射撃訓練
米海軍アーレイ・バーク級イージス艦2隻は、11月5日にインド洋と日本沿岸に分かれて同盟諸国海軍とともに実弾射撃訓練を行なった。
「ジョンS.マケイン(DDG 56)」はインド洋ベンガル湾で「マラバール演習」の一つとして、また「カーテイス・ウイルバー(Curtis Wilbur/DDG 54)はフィリピン海で豪海軍フリゲート「ウニペグ(Winnipeg/FFH 338)」および海自護衛艦「おおなみ」と実弾射撃訓練を行なった。訓練は高性能20 mm対空機関砲CIWS、25 mm機関砲、および.50口径機関砲を使い、遠隔操縦の無人目標に対して行われた。
図11:(7th Fleet/MS2 Markus Castaneda)「マラバール2020」演習で隊列を組み航行する米・豪・日・印、各國海軍の艦艇。
・11月20日 ニミッツ空母打撃群、豪、印、日、各海軍と実施した「マラバール2020」演習を終了
豪州、インド、日本および米国の各國海軍は11月20日に合同演習「マラバール2020」の後段を終了した。この演習で参加各國は一層連携を強めインド-太平洋の自由と平和維持の技量を高めることができた。演習では、夜間訓練、対空訓練、ヘリコプターの相互離着艦訓練、空母着艦訓練、給油訓練、射撃訓練、および対潜水艦訓練が行われた。
図12:(U.S.7th Fleet MS 3rd Class Elliot Schaudt)11月17日アラビア海で演習中の空母「ニミッツ(USS Nimitz/CVN 68)」。ニミッツ空母打撃群は、現在第7艦隊を支援し ”自由で開かれたインド・太平洋 “を維持するため南シナ海を中心とする海域に展開している。
・11月21日 米イージス艦バリーが台湾海峡を通過
11月20日米イージス駆逐艦「バリー( USS Barry/DDG 52)」は台湾海峡を通過し、 “自由で開かれたインド・太平洋”を守り抜く決意を示した。これは今年4回目の航行でその後南シナ海で通常任務に従事中。「バリー」は第15駆逐艦隊(Destroyer Squadron 15)に所属、横須賀を母港にしている。
図13:(U.S. 7th Fleet)米海軍アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦/イージス艦「バリー(USS Barry / DDG 52)」。アーレイ・バーク級駆逐艦(Arleigh Burke-class missile destroyer)はイージス(Aegis) 戦闘システムとSPY-1D AESAレーダーを装備する。1991年以降これまでに68隻が就役済み、今も建造が続いている。満載排水量は、フライトI級8,200 tonから現在のフライトIII級の9,500 tonに増えている。主機関はGE製LM2500ガスタービン・軸馬力26,000 shpを4基、速力30 kt。フライトI級は、主砲は5 inch砲1門、対空機関砲20 mm CIWS 1基、Mk. 141ハープーン対艦ミサイル連装発射筒2基、Mk. 41 VLS 90セル・ミサイル発射システム、等を装備する。ヘリコプターは搭載していない。写真の「バリー(DDG-52)」は同級の2番艦・フライトI級で1991年の就役。横須賀を母港にしている。
・11月24日 米イージス艦ジョン・S・マケインがピョートル大帝湾で航行の自由作戦を実施
11月24日、米イージス駆逐艦「ジョンS.マケイン(DDG 56)」は、日本海西部ウラジオストク南方海域に広がるピョートル大帝湾(Peter the Great Bay)付近の海域で ”航行の自由作戦(FONOP=freedom of navigation operation)“を実施した。これはロシアが国際条約を無視し1984年以降拡大解釈して、この海域を自国の領海と主張するのに対抗する意思を示すため実施された。
ロシア海軍情報管理局は、米駆逐艦「ジョン・マケイン」がピョートル大帝湾にロシアが設定する海上境界線を2 km超えて侵犯したので、ロシア太平洋艦隊の大型対潜艦「アドミラル・ビノグラードフ(572)」が体当たり直近まで接近、退去させた、と報じた。
図14:(ロシア海軍情報管理局)ロシア太平洋艦隊大型対潜艦/ウダロイI級駆逐艦「アドミラル・ビノグラードフ(572)」、1988年末に就役、太平洋艦隊に所属中。
図15:(ロシア海軍情報管理局)ピョートル大帝湾で“航行の自由作戦”を行なった米海軍ミサイル駆逐艦「ジョンS.マケイン(DDG 56)」。アーレイバーク級ミサイル駆逐艦の6番艦で1994年7月就役、横須賀が母港。
図16:(Google) ピョートル大帝湾はロシア語で「ザリーフ・ピトラー・ビリーカバ」と呼び、ウラジオストック軍港を中心に広がる幅200 km、奥行き80 kmの広大な海域。ロシアは通常の海岸線から20 kmの領海を越えて、湾全体を国際法上の「内水」だとし権益を主張している。しかし米国は認めておらず、しばしばここで「航行の自由作戦」を行なっている。
ロシア海軍情報管理局ニュース
・11月25日 ロシア太平洋艦隊向けコルベット艦アルダル・ツジェンジャポフは対艦ミサイル“ウラン”の発射実験を実施、同26日には日本海で対潜/対魚雷複合ミサイル“パケートNK”の発射試験を実施
コルベット艦「アルダル・ツジェンジャポフ(339)」は、ピョートル大帝湾で、11月24日に口径100 mm艦砲A-190で海上目標の砲撃を実施、翌25日には対艦ミサイル「ウラン」の発射試験を行い、40 km先の水上標的に命中させた。そして26日には対潜・対魚雷用のミサイル/短魚雷「バケートNK」の試写に成功した。
「アルダル・ツジェンジャポフ(339)」は、「ステレグシチー」級フリゲートの8番艦で2020年12月に太平洋艦隊に編入される。ロシアではコルベットと呼ぶが、西側ではフリゲートに分類している。満載排水量2,200 ton、全長105 m、と小振りの艦で、太平洋艦隊には本科を含め3隻が配備される。
図17:(ロシア海軍情報管理局)間も無くロシア太平洋艦隊に配属される最新鋭コルベット「ツインジャポフ(339)」。建造中の海自フリゲート「くまの(FFM 02)」と外見は似るが小型。
図18:(ロシア海軍情報管理局)「アルダル・ツジェンジャポフ(339)」が搭載する「3M24 ウラン」対艦ミサイル、4連装発射筒2基に装備する。重さ610 kg、長さ4.4 m、射程130 km、米海軍の「ハープーン」対艦ミサイルに似ている。
―以上―