令和3年10月、我国周辺における中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応


2011-11-05 (令和3年) 松尾芳郎

令和3年9月、我国周辺における中露両軍の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、それぞれの公的部門から多くの発表があった。以下にその項目と内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り;―

  •  ロシア海軍、潜水艦から3M22ジルコン(Zircon)極超音速巡航ミサイル発射に成功と発表。
  • 北朝鮮、9月28日に極超音速ミサイル「火星8/Hwasong 8」を発射。10月19日には潜水艦発射型弾道ミサイルを発射。
  • 中国空軍機、10月1日から4日にかけて合計150機で台湾防空識別圏に侵入。
  • 10月18日-23日の間、中国・ロシア両海軍の10隻の艦隊が我国本州を一周。

以下に順を追って解説する。

((The military threats by Russo-Chinese Forces surrounding Japan and Taiwan were reported as heavily active. Following four were noteworthy;-

  1. Russian Navy fired a 3M22 Zircon hypersonic cruise missile from a submerged nuclear submarine on Oct.4, the missile suspected scramjet powered.
  2. North Korea have launched a hypersonic cruise missile on September 28, and a shout range submarine launch ballistic missile from a submerged submarine on October 19, both are capable to reach South Korea and a part of Japan.
  3. Chinese military aircraft incursions near Taiwan, 150 aircraft having entered Taiwan’s ADIZ since the beginning of October.
  4. Chinese & Russian fleets of ten ships sailing around Japan’s Honnshu Island.)
  • ロシア海軍、潜水艦発射型3M22ジルコン(Zircon)極超音速対艦ミサイルの発射に成功

3M22ジルコンは、航空機発射型、水上艦発射型、潜水艦発射型、があり、いずれもスクラムジェットを動力とし、変則軌道・極超音速で飛翔する対艦攻撃用ミサイルである。

2021年10月4日、ロシア国防省は潜水中の原子力潜水艦から3M22ジルコンの発射に成功、と発表した。試験は、「ヤーセン(Yasen)」級攻撃型原子力潜水艦「セベロビンス(Severodvinsk/K-560)」からロシア西部のバレンツ海(Barents Sea)で今年7月に2回行われた。1回目は浮上状態で、2回目は深度40mから、いずれも垂直に発射され正確に目標に着弾した。

3M22ジルコンは、有翼の極超音速ミサイルで固体燃料ブースターで超音速に加速され、2段目のスクラムジェット(JP-10ジェット燃料)で極超音速飛行をする。射程は、低空飛行では250-500 km、セミ弾道飛行では最大740 km。改良型燃料が実用になれば射程は1,000 kmに伸びるという。飛翔速度はマッハ8~9 (9,800~11,000 km/hr)の超高速で、現在の米国を含む西側海軍の対空装備では迎撃が難しい。

水上艦発射型3M22ジルコンは、2020年以降からキーロフ級原子力ミサイル巡洋艦、満載排水量28,000 tonの「アドミラル・ナヒモフ(Admiral Nakhimov)」、「ピョートル・ベリーキー(Pyotr Velikiy)」の[3S14]型垂直発射装置/VLS(80セル)に搭載されつつある。更にフリゲート「アドミラル・グリゴロビッチ(Admiral Grigorovich)」級および「アドミラル・ゴルシコフ(Admiral Gorshkov)」級などに装備される予定。

図1:(Naval News)3M22ジルコン極超音速巡航ミサイル。右の濃い部分が固体燃料ブースター、左半分が弾頭を含む2段目・スクラムジェットで極超音速飛行をする。

図2:(Wikipedia)プロジェクト885ヤーセン(Yasen)級は最新の原子力推進巡航ミサイル潜水艦で2013年から就役開始、4隻が完成、ロシア海軍は合計10隻を建造する予定。水中排水量13,800 ton、長さ130 m、水中速力28 kts、潜行深度450 m。兵装は、8基のVLSにオニクス(Oniks)対艦ミサイル32発またはカリブル(Kalibr)対艦ミサイル40発などを搭載する。また533 mm魚雷発射管10基を備える。今回発射試験をした「セベロビンスク/K560」は1号艦。太平洋艦隊には3号艦「ノボシビリスク(Novosibilisk /K-573)」が配備されている。

  • 北朝鮮、9月28日早朝に極超音速ミサイル「火星8/Hwasong 8」を発射。10月19日には潜水艦発射型弾道ミサイルを発射。

岸防衛大臣は9月28日発射の件について、新開発の極超音速ミサイル「火星8号」を北朝鮮内陸北部の慈江道前川郡舞坪量付近から日本海に向けて初めて発射した、目的はミサイルの安定性、誘導機動性、滑空飛行特性を実証するためだ、と述べた。韓国軍によると、飛行距離は200 km未満、最大高度は30 km、変則軌道で飛ぶ滑空弾頭の極超音速ミサイルと云う。滑空弾頭は通常の弾道ミサイル弾頭に比べ制御が難しい、射程の短い試験で滑空弾頭の制御技術を習得してから、将来の長射程化を目指すと見られる。射程200 kmでは日本に届かないので心配ない、しかし長射程型滑空ミサイルが実現すれば、現在海自が展開するイージス艦搭載のSM-3弾道ミサイル迎撃ミサイルでは対処不能、大気圏内迎撃には、拠点防空用のペトリオットPAC-3や艦載用のSM-6で対処することになる。

しかしPAC-3は配備数が少なく全国の重要拠点全てを防衛することは不可能、またSM-6を装備可能な海自護衛艦はわずか数隻にすぎない。速やかな対応が迫られる。

ブースターは写真から液体燃料を使うタイプと見られ、主ロケットの噴煙とは別に細い姿勢制御用ジェットが見える。今回の試験は燃料搭載量を減らして射程を短くしたようだ。

図3:(北朝鮮KCNA)北朝鮮公式メデイアが発表した9月28日早朝に発射した極超音速ミサイル「火星8号」。先端の細く尖った部分が操舵翼付き滑空弾頭、下の太い部分がブースターである。

岸防衛大臣は10月19日、北朝鮮が朝鮮半島東部日本海側の新浦付近から2発の弾道ミサイルを日本海側に発射した、と述べた。弾道ミサイル1発は高度50 kmを変則軌道で600 km 程飛翔、日本海の我国排他的経済水域(EEZ)の外に落下した。このミサイルは潜水艦発射型ミサイル「SLBM=Sea Launch Ballistic Missile」である。韓国軍は1発の発射を確認と報じ、日本防衛省の2発と食い違っているが、北朝鮮が公表した潜水艦の写真から見ると1発であった可能性が高い。この潜水艦はSLBM発射試験用潜水艦で、「8.24英雄艦」と呼ばれ発射筒は1本しかない。旧ソ連のロメオ級潜水艦を改造、艦橋から船体までを貫通する発射筒を備えている。

基本のロメオ級潜水艦は通常動力型で水中排水量1,800 ton、第二次大戦後半レベルの旧式潜水艦である。1967年から中国で多数生産され、北朝鮮は1973年に2隻を入手、国産化、20隻ほどを保有している模様。

図4:(北朝鮮KCNA) 新型SLBMの発射試験をした潜水艦「8.24英雄艦」、艦橋頂部のSLBM発射筒の蓋が開いているのが見える。

図5:(北朝鮮労働新聞)10月20日、前日19日に発射した新型SLBMの写真を公開した。ロシア製イスカンデル短距離弾道ミサイルに似た形状で。これを基に開発したミサイルと思われる。イスカンデルは、固体燃料ブースターで上昇、分離後弾頭は超音速で比較的低い高度で飛翔、慣性誘導+E/O誘導で目標に向かいターミナル段階では回避運動をしながら着弾する。尾部には通常の操舵翼を備える。

  •  中国空軍機、10月1日から5日にかけて合計150機が台湾防空識別圏に進入。

台湾の防空識別圏(ADIZ)に進入する中国軍機が10月1日以来急増、5日間に述べ150機に達した。台湾国防省によると、台湾南西部の南シナ海に広がる防空識別圏に4日には昼夜に渡って戦闘機やH-6K爆撃機など56機が侵入した。これは昨年9月に同国防省が発表を始めて以来、1日あたりで最大の機数になる。5日は1機のみ。

これを含め2021年は600機以上の中国軍機の侵犯が確認され、2020年の380機を大きく上回っている。

台湾国防省によると、4日間に防空識別圏に進入した機種と延べ機数は次の通り。

・J-16戦闘機 :100機

・スーホイ30戦闘機 :20機

・H-16K 戦略爆撃機 :16機

・Y-8 対潜哨戒機 :7機

・空警500早期警戒管制機 :6機

中国軍機の飛行ルートは、大部分が台湾本島南西の南シナ海上の台湾防空識別圏内で、台湾と台湾が実効支配する東沙諸島との間の空域を往復するルートだった。しかし1日夜間には、J-16戦闘機またはスーホイ30戦闘機とH-16K爆撃機の編隊が、台湾南西沖からバシー海峡を通過、台湾南東部沖に回り込む飛行を行った。

台湾の蘇貞昌行政院長(首相)は、5日「中国は地域の平和を侵害し、台湾を圧迫し続けている。我国は、一層軍事力を強化・団結し、簡単には侵略させないようにしなくてはならぬ」と述べた。

中国は10月1日が建国記念日、共産党系の環球時報は「中国軍は連休を返上して4日連続で台湾をパトロールした」、「これはアメリカとの関係を深める台湾の蔡英文政権への警告だ」と述べた。そして「この演習は、主権の主張だけでなく、台湾攻撃への準備でもある」と牽制した。

米国政府のサキ報道官は「中国による台湾周辺での挑発行動は、地域の平和と安定を脅かすもので懸念している。中国の台湾に対する軍事的、外交的、経済的な圧力をやめるよう求める」と述べた。

岸防衛大臣は10月5日本件に関し「台湾をめぐる問題は、当事者間の直接対話で平和的に解決されることを期待する、というのが我国の立場。中國・台湾の軍事バランスが中国側有利に変化し、その差が拡大しつつあることに注目している」と述べるにとどめ、非難の言葉はない。

日本のエネルギーの90 %以上は台湾周辺の海域を通って輸入されている。この事はとりも直さず台湾の安定と我国の生存は一体不可分の関係にあることを示している。それにも関わらず岸防衛相の発言は、対中配慮を慮った及び腰のコメント。台湾の危機は我国の非常事態だ、と何故言わないのか。

図6:(台湾国防省)J-16戦闘機。スーホイ[Su-30K2]を原型に瀋陽飛行機で国産化した機体、150機ほど生産中。東部戦区空軍では福建省福州基地第40航空旅団、上海基地第7航空旅団に配備。「J-16」は、推力20,000 lbsターボファン2基を搭載、最大離陸重量35 ton、最大速度マッハ2.0、空対空ミサイル、対艦ミサイル、GPS誘導爆弾を携行する。

図7:(China Military) スーホイ Su-30戦闘機は複座の長距離戦闘機。2001~2003年の間に中国空軍がロシアから購入した[Su-30MKK] 型機は76機。これとは別に中国海軍は[Su-30 MK2] 24機を導入。ロシア空軍・海軍はSu-30SM系列機を合計160機ほど配備している。最大離陸重量34.5 ton、搭載するミサイル・爆弾等は8 ton、航続距離3,000 km。インド空軍はSu-30MK1型を主にライセンス生産中で現在263機を運用している。

図8:(China Military) H-6K戦略爆撃機。「H-6」初期型はロシアTu-16バジャー爆撃機を西安航空機で国産化し1968年に初飛行した。順次改良され現在の「H-6K」は巡航ミサイル搭載型で2007年に初飛行、射程最大2,000 kmの巡航ミサイルCJ-10Kを6発搭載する。最大離陸重量76 ton、爆弾/ミサイルの搭載量9 ton、航続距離6,000 km.。改良した洋上対艦攻撃用のH-6Jを含み配備機数は50機以上。

図9:(China Military) Y-8Q対潜哨戒機。1960年代ウクライナのアントノフが製作した4発ターボプロップ輸送機An-12Bを購入、国産化し1981年から量産化したY-8輸送機が基本である。これを改良し2017年から配備が始まった対潜哨戒機が[Y-8Q]、5,100 hpターボプロップを4基搭載、航続距離5,000 km以上、機首下部に洋上捜索レーダー、胴体下部に光学・赤外線探査ターレット、尾部に対潜用MAD/磁気探知装置を装備。P-3Cに近い性能を持つ。

図10:(China Military) 空警500 /KJ-500早期警戒管制機 (AEW&C)。前図の「Y-8」の後継として陜西飛行機工業が開発した20 tonの輸送能力を持つ「Y-9」輸送機が母体。グラスコクピット、FW6JCターボプロップ/ 5,100 EHPを4基搭載、最大離陸重量77 ton、航続距離5,700 km。天井の固定円盤型レドームにはAESAレーダーを3基配置、470 km遠方の目標多数(~100個)を同時追跡できる。2018年10月までに15機が完成している。

図11:台湾国防省が示す「台湾の防空識別圏(ADIZ=Air Defense Identification Zone)」は、「青線で囲む中国本土南東部を含む区域」としている。我国防衛白書では青点線から下の部分を「台湾ADOZ」と記載している(実効支配する空域の意味からこちらが妥当)。10月1~5日の場合は台湾と台湾が支配する東沙諸島(Pratas Islands)の間を横断する形で延べ150機が飛行したので大きな問題となった。

ADIZとは外国機の領空侵犯を防ぐため、各國が自国領空の外側に設定する空域である。領空とは異なり迎撃・攻撃はできない。国籍や飛行目的不明の航空機がADIZに進入した場合は戦闘機の緊急発進で領空侵犯を防ぐ。

  • 中国・ロシア両海軍の10隻からなる艦隊が10月18日-23日にかけて日本の本州を一周。

岸防衛大臣は10月26日次のように述べた。

「10月18日から23日に掛けて中国・ロシア海軍艦艇10隻が我国を周回する形で、日本海から北海道-本州を隔てる津軽海峡、太平洋上の伊豆諸島周辺海域、九州南端の大隅海峡を通過し、東シナ海に戻った。その後ロシア艦隊は別れて対馬海峡を北上し日本海に立ち去った。途中伊豆諸島付近および東シナ海では両海軍の艦載ヘリが離着艦を行なった。我国周辺でのこのような大規模かつ長期間の活動は初めてで、かつ極めて異例、我国に対する示威活動だ。我国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増していることを示している。防衛省としては防衛力強化を一段と進めていく。」

現行規定では、津軽海峡、大隅海峡とも「公海」とされているため、中国艦艇、ロシア艦艇が無通告で航行しても文句は言えない。

中国海軍北部戦区副司令官柏耀平少将は「今回の合同訓練と航行は、中露の戦略的協力を発展させ、共同作戦能力一層高めた」と評価した。

また10月25日付け共産党系「環球時報」は、10隻の艦隊は10月14日〜17日にピョートル大帝湾付近で合同演習を行った後、津軽海峡から日本本州一周の航海を行なった、と述べた。そして今回の行動は、中露両国の戦略的パートナーシップのさらなる発展、および地域の安定化に寄与したものだ。航行は、国際法の規定を遵守しており領海侵入はしていない、完全に合法的であり、日本から文句を言われる筋合いはない、と強調した。そして日本の岸田政権発足後、中国にあれこれ口出しする行為や、ロシアに対し北方領土問題で強硬な姿勢を打ち出していることに対する警告である、と述べている。

ロシア国防省は「合同パトロールは、地域の平和と安定を維持し、両国の海洋経済活動を守ることが目的だ」と語っている。

つまり中国、ロシア両国は、艦隊が本州-北海道間の狭い津軽海峡(幅19km)、および九州鹿児島県大隅半島と口永良部島および種子島の間の大隅海峡(平均幅40 km・最も狭い場所は27 km)を通過したことを「正当な行為」だと主張している。

しかし中国は一方で最も狭い場所で幅160 kmもある台湾海峡を米国と同盟国の艦艇が通過するのを毎回「大問題だ、海峡の平和と安定を危機に晒す行動だ」と強硬に反対している。

中国の主張は、国際規約の都合の良い部分だけを切り取り津軽・大隅両海峡の通過は規約上問題なく合法的、一方で台湾海峡の通過は中国の核心的利益を犯すので断固反対、と公言している。まさに二律背反、偽善、「矛盾」そのものである。

我国は中国の意向に配慮することなく、台湾海峡で遂行される「航行の自由作戦」に積極的に参加、海自護衛艦を頻繁に派遣すべきである。

図12:(統合幕僚監部) ロシア太平洋艦隊の5隻、中国海軍の5隻、合計10隻の艦隊は、日本海で演習した後、合同パトロールと称して10月18日に津軽海峡/幅19 kmを通過、本州東沖を南下、伊豆諸島の須美寿島と鳥島の間を横切り23日には本州南岸沖太平洋から鹿児島県南端の大隅海峡/幅40 kmを通過、東シナ海に入った。ここでロシア艦隊は別れ、対馬海峡を経て日本海に向かった。

津軽海峡、大隅海峡などの航行に関連した規定は二つ存在する;―

  • 日本政府が設定した略称「領海法」(1997年発効):ここで「日本の領海幅は12海里とするが、宗谷海峡、津軽海峡(幅11海里/19 km)、対馬西水道、対馬東水道、大隅海峡(幅22海里/40 km)、の5箇所については領海幅を3海里に制限し、海峡の中央部は公海とする」と規定している。

これで、核ミサイルを搭載した米国潜水艦が潜航状態で海峡を自由に通過出来るようになり「非核3原則」に抵触しなくなった。35年前の中露海軍の弱々しかった時代ではこの制度で問題は生じなかった。しかし今ではロシア太平洋艦隊、中国海軍は共に核ミサイル搭載の大型攻撃原潜を配備するなど格段に増強されており、中露両海軍艦艇の海峡自由航行権は我国安全保障上の大きな脅威になっている。「領海法」は米国の圧力で日本政府が案出した法律であり、自主防衛が求められる今日では意味をなさず、直ちに廃止すべきである。

  • 「国際海洋法条約 (UNCLOS)」(1994年発効、日本は1996年批准):この条約には「国際海峡」の規定がある。「国際海峡」とは、国際航行に使われている海峡で公海間(例えば日本海―太平洋)を結ぶ海峡の中央部分を云う。「津軽海峡」はこれに該当するので、航行する船舶、艦艇には「通過通航権」が認められる。すなわち、日本が「領海法」を廃止しても中国、ロシアの艦艇通過は自由ということだ。

統合幕僚監部の発表;―

「中国・ロシア両海軍の10隻からなる艦隊が10月18日-23日にかけて日本の本州を一周」に関し「統合幕僚監部」が公表した海自・空自撮影の中露海軍艦艇と搭載ヘリは以下の通り;―

  • 中国海軍:レンハイ級ミサイル駆逐艦、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦、ジャンカイII級フリゲート(2隻)、フチ級補給艦、の5隻
  • ロシア海軍:ウダロイI級駆逐艦(2隻)、ステレグシチー級フリゲート(2隻)、マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦の5隻

図13:(統合幕僚監部)055型「南昌級駆逐艦」、写真「南昌・101」は2020年就役。前級の「052D型昆明級」を近代化した最新鋭艦。満載排水量13,000 ton、同型艦は3隻が完成、3隻が建造中、追加2隻を予定。兵装は、112セルのミサイル垂直発射装置(VLS)が中心、YJ-18対艦ミサイル、CJ-10対地巡航ミサイルを発射できる。70口径130 mm単装砲を装備。艦尾にはヘリ2機搭載格納庫がある。

図14:(統合幕僚監部)「旅洋III級 / 052D型 昆明級」駆逐艦で、中国版イージス艦である。同型艦10隻を配備、追加7隻を艤装中。写真「昆明/172」は2012年就役、南海艦隊に所属。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイルを装備。

図15:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、写真は「浜州 (binzhou) /515」で2016年就役、東海艦隊所属。満載排水量4,500 ton、全長137 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルは艦中央にYJ-83型を4連装発射機2基に搭載。[045A]フリゲートは30隻が就役済み。

図16:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、写真は「柳州(Liuzhou) /573」。

図17:(統合幕僚監部)福地級補給艦、903型総合補給艦とも言う。本級には903型/20,500 tonと903A型/23,000 tonがある。全長178.5 m、速力20 kts、物資や燃料を11,000 ton搭載。903型は2005年に2隻が就役、以後大型の903A型が2019年までに7隻が完成している。写真「902」は艦名不詳。

図18:(統合幕僚監部)大型対潜艦・ウダロイ級駆逐艦、満載排水量7,500 ton、全長163 m、速度35 kt、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年に作られ8隻が就役中で太平洋艦隊には4隻を配備。

図19:(統合幕僚監部)

図20:(統合幕僚監部)複合測量艦「マルシャル・クルイロフ」(331)は、ミサイル追跡艦で「ネデリン」級2番艦で太平洋艦隊に所属。満載排水量24,000 ton、2015年に近代化改修を終え、「ネデリン」が退役したのでロシア海軍唯一のミサイル追跡艦になっている。

図21:(統合幕僚監部)最新鋭のステレグシチー級フリゲート「グロムキー(335) 」2018年就役、太平洋艦隊に配属。満載排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kt、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マストは閉囲型で各種レーダーを内臓。兵装は、対空用GSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化して12セルのVLS(垂直発射装置)に装備、対艦用3M24ウラン・ミサイル4連装発射筒2基に搭載。同型は6隻で追加2隻が艤装中。

図22:(統合幕僚監部)写真は最新鋭ステレグシチー級フリゲート「アルダー・ツイデンジャポフ(339)」2020年就役、太平洋艦隊に所属。

図23:(統合幕僚監部)次図「カモフKa-27PL」の輸出型が「Ka-28」で中国海軍が採用中。

図24:(統合幕僚監部)カモフ設計局開発のKa-27は1981年からロシア海軍に「Ka-27PL」対潜ヘリとして採用され現在も主力ヘリコプターとして運用中。二重反転ローター形式、双発エンジン、ホバリング時の安定性が良好、搭載重量は5 tonになる。

図25:(統合幕僚監部)我国本州を一周した中国軍艦艇5隻(右)とロシア海軍艦艇5隻、の艦隊。その中間を飛ぶヘリコプターは中国海軍ミサイル駆逐艦「南昌」の搭載ヘリ「Z-9」。

海上幕僚監部

一部を省略し簡単に述べる。

  • 10月1日発表  沖縄南方で米空母「カール・ビンソン」他3隻と海自護衛艦「ちょうかい」など4隻が防空戦、対潜戦などの訓練を実施。
  • 10月4日発表  沖縄南西海空域で米空母「カール・ビンソン」、「ロナルド・レーガン」を含む6隻、英空母「クイーン・エリザベス」を含む5隻、それにオランダ海軍、カナダ海軍の艦艇と、海自ヘリ空母「いせ」など3隻で、防空戦、対潜戦などの訓練をを実施。

図26:(海上幕僚監部)10月2日、3日の両日、沖縄南西海域で実施した日米英蘭加5ヶ国海軍の合同演習。写真は「カール・ビンソン」、「いせ」、「クイーン・エリザベス」、「ロナルド・レーガン」の4空母を先頭に隊列を組み航行する艦隊。

  • 10月5日発表  南シナ海で10月4日-9日の5日間、海自護衛艦「しらぬい」は、米ミサイル駆逐艦「ザ・サリバンズ」、英空母「クイーン・エリザベス」他4隻、オランダ海軍、カナダ海軍、ニュー時ランド海軍、の5カ国海軍合同演習に参加した。
  • 10月5日発表  インド西方海域・アラビア海で10月6日-8日の間、海自ヘリ空母「かが」他1隻はインド海軍艦艇2隻および同空軍機複数と対空射撃訓練などを実施した。
  • 10月11日発表  8月から実施中の日米印豪4カ国の共同訓練「マラバール2021」の「フェーズ2」は10月11日-14日の間ベンガル湾で実施した。参加部隊は、海自ヘリ空母「かが」他の計2隻、米海軍空母「カール・ビンソン」を含む3隻とP-8A哨戒機、インド海軍からは潜水艦を含む3隻とP-8I哨戒機、豪海軍からは2隻。訓練は対潜戦、防空戦、補給訓練など。
  • 10月15日発表  ベンガル湾において10月15日-18日の間、日米英豪共同訓練(Maritime Partnership Exercise)を実施した。参加は、海自ヘリ空母「かが」他1隻、米空母「カール・ビンソン」他4隻とP-8A哨戒機、英空母「クイーン・エリザベス」他4隻、豪海軍から1隻で、防空戦、対水上実弾射撃訓練、高度な通信訓練を行なった。

本件に関してU.S .NAVAL TODAY (10月20日)は、「Maritime Partnership Exercise」・「MPX-2021」として日米英豪4カ国海軍が高度な訓練に取組み、「自由で開かれたインド太平洋」の維持のための成果を上げたと報じた。

図27:(U.S. NAVY TODAY) 10月15日-18日に実施された日米英豪4カ国海軍共同訓練(MPX 2021) の様子。飛行するのはノースロップ・グラマン製「E-2D アドバンスド・ホークアイ」早期警戒機を中心に、左右に「F/A-18E/Fスーパー・ホーネット」、その外側に「F-35BまたはC」。海上の空母群は、左から「クイーン・エリザベス」、「カール・ビンソン」、「かが」の順。

  • 10月1E-2D7日発表  10月12-16日の間四国および関東地方の南方海域で米空母「ロナルド・レーガン」他1隻と海自ミサイル護衛艦「こんごう」は各種戦術訓練を実施した。
  • 10月24日発表  10月19日-23日の間、南シナ海で海自「あきずき」と米艦「ミリウス」は各種戦術訓練を実施した。
  • 10月26日発表  10月25日沖縄東方の太平洋上で海自護衛艦「あきずき」、米駆逐艦、豪駆逐艦、各1隻が合同訓練を実施した。
  • 10月29日発表  10月28日、南シナ海で海自護衛艦「ゆうだち」は米海軍沿海域戦闘艦「ジャクソン」と戦術訓練を実施した。

図28:(海上幕僚監部)海自護衛艦「ゆうだち」と米海軍沿海域戦闘艦「ジャクソン」。「ゆうだちDD-103」は「むらさめ」型の3番艦、大湊第3護衛隊群第7護衛隊に所属、就役は1999年。満載排水量6,100 ton、速力30 kts、62口径76 mm単装砲1門、4連装対艦誘導弾発射筒を2基、Mk 41 VLS 16セルと短SAM用Mk 48 VLS 16セルを装備する。沿海域戦闘艦「ジャクソン・LCS 6」は2015年就役、満載排水量3,100 ton、速力40 kts。沿海水域で活動する目的で作られた3胴式の小型艦「インデペンデンス」級12隻中の3番艦。兵装はMk 110 57 mm速射砲、SeaRAM 対空ミサイル11連装機、MH-60R/Sヘリコプター2機を搭載する。

―以上―