2022-10-04(令和4年) 松尾芳郎
2022-10-05 改定(誤記の訂正と”追記”の追加)
令和4年9月、我国周辺における中露両軍、北朝鮮の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し、公的部門等から多くの発表があった。その内容を紹介する。注目すべきニュースは次の通り。
- 8月28日~9月3日の間、陸自・米陸軍は九州各地、奄美大島で共同演習「オリエント・シールド22」を実施、
- 9月3日からほぼ1ヶ月間、中露海軍が日本周辺の海上で合同演習を実施
- 9月9日、空自、米空軍、米海兵隊は日本海上空で共同訓練を実施
- 9月13~15日、空自、米空軍は那覇南方の太平洋上空で大規模演習を実施
- 9月25日、28日および29日、北朝鮮は弾道ミサイル計5発を日本海に向け発射、我が国EEZ外に着弾
- 9月28日、空自は来訪したドイツ空軍と共同訓練を実施
- 10月2~14日の間、陸自・米海兵隊は北海道で実動訓練「レゾリュート・ドラゴン22」を実地する予定
(The military threats around Japan by Russo-Chinese Forces and North Korea are active as usual. Following seven were main issues in September.
- The Japan and US Army bilateral training exercise, Orient Shield 22, placed Kyuushu and Amami, in August 28 thru September 3.
- Russo-Chinese Naval fleet kick off large-scaled war game in Western Pacific placed Sept.3rd to the end of the Month.
- Japan, USAF & Marine Air Forces together with number of aircraft played military drill over East China Sea on September 9.
- Japan and US Air Forces together with large number of aircraft conducted war game over Philippine Sea in Sept. 13 thru 15.
- North Korea launched total of three ballistic missiles to Japan Sea, outside Japan’s EEZ at Sept 25, 28 and 29.
- German Air Force Fighter Sq. arrived Japan first time and placed military drill together with Japan’s counterpart on Sept 28.
- Japan’s Army and US Marine bilateral training exercise, Resolute Dragon 22, will kick off Hokkaido in October 2 thru 14.)
以下にそれぞれの詳細を述べる。
- 8月28日~9月3日の間、陸自・米陸軍は九州各地、奄美大島で共同演習「オリエント・シールド22」を実施、
陸自西部方面隊は米陸軍と8月27日〜9月3日まで奄美大島、建軍、福岡、霧島演習場など九州各地で共同で実動訓練「オリエント・シールド22 (Orient Shield 22)」を行い、脅威高まる中国軍の侵攻に備え共同対処能力の強化を図った。
米陸軍から「高機動ロケット砲システム (HIMARS)」2両が初めて奄美大島に展開し、陸自の「12式改地対艦誘導弾(12 SSM)」と共に対艦戦闘訓練を実施したほか、両軍の電子戦部隊も参加、島嶼作戦の連帯強化を図った。
陸自からは、西部方面総監部、第4師団、西部方面特科隊(12 SSM)、第2高射特科団 ( 03 SAM)、西部方面システム通信群、などが参加。
米陸軍からは、在日米陸軍司令部、第11空挺師団(11th Airborne Division)、第1マルチ・ドメイン・タスクフォース(1st Multi-domain Task-force)、5th Security Force Assistance Brigadeおよび付属部隊、第17砲兵旅団 (17th Field Artillery Brigade/HIMARS)、第38防空砲兵旅団 (38th Air Defense Artillery Brigade /Patriot PAC-3)、などが参加。
訓練では、島嶼作戦での陸自CDOと米陸軍MDOを踏まえた両軍の連携を向上するため、奄美大島に陸自12 SSM、米陸軍HIMARS、両軍電子戦部隊が展開、初の共同対艦戦闘訓練を実施した。また上陸部隊を迎撃するため、米陸軍は対戦車ミサイル「ジャベリン」を、陸自は「01式軽対戦車誘導弾」を使い初の実弾射撃訓練を実施した。
参加航空機は、陸自からAH-64攻撃ヘリ2機、UH-1多用途ヘリ2機、CH-47輸送ヘリ1機、米陸軍からはUH-60ブラックホーク輸送ヘリ2機が参加、ヘリボーン作戦を実施した。
図1:(陸上自衛隊)奄美大島に展開した「12 SSM (改)/12式地対艦誘導弾」、射程は200 km以上1,000 kmと言われている。奄美大島瀬戸内駐屯地に、2019年から「03式中距離地対空誘導弾・03 SAM」と一緒に配備されている。
図2:(陸上自衛隊)奄美大島にC-130輸送機で空輸展開した米第17砲兵旅団の「HIMARS」高機動ロケット砲システム。
図3:(陸上自衛隊)8月28日大谷野原演習場で陸自「01式軽対戦車誘導弾」および米陸軍対戦車ミサイル「FGM-148ジャベリン(Javelin)」の実弾射撃訓練が行われた。写真「ジャベリン」は装甲車両以外にヘリコプターも攻撃可能。完全な「打ちっ放し」機能を備え、射程は2 km、ウクライナ軍が使用・戦果を挙げている。
「01式」は、射程1 km、「打ちっ放し」機能はあるが、システム起動に熱感知が必要で、敵戦車がエンジンを停止している場合は射撃ができない。
図4:(陸上幕僚監部)陸上幕僚長吉田圭秀陸将と米太平洋陸軍司令官チャールス・フリン(Charles A. Flynn) 大将は9月8日奄美駐屯地を視察。視察後の記者会見でフリン大将は「中国の動向を懸念している、今回は非常に複雑な作戦を実施した。訓練を通じ危機に対応するのが我々の責務だ。HIMARS 2両は当分奄美にに残したい」と語った。日米両軍の司令官が陸自「12 SSM」および米陸軍「HIMARS」を背景に挨拶する様子。
- 9月3日からほぼ1ヶ月間、中露海軍は太平洋で合同演習を実施
中国海軍は最新鋭のレンハイ級ミサイル駆逐艦を先頭に、またロシア太平洋艦隊は新らしいステレグシチー級フリゲート3隻を投入して、日本周辺海域で演習を実施した。演習は、北海道周辺から東京都伊豆諸島を横切り、鹿児島県大隅海峡を通過し(いずれも接続水域を航行)、我が国に威圧を加える形で行われた。我國の対応は、海自艦艇・航空機が追尾・監視を続けたが、外交的には外務省がいつもの通り遺憾の意を表明・抗議しただけ。すっかり舐められている。以下に時系列に沿って簡単に中露海軍の行動を述べる。
9月3日午後:北海道神威岬西190 kmの海域に現れたロシア海軍フリゲート3隻と中国海軍ミサイル駆逐艦1隻を含む3隻は、礼文島沖で実弾射撃演習をしてから宗谷海峡を抜けオホーツク海に入った。
9月8日 :露海軍駆逐艦1隻が同じ航路を経由、9月3日の3隻と合流した。
9月11日:露海軍ミサイル護衛哨戒艇2隻が宗谷海峡経由オホーツク海に入った。
9月12日:中国海軍ミサイル駆逐艦2隻が奄美大島と横当島の間を通り、東シナ海から太平洋に向け航行した。
9月15日ロイター(Reuters):ロシア国防省は15日、ロシアと中国の両海軍は太平洋上で合同パトロールを実施中と発表した。この中で戦術的な合同演習や実弾射撃訓練、ヘリコプター離発着訓練も実施している。そしてこの演習は両国海軍の協力強化、地域の平和と安定の維持、沿岸の監視、漁業資源の保護が目的、だと主張している。
9月14日:中国海軍ミサイル駆逐艦2隻が太平洋から沖縄本島・宮古島の間の海峡を通過東シナ海に入った。
9月16日:露海軍ミサイル護衛哨戒艇4隻がオホーツク海から宗谷海峡を抜け日本海に入った。
9月23日:中国海軍ミサイル駆逐艦1隻を含む3隻が沖縄本島と宮古島間の海峡を通り、東シナ海から太平洋に進出した。
9月23日:中国海軍情報収集艦1隻が対馬海峡を通り、日本海に入った。
9月27日:中国海軍情報収集艦1隻が太平洋から沖縄本島と宮古島間の海峡を抜け東シナ海に入った。
9月27日:9月26日深夜、中国海軍ミサイル駆逐艦1隻を含む3隻が伊豆諸島須美寿島と鳥島の間を通過、西に向けて航行、紀伊半島・潮岬沖300 kmの海域を西進した。また27日未明、露海軍駆逐艦1隻を含む4隻の艦隊が千葉県犬吠埼の東160 kmを南下、11時ごろには東京都御蔵島と八丈島の間の接続水域を通過、沖縄本島方面に向かった。
9月29日:27日室戸岬南280 kmで中露海軍艦艇7隻が合流、西に向かい、28日〜29日に鹿児島県大隅海峡を通過、編隊を組んで航行、東シナ海に入った。
図5:(統合幕僚監部)統合幕僚監部発表の図に9月29日の情報を追加した図。28日大隅半島を通過した中露艦艇7隻は編隊航行したことが確認されている。
以下に中露合同演習に参加した主要な艦艇を掲載する。
図6:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦。「055型・南昌級駆逐艦」は満載排水量13,000 tonの大型、NATOはミサイル巡洋艦と呼ぶ。垂直ミサイル発射機・VLSを2基/合計112セルに対艦ミサイル「YJ-21」、対空ミサイルを搭載。対艦ミサイル「YJ-21」は射程1,000~1500 kmで空母打撃群攻撃や対地攻撃が目的、戦略爆撃機「H-6N」にも搭載が可能。写真は1番艦「南昌・101」。同級は7隻が配備中で、さらに少なくとも3隻が建造中だ。
図7:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、満載排水量4,000 ton、全長134 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルは艦中央にYJ-83型を4連装発射機2基に搭載。本型は外洋艦隊用で防空能力を強化している。同型艦30隻が就役済み。海自フリゲートFFM「もがみ」級よりやや小型。
図8:(統合幕僚監部)福地級補給艦は903型総合補給艦。本級には903型/20,500 tonと903A型/23,000 tonがある。全長178.5 m、速力20 kts、物資や燃料を11,000 ton搭載。903型は2005年に2隻が就役、以後大型の903A型が7隻完成済み。写真「902」は艦名不詳。
図9:(統合幕僚監部)大型対潜艦・ウダロイ級駆逐艦、満載排水量7,500 ton、全長163 m、速度35 kts、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年建造で8隻が就役中、太平洋艦隊に4隻配備。
図10:(統合幕僚監部)満載排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kts、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マストは閉囲型で各種レーダーを内臓。兵装は、対空用GSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化し12セルのVLS(垂直発射装置)に装備、対艦用3M24ウラン・ミサイル4連装発射筒2基を搭載。同型は6隻で追加2隻が艤装中。
図11:(統合幕僚監部)前図参照。
図12:(統合幕僚監部)前図参照。
- 9月9日、空自、米空軍、米海兵隊は日本海上空で共同訓練を実施
9月9日航空自衛隊は、青森県西の日本海上空で米空軍及び海兵隊航空軍と各種戦術訓練を実施した。参加部隊は;―
空自:第2航空団(千歳基地)F-15戦闘機4機及び北部航空警戒管制団(三沢基地)
米空軍:第35戦闘航空団(三沢基地)F16戦闘機15機及び第18航空団(嘉手納基地)KC-135空中給油機2機
米海兵隊航空軍(岩国基地)F-35B短距離離陸垂直着陸(STOVL)戦闘機4機
北部航空警戒管制団(三沢基地)は、北海道から東北北部の領空や周辺空域を9箇所に配置したレーダーで監視、領空侵犯の恐れのある中露軍機を発見した場合は、友軍戦闘航空団に緊急連絡し、緊急発進した友軍要撃機の誘導を行うのが任務。次図に同管制団の防空監視所の配置を示す。例示すると;―
稚内第18警戒隊・ J/FPS-7Bレーダー
当別第45警戒隊・ J/FPS-3改レーダー
加茂第33警戒隊・ J/FPS-3改レーダー
大湊第42警戒隊・ J/FPS-5Bレーダー
(注)各レーダーの概要;―
「J/FPS-3」は1992年から1999年の間7基を取得・各地に配備中、三菱電機製、2008年に改修実施、ミサイル防衛に対処可能となる。
「J/FPS-5」は2008年から運用開始、三菱電機製、高性能だが工事費を含め180億円かかるので4基で取得を終了。
「J/FPS-7」は2015年から配備開始、日本電気製、価格は50億円程度、現在6箇所に配備されている。同レーダーは近距離3面、遠距離用1面のアンテナを別々に設置する方式で、素子は窒化ガリウム製。
図13:(航空自衛隊)航空自衛隊のレーダーサイト配置図。図中の数字は警戒隊の番号を示す。中部、西部、南西の各航空警戒管制団/隊についての説明は省略。
図13A:「J/FPS-5」は2008年から運用開始中、三菱電機製、高さ34 mの六角柱の建屋の3面にレーダー面がある。中央面は直径18mの覆いの下にL・Sバンド・レーダーがあり、航空機と弾道ミサイルを探知、他の2面には12 mの覆いの下にLバンド・レーダーがあり航空機の探査をする。建屋全体が回転するので、主たる警戒方向にL・Sバンド・レーダー面を向ける。下甑島(鹿児島県)、佐渡(佐渡島)、大湊(青森県)、与座岳(沖縄本島)の4箇所に配備されている。
- 9月13~15日、空自、米空軍は那覇南方の太平洋上空で大規模演習を実施
9月13日及び15日、沖縄本島南方の太平洋上の空域で、航空自衛隊は米空軍とこれまでで最大となる大規模な戦術訓練を実施した。米軍から参加した第18航空団はこの演習を「Exercise Southern Beach」と呼んでいる。
参加部隊は;―
空自:第9航空団(那覇基地)F-15J戦闘機延べ23機、警戒航空団(那覇基地)E-2C早期警戒管制機1機、第1輸送航空隊(小牧基地)C-130H輸送機1機、航空救難団(那覇基地)U-125A救難機1機、及びUH-60J輸送ヘリコプター1機、それに南西航空警戒管制団のレーダー群
米空軍:第18航空団/18th Wing(嘉手納基地)F-15C戦闘機16機(第44戦闘機中隊所属)、及びKC-135空中給油機(第909空中給油中隊所属)2機
米第18航空団(嘉手納基地)は太平洋空軍第5空軍の傘下にあり、米国と日本及び地域を共通の敵から守るのが任務。配下に第44及び第67戦闘機中隊(いずれもF-15C/D戦闘機)、第909空中給油中隊(KC-135R)空中給油機、第31及び第33救難中隊(パラシュートとHH-60G救難ヘリ)、その他で構成されている。
図14:(US Air Force, Sr Airman Stephen Pulter)那覇基地を離陸する空自F-15J戦闘機
図15:(US Air Force, Sr Airman Stephen Pulter)那覇基地で日米合同演習「Exercise Southern Beach」に参加するため離陸準備中の空自F-15J戦闘機の一団。
図16:(US Air Force, by Sr Airman Jessi Roth)米第44戦闘機中隊所属のF-15C戦闘機、太平洋上で空中給油を受け、給油機から離脱する様子。合同演習「Exercise Southern Beach」の一コマ。
- 9月25日および29日、北朝鮮は弾道ミサイル3発を日本海に向け発射、いずれも日本海に着弾
9月25日午前7時前、平壌北部の発射場から短距離弾道ミサイル1発を東に向け発射した。ミサイルはKN-23型と思われ、最高高度約50 kmで変則軌道で650 km飛翔し、日本海の我国排他的経済水域(EEZ)の外側に着弾した。発射地点は平安北道泰川、ここには2000 m級の滑走路があるのでTEL(移動発射機)から発射したと推定される。
短距離弾道ミサイルKN-23は、ロシア製イスカンデル・ミサイルを国産化したもので、通常弾道飛行の場合は最大射程はもう少し伸びると思われる。速度はマッハ5程度、今回の射程650 kmの場合は米空母が寄港した韓国釜山までが射程に入る。
9月28日および29日午後8時ごろ、平壌北部の順安付近から短距離弾道ミサイル2発を東に向け発射した。いずれも短距離弾道ミサイルで最高高度約50 kmで300 kmほど飛翔して日本海、我が国EEZ外に着弾した。25日発射のものと同じものと思われる。
これは9月26日から同30日の間、日本海で行われた日米韓3ヶ国海軍の合同演習を牽制するのが目的である。
この米韓合同演習には、米空母「ロナルド・レーガン(Ronald Reagan /CVN-76)」、ミサイル巡洋艦「チャンセラーズビル( USS Chancellorsville /CG 62)」、ミサイル駆逐艦「ベンフォールド(USS Benfold /DDG 52)」、が参加、韓国海軍からイージス駆逐艦「ムンム・デワン(DDH 976)」などが参加した。
続いて30日には、米海軍潜水艦および海自護衛艦「あさひ (DD 119)」が参加して3カ国共同で対潜水艦訓練を実施した。
図17:(防衛省)9月25日朝、28日および29日夜、北朝鮮平壌北部から発射された短距離弾道ミサイルKN-23の飛翔経路。原図を、爾後の発表内容を入れ修正した図。25日発射(1発)の射程650 kmは韓国南部までが射程に入る。28日(2発)および29日発射(2発)は300 km飛び着弾した。
- 9月28日、空自は来訪したドイツ空軍と共同訓練を実施
ドイツ空軍は8月16日、インドー太平洋へ派遣するユーロファイター戦闘機を含む13機の編隊がシンガポールに到着した、と発表した。
この演習は「ラピッド・パシフィック2022 (Rapid Pacific 2022)」と呼ぶ展開訓練で、24時間でドイツ本国からアジア太平洋地域に移動する演習。この派遣部隊はユーロファイター戦闘機6機、A400M輸送機4機、A330 MRTT空中給油兼輸送機3機の合計13機、兵員250名で構成されている。内ユーロファイター1機には特別塗装が施されている。
ドイツ南部バイエルン州ノイブルグ・アン・デア・ドナウ空軍基地からシンガポールまでは約1万kmあるが、基地を離陸した後は、途中アラブ首長国連邦(UAE)に立ち寄っただけで、あとはA330 MRTT給油機から空中給油を受けながらシンガポールまで7時間かけて飛行した。
今回の派遣は、空軍にとって初の東アジア展開で、最初にオーストラリアで開催される多国籍海軍演習「カカドウ2022」および多国籍空軍演習「ピッチ・ブラック2022」に参加した。
9月28日にはユーロファイター戦闘機3機、A330MRTT空中給油・輸送機1機、A400M輸送機1機、A321政府専用機1機を含む6機が午後4時半に空自の百里基地に飛来。
着陸に先立って、空自F-2戦闘機3機とドイツ空軍ユーロファイター戦闘機3機は富士山上空で編隊飛行を含む共同訓練を実施した。F-2戦闘機1機には空自航空幕僚長井筒俊司空将、ユーロファイター戦闘機1機にはドイツ空軍総監インゴ・ゲルハルツ中将がそれぞれ乗務して編隊飛行訓練を行った。空自と共同訓練を行なったのち、30日には韓国を訪問する。
遠距離を航行する海軍艦艇の比べ、戦闘機を遠く離れた地域に派遣するのは高い運用技術が必要だ。今回のドイツ空軍の飛来は東アジア有事の際に艦艇より早く着ける空軍機の展開能力を確認するための訓練で、対中国を念頭に置いた戦略的意味合いが濃い(慶大鶴岡路人准教授談)。
図18:(ドイツ空軍)バイエルン州第74戦術航空団所属のドイツ空軍ユーロファイタータイフーン戦闘機。今回のミッションに参加した1機には、訪問国の国旗をアレンジした特別塗装が施されている。
図19:(航空幕僚監部)9月28日、ドイツ空軍ユーロファイタータイフーン戦闘機と空自F-2戦闘機が編隊で富士山上空で共同訓練を実施した。
図20:(航空幕僚監部)28日夕刻、百里基地で、共同訓練を終えた井筒航空幕僚長(左)とドイツ空軍総監ゲルハルツ中将(右)。背景はドイツ空軍ユーロファイター戦闘機。
- 10月1~14日の間、陸自・米海兵隊は北海道で実動訓練「レゾリュート・ドラゴン22」を実地予定
陸上自衛隊と米海兵隊は10月始めの2週間、これまでで最大規模の実動演習「レゾリュート・kドラゴン22」(Resolute Dragon 22)を北海道の演習場で実施する。
演習場は;―
上富良野演習場、然別演習場、矢臼別演習場、静内対空射撃場、丘珠駐屯地を含む札幌飛行場、帯広駐屯地を含む十勝飛行場、及び航空自衛隊計根別場外離着陸場。
図21:(Google)[レゾリュート・ドラゴン22]演習の行われる主な演習場の場所。
参加部隊は;―
陸自:第2師団司令部、第3即応機動連隊(名寄駐屯地)、北部方面航空隊(丘珠駐屯地)、第1特科団(SSM連隊、多連装ロケット砲システム)、第1電子隊、第3施設団、
米軍:第1海兵航空団第36海兵航空群(普天間基地・MV-22Bオスプレイ、CH-53E、AH-1W、UH-1Y)、第3海兵師団第12海兵連隊(沖縄キャンプ・ハンセン)、米空軍CV-22オスプレイ(横田基地)
第1海兵航空団は、固定翼・戦闘攻撃群(F-35Bを含む)岩国基地の第12海兵航空群、と上記・普天間基地の第36海兵航空群で構成されている。
今回訓練に使用する航空機は、海兵隊からMV-22Bオスプレイ6機、CH-53E大型ヘリ4機、AH-1Z攻撃ヘリ3機、UH-1Yヘリ3機、陸自からはAH-1Sコブラ4機、UH-1J輸送ヘリ2機、が参加する。
特色は;―
島嶼防衛/奪回作戦における、陸自の領域横断作戦 (CDO)と米海兵隊の機動展開前進基地作戦 (EABO)の連携を具体化する国内最大規模の演習となる。
訓練内容は;―
米空軍C-130輸送機で高機動ロケット砲システム「HIMAES」を輸送、MV-22BオスプレイやCH-53E大型ヘリによる兵員・物資の輸送展開、攻撃ヘリによる火力支援を含む空中機動作戦を実施する。さらに攻撃ヘリによる対戦車射撃訓練、対艦戦闘訓練などを含む。
対艦攻撃訓練では;ー
陸自から多連装ロケット砲システム(MLRS)、海兵隊から高機動ロケット砲システム (HIMARS)の射撃訓練が行われる。
「レゾリュート・ドラゴン」演習は、昨年に続いて今年は2回目、島嶼防衛を想定して日米両軍が具体的シナリオに基ずき、連携訓練を行う演習である。航空機による長距離移動、迅速な兵力の展開、中国軍侵攻に備えた訓練である。
追記
小河正義ジャーナリスト基金第4回の募集を開始しました。今回が最後になりますので、有終の美を飾れるよう、皆様のご協力をお願いします。
連絡、お問い合わせは下記「藤井良宏」氏宛にお願いします。
- 藤井良宏氏のオフィスは9月20日から次に変わりました。
〒101-0063 東京都千代田区丸の内3-2-2丸の内二重橋ビル5階
日本外国特派員協会 気付
(一社)環境金融研究機構 藤井良広
Email green@rief-jp.org
小河氏は元日本経済新聞編集委員で、航空、宇宙、防衛、を始めとし医療、環境、デジタルなど広い分野の解説をするウエブサイト「TokyoExpress」を立ち上げた方です。趣旨に賛同し応募される方の資格は次のように致します。すなわち、小河氏サイト内容に関連する分野で幅広い取材活動をしている若手ジャーナリストで、個人またはグループで活動されている方々です。
応募の趣意書を送って頂き、選考委員会で審査、選考し、入選者を決定します。入選は2件、各30万円を贈呈します。応募締め切りは2022年10月末までです。
- 「TokyoExpress」に投稿ご希望の方
第4回ジャーナリスト基金に応募されない方でも、本ウエブサイト「TokyoExpress」に投稿される方々を歓迎します。投稿される方は原稿を1~10ページ程度にまとめて「松尾芳郎」宛にお送り下さい。メール・アドレスは 「y-matsuo79@ja2.so-net.ne.jp」です。
―以上―