2023(令和5年)-11-05 松尾芳郎
令和5年10月、我国周辺における中露両軍および北朝鮮の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。今月の注目すべきニュースは次の通り。
(Military threats from Chinese, Russian Forces and North Korea are tensed up in October. Japan and Allies conducted multiple large scale exercises for retaliation. Following were main issues.)
- 9月22日~10月6日、海自第81航空隊EP-3機は米ワシントン州海軍航空隊基地で電磁機動戦訓練を実施
- 10月2日~13日、海自護衛艦は、米比主催共同演習[Exercise SamaSama 2023]にカナダ海軍、英国海軍と共に参
- 10月4日、海自護衛艦は海保巡視船と日本海秋田沖で共同演習、続いて10月26日に北海道西方の日本海で共同訓練
- 10月6日、空自第7および第9航空団、太平洋上で米空軍機・米海兵隊戦闘機と共同訓練
- 10月8日~11日、ロシア海軍艦艇3隻、日本海から対馬海峡・東シナ海・与那国島―西表島間の海峡を通り太平洋に進出
- 9月30日~10月7日、海自護衛艦は東シナ海で米第5空母打撃群と共同訓練、9日~10日、米空母打撃群および韓国海軍駆逐艦等と3カ国共同訓練、12日~16日、米空母打撃群は釜山訪問、続いて16日~18日に米空母打撃群と共同訓練をそれぞれ実施
- 10月10日、ロシア軍情報収集機IL-20が北海道、本州日本海側沿岸を飛行
- 10月8日~21日、陸自北部方面隊・第1特科団、米ポイント・マグー射場で対艦ミサイル発射訓練を実施
- 10月13日発表、今年上半期(4月~9月)での緊急発進回数、高水準で推移
- 10月12日、米海軍哨戒機P-8Aは台湾海峡を通過、航行の自由作戦を実施
- 10月16日~18日、海自護衛艦は南シナ海で米海軍駆逐艦・沿海域戦闘艦と共同訓練
- 10月16日発表、10月29日~11月13日、陸自第15即応機動連隊等は米陸軍第17砲兵旅団等と米ヤキマ演習場で実弾射撃演習「ライジング・サンダー23」を実施
- 10月16日~17日、八重山漁港漁船「鶴丸」が尖閣諸島に出漁、これに対し中国海警局艦艇は「中国領海に侵入」と警告、退去を要求
- 10月17日、ロシア空軍Tu-95爆撃機 2機と戦闘機2機、石川県能登半島に接近、本州・北海道日本海側に沿い飛行
- 10月17日、空自第2、第6、第9航空団等は、日本海上および東シナ海上で米空軍B-52爆撃機・戦闘機等と共同訓練
- 10月19日、米空軍B-52爆撃機がルイジアナ州から19時間飛行し韓国忠清北道清州空軍基地に到着。10月22日、日米韓3ヶ国空軍、対北朝鮮抑止力強化のため朝鮮半島南方で共同訓練
- 10月23日、南シナ海で、日本・米国・オーストラリア・カナダ4カ国海軍は4カ国共同訓練「ノーブル・カリブー」を実施
- 10月24日、ロシア軍情報収集機IL-20がオホーツク海から本州三陸沖を飛行し往復
- 10月24日夜間、南シナ海で中国軍戦闘機が飛行中の米B-52爆撃機に対し距離3 mまで異常接近。米国防総省は過去2年間、東シナ海および南シナ海で中国機による米軍機に対する危険な異常接近飛行は180回以上あった、と報告(10月17日)。
- 10月26日~28日、中国海軍空母山東など5隻、バシー海峡を通過、台湾東の太平洋の石垣島南460 kmで大規模演習、同時期に中国軍機30機以上が台湾周辺で威嚇飛行
- 10月27日発表、11月10日~20日、日米4万人が参加、令和5年度自衛隊統合演習を実施
- 10月29日報道、円安で防衛費実質減少、防衛力強化に支障/産経新聞
上記22項目のうち太字で示す項目について解説する。
- 9月22日~10月6日、海自第81航空隊EP-3機は米ワシントン州海軍航空隊基地で電磁機動戦訓練を実施
海自は岩国基地の第31航空群・第81航空隊所属のEP-3電子戦機を米ワシントン州ウイッピーアイランド(NAS Whidbey Island)米海軍航空基地に派遣、9月22日から10月6日にかけて、同基地および周辺空域で米海軍航空部隊と電磁機動戦訓練を行なった。
海自第31航空群は、US-2救難飛行艇で構成する第71航空隊と電子戦専用の第81航空隊で編成されている。第81航空隊にはEP-3, OP-3Cを運用する第811飛行隊とUP-3D, U-36Aを運用する第812飛行隊がある。従って今回派遣されたのは第811飛行隊。
図1:(海上自衛隊)電磁機動訓練に参加した日米両海軍電子戦機。左が海自EP-3、真ん中手前はEA-18Gグラウラー電子戦機、奥はP-8A Poseidon哨戒機、右はEP-3E Aries電子戦機。
ウイッピーアイランド(Whidbey Island)はシアトル(Seattle)が面するピュージェット湾(Puget Sound)の北部にある面積約440 km2の全米第4の大きな島、シアトルから北40 kmにある。
図2:ウイッピーアイランドの位置。シアトル西に広がるピュージェット湾の北にある大きな島。米海軍の大規模な基地がある。
2。10月2日~13日、海自護衛艦は、米比主催共同演習[Exercise SamaSama 2023]にカナダ海軍、英国海軍と共に参加
3。10月4日、海自護衛艦は海保巡視船と日本海秋田沖で共同演習、続いて10月26日に北海道西方の日本海で共同訓練
4。10月6日、空自第7および第9航空団、太平洋上で米空軍機・米海兵隊戦闘機と共同訓練
10月6日、空自戦闘機部隊は米空軍B-52H爆撃機等および海兵隊戦闘機部隊と合計20機が参加して、茨城県東の太平洋上から沖縄周辺にかけての広い空域で各種戦術訓練を行なった。参加したのは;―
- 航空自衛隊:百里基地第7航空団F-2戦闘機2機
那覇基地第9航空団F-15戦闘機4機
入間基地中部航空警戒管制団
那覇基地南西航空警戒感星団
- 米空軍 :B-52H爆撃機2機、
F-35A戦闘機4機
F-15E戦闘機4機
- 米海兵隊 :F-35B戦闘機4機
5。10月8日~11日、ロシア海軍艦艇3隻、日本海から対馬海峡・東シナ海・与那国島―西表島間の海峡を通り太平洋に進出
6。9月30日~10月7日、海自護衛艦は東シナ海で米第5空母打撃群と共同訓練、9日~10日、米空母打撃群および韓国海軍駆逐艦等と3カ国共同訓練、12日~16日、第5空母打撃群は釜山訪問、続いて16日~18日に空母打撃群と共同訓練をそれぞれ実施
9月30日~10月7日;-
海自護衛艦は、関東地方南の太平洋から東シナ海にかけての海域で米空母艦隊と各種戦術訓練を行なった。参加したのは;―
海上自衛隊:護衛艦「ゆうだち/DD-103」、フリゲート「のしろ/FFM-3」
米海軍 :横須賀基地を母港とする米第7艦隊麾下の第5空母打撃群に所属する空母「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan /CVN-76)」、ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG-54)」、同「ロバート・スモールズ(USS Robert Smalls/CG-62)」およびミサイル駆逐艦「シャウプ(USS Shoup /DDG-86)」
図3:(海上自衛隊)手前から護衛艦「ゆうだち/DD-103」、フリゲート「のしろ/FFM-3」、米空母「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan /CVN-76)」
図4:(海上自衛隊)手前から米ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG-54)」、奥は空母「ロナルド・レーガンUSS Ronald Reagan /CVN-76)」、向かって左フリゲート「のしろ/FFM-3」、右護衛艦「ゆうだち/DD-103」。
10月9日~10日;-
海自ヘリ空母は、東シナ海で米第5空母打撃群および韓国海軍艦艇と対潜水艦戦、電子戦等を行なった。参加したのは;―
- 海上自衛隊:ヘリ空母「ひゅうが(DDH 181)」
- 米海軍 :空母「ロナルド・レーガンUSS Ronald Reagan /CVN-76)」、ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG-54)」、同「ロバート・スモールズ(USS Robert Smalls/CG-62)」
- 韓国海軍 :ミサイル駆逐艦「ユルゴク・イ・イ(栗谷李珥) /DDG993」、補給艦「チョンジー」
図5:(海上自衛隊)手前は韓国海軍ミサイル駆逐艦「ユルゴク・イ・イ(栗谷李珥) /DDG 993」奥は海自ヘリ空母「ひゅうが(DDH 181)」
図6:(海上自衛隊)海自ヘリ空母「ひゅうが(DDH 181)」に空母艦載ヘリコプターMH-60で着艦する米海兵隊兵士.
10月12日~16日;―
米第5空母打撃群の空母「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan /CVN-76)」、ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG-54)」、同「ロバート・スモールズ(USS Robert Smalls/CG-62)」およびミサイル駆逐艦「シャウプ(USS Shoup/DDG-86)」は、10月12日から16日の間、韓国釜山基地を訪問/停泊して対北朝鮮・対中国の脅威抑止の意思を示し、同時に米韓友好増進のための活動を行なった。
図7:(chosun online)韓国釜山基地に入港した空母「ロナルド・レーガン(USS Ronald Reagan /CVN-76)」と手前はミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG-54)。
10月16日~18日;―
海自フリゲート「のしろ/FFM-3」は東シナ海で米空母「ロナルドレーガン」、ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG-54)」、同「ロバート・スモールズ(USS Robert Smalls/CG-62)」、ミサイル駆逐艦「シャウプ(USS Shoup/DDG-86)」と各種戦術訓練を行なった。
7。10月10日、ロシア軍情報収集機IL-20が北海道、本州日本海側沿岸を飛行
8。10月8日~21日、陸自北部方面隊・第1特科団、米ポイント・マグー射場で対艦ミサイル発射訓練を実施
10月8日~21日、陸上自衛隊は北部方面隊第1特科団麾下の地対艦ミサイル連隊を、カリフォルニア州ポイント・マグー(Point Mugu, California)の米海軍ミサイル射撃場に派遣、地対艦ミサイルの実弾射撃訓練を行なった。
第1特科団には、第1地対艦ミサイル連隊/千歳、第2地対艦ミサイル連隊/美幌、第3地対艦ミサイル連隊/上富良野があり、いずれも88式地対艦ミサイルを装備、ロシア軍の北海道侵攻に備え対峙している。
図8:米海軍「ポイント・マグー(Point Mugu)」ミサイル射撃場は、ロサンゼルスの北70 kmにある「ベンチュラ(Ventura)」海軍基地の一部で、チャンネル諸島の「サンニコラス島(San Nicolas)」までを含んでいる。
図9:(陸上自衛隊)88式地対艦ミサイル(SSM-1) は、直径35 cm、長さ5 m、重さ660 kg、射程は150~200 km。推進は固体燃料ブースターで発射、ターボジェットで巡航、誘導はINSと目標近くになるとアクテイブ・レーダー・ホーミング(ARH)で着弾する。発射車両は大型トラックに円筒形ランチャー6基を搭載し、ミサイルを発射する。
図10:国産ミサイルの系譜。陸自北部方面隊・第1特科団に配備中の88式 (SSM-1)は、数年後には射程の長い12式(改)に更新される。
9。10月13日発表、今年上半期(4月~9月)での緊急発進回数、高水準で推移
2023年度上半期の緊急発進回数は424回、昨年同期の446回より少し減少した。対象国は中国機が72 %、ロシア機は27 %。方面隊別では北部航空方面隊が72回、中部航空方面隊が26回、西部航空方面隊が257回の緊急発進を行なった。
中国のH-6K爆撃機、ロシアのTu-95爆撃機による2日間続けての共同編隊飛行、中国無人機の与那国島―台湾間の飛行、ロシア軍哨戒機の対馬海峡通過飛行、等が特異事象として挙げられる。
図11:(統合幕僚監部)2023年度上半期6ヶ月間の中国機およびロシア機の我国周辺における活動。
10。10月12日、米海軍哨戒機P-8Aは台湾海峡を通過、航行の自由作戦を実施
11。10月16日~18日、海自護衛艦は南シナ海で米海軍駆逐艦・沿海域戦闘艦と共同訓練
12。10月16日発表、10月29日~11月13日、陸自第15即応機動連隊等は米陸軍第17砲兵旅団等と米ヤキマ演習場で実弾射撃演習「ライジング・サンダー23」を実施
10月29日~11月13日の間、陸上自衛隊・中部方面隊麾下の第8普通科連隊、第15即応機動連隊、第14情報隊、第5対戦車ヘリコプター隊、西部方面システム通信群等は、米陸軍第17砲兵旅団等と、米ワシントン州ヤキマ演習場(Yakima Firing Center, Washington)で実弾射撃訓練「ライジング・サンダー(Rising Thunder 23 Exercise)を実施。ここで無人偵察機部隊、電子戦部隊、攻撃ヘリコプター部隊等の諸職種共同訓練を行なっている。
第8普通科連隊は、鳥取県米子市の第13旅団隷下の連隊で軽装甲機動車、高機動車を装備する。
第15即応機動連隊は、香川県善通寺市の第14旅団隷下の連隊で96式装輪装甲車、16式機動戦闘車等を装備する。
第14情報隊は、香川県善通寺市の第14旅団隷下で、2022-4-20に新編された無人偵察機部隊、砲兵射撃等の目標特定等を任務とする。
第5対戦車ヘリコプター隊は、明野駐屯地の中部方面航空隊隷下の飛行隊でAH-1Sヘリコプター8機を装備する。
米陸軍第17野戦砲兵旅団(U.S. Army 17th Field Artillery Brigade)は、ワシントン州ルイス・マッコード統合基地(Joint Base Lewis McChord)に駐屯する第1軍団所属の砲兵旅団。隷下に2個野戦砲兵連隊があり、いずれもHIMARS・高機動ロケット砲システムを装備する。このためHIMARS旅団とも呼ばれる。
図12:「ヤキマ射撃演習場(Yakima Firing Center, Washington)は、シアトル(Seattle) の南東約220 kmの砂漠にあり、40 km四方の大きさ、面積13万2000 ヘクタールで米陸軍機甲部隊、航空部隊の演習場で最大射程距離30 kmの実弾射撃訓練が可能。
図13:(陸上自衛隊)ヤキマ演習場の「ライジング・サンダー」演習に参加中の第5対戦車ヘリコプター隊のAH-1S対戦車ヘリコプター。AH-1Sは米ベル社製を富士重工がライセンス生産、エンジンを川崎重工製T-53-K-703出力1,100 HPに換装している。1995年迄に90機が生産、配備されたが、今では減少している。
13。10月16日~17日、八重山漁港漁船「鶴丸」が尖閣諸島に出漁、これに対し中国海警局艦艇が「中国領海に侵入」と警告、退去を要求
10月16、17の両日、八重山漁協所属の漁船「鶴丸」が石垣市の尖閣諸島周辺に出漁したが、これに関し中国海警局は国内向けサイト「微博(ウエイポ)」に、「鶴丸が海保巡視船とともに中国領海に侵入したので退去するよう警告した」と発表した。鶴丸に乗船していた石垣市議「仲間 均」氏は「中国は、嘘を根拠に尖閣を乗っ取ろうとしている」と反論している。
鶴丸は16日午後1時ごろ尖閣諸島の南小島近くに到着、大型魚アカマチなど150 kgを水揚げし1泊、17日午後に石垣島漁港に戻った。出漁期間中 中国海警局艦艇2隻が領海に侵入、一定の距離を保ちながら鶴丸を監視した。
これに限らず、中国海警局艦艇は2023年10月31日までに、89日間1日も休まず尖閣諸島の接続水域へ侵入、さらに領海侵犯は今年通算で33日に達している。このような繰り返し行動で、中国は尖閣の領有を主張、領有権の既成事実化を図っている。
八重山列島は、沖縄県南西諸島西部の島嶼群で石垣島から西表島を含む地域を指す。八重山漁協とはこの区域全体で操業する漁業組合を云う。中心となる石垣島は沖縄本島から南西約410 kmに位置する。
図14:尖閣諸島地図。尖閣諸島は中国本土から330 km、台湾から170 kmに位置する。
14。10月17日、ロシア空軍Tu-95爆撃機 2機と戦闘機2機、石川県能登半島に接近、本州・北海道の日本海沿岸に沿い飛行
10月17日、ロシア軍爆撃機「Tu-95」2機と戦闘機2機が石川県能登半島沖に飛来、本州日本海側に沿いながら北に進み、変針して立ち去った。
その後再び「Tu-95」爆撃機2機と戦闘機2機が北海道日本海側に接近、領空外を北上、沿海州に向け立ち去った。
ツポレフ (Tupolev) Tu-95戦略爆撃機は1956年から実戦部隊への配備開始、1952-1993年間で製造されたが現存数は50~60機くらい。エンジンはクズネツオフ(Kuznetsov)NK-12ターボプロップ 4基、二重反転プロペラを回す。主翼は35度の後退角付き。最大15 tonの各種巡航ミサイルなどを搭載、無給油で10,000 km以上の飛行が可能。最新型は「Tu-95MSM」で、レーダーを含む電子装備品と目標探知システムを近代化し、プロペラをAV-60Tに換装・振動を半減するなど改良して、2020年から配備が始まり現在55機が活動中。
図15:(統合幕僚監部)10月17日2回にわたり我が国日本海沿岸に飛来したTu-95爆撃機等の航跡。
図15A:(Wikipedia) Tu-95MSは乗員6~7名、全長46.2 m、翼幅50.1 m、最大離陸重量188 ton、エンジンはクズネツオフ(Kuznetsov)NK-12ターボプロップ軸馬力15,000 hp 4基、プロペラは8翅2重反転定速式。速度は925 km/hr、世界最大・最速のプロペラ機。
15。10月17日、空自第2、第6、第9航空団等は、日本海上および東シナ海上で米空軍B-52爆撃機・戦闘機等と共同訓練
ロシアTu-95爆撃機2機が本州日本海沿岸に接近したのと同じ10月17日、日本海および東シナ海空域で空自戦闘機12機は米空軍B-52爆撃機2機を含む9機と各種戦術訓練を行なった。参加したのは;―
航空自衛隊:千歳基地第2航空団F-15戦闘機4機
小松基地第6航空団F-15戦闘機4機
那覇基地第9航空団F-15戦闘機4機
三沢基地北部航空警戒管制団
入間基地中部航空警戒管制団
那覇基地南西航空警戒管制団
米空軍 :B-52爆撃機2機、F-35A戦闘機6機、KC-135空中給油機1機
B-52Hの所属は第2爆撃航空団。
B-52は1955年に配備開始、744機が製造され、最終モデルB-52Hは1962年から102機生産された。現在配備されているのは、ノースダコタ州ミノット空軍基地(Minot AFB, North Dakota)第5爆撃航空団(5th Bomb Wing)とルイジアナ州バークスデイル空軍基地(Barksdale AFB, Louisiana)の第2爆撃航空団 (2nd Bomb Wing)、それにバークスデイルにある予備空軍麾下の第307爆撃航空団の3部隊である。第2爆撃航空団は「米空軍全地球打撃軍/USAF Global Strike Command」の指揮下にある。,
図16:(航空自衛隊)10月17日、日本海・東シナ海空域で B-52爆撃機と編隊を組む空自F-15戦闘機。
16。10月19日、米空軍B-52爆撃機がルイジアナ州から19時間飛行し韓国忠清北道清州空軍基地に到着、22日には日米韓3カ国空軍が朝鮮半島南方洋上で共同訓練
10月19日、韓国・忠清北道の清州空軍基地に米空軍第2爆撃航空団所属のB-52H爆撃機がルイジアナ州バークスデイル空軍基地(Barksdale AFB, Louisiana)から無着陸19時間の飛行し到着した(10月17日空自機と訓練した2機とは別に機体) 。B-52Hはこれまでも数回韓国に飛来したことはあったが、いずれもグアムなど経由した飛行で米本土から直接飛来したのは今回が初めて。第96遠征爆撃飛行隊長パネッサ・ウイルコックス(Vanessa Willcocks)中佐は「韓国空軍基地への初着陸は韓国と統合パートナーシップを結んだことを意味する」と語った。これで米国は韓国有事発生の場合、米国はいつでも北朝鮮に核攻撃が出来ることを示唆したと解される。
図17:(中央日報)10月19日、韓国清州空軍基地に到着したB-52H爆撃機の歓迎式典。
10月22日、空自は日米韓3カ国の安全保障協力を推進するため、韓国の南西・九州の北西の空域/東シナ海上空で米空軍と韓国空軍と共同訓練を行なった。参加したのは;―
航空自衛隊:築城基地第8航空団F-2戦闘機4機、春日基地西部航空警戒管制団
米空軍 :米空軍ルイジアナ基地第2爆撃航空団B-52爆撃機1機(19日に韓国訪問した機体)、F-16戦闘機3機
韓国空軍 :F-15K戦闘機2機
図18:(航空自衛隊)10月22日、東シナ海北部で日米韓3カ国空軍の編隊訓練の様子。米B-52H爆撃機を先頭に、その両側に米F-16戦闘機が1機ずつ、左翼側には韓国空軍F-15K戦闘機2機、右翼側には空自F-2戦闘機2機が写っている。
17。10月23日、南シナ海で、日本・米国・オーストラリア・カナダ4カ国海軍は4カ国共同訓練「ノーブル・カリブー」を実施
18。10月24日、ロシア軍情報収集機IL-20がオホーツク海から本州三陸沖を飛行し往復
19。10月24日夜間、南シナ海で中国軍戦闘機が飛行中の米B-52爆撃機に対し距離3 mまで異常接近。米国防総省は過去2年間、東シナ海および南シナ海で中国機による米軍機に対する危険な異常接近飛行は180回以上発生、と報告(10月17日)。
10月24日夜間、南シナ海上を飛行中の米空軍B-52H爆撃に対し中国軍戦闘機が3 mの至近距離に接近、威嚇飛行を行った。米インド太平洋軍(U.S. Indo-Pacific Command)は“極めて危険な行為、直ちに止めるよう”警告した。米軍ではプロフェッショナル・パイロットのする操縦ではない、と呆れている。
図19:(U.S. Air Force/ Air & Space Forces Magazine)10月24日夜間、南シナ海上で飛行中の米「B-52H」爆撃機に3 mの至近距離まで異常接近した中国軍「J-11」戦闘機。「B-52H」装備の暗視装置で撮影した写真。画面各所にある灰色の四角は暗視装置の指示数値を秘匿するため塗られたもの。「J-11」は高速で接近、直前にエアブレーキを展張し「B-52」の下方を通過、かろうじて衝突を回避した。
米国防省総省(Department of Defense)は、最近発表した「2021~2023年度中国軍増強に関わる年次報告(fall of 2021 and fall of 2023, annual China Military Power Report)」で、期間中に中国軍機による米軍機に対する危険な異常接近飛行は180回以上発生している。これはそれ以前の10年間の合計よりも多い。年次報告ではそのうちの15回の事象を例示している。
10月16日には、昼間、石垣島尖閣諸島付近の空域を飛行中のカナダ空軍CP-140 オーロラ哨戒機に対し、中国軍J-11戦闘機が距離5mまで異常接近、数時間後には再び同様の威嚇飛行が行われた。CP-140機は、北朝鮮による「瀬取り」を含む違法な活動を監視する告れ園の活動に参加していて、カナダTV局のスタッフも同乗、数メートル先を飛行する中国機の様子を記録している。カナダのブレア国防相は「中国機が異常接近、進路妨害をした、」危険で無謀な行為であ理、断じて容認できない」と批判した。これに対し中国外務省の毛寧副報道局長は「カナダ機が中国領空を侵犯、主権を侵害した」と反論した。
図20:(Royal Canada Air Force)カナダ空軍のCP-140 オーロラ哨戒機。P-3C哨戒機のカナダ空軍仕様機。
20。10月26日~28日、中国海軍空母山東など5隻、バシー海峡を通過、台湾東の太平洋の石垣島南460 kmで大規模演習、同時期に中国軍機30機以上が台湾周辺で威嚇飛行
10月26日、中国海軍無人機「BZK005」が東シナ海から台湾北部から与那国島―台湾の海峡を抜け、台湾東岸を飛行、台湾南方海上を通り中国大陸方面に立ち去った。
「BZK005」無人機は北京大学とハルビン航空機工業が開発した高高度飛行、長距離飛行可能な無人機。翼幅18 m、内部ペイロードは150 kgで迅速に交換・配置可能。前部胴体には上に衛星通信機材、下に回転式電子光学センサー(EO/IR sensor)を装備、重さ1,200 kg、速度170 km/hr、8,000 m高空を40時間連続飛行できる。
図21:(統合幕僚監部)統合幕僚監部では「推定中国無人機」としているが、台湾国防部では「BZKK005」無人機と特定している。この後台湾南部バシー海峡を抜け中国大陸に向け飛行した。
図22:(Militarydrones) 「ミリタリードローン」サイトによれば、BZK005は、離陸から着陸まで全て自動飛行でき、悪天候下でも飛行可能。装備はSARレーダー、EOセンサー、通信装置等、最大離陸重量は1,500 kg、外部ペイロード370 kgを携行可能。
10月26日、中国海軍空母「山東」を含む5隻の艦隊が台湾・フィリピンの間のバシー海峡を通過して西太平洋に入り、石垣島南460 kmの海域で大規模演習を行なった。「山東」艦隊は;―
空母「山東・17」
ミサイル駆逐艦「ルーヤンIII級」2隻(164、173)
フリゲート「ジャンカイII級」2隻(536、570)
図23:(統合幕僚監部)10月26日〜28日、中国空母「山東」など5隻の艦隊が演習した海域。
図24:(台湾国防部)10月26日バシー海峡を通過、西太平洋に進出した中国海軍「山東」空母。
10月27日、中国軍Y-9情報収集機1機が東シナ海から沖縄本島―宮古島の間を通過、宮古島の南・台湾の東の空域を飛行した後、往路と同じルートで東シナ海に戻った。
図25:(統合幕僚監部)10月27日、中国軍Y-9情報収集機の往復飛行経路。空母山東の演習海域の上空を飛行、往路と同じルートで東シナ機に戻る。
図26:(統合幕僚監部)10月27日沖縄県宮古海峡付近を飛行した中国軍Y-9情報収集機。Y-9はロシア・アントノフAn-12輸送機を改良、中国が開発した機体。情報収集機は「Y-9JB」型で、グラスコクピット、エンジンはFW6JCターボプロップ5,100馬力を4基、プロペラは複合材製JL-4 の6翅型、を採用している。乗員4名、長さ36 m、翼幅38 m、最大離陸重量65 ton、航続距離5,200 km、の大型機。
10月26日~28日、特に27日24時間に中国軍機35機が台湾周辺で飛行し、そのうち23機は台湾海峡の中間線を超え、台湾北部、東部、南部の防空識別圏(ADIZ)に侵入した。また東部海域では空母「山東」から「Z-9」対潜ヘリコプターが飛来、ADIZに侵入した。このほか台湾周辺海域で同期間中、中国海軍艦艇15隻が活動を続けた。
図27:(日本周辺国の軍事兵器)「Z-9/直昇9」はフランス・ユーロコプター製「AS 365NドーファンII」をライセンス生産した汎用ヘリ。「Z-9C」は対潜用に改良した機体で、海軍航空隊で150機以上が使用中。
21。10月27日発表、11月10日~20日、日米4万人が参加、令和5年度自衛隊統合演習を実施
10月27日統合幕僚監部は、「11月10日〜20日の間、令和5年度自衛隊統合実動演習を実施する」と発表した。
この演習は、陸・海・空3自衛隊が統合して演習するもので、統合運用能力を向上させるために行う。訓練の一部には米軍が参加し、相互運用の向上も図る。
実施場所;―北海道から沖縄・八重山諸島までを含む全国の自衛隊施設、在日米軍の施設、区域、民間空港・港湾、一般民間市街区域の一部、それと我が国周辺の海空域。
訓練項目;―指揮所活動、陸上作戦、海上作戦、航空作戦、水陸両用作戦、統合後方補給・衛生、空挺作戦、特殊作戦、宇宙・サイバーおよび電磁波領域と従来の領域との連携、
参加部隊;―陸自/陸上総隊・各方面隊等、海自/自衛艦隊・各地方隊等、空自/航空総隊・航空支援集団等
米軍 ;―太平洋陸軍、太平洋艦隊、太平洋空軍、太平洋海兵隊、および在日米軍
参加規模;―自衛隊将兵約30,000名、車両約3,500両、艦艇約20隻、航空機約210機、米軍将兵約10,000名
統合演習には、オーストラリア、カナダ、フランス、ニュージランド、フィリピン、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、およびNATOからオブザーバー(観戦武官)を招聘する。
自衛隊統合演習は昭和54年(1979)に始まり、その後ほぼ毎年実施されてきた、平成18年(2006)以降は、実動演習と指揮所演習を隔年で行なっている。令和5年(2023)は、我が国周辺の軍事危機の異常な高まりを受け、日米両軍将兵合計4万名が参加する空前の規模となる。
報道によると、立憲民主党の一部議員から防衛省に対し「鹿児島県・沖縄県で実施するのは中国を刺激する恐れあり、中止を求める」との要望があった。
22。10月29日報道、円安で防衛費実質減少、防衛力強化に支障/産経新聞
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