令和6年4月、我国周辺での中露両軍および北朝鮮の活動と我国/同盟諸国の対応


2024(令和6年)-5-9 松尾芳郎

令和6年4月、我国周辺における中露両軍および北朝鮮の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。今月の注目すべきニュースは次の通り。

(Military threats from Chinese, Russian Forces and North Korean are tensed up in April 2024. Japan and Allies conducted multiple large scale exercises for retaliation. Following were main issues.)

4月1日、3日、4日、10日、15日、発表:中国軍艦艇およびロシア軍艦艇および航空機が日本海・東シナ海・西太平洋で活発な行動

4月での中国軍・ロシア軍の艦艇・航空機の活動はこれまで以上に活発の度を高めている。以下に時系列に沿い簡単に述べる。

4月1日及び同4日発表:ロシア海軍ビシニヤ級情報収集艦(535)が、日本海から対馬海峡を通過、東シナ海に出て、4月1日には宮古島と波照間島付近の接続水域を通り太平洋に出た。そして石垣島南方水域を航行した。

図1:(統合幕僚監部)ビシニヤ級情報収集艦(535)。満載排水量3,400 ton、長さ94 m(535)「カレニヤ」は1986年就役、同型艦は8隻あり、うち2隻が太平洋艦隊にある。

図2:(統合幕僚監部)ロシア海軍ビシニヤ級情報収集艦(535)の航跡。

41日発表:3月31日午後中国海軍ジャンカイII級フリゲート(576)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(123)、フチ級補給艦(903)の3隻が、日本海から対馬海峡を抜け東シナ海に入った。

図3:(統合幕僚監部)ジャンカイII/江凱II」級は「054A」フリゲート、満載排水量4,000 ton、全長134 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルYJ-83型を中央の4連装発射機2基に搭載。外洋艦隊の護衛が任務。同型は40隻が就役済み。「ルーヤンIII級」は052D型昆明級駆逐艦で、中国版イージス艦の後期建造分10隻がある。(123)「准南」2021年就役の新造艦。

43日発表:4月2日、中国海軍ドンデアオ級情報収集艦(799)が日本海から対馬海峡を通り東シナ海に入った。

前日の3隻の艦隊及びこの情報収集艦の行動は、日本海でのロシア海軍と中国海軍の協調が進んでいることを示している。

図4:(統合幕僚監部)42日に日本海から対馬海峡を通り東シナ海に戻った中国海軍ドンデアオ級情報収集艦。排水量6,000ton、全長130 m、速力20 kts、艦尾にヘリ用甲板、中央に弾道ミサイル追跡レーダー、艦橋上部に巡航ミサイル短距離追跡レーダーおよび電子情報傍受アンテナ、などを装備。815815A815A IIなど合計で9隻ある。

43日発表:4月2日午後、ロシア空軍爆撃機Tu-95 2機と戦闘機2機がシベリヤから飛来、本州に接近し能登半島沖で反転、立ち去った。

図5:(統合幕僚監部)42日午後能登半島沖に飛来したロシア軍Tu-95爆撃機と戦闘機、それぞれ2機の航跡。

410日発表:4月2日夜半、中国海軍ルーヤンII級ミサイル駆逐艦(151)及びジャンカイII級フリゲート(599)が尖閣諸島の魚釣島に向け南進、与那国島と台湾の間の海峡を通り太平洋に進出した。それから同10日には、ドンデイアオ級情報収集艦(791)が太平洋から沖縄本島に近づき、先に太平洋に出た(151)及び(’599)と合流、3隻で沖縄本島と宮古島の間の海峡を北西に向かい通過、東シナ海に入った。

図6:(統合幕僚監部)410日に沖縄本島宮古島間の海峡を抜け太平洋から東シナ海に戻った中国海軍の3隻。

図7:(統合幕僚監部)42日及び410日の中国海軍艦艇3隻の動きを示す航跡。

415日発表:4月13日深夜、中国海軍ドンデイアオ級情報収集艦(791)は東シナ海から鹿児島県草垣群島南の海域から大隈海峡を通過、太平洋に進出した。この艦は同10日に太平洋から宮古海峡を通り東シナ海に戻ったばかりで再び太平洋に出たことになる。

図8:(統合幕僚監部)

4月3日発表:空自戦闘機部隊、東シナ海北部で米空軍 B-52爆撃機および韓国空軍戦闘機と共同訓練

4月2日、空自戦闘機、米空軍及び韓国空軍は、北朝鮮のミサイル発射演習を含む頻繁な攻撃演習に警告を発する意味で、九州北西の東シナ海/黄海海域の上空で、3カ国共同訓練を実施した。参加したのは;―

航空自衛隊:築城基地第8航空団のF-2戦闘機4機及び春日基地西部航空警戒管制団のレーダー(背振山FPS-3改レーダー、福江島FPS-4レーダーなど)

米空軍  :B-52H爆撃機2機(Air Force Global Strike Command所属機) 及びF-16戦闘機3機(嘉手納基地ローテーション駐留機)

韓国空軍 :F-15K戦闘機2機

図9:(航空自衛隊)4月2日、東シナ海北部/黄海空域で米空軍のB-52H爆撃機を中心に日米韓3カ国空軍の共同演習が行われた。

4月5日発表:米・豪・フィリピン3軍の共同演習「バリカタン」に海自艦艇が本格参加

4月22日~5月10の間、米・豪・フィリピン3軍が主催する共同演習「バリカタン(肩を並べて)」はこれまでで最大規模、17,000名近い兵員が参加して実施されている。これに海自護衛艦「あけぼの」、フランス軍も参加している。4月11日には、米バイデン大統領と岸田首相フィリピンのマルコス大統領がホワイトハウスで会合、南シナ海での中国軍の威嚇・挑発行動への対応策を協議した。バイデン大統領はマルコス大統領に対し、米比相互防衛条約は南シナ海の防衛にも適用される、と改めて保証した。

南シナ海では、中国は海警局や海上民兵の感染が数十隻も繰り出し、フィリピンとの係争地「スカボロー礁」や「南沙諸島」の「セカンド・トーマス礁/ミスチーフ礁」の周辺でフィリピンの行動に対し、繰り返し威嚇・圧力を加えている。

中国制服組の張叉俠・中央軍事委員会副主席は「海洋紛争は関係国と友好的な協議で解決する方針、しかし中国の領有権を脅かす行為は決して許さない」と公言している。4月30日にはスカボロー礁付近で中国海警局艦艇2隻がフィリピン輸送船に放水を加える様子が大きく報道された。

図10:(AFP)南シナ海には「西沙諸島/パラセル諸島」、「中砂諸島(暗礁)」、「南沙諸島/スプラトリー諸島」それに「スカボロー礁(Scarborough Shoal)」などがある。これに中国、台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナム、ブルネイの諸国がそれぞれ領有権を主張している。中国は全域を実力で占領、多くの軍事施設を設置、赤線で囲う全域の領有権を主張している。この中で「南沙諸島/スプラトリー諸島」の東端「セカンド・トーマス礁(Second Thomas Shoal)」と「スカボロー礁 (Scarborough Shoal)」は、国連・「南シナ海仲裁裁判所」の裁定で、フィリピンのEEZ内としフィリピンの領有権が認められている。

図11:(防衛白書)中国軍基地は;―西沙諸島「ウッデイー島」に巡航ミサイル基地、南沙諸島「スービ礁」、「ミスチーフ礁」、「ファイアリークロス礁」にそれぞれ3000 m級滑走路、その他にレーダー施設を4箇所設置済み。ほぼ全域を要塞化し、実効支配を強固にしている。

図12:(Philippine Coast Guard)4月30日、スカボロー礁付近でフィリピン船に放水銃攻撃を加える中国海警局艦艇。

4月12日、同15日発表:日本・米国・韓国3カ国海軍は中国軍に対抗するため東シナ海および四国南方太平洋で共同訓練を実施

図13:(US Navy Photo by <assist. Communication Specialist 1st Class Tommy Gooley)4月11-12日、米海軍、日本海上自衛隊、韓国海軍は6隻の艦艇で、インド太平洋の安定確保のため東シナ海で共同訓練を実施した。中央は米海軍原子力空母「セオドア・ルーズベルト」。

11日午後、3カ国共同訓練公開のため、記者団を乗せて嘉手納基地を離陸したC-2輸送機は1時間半後に「セオドア・ルーズベルト」空母に着艦した。甲板は全長333 m、FA-18E/F戦闘機等70機を搭載する。

参加したのは、米海軍原子力空母「セオドア・ルーズベルト(USS Theodore Roosevelt /CVN 71) 」、アーレイバーク級ミサイル駆逐艦「ラッセル(USS Russell / DDG 59)」同「ダニエル・イノウエ(USS Daniel Inouye / DDG 118)」同「ハワード(USS Howard / DDG 83)」の4隻、海自から護衛艦「ありあけ /DD-109」、韓国海軍からミサイル駆逐艦「ソエ・リュ・ソンニョン(Seoae Ryu Seong-ryong /DDG 993)」、の合計6隻、それに米海軍から第11空母航空団(Carrier Air Wing (CVW)11)それにP-8Aポセイドン哨戒機1機。

護衛艦「ありあけ /DD-109」は、「むらさめ」級護衛艦・満載排水量6,200 tonの9番艦、SH-60J哨戒ヘリ2機を搭載、2002年に就役、佐世保基地に配備されている。

3カ国艦艇は東シナ海で通信連絡訓練、海上侵攻阻止訓練、対空射撃訓練、それに指揮担当士官の交互座乗・指揮訓練、などを行った。

第9空母打撃群(CSG-9)司令官クリストファー・アレキサンダー准将は「3カ国共同訓練は同盟国の連携の強さを示すもので、いかなる危機にも備える。自由で開かれたインド太平洋の維持を今後共約束する」と語った。

昨年2023年8月のキャンプ・デビット会談で、3カ国首脳は地域の即応体制を高めるため共同訓練の強化と定例化に合意しており、今回の訓練はその具体化の1例である。

図14:(海上自衛隊)米空母「セオドア・ルーズベルト」を中心に東シナ海で演習する3カ国6隻の艦隊、右下には第11空母航空団所属機の編隊が見える。

4月12日発表:米空軍F-22およびF-16戦闘機、ローテーションで嘉手納基地に配備

嘉手納空軍基地は台湾の東およそ600 kmに位置する米軍極東最大の戦略拠点。3,700 mのランウエイ2本を備え100機が常駐する基地、面積は約20,00 ha弱で羽田空港の1,500 haより広い。

嘉手納は太平洋空軍麾下の第18航空団の基地で、傘下に第44戦闘飛行隊(44th Fighter Sq.)、第67戦闘飛行隊(67thFighter Sq.)/いずれもF-15C/Dを装備、第909空中給油機隊(KC-135Rを装備)、などを配備している。

米空軍は2022年10月に、第44および第67戦闘飛行隊所属のF-15C/D全機合計48機を退役させることを決定した旨発表した。これで順次本国に帰還し始めているが依然として若干の機数が残っている。F-15は1980年から配備されてきたので、40年以上も中国の侵攻に睨みを効かしてきたことになる。

交代としてハワイ・パールハーバー統合基地から第199及び第19戦闘航空隊所属のF-22戦闘機およびF-16戦闘機がローテーションで派遣されている。F-16戦闘機は、サウスダコタ州エア・ナショナルガード第114戦闘航空隊(South Dakota Air National Guard 114th Fighter Air Wing)およびミネソタ州エア・ナショナルガード第118戦闘航空隊(Minnesota Air National Guard 148th Fighter Wing)の所属機である。

昨年(2023年)11月に、ローテーションとして嘉手納に派遣されていたユタ州ヒル空軍基地(Hill Air Force Base, Utah)所属のF-35は、これで任務を終わり本国に帰還することになった。

嘉手納に派遣されたF-22及びF-16は、沖縄に展開する航空自衛隊第9航空団麾下の第204及び第304航空隊のF-15J/DJと共に、増強続く中国軍に対抗することになる。

4月11日の新旧交代のローテーションの機会に嘉手納基地では恒例の”エレファント・ウオーク(Elephant Walk)が行われた。

参加したのは;―

F-15C 4機、F-16C 8機、F-35A 10機、F-22A 11機、MQ-9リーパー1機、HH-60Gペーブホーク2機、KC-135タンカー2機、MC-130JコマンドII 1機、RC-135リベット 1機、E-3管制機1機、P-8哨戒機1機。

4月11日10時30分、ハワイから飛来したF-22Aの1機が着陸後トーイング中にノーズギアが引き込み機首部分を擦るインシデントがあった。

図15:4月11日嘉手納基地で行われた“エレファント・ウオーク”。

図16:(US Air Force photo by Staff Sgt. Jessi Roth)パールハーバー統合基地を4月10日に出発した第19戦闘航空隊F-22ラプター戦闘機、太平洋上で撮影。

図17:Air and Space Force Magazine)4月20日嘉手納に到着した第27戦闘航空隊のF-22A戦闘機。台湾有事への備えが一段と強化された。

4月16日発表:米海軍P-8A哨戒機が4月17日台湾海峡を通過、航行の自由作戦を実施

台湾海峡を通過する「航行の自由作戦」はほぼ毎月行われているが、2024年4月は、17日に米海軍P-8Aポセイドン(Poseidon)哨戒機が海峡上空を通過して実施された。

図18:(Wikipedia)P-3C対潜哨戒機の後継として2004年にボーイング737NG系列737-800ERXをベースにP-8A開発が決定、2013年から配備開始。米海軍、イギリス空軍、オーストラリア空軍、インド海軍などが採用している。胴体後部のウエポンベイに魚雷・爆雷を装備。ウエポンベイ後方に自動装填式ソノブイ・ランチャーがあり、搭載数は129本。尾部のMADブームは音響システムの性能向上で不要となった。乗員9名。現在嘉手納基地に6機配備、東シナ海、南シナ海の警戒に当たっている。米海軍では112機を配備。

4月19日発表:2023年度(令和5年度)緊急発進は669回、対中国軍機が72 %

2023年度の緊急発進回数は669回で、前年比で109回減少した。2013年度以降、年度全体の回数は700回を超える高い水準で続いており、我国周辺での敵対国空軍の活発な活動が継続している。

航空自衛隊方面隊別では、中国軍機を主に受け持つ南西航空方面隊が401回で最も多く、次いでロシア軍機を受け持つ北部航空方面隊が112回、西部航空方面隊・110回、中部航空方面隊・46回の順になっている。

対象国軍別では、中国機に対する緊急発進が479回で最大、ロシア機に対する緊急発進は174回であった。

特徴;―

  • 中国機による頻繁な沖縄本島と宮古島間の通過飛行
  • 中国H-6爆撃機およびロシアTu-95爆撃機による長距離共同飛行
  • 中国軍無人機による与那国島―台湾間の通過飛行および日本海での飛行
  • 中国・ロシア両軍の情報収集機の飛行が活発化

図19:(統合幕僚監部)2023年度(2023年4月〜2024年3月)の中国軍及びロシア軍の航空機の飛行経路。沖縄・宮古島間の通過飛行が目立っている。

4月19日発表:米韓両空軍、4月12日~同26日の間韓国群山基地に100機超を集結、対北鮮抑止訓練を実施

韓国群山基地で米韓両軍は19日、両軍の戦闘機など100機以上が参加する「連合編隊軍総合訓練」の一部を公開した。

ソウル聯合ニュースによると、訓練には戦闘機など約110機と14,000名が参加。

韓国軍からはF-35A戦闘機、F-16戦闘機、KC330空中給油機など60機以上、米軍からは空軍のF-16戦闘機、KC-135空中給油機、MQ-9リーパー無人機など、海兵隊からF-35B戦闘機、FA-18E/F戦闘機など40機以上が参加した。

北朝鮮の最近の軍事力強化の備え、抑止力強化のため実施された。

この訓練は、米韓両軍が空中戦力を1つの基地に展開、東シナ海北部上空で模擬空戦を行い、空戦技量を向上させる。また多くの戦力が1箇所に集中して計画通りに発着させる運用技量の向上も図る。

韓国軍では本演習を「KFT=Korea Flying Training」と呼ぶ。

図20:(Wikipedia)韓国南西部、ソウルから240 kmにある群山基地、米空軍、韓国空軍、民間の共用空港。米空軍は第7空軍(7th AF)麾下の第8戦闘航空団(8th Fighter Wing)の2個中隊(いずれもF-16C/D戦闘機)が駐留している。写真は群山基地上空を飛行する第8戦闘航空団のF-16戦闘機。ランウエイは18/36方向で長さは2,700 m。ここは1938年に日本陸軍が開設した基地。

4月25日発表:ロシア情報収集機および同哨戒機、日本海で我国沿岸に沿い飛行

4月25日午前ロシア軍情報収集機「IL-20」及び同日午後哨戒機「IL-38」がシベリアから飛来、北海道、本州の沿岸沿いに飛行した。

図21:(統合幕僚監部)4月25日、ロシア軍IL-20情報収集機及び同IL-38哨戒機が我国日本海沿岸で行った飛行経路。

図22:(統合幕僚監部)「IL-20M情報収集(ISR)機」はイリューシン「IL-18」輸送機を電子情報支援機に改造した機体。長さ37.4 m、翼幅35.9 m、エンジンはAI-20Mターボプロップ4,350 hp X 4基、最大離陸重量64 ton、巡航速度675 km/hr、航続距離は約4,000 km

図23:(統合幕僚監部)IL-38哨戒機は、「IL-20」情報収集機と同様「IL-18」旅客機を哨戒機に改造したもの。尾部にMADブーム、機首下面にレドーム、機首頭上にノベッラ海上探知システムを搭載する。写真は新しい「IL-38N」型で濃灰色の洋上迷彩塗装をした機体。胴体ウエポンベイに対潜魚雷、主翼下面に対艦ミサイルを搭載可能。

4月26日発表:中国海軍ミサイル駆逐艦2隻、太平洋から奄美大島南を通過東シナ海に入り、与那国島と台湾の間を抜け、太平洋に進出

4月24日~26日、中国海軍ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦[133]と[134]の2隻が、尖閣諸島西から与那国島と台湾の間を通過して太平洋に進出、石垣島南方・沖縄本島南東を迂回、26日に奄美大島と横当島間の海峡を抜け、東シナ海に入った。

ルーヤンIII級 /旅洋III級は、昆明級 /052D級駆逐艦でいわゆる中国版イージス艦の後期建造分10隻である。前身は旅洋II級・蘭州級/052C型6隻がある。昆明級は満載排水量7,500 ton、全長156 m、完成済みの10隻を含め合計25隻を建造する予定。[133]は「包頭」2021年就役、[134]は「紹興」2022年就役である。

図24:(統合幕僚監部)ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦、昆明級/052D級とも呼ぶ。[133]は「包頭」、[134]は「紹興」。

図25:(統合幕僚監部)4月24日及び同26日のルーヤンIII級ミサイル駆逐艦2隻の航跡。

4月16日発表:海自令和6年度インド太平洋方面派遣「IPD24」計画、空母「かが」と「いずも」を含む艦隊がインド太平洋に長期展開、各国海軍と演習

5月3日から12月15日の間、海上自衛隊は「自由で開かれたインド太平洋」の実現のため「令和6年度インド太平洋方面派遣 [IPD24=Indo-Pacific Deployment 2024]」を実施する。これでインド太平洋地域の各国海軍と共同訓練を実施し、戦技の向上、相互理解の促進、連携強化を図る。海上自衛隊では2017年から実施中で今回が8回目となる。

今回の「IPD24」では、海自最大の戦闘艦である空母「かが」「いずも」を始め護衛艦「ありあけ」最新のミサイル駆逐艦「はぐろ」、新型フリゲート「のしろ」、輸送艦「くにさき」、それにP-1哨戒機2機、さらに潜水艦数隻が加わるこれまでで最大規模の編成で行われる。

訪問予定国は、アメリカ(ハワイ、グアムを含む)、インド、オーストラリア、キリバス、トンガ、バヌツア、パプアニューギニア、パラオ、フイジー、フランス(ニューカレドニア/New Caledonieを含む)、フィリピン、マーシャル諸島、ミクロネシア、の各国である。

このうち、キリバス、バヌツア、フイジーの3カ国に対して中国が有償・無償の経済援助で進出、影響力を強めている。

今回の歴訪は、地域の中国傾斜の動きに歯止めを掛ける狙いもある。

図26:(読売新聞森田昌孝撮影/左、守屋由子撮影/右)空母化への1回目の改修を終えた「かが」(左)の姿。F-35Bステルス戦闘機運用可能にするため、甲板に耐熱塗装、離発着用トラムライン・オレンジ色の塗装、艦首甲板の矩形化、艦首対空機関砲CIWSの右への移設、などが完了した(2024-3-29)。2026年度の2回目の改修でF-35B運用支援システム(着艦誘導システム/JPALS)などを搭載する。「かが /DDH-184」は全長248 m、満載排水量26,000 ton。同型艦「いずも /DDH-183」は、2024年度末(令和6年度末)から同様改修が行われる。

4月18日発表:陸上自衛隊はオーストラリアで米豪軍と実働訓練「サザン・ジャッカルー(Exercise Southern Jackaroo)」を5月16日~6月29日の間実施予定

陸自は「自由で開かれたインド太平洋」の維持強化のため、令和6年度(2024)米豪軍との実働訓練「サザン・ジャッカルー(Exercise Southern Jackaroo) 24」を実施する。期間は5月16日-6月29日の間、場所はオーストラリア・クイーンズランド州(Queensland, Australia)・ラバラック・バラックス基地(Lavarack Barracks)、タウンズビル演習場(Townsville Field Training Area)、およびタリー・ジャングル訓練場(Tully Jungle Field Training)で行われる。

「ラバラック・バラックス」はタウンズビルにあり、オーストラリア陸軍第3旅団が駐留する豪州最大の基地である。

隣接する「タウンズビル演習場」は広大な敷地を占め、オーストラリア軍の実弾射撃演習場になっている。

「タリー・ジャングル訓練場」は濃密なジャングルで視界が効かず、高温下での体力が試される。

参加部隊は;―

陸上自衛隊:愛知県名古屋市守山駐屯地、第10師団・第35普通科連隊

米海兵隊 :第1海兵機動展開部隊・ダーウイン・ローテイション部隊

米陸軍  :太平洋陸軍第11空挺師団

オーストラリア陸軍:第3旅団

「サザン・ジャカルー24」演習の特色は、豪陸軍指揮のもとで実施されいること、及び陸自としては初めての「タリー・ジャングル訓練場」を使用すること、である。

図27:オーストラリア・タウンズビル演習場の位置。

Air Defence Guards from No. 2 Security Forces Squadron conduct Exercise Regional War Fighter in Tully Training Area, Queensland.

図28:(Cotact)2023年5月にオーストラリア陸軍/空軍空挺師団が「タリー・ジャングル訓練場」で演習をした際の写真。

4月24日および26日発表:4月20日発生の海自ヘリ2機の墜落事故

防衛省と海上幕僚監部は、4月21日、伊豆諸島・鳥島沖東方270 kmの海域で海自ヘリコプター2機の墜落事故があったと発表した。鳥島は東京都心から南580 kmにある。

事故発生は4月20日深夜で、海自ヘリ空母「いせ(DDH-182)」が海上保安庁に午後11時過ぎに通報した。

墜落したのは、護衛艦「はぐろ(DDG-180)」搭載のSH-60K [8416]号機(長崎県大村基地所属)と、護衛艦「きりさめ(DD-104)」搭載のSH-60K [8443]号機(徳島県小松島基地所属)。それに別の1機の合計3機がそれぞれ3隻の護衛艦から飛び立ち、夜間の潜水艦探知訓練を実施していた。

いずれにも正副操縦士と他2名、合計8名が搭乗していたが全員殉職した。

墜落海域から部品の一部、搭乗員のヘルメット、2機のフライト・レコーダーなどが回収された。

木原防衛大臣は5月2日、「フライトレコーダーの解析の結果、事故前の飛行状況や機体に異常を示すデーターは確認されなかった、そして2機のフライトレコーダーには同時刻・同じ場所で、急激かつ大きな衝撃の発生が記録されていた。これで2機は衝突が原因で墜落したと判明した」と語った。

NHK/海自関係者によると、「哨戒ヘリには互いの位置情報を共有し、接近した場合には警報音が鳴る「僚機間リンク」システムがある。事故当時「43号機」と別の1機は「僚機間リンク」が結ばれていたが、「16号機」と「43号機」は結ばれていなかった。「16号機」と「43号機」は別々に飛行していたが、潜水艦探知のため同じ目標地点に向かう途中ほぼ同じ高度で向かい合う形で接近し、衝突した可能性がある」と伝えている。

SH-60哨戒ヘリコプターは今回の事故機「K」型が大部分を占め合計で80機が配備されている。

フライトレコーダーの解析から機体の安全性は確認できたので5月3日から訓練を再開している。

図29:(海上自衛隊)護衛艦「はぐろ(DDG-180)」搭載のSH-60K [8416]号機(長崎県大村基地所属)。「SH-60K」は米シコルスキー社SH-60Bシーホークを原型にして三菱重工が改修したSH-60Jをさらに再設計、システムの強化を図った機体。2005年から運用開始、70機以上が配備されている。

図30:(NHK)事故当時3機が鳥島東方270 kmの海域で潜水艦探知訓練を行っていた。「43号機」は「別の1機」と「僚機間リンク」を結合状態にしていたが「16号機」とは結合していなかった。「16号機」は「別の1機」とも結合していなかった。

図31:(NHK)「43号機」と「16号機」は「僚機間リンク」を結合しないまま、同じ高度を向かい合う形で接近し衝突したと推定される。

4月26日発表:空自戦闘機部隊は4月25日太平洋上で米空軍B-52爆撃機と各種戦術訓練を実施

4月25日、空自F-2戦闘機は米空軍B-52Hと太平洋上で共同訓練を行った。空自からは、百里基地第7航空団F-2戦闘機2機、米空軍からは「Global Strike Command/全地球攻撃軍団」(Barksdale Air Force Base, LouisianaまたはMinot Air Force Base, North Dakota)から飛来したB-52H爆撃機2機、が参加した。

図32:(航空自衛隊)4月25日、空自F-2戦闘機2機と米空軍B-52H爆撃機2機が太平洋上で共同訓練を実施した。

―以上―