MQ-9無人機、イラン攻撃で偵察・爆撃の活躍、しかし損失も


2026-3-20(令和8年) 松尾芳郎

図1:(Air & Space forces Magazine)米空軍基地で出発準備中のMQ-9 リーパー(Reaper)無人機。

MQ-9 リーパー無人機は、イラン攻撃の「Epic Fury(大いなる怒り)」作戦で、情報収集やミサイル攻撃に多数使われ大きな成果をあげている。情報筋によるとイラン側の反撃で10機ほどが失われている。

(MQ-9 Reapers are flying numerous over Iran, gathering intelligence and taking out missile launchers in Operation Epic Fury. Yet Iran shut to down about 10 of the drones, according to a person familiar with the operations.)

有人機が飛行すれば撃墜される恐れのある敵地上空では、偵察、地上目標攻撃にMQ-9が主に使われている。戦闘を遂行するアメリカ中央軍(CENTCOM)はMQ-9の喪失数を発表していないがCBS Newsは11機が失われたと報じている。

中央軍は2月28日、当面脅威となり得るミサイルやドローンの発射装置などを主に、戦闘開始以来5,500の目標を攻撃・破壊した、と発表した。

中央軍は、イランの弾道ミサイル・ドローンの発射能力の殲滅に主にして作戦中、これには米国および中東諸国の脅威となるミサイル・ドローンの発射サイト、指揮命令系統の中枢部、保管施設の破壊などを含んでいる。開戦以来3月10日までに、イラン側の弾道ミサイル発射数は90 %以上減少、ドローンの発射数は83 %以上減った。

中央軍(CENTCOM)司令官ブラッド・クーパー(Brad Cooper)提督は、3月11日にMQ-9の活躍を示すビデオを公開したが、席上「イランの弾道ミサイル・ドローンの破壊に精力的に取組中、単に軍事的な破壊だけでなく生産能力を含むイランの組織を解体するのが目的」と述べている。

MQ-9は、イランのドローンに比べるとはるかに精密で、各種センサー、兵装を搭載している。電子光学/赤外線センサー(Electro-Optical/Infrared sensors)、レーザー照準機(Laser Designators)、海上探査レーダー(maritime surveillance radar)、電子情報収集装置(electronic intelligence gathering systems)、およびゼネラル・アトミクス製リンクス・マルチモード・レーダー(General Atomics’ Lynx multimode radar)、を搭載している。このリンクス(Lynx)レーダーは、煙・埃・悪天候下でも高解像度の映像が得られる優れた装置である。

M”-9の価格は1,300万ドルから2020年納入価格では1,600万ドルに上昇している。

航続距離は1,000 マイル(1,600 km)を超え、航続時間は27時間以上になる。搭載できる兵装は重量で3,850 lbs(1.7 ton)以上、AGM-114ヘリファイアー(Hellfire)、CBU-12ぺイブウエイ(Paveway)およびGBU-49強化型ぺイブウエイ(Enhanced Paveway)、およびGBU-38とGBU-54統合直接攻撃爆弾(JDAM=Joint Direct Attack Munitions)などを携行できる。

さらに空軍や海軍の戦闘攻撃機、大型爆撃機が中・高空から投下するレーザー誘導爆弾GBU-31/32などのJDAMも携行・投下できる。

中央軍が発表したビデオには、MQ-9が装備するカメラが捉えたイラン軍の移動中のミサイルやドローンの発射車両、駐機中の航空機、などをMQ-9搭載のミサイル・爆弾が破壊巣る様子が写っている。

図2:(US Central Command)画面中央に走行中の大型トラック、図3に示す3秒後にミサイルで破壊された。

図3:(US Central Command)前図大型トラックにミサイルが命中。

図4:(US Central Command)掩体壕に収まるミサイル発射機

図5:(US Central Command)1秒後にミサイルが着弾、これから大爆発が起きる。

図6:(US Central Command)誘導路上をタキシーする4発輸送機(C-130)。

図7:(US Central Command)ミサイルが命中、破壊

図8:(US Central Command)ロシア製4発ジェット輸送機(Il-76)。

図9:(US Central Command)1秒後にミサイルが命中、

中央軍は3月13日、2月28日に開始した「Epic Fury」作戦の総括中間報告をした。参加兵員数50,000名で、空と海から6,000ヶ所のイラン軍の目標を攻撃、その中で海軍艦艇60隻以上、機雷敷設艦30隻以上を撃破した。これでイラン軍の交戦能力を著しく減殺させた。

戦闘に参加したのは空母打撃群などの海軍艦艇の他に、B-1B、B-52Hなどの爆撃機、 F-15E、F-16、F/A-18、F-22、F-35などの戦闘攻撃機、EA-18Gなどの電子戦機、偵察機、MQ-9などの無人機、PAC-3などのミサイル防衛システム、KC-135などの空中給油機、貨物輸送機、などである。

図10:(US Navy)3月5日、Epic Fury作戦でミサイル駆逐艦「トーマス・ハドナー(USS Thomas Hudner)」がトマホーク対地攻撃ミサイルを発射したところ。

図11:(US Navy)3月7日、米空母「アブラハム・リンカーン(USS Abraham Lincoln)」艦上で発艦準備中のEA-18Gグロウラー(Growler)電子戦機。

中央軍、ホルムズ海峡付近のミサイル基地を破壊

3月11日、中央軍は、ホルムズ海峡(Strait of Hormuz)に面したイラン軍使用の港湾施設を攻撃するため周辺民間人に退去するよう警告を発した。

3月17日、中央軍はホルムズ海峡に魔縁したイラン軍の対艦ミサイル集積地下壕に対し複数のGPU-72改良型5,000 lbsバンカーバスター爆弾(Advanced 5K Penetrator)で攻撃した。これで地下壕内に保管中の大量の対艦巡航ミサイルを破壊した。この爆弾は強固な掩体で防護され地中深くにある目標を攻撃する爆弾で重量は2,300 kg、B-1B爆撃機およびF-15E戦闘攻撃機に搭載する。事前の目標設定に係る情報収集にはMQ-9が貢献したのは間違いない。

この攻撃成功で、ホルムズ海峡を航行する船舶の安全性が著しく向上した。

図12:(生き物ライター/2021年3月16日イラン国営テレビ放送) イランの地下ミサイル基地に収納されてる地対艦ミサイル。主翼を外した状態で多数並んでいる。

図13:(US Air Force)F-15E戦闘攻撃機とGBU-72Bバンカーバスター精密誘導爆弾。

Epic Fury作戦での米中央軍の損害

イランは、湾岸地域にある米軍基地、アメリカ大使館、民間人居住施設、などに報復攻撃を行い、3月10日までにイラン軍の攻撃により米兵7人が死亡した。6名はクエートのポートシュアイバ(Port Shuaiba, Kuwait)で、1名はサウジアラビア・プリンス・サルタン空軍基地(Prince Sultan Air Base, Saudi Arabia)で戦死した。

3月13日には、イラク西部の上空で作戦参加中の空軍KC-135タンカー2機が空中衝突、1機は垂直尾翼を破損したが無事に着陸した。他の1機は墜落、乗員6名が死亡した。これで「Epic Fury」作戦で米軍兵士の死亡者数は13名になった。負傷して前線を離脱した兵士は150名を超えている。

戦闘開始して3日目になる現地時間3月2日午前7時ごろ、クエート(Kuwaiti)空軍の「F/A-18」戦闘攻撃機が、イラン軍攻撃から帰投中の米空軍「F-15E」戦闘攻撃機と遭遇、イラン機と誤認して射撃、3機を撃墜した。「F-15E」にはパイロットとウエポン・オフィサーの2名が乗っているが、6名全員が脱出に成功、無事に救出された。事件の起きた詳しい場所、敵味方識別装置使用の有無、使用したミサイル、など細部は公表されていない。

MQ-9 Reaper

US Air Force Fact Sheetには、大要次のように記述している。

図14:(US Air Force)アフガニスタン上空を飛ぶMQ-9無人機。

図15:(US Air Force)空軍基地に駐機するMQ-9無人機。

任務:情報収集と目標攻撃が任務。このため長時間の滞空性能を備え、多種類のセンサー・多様な通信手段を装備している。また高速で移動する高価な目標を捕捉し精密攻撃を加える兵器を搭載している。

MQ-9は、情報(intelligence)、監視(surveillance)、偵察(reconnaissance)の任務を遂行でき、戦闘のあらゆる場面で有人機を支援、協力して目的を完遂できる。

特徴:MQ-9は遠隔操縦航空機システムで、24時間にわたる飛行をするのに必要なセンサー類と攻撃に必要な兵装、地上操縦ステーション、衛星リンク装置、およびそれらの予備装備を備えている。

地上操縦ステーションには、有資格のパイロットとセンサーおよび誘導兵器を操作する有資格指揮員の2名が任務に就く。

MQ-9の基本システムは、頑丈な目視センサーの「多目標識別システム(MTS= Multi-Special Targeting System)」である。この「MTS-B」は、赤外線センサー、TVカメラ、短波長赤外線カメラ、レーザー照準器、およびレーザー・イルミネーターで構成されている。これで目標の正確な位置・動きを捉え、GBU 12 Paveway IIなどの精密ミサイルを発射・正確に着弾させる。

MQ-9システムは簡単に分解でき専用のコンテナに収納しC-130輸送機などで世界中どこの空軍基地へでも輸送できる。そして再組立が終わったら、標準的な空軍基地にある地上データ・ターミナル・アンテナの情報を使って離着陸する。

MQ-9は、容量1,300 lbsの機外燃料タンクを取付ければ、さらなる長距離飛行ができる。この場合、離陸性能を向上させるためエンジンにアルコール・水噴射を行い、プロペラを5翅から6翅に変更する必要がある。

操縦方法は、遠隔分離オペレーションが基本。すなわち、前線基地でパイロットが離陸発進と帰還着陸だけを担当する。その他のミッションは、米本国の空軍基地にいる指揮・操縦パイロットが遠隔視認回線(line-of-sight link)を使って偵察や爆撃を遂行する。これは前線基地での負担を軽減し派遣要員を少なくするため、採用している方法である。

MQ-9の「M」は「multi-role (多任務)」、「Q」は「遠隔操縦航空機システム」、「9」は無人機として採用された9番目の機種の意味である。

要目は次の通り

製造企業:ジェネラル・アトミックス(GA-AS=General Atomics Aeronautical Systems)

エンジン:ハニウエル(Honeywell) TPE331-10GDターボプロップ・最大推力900軸馬力

翼幅:20.1 m

全長:11 m

高さ;3.8 m

自重:2,223 kg、

最大離陸重量:4,760 kg、(ER型は5,307 kg)

搭載燃料:602ガロン、(ER型は903ガロン)

ペイロード:1,700 kg、

航続距離:1,000 n.m. (1,850 km)、(ER型は1,400 n.m. [2,590 km])、

搭載兵装:AGM-114ヘリファイアー(Helifire)、GBU-12ぺイブウエイ(Paveway)II、

GBU-38統合直接攻撃爆弾(JDAM=Joint Direct Attack Munitions)、GBU-49強化型ぺイブウエイII、およびGBU-54レーザー統合直接攻撃爆弾、を組合せて搭載使用する

遠隔操作地の操縦員:パイロットとセンサー・オペレーターの2名

システム価格(2011会計年):5,650万ドル/約85億円(MQ-9航空機4機/センサー類、地上操縦装置およびサテライト・リンク[Predator Primary Satellite Link]を含む価格)

配備状況

MQ-9はこれまでに576機が作られた。米空軍が300機以上、その他の主なユーザーはイタリアとイギリス空軍、さらに少数機をNASA、国境警備隊(US Customs and Border Protection)、海兵隊などが使用している。

米空軍は、戦闘航空団(Air Combat Command)指揮下にある第49戦闘機連隊(Holloman AFB, New Mexico)、第53戦闘機連隊(Eglin AFB, Florida)、第432戦闘機連隊(Creech AFB, Nevada)で運用中。ヨーロッパ駐留米空軍がルーマニアとポーランド基地で運用中。空軍特殊作戦航空団(Air Force Special Operations Command)指揮下の第27特殊作戦連隊、Cannon AFB, New Mexico)、第58特殊作戦連隊(Kirtland AFB, New Mexico)で運用中。さらにエアナショナル・ガード(Air National Guard)の配下にあり全米に散在する10個攻撃連隊に配備されている。

MQ-9を改良、翼幅を24mにしたMQ-9Bスカイガーデイアン(SkyGuardian)およびこれに海面探査機能を強化したMQ-9Bシーガーデイアン(SeaGuardian)の生産が始まっている。後者は我が海上自衛隊で哨戒機として採用、また海上保安庁も採用している。

終わりに

一般にはあまり注目されていないMQ-9無人機が今回のイラン攻撃で、かなりの活躍を示したことが分かった。中国、ロシア、北朝鮮の脅威が一層高まる東アジアにある我国の防衛体制の整備にも大きな参考になる。海自、海保によるMQ-9B シーガーデイアンの配備だけでなく、在来型のMQ-9Aの採用も重要な選択肢となるのではないか。

―以上―

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

  • Air & Space Forces Magazine March 11, 2026 “MQ-9’s Over Iran: Striking and Finding Targets-But Taking Some Losses” by Chris Gordon and Stephen Losey
  • US Department of War March 13 2026 “This Week in DOW: Dismantling Iran Threat, Protecting Homeland, Sharpening Arctic Readiness” By David Vergun
  • Air & Space Forces Magazine March 13, 2026 “Six Airman Dead in KC-135 Crash, First Air Force Fatalities in Iran War” by Chris Gordon and Stephen Losey
  • Air & Space Forces Magazine March 16, 2026 “American Forces in Europe Key to War Agaist Iran: EUCOM Boss” by Chris Gordon
  • US Air Force Fact Sheet “MQ-9 Reaper”
  • Yahoo 2026年3月18日 “ホルムズ海峡で最大の脅威はイランの機雷で絵はなく地対艦ミサイル” By 生き物ライター