無人機、巡航ミサイルに関連したニュース


2025-11-23(令和7年) 松尾芳郎

一般のマスメデイアで報道されなかった最近の無人機、巡航ミサイルに関連したニュースを採り上げ、解説する。内容は、①ジェネラル・アトミックスが開発する無人行動戦闘機の2機目が初飛行したこと、②新明和が開発中の無人飛行艇の5分の1モデルが初飛行したこと、③グリッド・エアロが太平洋島嶼防衛のため無人貨物輸送機“空飛ぶピックアップ・トラック”の開発を進めていること、④ドイツ・タウルス巡航ミサイルに川崎重工製「KJ 300」ターボファンを搭載する件について両社が契約文書を取り交わしたこと、の4点について紹介する。

図1:(GA-ASI) GA-ASI開発の無人戦闘機 CCA [YFQ-42A]の2号機が初飛行した。

ジェネラル・アトミックス・エアロノーテイカル・システムズInc. (GA-ASI=General Atomics Aeronautical Systems Inc.)が開発中の無人共同戦闘機 (CCA=Collaborative Combat Aircraft) [YFQ-42A]の2号機が完成、初飛行した。日時は公表されていないが、開発中のアンドウリル製「YFQ-44A」が同時期に初飛行しており、その数日後と見られる。これで有人戦闘機の護衛に就く無人戦闘機が実現に向け大きな一歩を踏み出した。[YFQ-42A]1号機は今年8月27日に地上操縦ステーションの監視下で初飛行している。

GA-ASI社は、今年11月4日〜6日にローマ(Rome)で開催された[International Fighter Conference(国際戦闘機会議)]に[YFQ-42A]の実物大の模型を展示、また同年9月22日〜24日には米国メリーランド州で行われた[Air & Space Force Association (AFA)主催の[Air, Space & Cyber Conference] でも同模型を展示した。

アンドウリル(Anduril)製[YFQ-44A]の1号機は2025年10月31日に初飛行したと空軍が発表している。初飛行の時間等詳細は不明だが、アンドウリルによると、飛行は地上パイロットが操縦桿やエンジンを操作しない「セミ自律飛行 (Semi- Autonomously)」状態で行われ、離陸、巡航、着陸を地上から監視して実施した、と言う。

空軍は有人戦闘機を護衛し共同で戦闘に参加する無人共同戦闘機(CCA)の開発第1段階(Increment 1)として、有人戦闘機F-22及びF-35と共に空対空戦闘に参加するCCAの実用化を急いでいる。空軍はGA-ASI社の[YFQ-42A]、アンドウリル社の[YFQ-44A]の2機種を選定、2026年に生産協定を結び2年以内に合計約100機を製造・配備する予定。第2段階では、2025年の選定に漏れた企業の提案も含めて、取扱特性・ミサイル発射能力等に関わる評価を行い、最終的な機種選定をする。

図2:(General Atomics Aeronautical Systems Inc.) [GA-ASI]は、本拠地サンデイゴ(San Diego, Calif.)近くの「グレイ・ブット飛行場(Gray Butte Field)」で[YFQ-42A]1号機、2号機が並んで駐機する様子を公開した。

アンドウリル社は、10月31日、カリフォルニア州ビクタービル(Victorville, Calif.)の南カリフォルニア・ロジステイック空港にある同社の施設で[YFQ-44A]の初飛行を行った。ここはCCA試験が行われるエドワーズ空軍基地の直ぐ近くにある。

図3:(Anduril)2025年10月31日、初飛行したアンドウリル[YFQ-44A]。

GA-ASI社は、[YFQ-42A] 2号機の初飛行発表に続いて、対地攻撃用に使う新しいCCA系列機「ガンビット6(Gambit 6)」(口火、先手の意)を発表した。開発中の[YFQ-42A]を基本にモジュール化・改修して対地攻撃用に仕上げる。[YFQ-42A]の動体基本構造・エンジン・ランデイングギア・情報処理用のプロセッサーはそのまま使い、使用目的に特化した装備を追加あるいは変更して要件に合う機体に仕上げる。

GA-ASI社では「ガンビット」の役目を目的別に分類している。すなわち;―

  • 長距離飛行で「諜報・監視・偵察 (intelligence, surveillance, reconnaissance)」を担当
  • 空対空戦闘を担当
  • 訓練で仮装敵の役目を遂行する機体を担当
  • 空母艦載型のCCA

「ガンビット6」は、敵の対空防御網を弱体化させる(SEAD=suppression of enemy air defenses) 電子戦装備を備え、敵地深くに侵入、精密攻撃する多目的無人機となる。胴体内のウエポンベイを縮小し、空いたスペースに先進型自律飛行装置、センサー、兵装システムを取付け広範囲な用途に適合させる。

「ガンビット6」は、ヨーロッパ向けに輸出を検討中で、2029年には欧州版を提供し、現地企業との共同生産もできると言っている。

GA-ASI社では、「ガンビット」の目的別2番目に記載した「空対空戦闘を担当」分類が[YFQ-42A]、と位置付けている。これで性能向上、低価格、及び厳しい環境下での生残性向上を達成可能、と説明している。

図4:(GA-ASI)空対地攻撃用CCA 「ガンビット6 (Gambit 6)」の想像図。外見は[YFQ-42A]と殆ど変わらない。

  • 2025年10月14日発表:新明和工業、開発中の無人飛行艇の1/5モデル「XU-M II」 が初飛行に成功

図5:(新明和工業)新明和工業が作る5分の1の実証試作機「XU-M II」が102日に初飛行を実施。場所は神戸市近くの同社航空機事業部甲南工場沖。

我国の本州と附属する多数の島嶼の海岸線から沖合200 nm (370 km)に広がる海、即ち「排他的経済水域(EEZ=Exclusive Economic Zone)」の広さは、ヨーロッパ全体の面積よりも広い。この広大な海面と海中を海上自衛隊・海上保安庁の艦艇で常時監視するのは時間を要し、効率的ではない。差し迫った敵の脅威を把握するのに数日から1週間もかかる。

防衛省はこれを改善するため、航空機を使っての監視体制を強化を急いでいる。

哨戒機P-3Cを1983年から101機調達運用してきたが、今では内65機が除籍されている。この後継として哨戒機P-1を35機保有し、今後50機程度まで増やす計画だ。同時に海洋監視に特化した30時間滞空可能なGA-ASI製の無人偵察・監視機「MQ-9Bシーガーデイアン(Sea Guardian)」を2028年から2032年にかけて23機導入することを決めた。海上保安庁は同じ「MQ-9Bシーガーデイアン(Sea Guardian)」5機体制で運用開始したばかり、これから更に4機を追加配備する。

並行して政府は国産で水陸両用の無人飛行艇を開発し、これに[ISR]機能、即ち情報(intelligence)、監視(surveillance)、偵察(reconnaissance)、機能を搭載し、広大なEEZ海域の警備能力を高めようとしている。

無人飛行艇の開発は、飛行艇の開発に長い歴史を持ち、大東亜戦争では海軍向けに97式飛行艇、2式大型飛行艇を大量生産し、戦後は海自向けに「US-2」救難飛行艇を製造する「川西航空機」改め「新明和工業」が担当する。「US-2」飛行艇は、世界中で多数使われているロッキード・マーチン製「C-130」輸送機用のロールス・ロイス製AE 2100Jターボプロップと同じエンジンを4基装備している。

新明和は、実用機の5分の1サイズの模型機を製作、今年10月2日に航空機事業部甲南工場沖で試験飛行を行った。遠隔操作で双胴飛行艇を離着水させるなど、基本的な性能の確認を行なった。

新明和は、国立研究開発法人科学技術振興機構「JST」が進める「経済安全保障重要技術育成プログラム」の中で「双胴型無人飛行艇実証機」の開発を担当している。初飛行した[ XU-M II ]は、「双胴型無人飛行艇実証機」開発に必要なデータ収集および課題把握を目的にした1/5サイズの模型である。

実装する自動操縦機能には、2025年3月に行なった単胴型無人飛行艇模型機 [ XU-L ]用に開発したシステムの改良型を使う。

模型機「XU-M II」(Experimental Unmanned Utility aircraft-Marine type)は、全長3.86 m、翼幅5.5 m、高さ1.05 mでペイロードは10 kg、巡航速度は72 km/hr。

従って実用無人飛行艇は全長19 m、翼幅27.5 m程度、そして中央翼下面には様々なペイロードを牽架・装備する型式になる。

新明和の実用無人飛行艇について、英国の[Flight Global /(November 1st, 2025)] 誌は次のように述べている;―

実用無人飛行艇は、「US-2」と同じく「境界層制御システム(BLC=Boundary Layer Control system)」を装備し、第5のエンジンを搭載、ここからの高圧空気をフラップ上面に吹付け揚力を増やし、荒天下での離着水性能を維持する。

図6:(川崎重工)新明和「US-2」救難飛行艇の「境界層制御システム[BLT]」には、川崎重工製が使われる。

日本政府は、新明和の無人飛行艇開発を急いでいる。主たる用途は敵潜水艦の制圧だ。敵潜水艦を探知・攻撃するための「自律潜水艇 (AUV =autonomous under water vehicle)」を搭載し、疑わしい海域に着水してAUVを放出し、離水する。AUVが敵潜を探索・攻撃し、任務を遂行したら、再び着水しAUVを回収して基地に戻る、と言う使い方を想定している。

この方式でEEZ海域の監視・防衛をすれば、現在より遥かに迅速、確実、しかも安価に目的が達せられる。これで戦闘員を危険に晒すことなく、有害物質の排出量も著しく少なくなる。

図7:(新明和工業/日刊工業新聞)2025年9月4日神戸国際展示場で開かれた産業総合展示会「国際フロンテイア産業メッセ2025」で、展示した無人飛行艇の1/5サイズの試験機 [ XU-M II ]。

図8:(新明和工業)2025年3月、単胴型無人飛行艇模型機 [ XU-L ]が遠隔操作・自動離着水に成功。これで開発した自動操縦システムを改良して[ XU-M II ]に使う。

  • 2025年8月18日発表:グリッド・エアロ、太平洋島嶼防衛用無人貨物輸送機開発で空軍と契約

図9:(Grid Aero) グリッド・エアロ製「Lifter Lite (リフター・ライト)」は、全長 51 ft (15.5 m)でセスナ・スカイクーリエ(Cessna Skycourier)と同じサイズ、エンジンはP&WC製PT6ターボプロップ1,100馬力を装備。長さ500 m未満の不整地滑走路で離着陸ができる。

グリッド・エアロ(Grid Aero)は、2024年にカリフォルニア州サン・ラーンドロ (San Leandro, Calif.)で創立したばかりのスタートアップ企業。この会社が太平洋上に散在する島嶼群の防衛用として、小型の無人貨物機 “空飛ぶピックアップ・トラック” 開発を発表した。このドローンは 「リフター・ライト(Lifter Lite)」と言い、600万ドルを元手に開発を開始、空軍研究所 (Air Force Research Laboratory)が進めている「スタートアップ企業の革新技術支援基金システム [ AFWERX ]」の「小規模企業の革新研究フェーズII」として今年8月18日に選定され、空軍の支援を受け開発を急いでいる。

図10:(Cessna) 「リフター・ライト(Lifter Lite)」とほぼ同サイズの「セスナ・スカイクーリエ(Cessna Skycourier)」。全長16.8 m、翼幅22 m、最大離陸重量8,400 kg、巡航速度390 km/hr、P&WC製PT6A-655C・1,100馬力ターボプロップ2基装備。有人機なので装備が充実している。

“「Lifter Lite」(小型輸送機の意)は、数トンの貨物を搭載、数千キロを飛行できる。正確な数字は発表していなが、同社のCEO アーサー・デウボイス(Arthur Dubois)氏は、「1,000~8,000 lbs (500 ~4,000 kg)の貨物を積んで1,500 miles (グアムから日本までの距離)を飛べる」と語っている。

アーサー・デウボイス氏は「グリッド・エアロ」を創業する前に、自律飛行無人機のスタートアップ[Xwing](2016年発足)社に在籍して技術部門を担当、2024年空軍が実施した[Agile Flag exercise](敏捷性演習の意)で使うセスナ機を無人機に改造する仕事を担当、600 kmも離れた基地間の飛行を成功させた、と言う実績がある。

デウボイス氏は「[Lifter Lite]の開発のきっかけを次のように語っている。

「軍および民間の当事者が漠然と感じていた “ピックアップ・トラック” みたいな輸送機があれば便利だな、と言う思いにヒントを得た」。

そして「そうだ、これでいこう。長距離を飛ぶ低価格で自律飛行が出来る無人貨物機を大量に配備すれば、軍用だけでなく民需でも大きな需要があるはずだ。[Xwing]での[Agile Flag exercise]での経験も大量輸送に反映できる、と気づいた」と話している。

原型機の開発は今年1月に始まり半年後に組立て完了し、秋から地上試験が始まっている。

広く使われているC-130輸送機は最大35,000 lbs (約7.8 ton)を搭載するが、[Lifter Lite]はずっと小型。しかし複雑な戦闘環境の下で敏捷に飛び回れる能力を備えるので利便性は著しく高い。また、大規模な中核の基地から遠方にある未整備な航空基地への輸送にも便利である。

太平洋にある(グアムやハワイなど)重要基地は、増大する中国のミサイル攻撃の脅威に高度な対処能力が必要、しかし点在する小規模基地は直接攻撃を受ける恐れはさほど高くない。このため航空戦力を集中配備から小規模基地への分散配備すれば、攻撃に対する抗堪性がずっと高くなる筈だ。こうした考え方で、グリッド・エアロ社は無人貨物機「リフター・ライト」を大量に使い、重要基地の分散配備に役立とうとしている。

図11:(Grid Aero) グリッド・エアロ社製 [Lifter Lite]ドローンが多数機で戦場近くの小規模基地に展開、物資輸送をする想像図。

多数機に貨物を分散搭載することで、一部の機体が撃破されても、ミッション自体は達成される。

多数機が相互に連絡し飛行するには「自律飛行技術(autonomous technology)」が必要、このソフトには、ドローン同士の連携だけでなく、必要に応じ人間の意志が入れるようにする。

記述したが「リフター・ライト」は、低価格、頑丈、簡単な “ピックアップ・トラック”で、貨物室と不整地滑走に耐えられるランでイングギヤを備えている。

グリッド・エアロ社は、[Lifter Lite]ドローンを貨物輸送だけでなく、これに[ISR]、即ち、情報(intelligence)、監視(surveillance)、偵察(reconnaissance)、機能を搭載、さらに空中給油の機能を付与し、他のドローンを指揮・監督するマザー・シップとして使うことも空軍に提案している。

小型ドローンに着目しているのはグリッド・エアロ社だけではない。「ジョビー・アビエーション(Joby Aviation)」社は、デウボイス氏が在籍していた [Xwing] 社を2024年6月に買収し「L3 Harris」社と共同で垂直離発着型の自律飛行無人機を開発中である。また「リライアブル・ロボテイクス(Reliable Robotics)」社は。セスナ・スカイクーリエを自律無人貨物機に改造する事業を始めている。

グリッド・エアロ社の経営陣には顧問会議があり、3名の退役空軍高官がメンバーとして名を連ね、CEOのデウボイス氏に助言する体制を採っている。3名は、レオナルド・コシンスキー(Leonard Kosinski)退役空軍中将で元統合幕僚本部戦略担当部長、ローレンス・M・マーチンJr.(Lawrence M Martin Jr.)退役空軍大将で元航空輸送軍団司令官で空軍国際情勢担当副司令官を兼任、ステイーブ・マーシャル(Steve Marshall)退役空軍中佐で元太平洋空軍国際情勢部長。これら空軍OBの助言が「リフター・ライト」の仕様に反映され、実現性を高めているのは間違いない。

図12:(Grid Aero) [Lifter Lite]は頑丈な貨物室/胴体、極めて簡単な構造と判る。

  • ドイツ・タウルス製巡航ミサイルに、川崎重工製エンジン技術を採用か

図13:(MBDA) ドイツ・タウルスが作る長射程(500 km)巡航ミサイル「KEPD 350」。後ろには搭載母機になるトーネード(Panavia Tornado)戦闘攻撃機。

ドイツの巡航ミサイル・メーカー「タウルス・システムズ社 (Taurus Systems GmbH)」が日本の川崎重工業と、巡航ミサイル用の小型ターボファンの共同開発・技術協力を検討している。内外のメデイアによると、両社は2025年の春頃に協議を開始、5月に幕張メッセで開催された「統合型防衛・セキュリテイ展示会 [DESI Japan 2025]」で、協力覚書 (MOU) を交わした。

「タウルス・システムズ社」は、[MBDAドイツ]とスエーデンの[サーブ・ボフォース・ダイナミックス]が共同で設立した企業。「タウルス・システムス」が開発した空中発射型巡航ミサイルは「KEPD 350」で、ドイツ。スペイン、韓国の空軍で採用されている。

「KEPD 350」は、重さ1,400 kg、長さ5 m、直径 1 m、展張時の翼幅2 m、の大きさで戦闘機に搭載、発射する。炸薬480 kgを搭載、高度 50 mの低空をマッハ1近くの高速で飛行する。発射母機から投下されると主翼を展張して目標に向かって飛行、500 km以上離れた目標に正確に着弾・破壊する能力を持つ。

図14:(Taurus Systems)タウルス・システムズ社が開発した「KEPD 350」巡航ミサイルの実物大模型、2025年5月幕張メッセで開催の「DESI Japan 2025」で展示された。主翼は搭載時には重なっているが、発射後左右に展張する。

いくつかのバージョンがあり、そのうちの一つが「バンカー・バスター(bunker buster)」、強固なコンクリート防護壁に囲まれた施設を破壊する。炸薬を胴体の先端と中央に搭載し、着弾すると先端の炸薬でコンクリート防護壁(厚さ5 m)を破壊・貫徹し、続いて中央の炸薬で内部を粉砕すると言う仕組み。また、弾頭に「空中炸裂(air burst mode)」用の炸薬を使えば、広範囲に駐機中の航空機やレーダー施設を制圧できる。

ウクライナはドイツに対し強く「KEPD 350」の供与を申し入れているが実現していない。

「KEPD 350」のエンジンは、米国ウイリアムズ製「Wj38-15」ターボファン、誘導にはIBN(画像照合航法)、INS(慣性航法)、GPS、TERCOMを併用している。発射可能母機/プラットフォームは、トーネード、F/A-18、F-15K、サーブ39、タイフーンなどの戦闘機。

図15:(The Telegraph) タウルス巡航ミサアイル「KEPD 350」の概念図。

タウルス・システムス社は、長距離性能を向上した「タウルス・ネオ(Taurus Neo)」の開発を進め2029年にドイツ空軍に納入を目指している。これに搭載するエンジンとしてタウルス社は、川崎重工が開発した2軸式ターボファン「KJ 300」か、その改良型の採用を検討している。

川崎重工は、標的機用に小型のターボジェット「KJ14」や推力を増やした「KJ100」を開発している。「KJ100」は2019年6月開催のパリ航空ショーに展示した。当時防衛省に採用される目処は立っておらず、海外のUASや巡航ミサイルに注目されることを期待して展示した。

その後「KJ100」で得た知見を基に、さらに推力を増やし、効率の良いターボファン「KJ300」を開発、島嶼防衛用の三菱重工製「12式地対艦ミサイル・能力向上型」に採用が決まった。

これとは別に、川崎重工は「KJ 300」を装備する「新地対艦・地対地精密誘導弾」の開発を進めていて2027年に試験、直ちに量産に入る予定である。これは「12式地対艦誘導弾能力向上型」の後継と位置付けられ射程は2500 kmに達する。

また川重は単軸式ターボジェット「KJ10」のターボファン化にも取り組んでいる。

「KJ100」エンジンは、推力400 kg (約900 lbs)、重さ68 kg、直径35 cm、長さ86 cm、燃料管制装置はFADEC方式。

「KJ300」エンジンは、「KJ100」を2軸化したターボファンで、推力は約365 kg、直径35 cm、長さ95 cm、重さ90 kg、燃費性能が大きく向上している。

図16:(川崎重工)2024年国際航空宇宙展で展示した「KJ100」単軸式ターボジェット。推力400 kg。大型標的機、巡航ミサイルのエンジンとして使用可能。

図17:(川崎重工)2024年国際航空宇宙展(東京ビッグサイト)で展示した「KJ 300」2軸式ターボファン。推力365 kg、直径35 cm、長さ95 cm、重さ90 kg。

図18:(川崎重工)「KJ 300」の内部構造

図19:(川崎重工/高橋浩佑氏(米デイプロマット誌 東京特派員)川崎重工が2024年国際航空宇宙展で公表した「新地対艦・地対地精密誘導弾」の図。これは、相手の脅威圏外から発射できるスタンドオフ・ミサイルで「KJ 300」ターボファンを装備する。

終わりに

以上、冒頭に述べた4点について紹介した。すなわち;―

  • ジェネラル・アトミックスの無人共同戦闘機の2機目の初飛行、
  • 新明和開発中の無人飛行艇の5分の1モデルが初飛行、
  • グリッド・エアロの無人貨物輸送機“空飛ぶピックアップ・トラック”を開発、
  • ドイツ・タウルス巡航ミサイル・メーカーと川崎重工がエンジン開発で協力、

いずれも昨今の緊張高まる世界情勢を反映して、開発が急がれている。注目して見守りたい。

―以上―

本稿作成の参考にした記事は次の通り。

  • General Atomics Aeronautical Systems Inc. Home
  • Air & Space Forces Magazine Nov. 4, 2025 “General Atomics Flies Second CCA, Announces New Ground-Attack Drone” by John A. Tirpak
  • Air & Space Forces Magazine Oct. 31, 2025 “Anduril’s CCA Makes First Flight; YFQ-44A Flies Semi-Autonomously” by John A. Tirpak
  • TokyoExpress 2025-7-31 “GA-ASIとAndurilが開発中の無人戦闘機/CCAの現況“
  • 新明和工業News 2025年10月14日”無人飛行艇[ XU-M II]が初飛行に成功“
  • F light Global 2025-11-1 “How Japan is using ShinMeiwa seaplane exertise to boost its environmental response”
  • 日刊工業新聞2025-9-5 “新明和、神戸国際展示場の産業総合展示会で開発中の無人飛行艇1/5モデル[XU-M II]と高高度無人機(HAPS)の1/5モデル[XU-S II]を公開“
  • Air & Space Forces Magazine Aug. 18, 2025 “New Startup Unveils Autonomous Cargo Drones for Distributed Pos in the Pacific” by  Greg Hadley
  • Aviation Week August 18 2025 “ Grid Aero Unveils Cargo UAV for U.S. Military” by Garrett Reim
  • Forbs Japan 2035-8-21 “台湾有事に備える米軍事スタートアップが開発。”自立型貨物機“の性能” by Jeremy Bogaisky
  • 乗り物ニュース2025-11-2 “巡航ミサイルに日本製エンジン搭載へ?その現実味・ウクライナも熱望の破壊力” by 竹内 修
  • J Defense News 2025-5-27 “DESI Japan 2025短報―タウルス・システムズ” by 竹内 修
  • ミリレポ 2025-10-20 “ドイツ・タウルス、川崎重工と巡航ミサイル用エンジン技術で協議、次世代ミサイル開発の狙い”
  • Yahoo News 2025-10-18 “川崎重工業、独タウルスの巡航ミサイル用新型エンジンの共同開発に向けて協議 その意味するものは?” by 高橋浩佑
  • 川崎重工業 歴史2025-3-11 “世界最高水準の技で社会価値を創造”最近の25年間部門史135頁
  • J SDEFECSE News 2025-5-27 ”DESEI Japan 2025短報―タウルス・システムズ”by竹内 修