2015-02-06 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部によると(2015-02-05)、ロシア空軍の電子戦情報収集機IL-20型機1機と、同じく海軍の対潜哨戒機IL-38型機2機が相次いで我国に接近したため、空自戦闘機が緊急発進し対応した。IL-20は我が国固有の領土、択捉–国後両島間の領空を侵犯した後立ち去った。IL-38 の2機は北方から飛来し、本州日本海側に沿って往復したが領空侵犯はなかった。
我国では、余りにも頻繁な露軍機の接近飛行に慣れ、官民ともに危機感が薄らいでいる。仮に我が海自の哨戒機P-3Cが、ロシア沿海州に接近/飛行したらどのような対応を受けるだろうか。我国に対する露軍機の度重なる接近飛行に、政府はその都度厳重抗議すべきと考える。
図:(統合幕僚監部)2月5日発生した露軍機の領空侵犯、接近飛行の航跡。
図:(統合幕僚監部)1950-1960年にかけて約600機作られたイリューシン(Ilushin)製旅客機Il-18を、電子戦情報収集機に改装した”IL-20 Coot”。クズネツオフ製NK-4またはイフチェンコ製AI-20ターボプロップ(4,000shp)4基を装備、最大離陸重量64㌧、航続距離6,500km。前部胴体下部に長さ9mのSLAR(Side Looking Airborne Radar)ポッドを装備、胴体頂部には通信傍受用アンテナ2個が見える。乗員5人と情報蒐集要員8名が乗務する。1968年に初飛行、約20機が運用中。系列機に”Coot A”、”Coot B”、”Coot C”、がある。
図:(統合幕僚監部)同じくIl-18型4発ターボプロップ旅客機を基本にして、対潜哨戒機に改装したのがIl-38。1967年初飛行、以来40機近くがロシア海軍で使われている。Il-18の胴体を4m伸ばし、主翼を前方に移動し、尾部にはMAD(磁気探知装置)を装備している。前部胴体の下にあるドームはレーダー。胴体前後には兵装庫があり対潜魚雷などを収納できる。