ロシア空軍の電子情報収集機、連日のように我国周辺に飛来


2015-02-08 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部によると(2015-02-07)、ロシア空軍の電子情報収集機Il-20が前日に続いて我国の北方領土である択捉–国後両島間の領空を通過し、本州三陸沖に飛来、同じ航路を引き返した。航空自衛隊戦闘機が緊急発進、本州領空への侵入を阻止した。

露軍機の行動に付いて、関係筋は北海道北東部と南東部および本州北部に設置されている我が空自および米軍のレーダー設備の反応と、三沢に駐屯する米空軍の通信傍受が目的、と推定している。

ロシアは、ソビエト崩壊後暫く混迷が続いていたが、2008年からプーチン政権の下で国軍の再建を開始。当時の原油高もあり、軍事費は2007年当時から2013年までの間に4倍に膨張している。

2010年には空挺師団を含む緊急展開軍を創設、これが2014年春のクリミヤ半島への急襲、占拠に繋がった。空軍の活動も急速に活発化し、世界規模で戦争抑止ミッションと称して、北極圏、ノルウエイ、地中海、バルチック海、黒海、大西洋、太平洋の各空域パトロールを再開した。この一環として我国周辺の飛行が増加している。

この地域に配備されている我国の防空レーダーの型式は、北から稚内/FPS2、網走/FPS-4、根室/FPS-2、襟裳/FPS-20・6、大湊/FPS-5、加茂/FPS-3、山田/FPS-2である。このうち加茂のFPS-3と大湊のFPS-5は、弾道ミサイル探知・追跡用レーダー。

FPS-3は1991年から配備が始まったレーダーで、2009年までに弾道ミサイル追尾能力向上改修が行われFPS-3改となり、全国に7基配備されている。

FPS-5は高さ34mの六角形建物にL、S波帯レーダー1面とL波帯レーダー2面の計3面のアンテナが設置され、建物と一緒にゆっくり回転する方式。2208-20011年で全国に4基が設置されている。また、米軍の可搬型X波帯レーダーAN/TPY-2は青森県車力分屯地と京都府経ヶ崎分屯地に配備されている。露軍機はこれ等のレーダーの能力調査をしているようだ。

関連する記事として「我国のミサイル防衛[BMD]は3段構えに」2013-09-23があるので参照されたい。

2:7 Il-20航跡

図:(統合幕僚監部)ロシア空軍電子戦情報収集機Il-20の2月7日の飛行航跡。

Il-20電子情報収集機

図:(統合幕僚監部)ロシア空軍電子戦情報収集機Il-20。

 

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