台湾トランス・アジア航空ATR 72の事故


2015-02-09 松尾芳郎

ATR72-600-TransAsia

図:(ATR) フランス−イタリア合弁会社であるATR社は、ATR 42 (48-68席)が好評だった事を受け、これを基に胴体を4.5m延長し、主翼幅を伸ばし、エンジンを強化したATR 72を製作し、フィンエアで就航を開始した(1989)。以来ATR 72は408機が作られ受注残は28機ある。

台湾のトランス・アジア(復興)航空が使用中の機体はATR 72-500(6機)と写真のATR 72-600(4+3機)。同社はATR72-500を-600に更新中で、2014年から就航を開始したところ。

ATR 72-600は68-74席型、全長27.17m、翼幅27.05m、翼縦横比12:1、最大離陸重量23㌧、エンジンはP&W Canada製PW127Mターボプロップ出力2,750 hpを2基。巡航速度は509 km/hr、航続距離は約1,670km(900 nm)。

 

トランス・アジア航空ATR 72-600型機、台北の松山(Taipei-Sung Shan)空港から金門島行きFlight GE235は、離陸後台北近郊の基隆河に掛かる高架道路に接触、河に墜落した。乗員乗客58名中40名が死亡、15名の負傷が確認され、不明は3名となっている。

同機は、台北松山空港ランウエイ10を現地時間10:51に離陸しやや右に変針、高度1,350㌳(450m)に上昇した。10:52にコクピットでマスター・ウオーニング(警報音)が鳴り、No. 2(右側)エンジンのフレーム・アウト対処メッセージがでた。それから26秒後にNo. 1(左側)エンジンのパワーレバーがアイドル位置にされた。(注:No. 2 (右側)ではない!)そしてその20秒後にNo. 1エンジンのレバーが燃料遮断にされ、No. 1(左側)エンジンは停止した。

これで右に向かいながら上昇していた機体は、やや左に向き始め高度と速度を落としコクピットでは失速警報が鳴り出した。10:53に、パイロットから管制塔に”Mayday (緊急事態発生)”、“エンジンがフレーム・アウト”の連絡がなされた。それからパイロットがNo. 1(左側)エンジンの再スタートを試みている間に機体は右に向き始めた。

この状態が10:54:20まで続いた。14秒後に失速警報が鳴って、撮影されたビデオにあるように機体は左翼を下にほぼ90°傾き、橋を走行中のタクシーに衝突した。そして左翼が橋の柵に当り大破した。機体は基隆河に墜落大破して裏返しとなった。墜落箇所は松山空港から東へ5.3kmの基隆河である。

松山空港

図:(Google)図は松山空港から東5.3kmの墜落地点までを示す。両者を結ぶ湾曲した太線は基隆河である。離陸した「松山空港ランウエイ10」は図左端やや上、事故機は離陸直後の10:52:38(観山河濱公園上空)でNo. 2エンジンが停止、パイロットは10:52:42に誤ってNo. 1エンジンをアイドルに戻す、機体はやや右に飛行、地図の環東大道上空で10:53:24 にNo. 1エンジンの燃料遮断、機体はそのまま飛行し、「墜落地点」矢印の橋柵に衝突、基隆河に墜落した。

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図:走行中の自動車からの写真。左翼を下にしながら墜落するトランス・アジア航空ATR 72-600型機。

 

事故機は前述のATR 72-600型、登録番号はB-22816、初飛行は僅か10ヶ月前の2014-03-28で新品同様の機体であった。

事故当時の気象情報は;—風は100度/10kt、1500㌳上空に僅かな雲、2800㌳上空に断雲、4000㌳上空に断雲、気温は16℃。

Flight Safety Foundationでは、事故原因を「Shutdown of wrong engine 」、つまり「間違ったエンジンを停止したため」と結論付けている。正式な事故報告はいずれ台湾航空当局から発表されるだろうが、変らないのではないか。

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

Aviation Safety Network-an exclusive service of Flight Safety Foundation at 4 February 2015

ATR Press Releases “TransAsia Airways order 8 firm ATR 72-600s” 11 July 2012