平成26年の日本政治の展望(その1)


–安倍内閣は順風満帆の航海–

 

2014-01-18 豊島典雄

 

 

安倍内閣支持率は回復

 

安倍晋三内閣も1昨年12月26日の発足から1年余りたった。与党は衆院の議席の3分の2を保持し、参議院でも過半数を持っている。国会運営では、保守系野党のみんなの党などの協力を得られる。自民党内には、安倍首相のライバルはいない。あらゆる経済指標は改善している。

また、安倍首相は外遊予算が足らなくなるほど世界を駆け巡っている。目的はアベノミクスのPR、日本への投資の呼びかけ、原発、鉄道などのインフラの売り込み、軍拡に狂奔し、周辺諸国を圧迫している中国へのけん制などである。成果を挙げつつある。

安倍首相は新年も中東・アフリカを訪問し、これから月内に、スイスのダボス会議、インド訪問、2月にソチの五輪と外遊も目白押しという八面六臂の活躍である。エンジン音も高く安倍政治は快調である。「政界一寸先は闇」であるが、今のところ安倍丸は順風満帆の航海である。

今回は、マスメディアの新年の世論調査で安倍晋三内閣の安定度や高支持率の背景を探ってみたい。

昨年12月06日閉会の臨時国会では、特定秘密保護法案への一部マスメディアの異常な反対キャンペーンもあり、安倍内閣支持率は約1割下落したが、元に戻りつつある。

1月4、5日調査の産経新聞とFNNの合同世論調査では安倍内閣支持率は52.1%と12月14、15日の調査より4.7ポイント増である。自民党支持率は38.9%で、前月比3.5ポイント増である。野党第一党の民主党の支持率は6.8%である。自民党一強の時代である。

「今回の靖国参拝を、中国と韓国が非難しています。あなたは、両国の姿勢に納得できますか、できませんか」とも聞いている。「納得できる」23.3%、「納得できない」67.7%。大人しく自己主張の弱い日本国民ではあるが、礼を失した中韓両国への反発が高まっている。

「デフレ脱却に向けた安倍内閣の取り組みを評価しますか、しませんか」とも聞いている。「評価する」63.7%、「評価しない」27.2%。安倍内閣の取り組みを3人のうち2人が評価している。

 

安倍内閣に長く続けてほしいが7割強

 

この合同世論調査では「安倍内閣は発足から一年がたちました。全体として、安倍内閣のこの1年間の実績を評価しますか、しませんか」とも聞いているが、「評価する」64%、「評価しない」28.2%だった。

さらに、「安倍首相に、いつまで首相を続けてほしいと思いますか」と聞いているが、「できるだけ長く続けてほしい」35.8%、「次の総選挙まで続けてほしい」38.4%、「あと1年程度は続けてほしい」11.5%、「できるだけ早く辞めてほしい」11.5%。近年、1年で首相が代わる猫の目内閣が続いていたが、国民は政治の安定、安倍内閣が長期政権になることを強く望んでいるのである。だから、個別の法案の審議や採決でマスメディアの反対キャンペーンの影響を受けて一時、内閣支持率が下がってもすく回復するのである。

1月11、12日調査のTBSの世論調査では、安倍内閣を「非常に支持できる」10.3%(前月比2.5ポイント増)、「ある程度支持できる」52.2%(前月比5.4ポイント増)、「あまり支持できない」29.6%(前月比1.8ポイント減)、「まったく支持できない」6.8%(前月比6.2ポイント減)、と3人のうち2人が支持している。内閣支持率は回復している。

1月12、13日調査のテレビ朝日の調査では、安倍内閣支持率は53.3%(前回比1.2ポイント増)。「安倍総理に、あとどのくらい政権を担当してほしいと思っていますか」とも聞いている。「なるべく長く続けてほしい」32%、「3年後の衆議院の任期まで」41%、「今年いっぱいまで」15%、「すぐに辞めてほしい」6%。やはり7割強の国民が長期政権を望んでいる。

 

悲惨な野党支持率

 

1月11日から3日間かけて行われたNHKの世論調査では、安倍内閣支持率は54%(前月比4ポイント増)、支持しないは31%(前月比4ポイント減)、各政党の支持率は自民党が40.4(3.7ポイント増)、民主党が5.8%(2ポイント減)、日本維新の会1.6%(0.5ポイント減)、公明党2.8%(同)、みんなの党0.8%(0.4ポイント減)、共産党1.6(1.5ポイント減)、結いの党0.1%、生活0.1%(0.1ポイント減)、社民党0.7(0.1ポイント増)、特に支持している政党がないが40.3%(1.6ポイント増)だった。新党の「結いの党」だが、まったくご祝儀がないのである。

参院選は2年半後の平成28年夏。衆院選は任期満了(28年末)近くとなれば3年弱後。2年半は国政選挙はないのである。野党の皆さんには厳しい冬の季節が続くのである。

 

野党再編はあまり期待されず

 

1月10日~13日に実施された時事通信の世論調査では、安倍内閣支持率は52.6%(5.5ポイント増)、不支持率は27.8%(前月比4.9ポイント減)。1カ月で5割台に回復した。「安倍晋三首相が政権2年目も『経済最優先』の姿勢を示し、景気も回復傾向にあることが背景にあると見られる。首相が昨年12月に靖国神社に参拝し中韓両国が反発、米国も『失望』を示したが、支持率を押し下げる要因にはならなかった」と見ている。

この時事通信の調査によると、内閣を支持する理由(複数回答)は、「リーダーシップがある」が前月比4ポイント増の18.4%で最多。続いて「ほかに適当な人がいない」15.1%、「首相を信頼する」15%。支持しない理由(同)は「期待が持てない」12.9%、「政策が駄目」10.7%、「首相を信頼できない」10.5%の順だった。

またこの時事通信の調査は野党再編についても聞いている。日本維新の会や結いの党などが目指す野党再編について、「期待しない」が56%に上がり、「期待する」32.8%を上回った。全体の六割を占める無党派層でも「期待しない」54.9%、「期待する」32%と、同様の傾向を示した。

結いの党はまず日本維新の会と合流し、さらに民主党内の仲間と一緒になろうとしているが、国民の目は覚めている。次々と新党ができて期待しても、期待が裏切られたことが続いているからである。

 

首相にふさわしい人の第二位に進次郎氏

 

この時事通信の調査では「次の首相にふさわしい人」を尋ねているが、安倍晋三首相が21.1%でトップ。2位は小泉進次郎内閣府政務官10.4%。次いで、自民党の石破茂幹事長7.1%、日本維新の会の橋下徹共同代表4.2%、石原伸晃3.9%、石原慎太郎2.3%である。

なぜ、安倍内閣は支持されているのだろうか。自民党のベテランAさんは

「われわれが積極的に支持されているというより、民主党への失望感ですね。民主党政権がマニフェストで約束したことをやらず、マニフェストにない増税を決定したりした。国民は若葉マークの運転手に一度は政権を任せたものの、危なっかしい運転振りを見て、もうこりごりと思っているんですよ。民主党政権が悪すぎた反動ですね」と言う。

 

理不尽な周辺国のおかげもある?

 

私は高支持率が続く理由として次ぎを挙げたい。

①、  平成に入り続いているデフレによる閉塞感を打破してくれるのではないかというアベノミクスへの期待感。

②、  アベノミクスが成果を現しつつある。アベノミクスで、8600円だった日経平均はほぼ倍増の16200円台に乗ったし、一ドル80円であった円も105円にまで円安になり企業収益も向上し、ボーナスなどでサラリーマンも恩恵を受けつつある。円安もあり外国人観光客が急増し、一千万人を超えた。日本に金を落としてくれている。デパートで高額品が売れているなど明るい話題が増えているのだ。

③、  中国、北朝鮮による軍事的威嚇。韓国の告げ口外交のおかげもある。わが国は、軍拡に狂奔する中国による尖閣での領海侵犯、北朝鮮による核の恫喝もあり、戦後最大の安全保障上の危機に直している。国民はころころ交代する猫の目内閣ではなく安定した政権を望むようになっている。

④、  国民に2020年東京五輪という目標を与えた。少年少女たちはアスリートになる夢を抱き、高齢者は五輪まで頑張ろうという目標を持った。空気を変え、世の中を明るくしたのである。

戦後最長の長期政権ランキングは佐藤栄作内閣(2798日)、吉田茂内閣(2716日)、小泉純一郎内閣(1980日)、中曽根康弘内閣(1806日)、池田勇人内閣(1575日)、安倍首相の祖父の岸信介内閣(1241日)である。

 

五輪まで続けば最長政権に

 

第一次安倍内閣と第二次安倍内閣であわせて2年1ヶ月。6年後の2020年の東京五輪まで安倍内閣が続けば、7年8ヶ月の佐藤栄作内閣を抜き、最長となる。

昨日、懇談した自民党幹部は「安倍内閣支持率が高く、長期政権化の様相を呈しているので、安倍首相に諫言する者がいなくなっている。党にも閣内でもだ。『一国、争臣無ければ危うし』。『殿、違います』といえる者が必要なのだ。苦言を呈する者、注意できる者がいなくなりつつある。まだ、第二次安倍内閣は1年間経っただけである。この傾向は良くないな」と言っていた。この指摘が当たっているかどうかは別として、政権の安定度が高いとはいえそうだ。

次回は安倍丸の前途に見える都知事選、消費増税、集団的自衛権に関する憲法解釈の変更、原発再稼動、消費再増税等の数々の障害物、暗礁を取り上げてみたい。

−以上−