三菱MRJの最終組立て始まる


2014-02-13  松尾芳郎

 

view0016671065

図(三菱航空機)三菱航空機製MRJリージョナル機の1号機の胴体組立てがほぼ完了し、飛島工場から最終組立てに向け出荷される様子。

 

001

図:(三菱航空機)MRJの量産には、最終組立を行なう小牧南新工場を中心に飛島、大江、岩塚の各工場、それに神戸造船所、松坂工場が新たに参画する。

 

002

図:(三菱航空機)MRJ主要構造部材生産の流れ、右から主翼部品担当の神戸造船所、胴体パネル担当の大江工場、それらが飛島工場でまとめられ、最終組立ての小牧南工場に搬入される順序を図示したもの。

 

三菱航空製リージョナル機MRJ初号機の最終組立がいよいよ始まる。親会社の三菱重工業は、これまでの遅れを取り戻すべくMRJの量産に向けた拠点展開の構想を発表した。

これによると、名古屋地区にある岩塚工場/小物部品、大江工場/中大型部品、飛島工場/胴体および主翼の組立て、および小牧新工場/最終組立、が中心となることには変りはない。加えて神戸造船所で主翼スキンと主桁、松坂工場で複合材部品および尾翼、が製作される。そして飛行試験は名古屋空港と北九州空港で実施する予定。

三菱航空機によると、飛行試験用1号機の胴体はほぼ完成し最終組立てに入るところ、主翼の外翼部分も出来上がり小牧南工場に搬入する段階、これで2015年第2四半期に初飛行を開始、そして2017年初めの就航を目指す、と云う。

地上静荷重試験用の2号機は組立中、そして飛行試験に使う予定の3機中の2機は現在大型部品の製作中である。合計5機でFFA型式証明取得を目指す。外誌の情報では、飛行試験は日本国内と米国でそれぞれ2機を使って行なわれる模様。

予定では、現在開発を急いでいる90席クラスのMRJ90とは別に、70席クラスのMRJ70の構想があるが、当面MRJ90の証明取得に力を注ぎ、取得後にMRJ70に取組む。

量産規模は、当初月産5機を考えていたが、現在3社から165機の受注があり引渡し遅れを取り戻すために、月産機数を7機から10機に引上げることを検討していると云う。

MRJの特徴は、“細めの胴体”、“アスペクト比の大きい主翼”で空力性能を上げ、“次世代エンジンP&W製PW1200ギヤードファンの採用”と併せ、燃費を競合機対比で15%向上させる点にあった。ところがこの発表の後に名乗りを上げたブラジルのエンブラエル(Embraer)製E-Jetは、MRJと同じエンジンを使い、新設計の主翼を採用することになった。

MRJ90と競合するE-Jetは、E-175(88席クラス)として370機以上の受注実績のある機体が基本で、これに新エンジンと新主翼を取付ける“第2世代E-Jet”である。2013年1月に開発計画が発表された。就航目標は2018年とされる。

これでE-Jet に対するMRJの性能上の優位性が減殺され、将来の受注競争に影響が生じる恐れがでてきた。

800px-LOT_Embraer_ERJ-170-100LR_170LR_Wadman-1

図:(Wikipedia)エンブラエルE-170。胴体長さが29.9mでE-175の31.7mより僅か短い。翼幅は両者同じで26m、エンジンはGE CF34-8E推力13,800lbs。第2世代E-Jetでは、エンジンと主翼が新しくなる。

競合するMRJは、胴体長さ33.4m、翼幅29.7m、エンジンはP&W製PW1215G推力15,600lbsとなっている。

−以上−

 

本稿作成の参考にした記事は以下の通り。

ものずくり2014-02-13“三菱重工、名古屋地区を中心に次世代リージョナルジェットMRJを量産”

Aviation Week 2014-02-13 “First MRJ’S Structure Complete, Neering Final Assembly” by Brad Perrett

TokyoExpress 2013-09-07 “三菱MRJ遅延問題、FAA新規則への対応に手間取る“