日米同盟を基軸に豪州、ASEAN友邦国と防衛協力、経済交流を強化すべし


2014年6月12日(JST.09:50)                   政治・外交評論家 伊達国重

『盗人猛々しい』ーとは言いたくないが、自衛隊機に一方的に異常接近を強行してきた中国の姿勢はこう断じても仕方ない。6月11日、東シナ海公海上空で起きた自衛隊機への中国空軍超音速戦闘機の行為は国際ルールを踏みにじるだけでなく、『日本側の指摘は事実に反する』とまたもや開き直った。外務省は首相官邸の指示で駐日中国大使館、北京の外務省に『再発防止と厳重抗議』を申し入れたが電話を通じてとは情けない。官僚の”お嬢さん外交”で対抗できる相手でないことを改めて思い知るべきだ。話し合い路線、友好第一等といっても聞き入れる姿勢は習近平政権にはない。『力がすべて。強い相手におもねる』のが旧社会主義大国の共通項だと気づかないのが不思議でしょうがない。同様の事態に見舞われたら欧米は世論、マスコミが黙っていない。弱腰の対応には我慢せずむしろ政府の尻を叩いて無法国家と対峙するのが歴史の教訓だ。

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[(海上自衛隊、岩国基地HP)中国空軍機に威嚇異常接近を挑まれた海上自衛隊、OP-3C画像情報収集機]

中国空軍機が、公海上空でも相手かまわず積極牽制行動に出る背景を産経新聞電子版(6月11日)が解説している。解く鍵は中国空軍、馬暁天司令官の発言。人民解放軍の機関紙『解放軍報』(4月2日付)が伝えている。空軍は『伝統的国土防衛(任務)から海上権益保護に乗り出す』。従来海軍航空部隊が担当していた沿岸空域の防空、迎撃活動を引き継ぐという。『我々が前面に出る』との対外宣言だ。5月24日もそうだったし、6月11日も東シナ海の公海上で自衛隊機に空中衝突寸前の威嚇異常接近を企てているのだ。スホーイSu-27『フランカー』の出撃を読み解かねばならぬ。再発防止策を求めるより、日本側も情報収集機の公海上での活動に牽制を受ければ、遅滞なくF-15『イーグル』戦闘機を護衛につけるべきではなかろうか。

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[(Sukhoi JSC)Su-27型機は主翼下には多数のミサイル搭載が可能で空中戦闘能力はF-15”イーグル”に匹敵]

GDP世界第2位と外貨準備No1を中国の対外政策は益々傲慢不遜になってきた。気位の高い国民性に火がついたと言っていい。そんな中国だが、強力な反撃を食うと意外ななもろさを見せる。古い世代はともかく、冷戦の真っ最中、旧ソ連、北ベトナムの社会主義国と戦果を交え、膝を屈した事件だ。旧ソ連との武力衝突は1969年、中ソ国境を分つアムール河(中国名、黒龍江)の支流、ウスリー川中州のダマンスキー島(珍宝島の領有権で発生した。中国軍の先制攻撃に旧ソ連が怒り、圧倒的重火力等の使用で当時の毛沢東政権を黙らした。いま一つは1979年の中越国境紛争。北部国境の複数箇所で侵攻した人民解放軍10万人の大部隊は、カンボジアに展開したベトナム精鋭部隊の帰国で情勢は逆転。中国軍は追い返えされ、多大の損害を被った。中国軍の軽戦車が装甲鉄板が不良でベトナム側の火力の前に次々破壊されたという。対越戦争を指導した鄧小平国家主席がその後、訪日し、新日鉄の支援で上海に宝山製鉄所建設を急いだ背景は良質な鉄鋼製品で戦車部隊の強化が真の狙い。人がいい日本財界はまんまと引っかかったのだ。

経済発展の背後で、日本からの円借款、技術支援の恩義等全く無視し、対日強硬政策、なかんずく日本固有の領土、尖閣諸島の奪取を狙いだした。例として挙げた2件の国境紛争の例は、手痛い火傷を負わないと引き下がらないのだ。社会主義国という兄弟関係の隣国にも手を出す非情国家が中国の実像。

幸い、日米関係は民主党政権の対米関係崩壊から安倍政権誕生でより堅固になりつつある。中国のところかまわぬ”膨張主義”に世界は遅まきながら気づきだした。ベトナム、フィリッピンとの昨今の国境紛争拡大は日本の積極的平和主義への国際世論の賛同を誘導している。米国に続き豪州との関係は、勝手の宗主国、英国の存在もあって

防衛分野の技術協力構築迄、グレードアップした。同国は将来、在来型潜水艦を日本の三菱重工、川崎重工に委ねる希望もあるらしいと外電が最近報じた。加えて中国進出企業の日本企業のASEAN諸国への移転が加速中だ。『中国よさらば!』。それぐらいの気概があってもいいではないか。さらに日本にとってインド新政権の対日友好姿勢だ。最初の訪問国に日本を選ぶ親日姿勢の真骨頂を示した。安倍晋三の地球儀を俯瞰する外交戦略の成果だ。日本の進路に誤りなきよう今後も一層活躍してもらわねば——』。

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[(防衛省)集団安全保障体制確立へ日米豪の絆は強まる]