米海軍の最新型攻撃原潜が露側の探知で強制的に退去。バレンツ海のロシア領海近くで発生。


2014年8月10日(JST.01:20)                              John Bosnitch

米海軍の最新型攻撃原潜が北極圏のロシア領海近くで探知され、強制的に露海軍対潜水艦索的部隊に退去させられた事が明るみに出た。露の有力メディアが8月9日、露海軍の高官の情報として報じた。米原潜は静粛性、ソナー探知をかわす特殊設計等で露海軍は簡単に探知すら出来ず、有事の際の弱点とされてきた。事実だとすれば、米海軍原潜部隊に取って衝撃であり、対露戦略を練り直す必要に迫られる。

露海軍が米海軍所属と思われる”謎の潜水艦”のロシア領海接近に気づいたのは8月7日。北極圏のバレンツ海で当時露海軍北方艦隊が、予告無しに対水上艦、対潜水艦攻撃訓練を行なっていたという。

露側は対潜水艦索的能力に優れた水上艦が海中の国籍不明の潜水艦をソナーで探知。空から対潜哨戒機イリューシンIL38『メイ』も加わり、27分間継続追尾したという。

探知に気づかれた潜水艦は潜んでいた海域を強制的に退去させられたと露北方艦隊が認めたという。国籍不明艦は露側の分析で相手は米海軍の最新型攻撃原潜、バージニア級(排水量7,800㌧)。海中発射が可能な巡航ミサイル『トマホーク』、ADCAP魚雷を装備。強力な攻撃力と船体の静粛性で露側に取って最も手強い、”眼下の敵”だった。露側が探知したと公表したのは異例。逆に米海軍に取っては衝撃。『ロシアに亡命した元米情報機関所属、コンピューター専門家、スノーデンが米海軍のトップシークレットを漏らした』(欧州の潜水艦アナリスト)との未確認情報も流れている。

米海軍は英国と協力、露原潜部隊の最大の根拠地、セベロドビンスク港に通じるバレンツ海との回廊入り口で、常時海中待機、露側の原潜の動きを細大漏らさず監視しているという。

時には、こうした任務に就く欧米の原潜との追いかけっこで衝突事件も報告されている。例えば、1992年起きた、米攻撃原潜『バトン・ルージュ』と露海軍の攻撃原潜『K−276』との衝突事故。1986年には英国の攻撃型原潜『スプレンディット』がSLBM搭載の旧ソ連、マンモス原潜『タイフーン』と接触事故も発生しているという。

露側は、2000年8月、118人の乗員もろとも水中で爆発、沈没した巡航ミサイル搭載原潜『クルスク』事故の引き金は、今回と同様の任務に就いていた米攻撃型原潜『トレド』との衝突と、今だに言い張っている。

米原潜の探知ほど難しい対潜水艦作戦はないとの見方が世界の海軍の定説。もしも、”神話”が破られたすれば米海軍に取って手痛い打撃だ。

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[(DOD RF)露海軍北方艦隊によるバレンツ海での抜き打ち訓練]

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[(GENERAL DYNAMICS ELECTRIC BOAT)世界最強の攻撃型原潜、米海軍のバージニア級]

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[(ILYUSHIN)露海軍の性能向上型、対潜哨戒機イリューシンIL-38N]