リージョナル航空の巨人、スカイウエストInc.


–三菱MRJを100機発注した「スカイウエストInc.」は、傘下にスカイウエスト航空、エキスプレスジェットを持つ世界最大のリージョナル企業–

 

2014-10-17 松尾芳郎

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図:(SkyWest)「ユナイテッド航空」のロゴ、「UNITED EXPRESS」でリージョナル路線を飛んでいる「スカイウエスト航空」のエンブラエルE-175。スカイウエストでは40機を発注済みで来年9月までに全機受領する。E-175は408機の確定受注があり、引渡し済みは227機。客席数は標準型2クラスで78席。エンジンはGE CF34-8E推力13,800lbsを2基。

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図:(SkyWest Inc.)「デルタ航空」のロゴ「DELTA CONNECTION」で飛行する「エキスプレスジェット」のボンバルデイア製CRJ-900型機。客席はデルタ用としては76席。エンジンはGE CF34-8C5推力13,400lbsを2基。確定受注は359機、引渡し済みは299機。

 

スカイウエストInc. (SkyWest Inc.)とは、米国のリージョナル航空「スカイウエスト航空(SkyWest Airlines)」と「エキスプレスジェット (ExpressJet)」、それに航空機リース会社を傘下に持つ持株会社である。

日本では無論のこと米国内でも名前を知られていないこの「スカイウエスト」は米国最大規模のエアラインで、全米、カナダ、メキシコ、カリブ海諸国を結び毎日4,000便の運航している世界で最も忙しい航空会社だ。

しかし「スカイウエスト」の名は殆ど知られていない。これは、所有する約760機の航空機は全て、契約先エアラインのロゴマークを付け、契約先の便名でリージョナル路線を運航しているためである。スカイウエスト2社が運航している便数は、幹線エアライン名で行われている便数のほぼ半数になる。

かつて米国のリージョナル路線は、幹線を運航する大手エアラインの傘下企業の仕事だったが、大手の倒産、合併が進むにつれて、専門のリージョナルキャリヤーが台頭、路線を肩代わり運営するようになってきている。

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「スカイウエスト航空」が契約している幹線エアラインは、「ユナイテッド航空」、「デルタ航空」、「USエアウエイズ」、「アメリカン航空」、および「アラスカ航空」。1日当たり約1,900便を運航する。従業員は約11,000人。所有航空機は約350機。

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「エキスプレスジェット」が契約しているのは「ユナイテッド航空」、「デルタ航空」、「アメリカン航空」。1日当り約2,100便を運航する。従業員は約9,000人。所有航空機は約410機。

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図:(SkyWest Inc.)「スカイウエストInc.」の2社が運航している路線網。

 

米国リージョナル航空業界で断然トップの企業であるに拘らず、「スカイウエストInc.」社長ラッセル“チップ”チャイルド(Russell “Chip” Childs)氏は極めて控え目に次ぎのように語っている;—

「我々の目標はサイズではない、如何にして契約先の満足が得られるようなリージョナル路線サービスを生み出せるかだ。常に契約先のニーズに合わせることが大切。」

「スカイウエストInc.」は、2005年までは「スカイウエスト航空」だけの持株会社だったが、「デルタ航空」の破綻に伴い同社のリージョナル航空「アトランテイック・サウスイースト航空(ASA)」を購入して、2社体制となった。その後2010年末に「ASA」が「エキスプレスジェット」を吸収合併、「エキスプレスジェット」となり現在に至っている。

現在契約先の幹線エアラインから要望が増えつつあるのが、ビジネス/ファースト・クラスの設置である。ビジネスクラスは幹線の収益源として注目を集めており、リージョナル路線でも同じサービスを提供することで、幹線の集客力向上に繋げようと云う目論見だ。

スカイウエスト機材

上の表は、スカイウエスト系列2社が現在運用している機材の一覧だが、上級席を設けているのはCRJ700、CRJ900、およびE175の3機種。契約先のエアラインからは上級席付き機材の要望が強くなっているので、70〜90席クラスの大型リージョナル機の増機に向け手を打ちつつある。

先ごろアメリカン航空とUSエアウエイズが合併したが、リージョナル航空各社にも大きな影響を及ぼした。つまり顧客企業が減少し、リージョナル業界での取り合いが激化したが、スカイウエストは実績を生かして乗切っている。合併によってアメリカン航空は経済的に強化され、スカイウエストにとってはむしろ好都合となった。

スカイウエストInc.は2010年末に「エキスプレスジェット」を吸収して2社体制となったが、その経済的効果や利益率の改善は未だ得られていない。今年の第2四半期の業績では、「スカイウエスト航空」が営業利益3,130万㌦であったのに対し「エキスプレスジェット」は3,400万㌦の赤字となっている。

これには理由があり、「エキスプレスジェット」は、2014年から2015年にかけて、小型の利益率の乏しい50席級の機材、ERJ 145やCRJ200、などの退役を進めており、これが大きく影響している。

「スカイウエスト航空」でも50席級の航空機を157機保有している。この内56機はリース契約が完了する今年末には返却する。残りの101機は2015年末に除籍する予定だ。

スカイウエストでは、このように50席級の小型機の退役を進める代わりに、大型リージョナル機の導入を積極的に行っている。

76席仕様のエンブラエルE175を今年末までに21機受領、2015年9月までに19機を受け取る予定である。さらにアメリカン航空が同型機を60機発注しているが、これらはスカイウエストが運航するものと見られる。

さらに、エンブラエルの次世代型機 175-E2を100機、および三菱MRJ90型100機を確定発注し、それぞれにオプション100機ずつを付け導入する予定だ。いずれも契約先の顧客エアラインの要望に応えるための大型化である。

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

Aviation Week Oct. 6, 2014 page 42 “Regional Giant” by Adrian Schofield

SkyWest Inc. Home

Embraer News “Embraer Reaches Record Backlog and Delivers 19 Commercial and 15 Executive Jets in 3Q14”