ロシア空軍機、本州日本海沿岸に接近


2015-03-30 松尾芳郎

 

統合幕僚監部の発表(2015-03-26(木))によれば、ロシア空軍電子戦情報収集機IL-20型機が3月26日に我国の防空識別圏に侵入、北海道および本州の日本海沿岸に接近してレーダー情報の蒐集を行った。直ちに航空自衛隊戦闘機が緊急発進し、領空侵犯を防いだ。

03-26ロシアIl-20航跡

図:(統合幕僚監部)3月26日、ロシア空軍IL-20電子戦情報収集機は北海道西岸沿いに南下、本州西岸をかすめて京都経ヶ崎沖合で反転、シベリア方面に立ち去った。

15-03ロシアIl-20

図:(統合幕僚監部) 1950年代に600機作られたイリューシン(Ilushin)製旅客機Il-18を電子戦情報収集機に改装した機体で”IL-20 Coot”と呼ぶ。クズネツオフ製NK-4またはイフチェンコ製AI-20ターボプロップ(4,000shp)4基を装備、最大離陸重量64㌧、航続距離6,500km。前部胴体下部に長さ9mのSLAR(Side Looking Airborne Radar)ポッド、胴体頂部には通信傍受用アンテナ2個を装備。乗員5人と情報蒐集要員8名が乗務する。1968年に初飛行、約20機が運用中。

 

今回露軍機が接近した地域に配備されている空自防空レーダーは、北から順に北海道の稚内/FPS2、当別/FPS-3、奥尻島/FPS-4、本州の大湊/FPS-5加茂/FPS-3佐渡/FPS-5輪島/FPS-3京都経ヶ崎/FPS-3。この内太字で記したFPS-3FPS-5は弾道ミサイル探知・追跡用レーダーである。

FPS-3(三菱電機製)は1991年から配備が始まったレーダーで、2009年までに弾道ミサイル追尾能力向上改修が行われFPS-3改となり、全国に7基配備されている。遠距離、近距離2つのアンテナを持つ回転式AESAレーダーで、対レーダー・ミサイルの攻撃を防ぐデコイ(囮電波発生機)を備える。

FPS-5(三菱電機製)は高さ34mの六角形建物にL、S波帯レーダー1面とL波帯レーダー2面の計3面のアンテナを備え、建物と一緒にゆっくり回転する方式のAESA方式レーダー。L、S波帯レーダーは直径18mの覆いの下に納められ、主警戒面の役をする。他の2面は直径12mのカバーの中のL波帯レーダーで対航空機警戒をする。4基が設置されている。

また、空自配備のレーダーとは別に、米軍の可搬型X波帯レーダーAN/TPY-2が青森県車力分屯地と京都府経ヶ崎分屯地に配備されている。

露軍機はこれ等のレーダーの能力や周波数変動プログラム、それにデコイ方式などの調査をしているようだ。

FPS-5

図:(防衛省技術研究本部)弾道ミサイル監視用FPS-5レーダー。正面は直径18mの主警戒面レーダーのカバー。左面と背面には、それぞれ直径12mカバーの中に対航空機用L波帯レーダーが入っている。建物全体が回転し全空域を監視できる。FPS-5が配備されているのは、青森県大湊、新潟県佐渡島、鹿児島県下甑島、それに沖縄県沖縄本島与座岳、の4ヶ所である。

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