ロシア海軍の新型ミサイル哨戒艇、宗谷海峡を東進


2015-05-12(平成27年) 松尾芳郎

2015-05-15 改定 1ページ図説明の「30秒以内」を「数分」に訂正。

 

防衛省統合幕僚監部の発表(2015-05-11)によれば、去る5月8日(金)正午頃海上自衛隊第2航空群八戸基地の「P-3C」哨戒機が、宗谷岬西北西約160kmの海域を東進するロシア海軍の小型艦2隻を発見した。小型艦は、コルベット(Corvett)と呼ばれるミサイル護衛哨戒艇で「タランタル(Trantul) III」型と判明した。その後同艦2隻は宗谷海峡を東に抜けオホーツク海に入った。

タランタル921

図:(統合幕僚監部)1970~1990年代にかけて各型合計100隻以上が製造された。今回宗谷海峡を通過したのは最新のIII型で、超音速対艦ミサイルSS-N-22連装発射筒を両舷に搭載する。現役にあるのは主にIII型で25隻、北洋艦隊、バルチック艦隊、黒海艦隊、太平洋艦隊に分散配備されている。

III型は満載排水量462トン、速力36ノット、兵装は前記SS-N-22ミサイル4基と76mm単装砲1門。

装備する対艦ミサイルSS-N-22はNATOでは「Sunburn」と呼ばれ、炸薬250kgを内蔵、ソブレメンヌイ(Sovremenny)型駆逐艦にも搭載している。マッハ3の速度で飛翔するので200kmほど離れた目標にでも数分で到達する、このため反撃の時間的余裕が少ない。中国はソブレメンヌイ型駆逐艦を2隻購入した際にSS-N-22も入手し、現在は3M-80MBEとして国産化している。

タランタル940

図:(統合幕僚監部)前掲の921号艇と一緒に宗谷海峡を通過した940号艇。小型ながら強力な対艦ミサイルを備える、我が海自にとっては厄介な代物である。

 

今年、第二次大戦終了70周年を迎え、強国の復活を目指すプーチンのロシアは、同じく海洋覇権を狙う習近平の中国と連携して、海軍力の強化を押し進めている。報道によると、近くロシア-中国両海軍は日本海で大規模な合同演習を行い、我が国に威圧を加えようとしている。世界第2位と第3位の巨額な軍事費を投じ軍備拡張に狂奔する両大国のすぐ隣に位置する我が国は、安倍政権のもと一致結束してこの事態に対処しなければならない。それが我々国民の生命財産を守る唯一の道だからだ。

 

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