2015-07-08(平成27年) 松尾芳郎
図1:(海上自衛隊)川崎重工が作る海上自衛隊哨戒機「P-1」はこれまでの対潜哨戒機「P-3C」の後継機。2007年9月に試作機「XP-1」が初飛行、2013年から配備が始まっている。現在まで厚木基地に9機が配備され、我が国領海の警戒監視活動に当たっている。70機程度の導入を予定している。
「P-3C」対比で、巡航速度と上昇限度は1.3倍、航続距離は1.2倍(8000 km)となり、目的空域への到達時間の短縮、哨戒面積の拡大が見込まれる。
エンジンはIHI製「F-7」ターボファン推力6.1トンを4基。操縦系統はセンサー類などとの干渉を避けるためフライ・バイ・ライト(FBL)方式を採用している。
哨戒用の装備は、胴体上部の2つのフェアリング内にESMアンテナ、尾部に磁気探知機(MAD)国産のHSQ-102型、機種レドーム内とその下部には東芝製GaN型フェイズド・アレイ・レーダーHPS-106を4面装備する。このレーダーは高高度から洋上の微小な目標を探知できる。ソノブイ発射口は胴体下面主脚後方にあり、発射/着水後は潜水艦からの微弱な音響を捉え、機体装備のシステムで自動解析する。機種下部に赤外線探知機(FLIR)ターレットを持つが、通常は機内に格納されている。
機首後方下部の兵器倉と翼下面のハードポイントに最大8基のHarpoonなど対艦ミサイルやAGM-65マベリック・ミサイル、魚雷、爆雷などを装備できる。
政府は川崎重工が開発した哨戒機「P-1」2機を近く英国に派遣、英国が導入を検討している新型対潜哨戒機の候補として売り込みを図る。英国では2011年に対潜哨戒機「ニムロッド」が退役してから後継機不在の状態が続いている。
厚木基地所属の「P-1」は、7月17-19日に英国空軍の「フェアフォード(RAF Fairford)基地(Gloucestershire)」で開催される世界最大の軍用機ショウ「王立国際航空ショウ(Royal International Air Tattoo : RIAT)に2機で参加し、地上展示とデモ飛行を行う予定だ。
防衛省によると(7月7日発表)、第51航空隊所属の[P-1] 2機は7月10日(金)に厚木基地を出発、17-19日のフェアフォードRIATに参加展示デモを行い、それからアフリカ東部のジブチに向かい アンボーリ( Ambouli)空港に21-22日の間滞在して、熱帯地方での運用試験を行い、7月25日(土)に帰着する予定になっている。
今回の派遣は、日本が独自に開発した軍用航空機の初めての海外展示となるばかりでなく、英国への販売を狙った最初の試みとなる。
これができるようになったのは、これまで軍用品輸出を禁じた「武器輸出3原則」が2014年に改定、緩和されたためである。
この数年日英両国は、防衛装備の共同開発の話し合いを進めており、英国が開発中の空対空ミサイルMBDAメテオール(Meteor)に日本が開発する次世代型シーカーを搭載するなど、具体的な協力案件が進んでいる。今回もその一環で、日本側当局者は昨年の英国ファンボロー(Farnborough)航空ショウで、英側に「P−1」の導入/共同開発の提案を行っていると云うことだ。
「P−1」は、現在運用中の「P-3C」オライオン対潜哨戒機の後継として開発された機体で、長大な航続距離と高速能力それに最新の電子機器で「P-3C」をはるかに凌駕する性能を持つ。
英国政府が購入を検討している哨戒機の候補には、「P-1」の他に米海軍の新型哨戒機ボーイングP-8ポセイドン(Poseidon)とチャレンジャー(Challenger)ビジネスジェットの哨戒機型がある。またエアバスは、双発ターボプロップC295の哨戒機型の提案をすると言われる。
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本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
The Royal International AIR TATTOO 17-19 July 2015 “JAPAN MAKES AIR TATTOO HISTORY” at 07 Jul. 2015
海上幕僚監部27・7・7(お知らせ)“P-1哨戒機のジプチでの運用試験の実施および英国ロイヤル・インターナショナル・エア・タトウーへの参加について”
Aviation Week / Aerospace Daily & Defense Report July 7, 2015 “Kawasaki P-1 tomake International Debut in U.K.” by Tony Osborne