ロシア空軍電子情報収集機Il-20が本州三陸沖に飛来、電子情報偵察を行う


2015-07-07(平成27年)  松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部は去る平成27年7月3日に、「同日ロシア空軍の電子情報収集機Il-20型機1機が、我が国北方領土択捉–国後間を通過し、本州三陸沖に飛来、同じ航路を引き返した。」と発表した。航空自衛隊戦闘機が緊急発進、本州領空への侵入を阻止したのは言うまでもない。

これは、今年2月5日に同型機が本州日本海沿岸に沿って飛び、翌6日に今回と同じコースを飛行したのに続く、今年3回目の偵察飛行である。

 

前回の報告(2015-02-05)にも述べたが、これらIL-20型機の行動は、北海道東部および本州北部に設置している我が空自および米軍のレーダー設備の反応を調査するのと、三沢に駐屯する米空軍の通信傍受が目的、と思われる。

 

この地域に配備されている我国の防空レーダーは、北から稚内/FPS2、網走/FPS-4、根室/FPS-2、襟裳/FPS-20・6、大湊/FPS-5、加茂/FPS-3、山田/FPS-2である。このうちFPS-3とFPS-5は弾道ミサイル探知・追跡用レーダーである。

FPS-3は1991年から配備が始まったレーダーで、2009年までに弾道ミサイル追尾能力向上改修が行われFPS-3改となり、全国に7基配備されている。

FPS-5は高さ34mの六角形建物にL、S波帯レーダー1面とL波帯レーダー2面の計3面のアンテナがあり、建物と一緒に回転する方式で、全国に4基設置されている。米軍の可搬型X波帯レーダーAN/TPY-2は青森県車力分屯地と京都府経ヶ崎分屯地に配備されている。

07-03ロシアIL-20航跡

図:(統合幕僚監部)7月3日のロシア空軍電子情報収集機IL-20の飛行経路。さる2月7日と同じ航跡をたどる。

07-03ロシアIL-20

図:(統合幕僚監部)7月3日に我が国北海道及び東北太平洋岸に接近飛行したIL-20の機影。1950-1960年に約600機作られたイリューシン(Ilushin)製旅客機Il-18を、電子戦情報収集機に改修し”IL-20 Coot”と呼ぶ。クズネツオフ製NK-4またはイフチェンコ製AI-20ターボプロップ(4,000shp)4基を装備、最大離陸重量64㌧、航続距離6,500km。前部胴体下部に長さ9mのSLAR(Side Looking Airborne Radar)ポッドを装備、胴体頂部には通信傍受用アンテナ2個が見える。乗員5人と情報蒐集要員8名が乗務する。1968年に初飛行、約20機が運用中。系列機に”Coot A”、”Coot B”、”Coot C”、がある。

 

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