ロシア機、日本全域の周回飛行と北部日本へ接近飛行を行う


2015-12-25(平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚本部の発表(27-12-21)によれば、同日ロシア空軍の戦略爆撃機Tu-95型機2機が日本海能登半島沖に接近、南西に飛行、沖縄本島と北海道を含む我が国のほぼ全域を周回した。また早期警戒管制機(AEW)ベリエフ(Beriev) A-50型機1機が日本海の北海道沿岸から東北沿岸にかけて飛行した。いずれに対しても航空自衛隊戦闘機が発進し、行動を監視、追跡し領空侵犯を防いた。

戦略爆撃機Tu-95は、今年3月にも2機が、個別に山口県・福岡県沖合を通過、我が国太平洋岸を飛行したことがある。早期警戒管制機A-50が我が国領空に接近したことは記憶にない。ロシア側が、必要があれば何時でも我が国を攻撃できる、と態勢を示したものと受け止められている。

一方2日後の23日には、プーチン大統領は天皇陛下82歳の誕生日に祝電を発し、両国が友好関係にあることを示した。この我が国に対する硬軟両様の態度は何を意味するのか。

例によって我が国メデイアは、ロシア軍機の示威飛行には一切触れず、大統領の祝電については一斉に報じた。

12-21 Tu-95

図1:(防衛省統合幕僚監部)12月21日に対馬海峡、宮古海峡を通り我国太平洋岸に沿うように北海道東部まで飛行した2機のロシア空軍戦略爆撃機Tu-95の1機。ツポレフTu-95ベア(Bear)は1956年に配備が始まった戦略爆撃機だが今でもロシア空軍の重要な一翼を担う。1984年から新型のTu-95MSに更新、63機が配備されている。Tu-95MSは各種長射程巡航ミサイルを16基、15トンまで搭載可能で、我国全域がその射程に入る。軸馬力14,800hpのクズネツオフ(Kuznetsov) NK-12MAターボプロップを4基、最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,400km。海軍用の哨戒機型にTu-142がある。

12-21 T-50

図2:(防衛省統合幕僚監部)ベリエフ(Beriev) A-50早期警戒管制機(AEW)は、イリューシン(Ilushin) Il-76輸送機を改造して期警戒管制機とした離陸重量170トンの大型機。初期型はA-50M型で1984年から配備が始まり、23機がモスクワから250 kmのイワノボ・セベルニイ(Ivanovo Severny)基地に配備されている。直径9 mのレドーム内の ”Vega-M” レーダーは、230 km以内の50目標を同時に監視・追尾できる。乗員は15名。数年前からデジタル化したA-50U型への近代化改修が始まり、Vega Premier AESAレーダーに換装されつつある。新型のA-50Uは現在3機配備されている模様。A-50は、全長49.6 m、翼幅50.5 m、エンジンはソロビエフ(Soloviev) D-30KPターボファン推力26,000 lbsを4基、航続距離は6,400 km。

12-21ロシア機

図3:(防衛省統合幕僚監部)12月21日のロシア軍機の飛行経路。Tu-95戦略爆撃機2機は、日本海を南下後南西に変針、竹島と壱岐島間から対馬海峡を通過、南シナ海を南に飛行、沖縄本島と宮古島間を抜け太平洋を北西に本州に沿いながら北上、北海道を回って日本海に入った。A-50早期警戒管制機は日本海北部の北海道及び本州東北の沖合に接近した。

 

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