総選挙は4月24日投票? 参院選と時間差ダブルか


2016-01-04(平成28年) 元・国務大臣秘書官 鳥居徹夫

 

今年の通常国会は、正月休みなしで1月4日に召集された。そして会期末の6月1日直後には参院選がある。衆院議員の任期満了(2018年12月)までのスケジュールをみると、予定通り2017年4月に消費税再増税となると、その前後の選挙は難しく2016年中の解散総選挙の可能性が高い。しかも参議院選挙とあわせて、衆議院も解散というダブル選挙もささやかれている。ところが実際の選挙実務の面で、同日選挙は難しいという局面もある。

 

■□ とても消費税増税をできるような環境にはない

 

第2次安倍政権になってから3年目を迎えるが、依然としてデフレ状況が続いている。デフレ脱却の決め手を欠いたままで、来年2017年4月に消費税が8%から10%になることが法律的には決定している。

中国経済の減速により企業が設備投資を先送りし、賃金の伸び悩みにより個人消費の回復ペースも弱い。にもかかわらず、通常国会に提出される2015年度補正予算案は、「1億総活躍社会」の実現などの対応が中心で、3兆円規模に過ぎず、経済刺激政策は見られない。

昨年8月、政府が公表した「2015年度経済財政白書」には、前回2014年4月からの消費増税によって経済成長が1.7%下押しされたと分析している。

デフレ圧力が十分に払拭できない状況の中で実施された消費税率引き上げの影響は、予想以上に大きかった。

2016年中に、消費税10%に引上げることへの可否の決断が控えている。消費税再増税を先送りする場合でも、施行期日の延長法案の国会審議が必要とされる。逆に10%への消費税増税を予定通り実施するにしても、食料品など軽減税率の扱いなどを定めた税制税関連法案も成立させなくてはならない。

安倍政権の求心力を高め、景気を冷え込ませないためには、「消費税率を上げない」ことを争点に解散総選挙で国民の信を問うことになろう。

 

■□ 消費税の増税の再延期の決断は、予算成立直後の春にも

 

消費税再増税については、景気条項を外しており、建前ではリーマン・ショック並みのショックでも起きない限り、増税は実施する方針と報道されている。

消費税率のアップになると、軽減税率の対象として生鮮食品だけでなく酒類と外食を除く食品全般となったため、レジ改修や商品管理システムの更新などの実務作業が必要となる。とても時間的に間に合いそうではなく、現場では混乱が生じる可能性が高い。

予算編成や周知期間を考えて、予定通り実施するかどうかの最終判断は、2016年秋では遅く、春には方向性を出さなくてはならない。消費税の増税を、再び延期または凍結という決断により、国民に信を問うのが平成28年度予算の国会成立直後というのが、現実味を帯びてくる。

つまり夏の参議院選挙よりも、衆議院の解散総選挙が早まる可能性が大きい。

通常国会の召集が1月4日というのは、例年よりも3週間早い。しかも今年は重要法案や与野党対決法案はない。通常は1月下旬に国会が召集され、本予算と予算関連法などが3月の年度末にギリギリで成立し、その後に各省庁提出の法案審議に入っていた。

国会召集が例年よりも早い今年は、余程のハプニングがない限り3月中旬には政府予算と予算関連法が成立する日程となる。そうなると3月中旬解散、4月12日公示、24日(友引にあたる)投票が可能となる。

しかも4月28日は、欠員となった北海道5区(札幌市厚別区、石狩管内)で衆院補欠選挙の投票日となるが、総選挙となれば補欠選挙は実施されない。この補欠選挙には、民主党などが推薦する左翼団体から野党統一候補を、共産党は独自候補を取り下げる方向と伝えられている。

■□ 過去2回のダブル選挙は旧制度で、衆参とも個人名投票のみであった

 

かつて衆参ダブル選挙は2回実施されているが、いずれも旧選挙制度であった。衆議院は中選挙区の個人名、参議院は地方区も全国区も個人名で、3つの投票とも個人名であった。

現在の制度は、衆議院が小選挙区で個人名、ブロック比例で政党名である。参議院は、選挙区が個人名、比例代表が「個人名・政党名のいずれか」というように複雑化している。比例は、衆議院では政党名、参議院では「個人名・政党名のいずれか」というのである。

これまでも単独選挙でも、担当者などのミスで無効票となった事例も多い。自治体の選管の職員も、投票所の立会人も、ダブルの同日選挙となると混乱し収拾がつかなくなるのではないか。

同日選挙となった場合、ポスター掲示板や投票箱が衆参の両方で2倍必要となる。ポスターや選挙公報を見ても、どの候補が衆議院で、どの候補が参議院かがわからず、混乱する可能性が極めて大きい。最近は、衆議院から参議院に鞍替えしたり、その逆のケースも増えている。

このようにみると今年の政局は、消費税の再増税の延期・凍結を内閣が表明し、解散総選挙で国民に信を問い、ゴールデンウイーク前の4月24日が投票日。そして特別国会で、安倍総理が首班指名され、5月26〜27日の伊勢志摩サミットに主催国として臨む。そして6月には沖縄県議選もある。

総選挙後の特別国会では、TPP対応などの法案審議もあることから、十分な審議時間をとって閉会し、7月に参議院選挙の公示・投票というのが、大まかな政治日程となるのではないか。

つまり衆参同日選挙にはならないが、実態はダブル選挙と同じになる。つまり時間差ダブル選挙と言っても過言ではない。

−以上−