2016-01-21 松尾芳郎
図3:(防衛省)テイルト・ローター機「V-22」オスプレイ(Osprey)。「ベル・ヘリコプター」と「ボーイング・ヘリコプター」が共同開発した機体で、ヘリコプターと同じ垂直離発着、ターボプロップ機と同じ高速巡航ができる。米海兵隊が「MV-22」として2007年から、また米空軍が2009年から「CV-22」を配備中で、合計200機以上が引渡し済みだ。兵員24名、または貨物、機内に9トン、または機外に7トン、を輸送できる。最大離陸重量は約25トン、巡航速度約450 km/hr、戦闘行動半径720 km。防衛省は17機を輸入し、佐賀県佐賀空港に陸自基地を併設して配備する予定。詳しくは「防衛省、V-22オスプレイ、RQ-4Bグローバルホーク、E-2Dアドバンスド・ホークアイの採用を公式発表」@ 2014-12-02を参照されたい。
図4:(防衛省)潜水艦「そうりゅう」(基準排水量2,900トン、水中排水量4,200トン)。2009年から配備が始まった“非大気依存推進(AIP)”型潜水艦で、昨年までに11隻が発注済み、内6隻が完成・就役している。10隻まではスターリング・エンジン(出力75 kw)4基を搭載するが、昨年発注の11番艦からはこれを廃し「リチウム・イオン(Li-ion)電池」に改め、水中速度を高速化し、長時間の連続航行できるよう改良する。「リチウム・イオン電池」を動力源とする潜水艦はこれが世界で初めてである。
図5:(防衛省)「F-35A」ライトニングII (lightning II) 戦闘機。ロッキード・マーチン社が作る単座、単発、ステルス機で、対地攻撃、偵察、対空戦闘をこなす多目的戦闘機。「F-35」には、空軍用の通常離着陸型の「F-35A」、海兵隊用の短距離離陸・垂直着陸型(STOVL)の「F-35B」、海軍用のカタパルト離艦/ケーブル捕捉着艦型(CATOBAR)の「F-35C」の機種がある。これまでに3機種合わせて160機以上が生産され、2015年7月には「F-35B」で編成する初の飛行団が誕生した。米3軍合計で2,457機を2037年までに購入する予定。開発には英、伊、豪、カナダなど8カ国が参加、他に日本、イスラエルなどが注文している。日本向け「F-35A」完成機は、「LRIP-8(初期少量生産)」で2機と「LRIP-9」で2機が製造中。5号機 ”AX-5” からは三菱重工名古屋航空機製作所内の「FACO」すなわち「最終組立とチェックアウト・ライン」で組立てられる。詳しくは「国内生産のF-35A初号機組立てが名古屋で開始」@ 2015-12-20を参照されたい。
図6:(防衛省)滞空型無人偵察機「RQ-4」グローバルホーク(Global Hawk)。ノースロップ・グラマンが設計した無人機で、ロッキードU-2長距離偵察機の後継機。高解像度の合成開口レーダー(SAR)、長視程の電子-光学/赤外線センサー(EO/IR)を搭載し、監視空域で長時間滞空できる。1日で10万平方キロを偵察・監視可能と云う。米空軍では45機を運用中。米海軍は「MQ-4C」を4機発注済みで68機の配備を計画している。全備重量約15トン、巡航速度575 km/hr、航続距離約23,000 km、滞空時間は32時間以上、18,000 mの高空を飛ぶ。詳しくは「防衛省、V-22オスプレイ、RQ-4Bグローバルホーク、E-2Dアドバンスド・ホークアイの採用を公式発表」@ 2014-12-04を参照されたい。
図7:(防衛省)早期警戒機E-2Dアドバンスド・ホークアイ(Advanced Hawkeye)。「E-2D」は、ノースロップ・グラマンが米海軍向けに作ってきた早期警戒機(AEW)の4代目となる。新しいAPY-9 AESAレーダーと通信装置を備え、性能をこれまでの「E-2C」から飛躍的に向上させた機体である。米海軍では空母搭載中の「E-2C」からの更新を始めており、75機の調達を予定している。我国では空自が早期警戒機「E-2C」を13機保有、三沢基地で運用しているが、南西諸島空域での監視能力を強化するため今回4機の「E-2D」の購入を決めた。詳しくは「防衛省、V-22オスプレイ、RQ-4Bグローバルホーク、E-2Dアドバンスド・ホークアイの採用を公式発表」@ 2014-12-04を参照されたい。
図8:105 mm砲搭載の機動戦闘車(試作車)。52口径105 mm砲を備えながら全備重量を26トンに抑えた戦闘用車両。戦車に比べ軽量なので「C-2」輸送機などで空輸でき、車体左前方に出力570 hpデイーゼル・エンジンを備え、道路上では時速100 kmで走行できる。車輪は8輪独立懸架方式で、車体底部中央の駆動軸から各輪に動力が伝達される仕組み。軽量化のため対弾装甲の不十分さを指摘する向きもある。量産型では砲塔部の装甲が強化され、後部の観音開きドアが大きくなった。2023(平成35)年までに300両程度の配備が検討されている。
図9:12式地対艦誘導弾とランチャー。88式地対艦誘導弾を改良した誘導弾で、ランチャー1両に6基を搭載する。ミサイル本体は長さ約5 m、重さ約700 kg、固体燃料ロケットで発射され、巡航時はターボジェットで飛行する。射程は100 km以上、誘導はINS, GPSで行われ、目標に接近すると搭載レーダーで目標を捕捉・衝突する(Active Radar Homing方式)。平成26(2014)年度予算でランチャー16両の購入が決まり、平成28(2016)年度から熊本県建軍駐屯地、第5地対艦ミサイル連隊に配備する。地対艦ミサイル連隊の編成は4個射撃中隊からなり、1個射撃中隊はランチャー4両と装填機4両で構成、従ってミサイル保有数は、1個中隊分が48発、1個連隊では4倍の192発となる。現在陸自が展開する地対艦ミサイル連隊は5個で、3つが北海道、それに八戸と熊本で、熊本連隊が最初の「12式誘導弾」装備の連隊となる。新年度予算ではこれに加えてさらに1個連隊の新設が計上されている。
中国海軍艦艇が、南西諸島近海で頻繁に繰り返している傍若無人の振舞いを抑え込むには、大隈海峡および宮古海峡周辺に地対艦ミサイル連隊を新設展開するのが喫緊の課題とされる。新年度予で南西諸島向けの1個連隊新設は当を得た措置と云える。
—以上—
本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。
防衛省「我が国の防衛と予算—平成28年度概算要求の概要」
Aviation Week January 4-17, 2016 page 49-74 “Defense &Security”