我が国周辺でロシア軍の動き相次ぐ


2016-01-27(平成28年) 松尾芳郎

 

統合幕僚監部の発表によると、この数日ロシア軍の動きが活発化している。すなわち;—

(1) 1月23日;—

午前5時頃、下対馬の南西100 kmの海域をロシア海軍艦艇3隻が北東に向け航行し北上、日本海に入るのを確認した。海峡を通過した艦艇は、ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦1隻、ボリスチリキン級補給艦1隻、イングル級救難曳船1隻である。発見追尾したのは海上自衛隊鹿屋基地第一航空群所属のP-3C哨戒機。

昨年11月4日に4隻のロシア艦隊が対馬海峡を南下して同9日から20日にかけて沖縄本島と宮古島の間の海域(宮古海峡)で数日間往復航行を繰り返し、錨泊し、一部は我が宮古島付近の接続水域に侵入するなどの行動をおこなった。この艦隊はその後立ち去り西太平洋を南下した。今回対馬海峡を日本海に向け通過したのは、この4隻のうちの太平洋艦隊旗艦「バリヤーク」011を除いた3隻である。

(2) 1月26日;—

ロシア空軍の戦略爆撃機Tu-95型機2機がシベリア沿海州方面から日本海に飛来、能登半島沖から変針、対馬海峡上空を通過南シナ海に入り、沖縄列島宮古海峡上空を通り、北東に向きを変え、日本列島南岸に沿って飛行し、北方4島の領空を侵犯通過して宗谷岬沖合から日本海に抜け、立ち去った。航空自衛隊では各基地から戦闘機を緊急発進させ、対応した。

 

これと同じ時期、26日にはロシアのラブロフ外相が記者会見をして「日露間の平和条約締結は領土問題の解決と同義ではない」と発言し、平和条約と北方四島返還問題は無関係だ、と強調した。

これに対し27日には荻生田光一官房副長官が反論し「平和条約締結交渉の中核は北方四島の帰属、領土問題そのものだ。ロシア側の主張は全く受け入れられない」と述べた。

ラブロフ外相の発言は、上記ロシア軍の行動を背景にし、いざとなれば軍事力で抑え込むぞ、との意思表示をしたものと受け止められている。

ソブレメンヌイ715

図1:(統合幕僚監部)満載排水量8,000 ton、対空、対艦戦闘を主任務とする艦で、南西太平洋で行動中は旗艦バリヤークの護衛任務をしていたと思われる。

補給艦23nichi

図2:(統合幕僚監部)昨年11月初めから2ヶ月におよぶ長期行動のため補給艦を同伴したもの。

曳船23日

図3:(統合幕僚監部)

26日航跡

図4:(統合幕僚監部)1月26日我国を一周する威嚇飛行を行ったロシア空軍の戦略爆撃機Tu-95型の2機の飛行経路を示した図。Tu-95は、昨年3月20日に2機で、暫くして12月25日にも2機が、ほぼ同じ経路で日本全域の周回飛行をしている。

26日Tu-95

図5:(統合幕僚監部)1月26日我国を周回飛行したロシア空軍戦略爆撃機Tu-95型機2機のうちの1機。ツポレフTu-95ベア(Bear)は1956年に配備が始まった戦略爆撃機だが今でもロシア空軍の重要な一翼を担う。1984年から新型のTu-95MSに更新、63機が配備されている。Tu-95MSは各種長射程巡航ミサイルを16基、15トンまで搭載可能で、我国全域がその射程に入る。軸馬力14,800hpのクズネツオフ(Kuznetsov) NK-12MAターボプロップを4基、最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,400km。海軍用に哨戒機型Tu-142がある。

 

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