米太平洋空軍、ステルス戦闘機「F-22」14機を嘉手納基地に展開


2016-01-30 松尾芳郎

 21日のF-22

図1:(Today’s Watch)1月21日までに横田基地に到着した米空軍最新鋭のF-22戦闘機、翌日には後続の2機を含め14機が勢揃いした。これら14機は同月26日までに全機嘉手納空軍基地に移動し配備についた。

 

世界最強と言われるF-22戦闘機の海外展開は、4機から8機の規模で行われてきたが、今回の沖縄派遣は14機となり、かってない大規模なのが特徴。エレメンドルフ空軍基地(Elemendorf AFB, Alaska)の第3航空団(3rd Wing)配下の第525戦闘飛行隊に所属する14機が、まず1月20日に8機、21日に4機、22日に2機、の順で横田基地に到着した。そして沖縄県嘉手納基地へ移動は、25日午前に12機、26日午後に2機で、14機すべてが展開した。

F-22戦闘機隊に続いて、アラスカのイールソン空軍基地(Eielson AFB, Alaska)に配備されている第18アグレッサー飛行隊(戦闘訓練で仮想敵の役割をする飛行隊[18th Aggreessor Squadron] )所属のF-16C Block 30型の12機が、嘉手納に移駐した。これらF-16Cは、F-22の訓練相手をするのが名目だが、必要があれば直ちに戦闘機として実戦に参加出来る態勢にある。従って「F-22」14機と「F-16C」12機、合計26機の大規模な戦闘機部隊が嘉手納基地に新たに加わったことになる。

日本駐留の米軍報道官ケネス・ホフマン中佐によると、この派遣は、以前から計画された日本防衛のための演習の一つで、合わせてアジア太平洋地域の安定を高めるため、と語っている。

一般には、今回の展開は、折からの北朝鮮による核実験、朝鮮半島南北境界線での高まる緊張,南西諸島と南シナ海で領有権を声高に主張する中国、台湾総選挙で蔡英文氏率いる独立派の勝利、など諸々の緊張を高める要因に対応した措置、と受け止められている。

26日の展開完了と併せて、翌27日には米太平洋軍司令官「ハリー・B・ハリス海軍大将」が首都ワシントンで講演し、「南シナ海・スプラトリ諸島に中国が造成した人工島は明白に軍事拠点化されている」と批判、さらに中国公船が尖閣諸島周辺で日本領海の侵犯を繰返していることについて「日本が中国の攻撃を受ければ、米国は間違いなく日本を防衛する」と明言した。

F-22を主力とする飛行隊の嘉手納派遣と同時期のハリス司令官の発言は何を意味するのか。いま話題の北朝鮮による弾道ミサイル発射は、我が防衛当局が実施中のイージス艦の展開と地上車載型PAC-3ミサイルの配備で十分対応が可能、従ってこれが目的でないことは確かだ。

それよりも、報道されていない”南西諸島への侵攻作戦に関わる緊迫した情報”を米軍がキャッチして、急遽対抗措置として採ったのでは。今回のF-22派遣は我が防衛当局への事前連絡もなく突然行われたことからも、事態がかなり切迫していることを伺せる。

tgkxlaabh8ica6wtzoq4

図2:(USAF)アラスカ上空を飛ぶ第3航空団所属のF-22ステルス戦闘機。F-22は米空軍は187機を保有、7個飛行隊を編成している。単座型で、ステルス性が高く、アフトバーナ無しで超音速巡航が可能、エンジンはP&W製F119-PW-100アフトバーナ付き推力35,000 lbs(15.8トン)を2基。全長19 m、翼幅13.6 m、最大離陸重量38トン。レーダーはノースロップ・グラマンとレイセオンが共同開発したGa-As素子使用のAN/APG-77 AESA型。兵装はM61A2 20 mm機関砲1門と兵装庫に中距離空対空ミサイルAIM-120Cを6基、短距離空対空ミサイルAIM-9Xを2基、搭載する。対地攻撃時には代わりに450 kg GPS/INS誘導爆弾を2発などを搭載する。

c9knwhiubc9ojpay6zs4

図3:(USAF)今回嘉手納基地に展開したのは,太平洋空軍(Pacific Air Forces)に所属する第3航空団(3rd Wing)配下にある第525戦闘飛行隊(525th Fighter Squadron)のF-22。戦闘飛行隊(Squadron)は通常12機ないし24機で編成されている。

f16c160126g884

図4:嘉手納に到着した12機の第18アグレッサー飛行隊所属F-16C/D Block 30戦闘機の1機。”C”は単座、”D”は複座機の意味。同アグレッサー飛行隊はF-16C型を使用。ブロック30から、それまでP&W F100-PW-200エンジンのみだったのが、GE製F110-GE-100エンジンも併用されることになった。ブロック30がGEエンジン、ブロック32がP&Wエンジン搭載となる。全長15.1 m、翼幅9.45 m、最大離陸重量19.2トン、戦闘行動半径550 km。

 

—以上—

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

Aviation News 2016-01-27 “Half of the 525 Fighter Sqadron’s F-22s Deploy to Japan in Big Show of Fforce” by Tyler Rogway

Stars and Stripes Jan 21, 2016 “F-22 Raptor Stealth Fighters arrive at Yokota; F-16s en route” by Seth Robson