平成28年度第1四半期の対中国機スクランブルが急増


2016-07-08(平成28年)   松尾芳郎

2016-07-09 改訂  (誤字などの修正)

 

平成28年度第一四半期(4-6月)の緊急発進は281回、前年度の同時期に比べ108回増加した。対象機は中国機が71%、ロシア機が28%。

航空自衛隊には4つの航空方面隊があり、全国を4つに分けてそれぞれ分担しているが、緊急発進の最も多かったのは沖縄列島を担当する南西航空混成団で、この期間193回の緊急発進を実施した。次が北海道地区を担当する北部航空方面隊で72回であった。

本年度4-6月期の特徴は、中国機に対する緊急発進で199回に達し、前年同期と比べ85回も増えている。またロシア機に対する緊急発進は78回で前年同期対比で21回の増加だった。

今回の発表は極めて異例で、これまでは年1回の発表であったのが僅か3ヶ月の経過で発表となったのは、それだけ中国軍の我国周辺での活動が急激に活発化していることへの警鐘と受け止められている。このまま推移すれば、我国は遠からず小説「カエルの楽園」の国と同じ運命を辿ることになりそうだ。

F-15那覇基地で緊急発進

図1:今回の発表と直接の関係はないが、那覇基地で2016-01-31日に行われた第9航空団新編式典の最中に、対中国機スクランブルが発生、空自F-15戦闘機2機が直ちに発進した。その時の写真。

1280px-那覇空港拡張計画

図2:那覇空港の写真。1933年(昭和8年)に海軍小緑飛行場として発足、1936年から軍民共用飛行場となる。敗戦後米軍の管理を経て1982年に全面返還され、現在に至る。現在は空自戦闘機の管制業務を含め航空局の管制官が担当している。滑走路は南北方向でR/W 18と同36の2000 m X 45 mの一本のみ。現在1,800億円を投じて2014年に着工、現在の滑走路の1,300 m 海側つまり西側に、長さ2,700 m滑走路1本を増設中で、2019年12月の完成を目指している。航空自衛隊那覇基地は総面積約210万m2で滑走路の東側に沿い展開している。基地司令は今年1月に発足した第9航空団司令が兼務している。第9航空団はF-15戦闘機2個飛行隊、約40機を始めとし、島嶼防衛の警戒隊、パトリオットPAC3運用の第5高射群、などで編成されている。新滑走路が完成すれば、空自機を含む防衛関係機は民間機に関わりなく運用できることになり、防衛力の強化に繋がる。

5年間緊急発進グラフ

図3:(データは統合幕僚監部)最近5年間の第1四半期における対ロシア機及び対中国機スクランブル回数の推移を示すグラフ。中国機の我国防空識別圏への侵入が急増中であることが判る。

5年一四半期スクランブル

図4:(統合幕僚監部)図3の基本データを示す。

2016-04~06中ロ機パターン

図5:(統合幕僚監部)平成28年度第1四半期におけるロシア機と中国機の我国防空識別圏への侵入航跡を示す。

防空識別圏ADIZ

図6:(防衛省)我国防空識別圏(ADIZ)を示す図。併せて中国、韓国、台湾、フイリピンの防空識別圏を示す。中国は不当にも国際的に認められていた我国防空識別圏を無視し、数年前にこれに大きく食い込む形で尖閣諸島を含む空域を自国の防空識別圏とした。

 

今回の今年第一四半期緊急発進とは直接には関係ないが、航空自衛隊が2013-10-04に公開した、東シナ海上空15,000 ftでのF-2戦闘機[Viper 01]の対中国機スクランブルの状況を示す動画がある。推定だが、動画のF-2戦闘機は築城基地の第6飛行隊所属、相手機は中国軍早期警戒管制機Y-8のようだ。空自機は英語とシナ語で中国機に領空侵犯を止めるよう警告するが、聞き入れず領空を侵犯する。そこで止むなく機関砲で警告射撃をして、退去させた。次のサイトをクリックすれば見ることができる。すぐに出てこなければ数回試すことを勧める。

 

https://youtu.be/N0gKAGeK8EQ

 

この動画を見た某氏は、基本的には憲法9条を改正しなければ、解決しない、何故なら「相手は日本機は絶対撃って来ない」と見くびっているからだ、と言い、続けて次のように語っている;—

「現実には閣議決定がなされない限り反撃できない。せいぜい威嚇射撃くらいしかできない。ロックオンされても、回避行動ができるだけで、発砲許可が下りていなければ、反撃もできない。閣議決定を待つ間に、自衛隊機は撃墜される。基本的には相手が撃ってくるまでは、自衛隊機は、なにもできないが、反撃の許可を待っている間にやられてしまう」。何とも情けない防衛体制の現状に情けないものを感じる。

 

—以上—