2016-11-27(平成28年) 松尾芳郎
防衛省統合幕僚監部の発表(28-11-25) によれば、11月25日(金)昼間、中国空軍機多数が沖縄本島と宮古島の間の宮古海峡上空を通過した。これら中国軍機の動きは次の通り。
西太平洋から東シナ海に向け飛行したのは3機種で合計4機、南シナ海から台湾—フィリピン間のバシー海峡を経由、西太平洋に進出し、それから我国の八重山列島、宮古列島の南側に沿って飛行し宮古海峡に入り、東シナ海に向け帰還した。宮古海峡を通過したのは、H-6 爆撃機 2機、Tu-154 情報収集機 1機、Y-8 情報収集機 1機であった。
さらにSu-30 戦闘機 2機が、東シナ海から西太平洋に進出、そこで上記4機と合流、反転して再び宮古海峡を通過、東シナ海に入った。
これに対し、空自那覇基地第9航空団所属のF-15J戦闘機が緊急発進、領空侵犯を防ぐべく対応した。
このニュースは、25日朝の一部のTVニュースで取り上げられたが、主要紙では一部で簡単に報道されただけだった。あまり頻繁に報道されるのでマスコミは馴れで取り上げなくなったようだ。以下に公表された写真等を示す。
図1:(統合幕僚監部)空自F-15Jが撮影したSu-30の1機。西太平洋上で長距離巡航ミサイル攻撃訓練をした後述のH-6K爆撃機の護衛のため出動したもの。不鮮明なので次の写真を参照されたい。
図2:(Chinese Military Aviation)写真はSu-30MKK型、翼端にはECMポッド、エンジン・エアインテーク付近にはデータリンク用ポッドが見える。米国のF-15系列機の最新版F-15E型に匹敵する高性能多目的戦闘機。中国空軍が保有するのはロシアから輸入したSu-30MKK型76機。同海軍はSu-30MKKを改良し脚を強化し重量を増やしたSu-30MK2型機を24機運用する。Su-30MK系列機はサターンAL-31Fアフトバーナ付きターボファンエンジン2基(推力は各28,000 lbs)を装備、8 tonの各種ミサイルを搭載してマッハ2の速度で飛行。燃料搭載量は5,200 kg、4.5時間の戦闘飛行が可能、戦闘行動半径は3,000 kmに達する。したがって、中国本土から宮古海峡を抜け、往復するのは容易だ。空中給油をすれば10時間、5,200 kmの飛行が可能。これまでに540機が生産された。同系列機はインドネシア、ベネゼラ等で使われている。
図3:(統合幕僚監部)写真は今回の撮影ではなく、今年9月 26日に既報した宮古海峡を通過する中国空軍H-6K型爆撃機の内の1機。H-6爆撃機 は1969年から配備が始まり派生型を含み現在120機ほどを運用中。原型はロシアのツポレフTu-16で、西安航空機で国産化している。当初は核爆弾(20 kt級)用であったが、弾道ミサイル(ICBM)の実用化で核爆撃機としての効用が薄れ、現在は長距離巡航ミサイルDF-10Aの空中発射型KD-20(射程2,000 km)を6基搭載に改造して使用中。乗員3名、全長35m、翼幅34.4m、最大離陸重量76ton、エンジンはロシア製D30KP-2をリバース・エンジニアリングで国産化したWS-18を2基装備する。巡航速度790km/hr、戦闘行動半径3,500 km、兵装搭載量は9トン。コクピットを含む電子装備もTu-16から大幅に改良、性能が一新している。2011年以降最初の部隊が第8航空師団に配備されてから順次増強され、現在ではしばしば西太平洋に進出し、日本、グアムを目標にした長距離巡航ミサイルの攻撃訓練を行っている。
図4:(統合幕僚監部)ツポレフTu-154旅客機を中国が輸入、電子偵察機に改造したのが「Tu-154情報収集機」。エンジンはロシア製D-30KUターボファン推力23,000 lbsを3基、航続距離6,600 km.
図5:(統合幕僚監部)早期警戒管制機Y-8。ウクライナのアントノフ設計局が作ったAn-12型輸送機を中国がライセンス生産したのがY-8輸送機。1981年から陜西飛機工業で75+機が生産された。Y-8は輸送機型が基本だが、多くが多様な電子偵察用に改造されている。写真はその一つ、はっきりしないが「Y-8G」型か? 全長36 m、翼幅38 m、最大離陸重量65㌧、」航続距離5,700 km、エンジンはWojiang WJ-6C ターボプロップ、5,100軸馬力が4基。
図6:(統合幕僚監部)11月25日宮古海峡を通過した中国機の航路を示す。②H-6爆撃機2機、③Tu-154情報収集機1機、及び④Y-8情報収集機1機、は台湾南から八重山列島、宮古列島の南岸を通り、宮古海峡付近で左折、東シナ海に入った。一方①Su-30戦闘機2機は、東シナ海から宮古海峡を抜け太平洋上で、これら4機と会合、4機と同航反転して、再び東シナ海に入った。
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