イージス艦用レーダー、日米が共同開発へ  —レーダー技術進歩の歴史—


 2018-07-16(平成30年) 松尾芳郎

 

  •  はじめに

 

7月6日の日経は「日本と米国が弾道ミサイル防衛を担うイージス艦に搭載する次世代レーダーを共同開発する検討を開始」と報じた。これは6月に開かれた両国の防衛当局の次官級協議で討議され、年内にも合意、5年後の量産を目指す、と云うもの。

次世代レーダーは、我が国の三菱電機や富士通が開発した窒化ガリウム(Ga-N)半導体製の送受信(T/R)素子を使い、従来のガリウム砒素(Ga-As)半導体素子製のレーダーに比べ探知距離が3倍程度に向上する。なおGa-Nは、民生用の青色発光ダイオードの材料として広く知られる。

現在日米両海軍のイージス艦にはロッキード・マーチン製SPY-1系列のレーダー(探知距離約500 km)が使われている。米海軍では、2023年からこれを探知距離が2倍になるレイセオン製SPY-6に更新する予定だ。SPY-6は対航空機/ミサイル用で潜水艦の潜望鏡も探知できるレーダー、使用する波長はXバンドとSバンド、レイセオン製のGa-N半導体を使い開発中である。

 

(注)SPY-6についてはTokyoExpress 2018-01-01 “イージスアショアの配備、閣議決定“の6ページ”①レーダーをSPY-1からSPY-6へ“に記述したので参照されたい。

 

日米共同開発のGa-N製レーダーは、これを上回る1,500 kmの探知距離を備えるのが目標になる。

この話は米側から打診され、日本側もイージス艦および陸上配備型イージスアショアの能力向上につながるとして、積極的に対応している。具体的にはレイセオンが三菱電機と、ロッキード・マーチンが富士通と、それぞれ提携することになりそう。

我が国は中国・北朝鮮などのミサイル攻撃能力の高まりに備えて、対応を急いでいる。弾道ミサイル迎撃(BMD) 能力を備える7隻目のイージス艦を2020年に、8隻目を2021年に就役させるが、共同開発の次世代レーダーが間に合えば搭載することになる。また2023年にはイージスアショアを2基陸上(秋田県と山口県)に配備する。

近着のロイター電は、「防衛省はイージスアショア用レーダーに、SPY-6ではなく、ロッキード・マーチンが推す新レーダー[SSR = Solid States radar]の採用を内定」と報じた。

SSRは、米ミサイル防衛局がアラスカ州に配備する弾道ミサイル迎撃システム「長距離識別レーダー」(LRDR=Long-Range Discrimination Radar)で、2020年にアラスカ中部のクリア(Clear)空軍基地に配備される。

現行イージス・システムより探知距離が長く、弾頭に伴われ飛来するデコイ等の識別能力が高い。従来のレーダーは単位相の波を使うのに対しLRDRでは”dual-polarized”と呼ぶ垂直/水平の2位相のビームを使うので、飛来する目標の識別が容易にできる。これは民間の気象レーダーで開発された技術で、雹や雨滴のサイズを識別し予報に役立てている。送受信素子には富士通製Ga-N半導体を使っている。

イージスアショアのレーダー

図1:(Lockheed Martin) ロッキード・マーチン製SSRレーダー使用でイージスアショアの防空識別範囲が拡大する概念図。強力なレーダービームで探知距離はSPY-6より50%伸び、探索可能な容積は5倍に広がる。

 

  • レーダーの原理

 

ここでレーダーの基本を復習してみよう。以前TokyoExpress(2011-01-29)に「レーダーの基本」として掲載したが、その要点をまとめ、改訂して述べる。

レーダーの基本はアンテナからマイクロ波ビームを発射し、目標からの反射ビームを受信して目標を捕捉する。目標を探すには、あらかじめ設定したパターンでビームを繰り返し送信し、その反射ビームを受信する。従ってアンテナには、単に送受信するだけでなく、ビームを正確に発射、かつ迅速にスキャンできることが求められる。実際には、ビームはコーン状に広がると共に外側に漏れて、いわゆるサイドローブを生じる。

アンテナ性能の尺度には、メインローブに対するサイドローブの大きさが使われ、それが10分の1(10dB)、100分の1(20dB)、1000分の1(30dB)である、と云うように表される。実用のレーダーは20 – 30 dBのレベルにある。

半導体技術が十分でなかった頃は、レーダーにはマイクロ波で最も波長の長いLバンド(0.5-1.5 GHz/波長20cm前後)が使われていた。現在は、より小さな目標を探知できるXバンド(8-12 GHz/波長数cm級)が主流である。しかしXバンドより波長がやや長いCバンド(4-8 GHz)、Sバンド(2-4 GHz)、また、波長の短いKuバンド(12-18 GHz)も使われている。

マイクロ波

図2:電磁波の中でレーダーに使われるマイクロ波の占める範囲とレーダー波の関係。Xバンドは比較的近距離の目標探知、精密な追跡、自軍発射のミサイルとの通信、目標への誘導などに使われる。これに対しSバンドは遠距離の目標探索、追跡、弾道ミサイル防衛用に使われる。

 

  • パラボラアンテナ型

 

第一世代のレーダーで、衛星TV受信アンテナと同じお椀型でお椀の真ん中にホーンアンテナを配したもの。ここからビームを発射しお椀で反射し並行波にして目標に向ける。このお椀を上下左右に動かしビームをスキャンする方式である。

 

  • アレイアンテナ型機械式ビームスキャン方式(MSA=Mechanical Scanned Array)

 

機械駆動式平板状アレイアンテナは、1970年代に実用化された。「アレイ=Array」は「兵隊が整列する」と言う意味で、数センチサイズの小型素子(モジュールと呼ぶ)が整然と並んで配置されているアンテナである。

F-15イーグル戦闘機の[APG-63]、F/A-18Aホーネット戦闘機の[APG-73]レーダー、あるいはAWACS/早期警戒管制機に使われている[APY-1/2]レーダー、等がこれに相当する。パルス・ドップラー・レーダーとも呼ばれる。

電波は、平板上に配置した多数のアンテナ素子を電子的に僅かずつずらして操作し、シャープなビームを発射する。即ち、マグネトロンで発生させた強力なマイクロ波を、各素子に位相をずらしながら給電し、発射ビームをシャープかつ正確に形成する。

これで、シャープなビームが出来るようになったが、機械式でビームをスキャンすると言う欠点が残っている。この機構は、ビーム操作に時間が掛かるので広範囲、多目標を同時追跡するには不充分である。また、故障し易く平均故障取卸し時間間隔(MTBF)は僅か数十時間と言われ、維持に費用が掛かる。

F-15 に搭載されていた[APG-63]はこの典型的なレーダーで、これを新規に再設計して性能向上と信頼性を改善して登場したのが[APG-63(V)1]レーダー、米空軍ではF-15Cをこれに換装、第一線に配備している。我が空自も数年前から改修を進め、近く完了する。

”S”バンド/2 – 4 GHz(波長10 cm)を使うレーダーを搭載しているのがE-3やE-767等のAWACS早期警戒管制機である。上空1万㍍から320km彼方の空中、地表の移動目標を監視できる。AWACS機は1977年に配備開始されて既に30年が経つが、現在でも性能向上の改修が続いている。米空軍では32機、NATOで17機、英空軍で7機、仏空軍で4機のE-3、我国ではE-767を4機使用中である。

 

  •  フェイズド・アレイ/ 電子式ビームスキャン方式(PESA)

 

1980年代になると、各アンテナ素子の背後に電子的に操作できる位相器を付け、時間差をつけ位相をずらして給電し、マイクロ波ビームを操作する装置が現れた。

コンピュータでアンテナ素子を一斉に操作し、ビームの方向と形をデジタル方式で100分の1秒(mm sec.)以下の高速で操作する。この方式は、アレイアンテナの信号の位相、つまりフェイズ(Phase)を操作するので、「フェイズド・アレイ」アンテナと呼ばれている。前述の「アレイアンテナ」がアンテナ板の後背にあるマグネトロン、導波管と複雑なネットワークの仕組みでビームを作っていたのに対し、「フェイズド・アレイ」では、マグネトロンと導波管は残るが、個々のアンテナ素子後背に位相器を配し、デジタル操作でビームを作る。この方式を「パッシブ・フェイズド・アレイ=Passive Phased ArrayあるいはPESA (= Passive Electronically Scanned Array)」レーダーと言う。

米空軍のB-1B爆撃機の[APQ-164]レーダー、ロシア空軍のミグMiG-31の[SBI-16 Zaslon]レーダーや、イージス艦の[SPY-1]レーダーもPESAレーダーである。

海自のイージス艦「あたご」の[SPY-1D(V)]アンテナは、艦橋の4面それぞれに4,000個のアンテナ素子が取付けられていて、天頂を含む全周をカバーしている。370kmの距離で100個以上の目標を同時に捕捉、追尾、それ等に対し優先順位を付け、迎撃ミサイルSM3などを発射・誘導・命中させる。

しかし、「PESA」でも高電圧を扱うマグネトロン、導波管を使うし、また、位相器内の巻き線式フェライト・コアへのデジタル信号を伝える複雑な送信部など、システムとしての信頼性の問題はそのまま残る。また、フェライト・コア自身も送受信時に損失が生じ、機械式ステアリング方式の場合よりアンテナ感度を低下させる。従って性能維持のためにはマグネトロンの電力をさらに上げる必要が生じる。

 

  • AESAレーダーの出現

 

PESA /フェイズド・アレイの特徴を維持しつつ、欠点を改善したのが、1990年代に出現したアクテイブ・エレクトロニク・スキャンド・アレイ・レーダー(AESA = Active Electronically Scanned Array) レーダーである。

「AESA」を可能にしたのは、ガリウム・砒素で作ったマイクロ波用単一集積回路(GaAs MMIC = Gallium Arsenide Microwave Monolithic Integrated Circuit)素子の製造技術の確立である。[MMIC]は低コストで大量生産ができ、信頼性も高い。以前はGaAsで集積回路を作るには困難だったが、今では安価な量産技術のお陰で携帯電話、衛星通信受信器、テレビ等に広く使われている。

「AESA」の基本構成は送受信(TR=transmitter Receiver) モジュールだが、TRには、アンテナの他に送信器、低ノイズ受信器、増幅器、デジタル操作型のフェイズ/位相器、時間差とゲイン調整装置、等が含まれている。この「TRモジュール」は、デジタル方式で制御され、アンテナの送受信ゲインとタイミングを調整して、前述の「PESA」よりもビームの作動/スキャンを一層高速化し、且つサイドローブを極小にしている。これで遠距離から、敵の航空機や弾道ミサイルは勿論のこと、低空で飛来するレーダー反射面積(RCS)の小さい多数の巡航ミサイルも容易に捕捉、追尾できるようになった。

「AESA」にはさらに利点がある;—

第一は、TRモジュールの低ノイズ特性がそのままアンテナ素子に組込まれているので、「PESA」に比べ受信器の発熱ノイズが2分の1ないし4分の1に減少し、レーダー感度が改善されて探知距離が伸びた点である。

もう一つは、送信電力が、単一のマグネトロンのような真空管を通さずに、数百から数千の「TRモジュール」に分散して供給される。このため「AESA」ではTRモジュールの10%が壊れても、残りでレーダーとしての機能を維持できる。また、「PESA」では、強力なマイクロ波を作るマグネトロン真空管は高電圧下(㌔ボルト単位)で使うので寿命が短くなる、しかしAESAの「TRモジュール」は、数ボルト単位の低電力で作動するので機器に加わる電気ストレスがずっと少なくて済む。

これ等の利点により、「PESA」レーダーの平均故障間隔(MTBF)は300時間以下だったが、「AESA」レーダーは1000時間以上になっている。仮に戦闘機の年間飛行時間を200時間とすると、「AESA」は5年に一度取卸して整備すれば良い事になる。

送信器、低ノイズ受信器、それに高速ビームスキャン操作機構が一体となった「AESA」は、サイドローブを殆ど生じないため、敵レーダーから探知されにくく、電波妨害を受ける可能性が極めて小さい。

このように「AESA」は正に夢のレーダーと言えるが、この特徴は性能や信頼性、デジタル制御機構だけではない。すなわち、数年以上の長期間の使用中にも、絶えずソフトウエアの改良を組込むことで、アンテナビームをさらにシャープにしたり、サイドローブを一層低減したり、スキャン・パターンを改善することが出来る。またソフトの改善でレーダー機能を拡張し電子攻撃能力を付与することも研究されている。つまり「AESA」は大きな拡張性を備えている。

 

では「AESA」には欠点はないのか?

第1の欠点はエネルギー効率である。マイクロ波を扱う集積回路増幅器の特性として、「TRモジュール」のエネルギー効率は45%以下である。つまり、供給されたエネルギーの半分以下しかレーダー電波として使われず大半は熱となって放散される。

「AESA」は、内部のGaAs MMIC素子から大量の熱が生じるのでこれを冷やしてやらなければならない。通常の空冷方式では不十分なので、液冷方式が使われている。即ち、航空機のハイドロ・システムに使う作動油に似た特殊な冷媒(PAO=Poly alpha olefin)を「TRモジュール」間に通し熱を吸収し、これを燃料タンク等に設けた熱交換器で冷やす方法が採られている。

つまり「AESA」は、高信頼性だが、より大きい電力と冷却能力を必要とする。特に探知距離を伸ばそうとすると大電力が必要となり、発生熱の放散にも負荷が掛かる、それに伴い、レーダー反射面積(RCS)が大きくなる。

もう一つはTRモジュールの量産価格。初期の「AESA」では「TRモジュール」1個当たり2,000㌦もしていた。戦闘機用では1,000-1,800個のモジュールが使われるので、価格が200万㌦にもなり普及の見込みが立たなかった。しかし、現在では民生用MMICの量産技術が進み、価格が低下し使用が拡がっている。

「AESA」技術では、米国が断然他をリードしているが、ヨーロッパ連合とイスラエルがそれに続いている。ロシアは長らく「PESA」に止どまっていたが、ガリウム砒素GaAs 技術が一般化するにつれ「AESA」を実用化しつつある。

 

  •  我国のAESA技術

 

我国では、F-2戦闘機に三菱電機製「AESA」レーダーJ/APG-1を搭載しているが、これは航空機搭載用として世界最初であった。2009年就役の海上自衛隊ヘリ空母「ひゅうが」には、対空戦闘用として国産の「AESA」レーダー[FCS-3改]型が搭載されている。これは艦載用[AESA]としては世界で最初である。

ひゅうが

図3:(海上自衛隊) 「ひゅうが」艦橋の4面にはGa-N半導体素子を使う[FPS-3改]レーダーアンテナが搭載されている。写真の白色の大きい[C]バンド多機能レーダー、小さいミサイル誘導用の[X]バンドレーダー(イルミネーターと云う) の2つを組み合わせた形式である。200km以上の距離で300個の目標を識別、追尾できる

F-2A多目的戦闘機

図4:(防衛省)三菱[F-2]、航空自衛隊の[F-2]戦闘機には、三菱電機製[J/APG-2] [AESA]レーダーが装備されている。推定能力は、同時処理目標は10個以上、探知距離は艦船等大型目標では185km程度とされる。 [F-35]用[APG-81]等最新のレーダーに比べると性能は一歩譲る。

JAPG1

図5:(防衛省)F-2用三菱電機製[J/APG-2]レーダーは、撃ち放し能力を持つ[99式対空誘導弾(AAM-4)]を運用できるよう探知距離を百数十kmに伸ばしている。米海軍のF/A-18用のレイセオン製[APG-79]AESAレーダーに匹敵する性能を持つ。

 

l   日本がリードする窒化ガリウム(GaN)技術

 

既述のように「AESA」には比較的波長の長い”L”バンド(2-1GHz、波長は数10cm)が使われたが、その後半ガリウム・砒素[GaAs](Gallium-Arsenide)半導体集積回路の製造技術の完成で、”X”バンド(周波数12-8GHz(波長10㎝クラス)「AESA」レーダーが出現した。これはレーダー開発の技術上極めて重要な出来事であった。

我が国では、三菱電機、富士電機などの努力で、世界で初めて窒化ガリウム[GaN=Gallium Nitride]を使う半導体集積回路が製造されるようになった。ガリウム砒素[GaAs]半導体に比べ[GaN]半導体の[TR(送受信)素子]は出力が3倍程度になる。

[GaN]半導体集積回路を使った三菱電機製AESAレーダーは[FPS-3A]と呼ばれ、海自の僚艦防空能力を持つ新型護衛艦「あきずき」型以降に搭載されている。「あきずき」型は[FPS-3A]レーダーと発展型シー・スパローミサイル(ESSM)を装備するので、イージス艦やヘリ空母の護衛として、これら大型艦が本来任務を遂行中に、その防空任務を担当する。

あきずき

図6(海上自衛隊)新型[19DD]護衛艦「あきずき」、前部艦橋と後部ヘリ格納庫上構に計4組の[FCS-3A]AESAレーダーアンテナが見える。ヘリ空母「ひゅうが」型の[FCS-3改]を改良し、[GaN]半導体技術を使用したレーダーFCS-3Aは、探知距離が2倍以上に向上している。大きいアンテナは探知距離の長い[C]バンド用、小さいのは対空ミサイル シースパロー[ESSM](射程50km)誘導用の[X]バンド レーダー/イルミネーターである。

 

窒化ガリウム(GaN)半導体素子のAWSAレーダーへの応用は、艦船、航空機にとどまらず、我が国が開発する各種ミサイルのシーカーとして搭載されその命中精度を著しく高めている。すなわち;—

 

  1. AAM-4B 空対空ミサイル

三菱電機製AESAシーカーを搭載、2010年に開発が始まり、世界で初めてGa-N 素子のAESAシーカーを搭載、実用化・配媚中。米国AMRAAM AIM120C-7と似ているが、やや太く射程も長く巡航ミサイル迎撃も可能。

 

  1. 欧州MBDA空対空ミサイル「ミーテイア(Meteor)」改良型の共同開発

三菱電機製GaN素子AESAシーカーを搭載、我国ではJNAAMと呼び、2023年3月までに試射を予定。F-35戦闘機に搭載可能な長射程ミサイル。

 

  1. ASM-3空対艦ミサイル

固体燃料ロケットとラムジェットを組み合わせた「固体ロケット・ラムジェット統合推進システム(IRR =Integral Rocket Ram Jet)」を採用し、これでマッハ3以上の超音速で飛翔し、敵の迎撃を困難にしている。三菱重工が開発し空自F-2戦闘機に搭載、射程200 kmと言われる。目標接近のターミナル段階の誘導には、三菱電機製のAESA複合レーダーが使われ電子妨害を排除しながら飛行、目標に衝突する。

ASM-3

図7:(航空自衛隊) F-2戦闘機の両翼に懸架されたASM-3超音速対艦ミサイル。全長5.25 m、弾体直径35 cm、重量900 kg、射程200 km程度。2018年1月までに15回の発射試験を完了、2019年から量産を始める。

 

  1. 03式中距離地対空誘導弾(改)/中SAM改」地対空ミサイル

「中SAM改」は、開発の主契約社は三菱電機で、センサーはGaN素子製TRユニットを使うAESAレーダーで東芝が担当。ペトリオットPAC-3と性能が似る低層域防空用ミサイル。2015年夏に米陸軍ホワイトサンズ・ミサイル試験場(WSMR)で巡航ミサイルを模した目標に対し10発を発射、全てが命中、立ち会った米軍関係者を驚かせた。この中には、マッハ2-5の速度で、高度2万mから地表すれすれの5 mの超低空まで飛行できる超音速巡航ミサイル模擬弾GQM-163 コヨーテ(Coyote)を捕捉・撃破に成功した件も含まれる。射程は100 km程度と想像される。平成29年度(2018)から配備が始まった。

 

  1. 12式地対艦ミサイル(12SSM)

12式地対艦ミサイルは、長さ5 m、直径35 cm、重量700 kgで、誘導方式は慣性誘導(INS)、途中から搭載のGPSで誘導され、目標に接近するとAESAレーダー誘導で目標に命中する。時速1,200 km/hr以上、射程は200 km+と言われる。中国軍の南西諸島侵攻に備えるため、2023年までに宮古島/石垣島に配備される。これで尖閣諸島周辺は射程圏内に入る。

2018年7月12日、陸自西方特科隊第5地対艦ミサイル連隊が12式地対艦ミサイル・システムを携行し、リムパック2018に参加した。演習はハワイ州カウアイ島の太平洋ミサイル試射場から90 km沖合の米海軍退役戦車揚陸艦ラシーン(LST-1191) を標的に行われた。標的艦の位置は海自P-3C哨戒機と米陸軍の無人機からの情報をリンク、特定し、発射、命中させた。訓練に立ち会った米陸軍太平洋軍(USARPQC=United States Army Pacific)司令官ロバート・ブラウン(Robert B. Brown)大将は「日本の地対艦ミサイルは素晴らしい装備だ」と評価した。

 

l   終わりに

 

1941年(昭和16年)から5年間戦った大東亜戦争では、米軍レーダー性能の前に屈した日本だが、以来70有余年を経て今度は我々のレーダー技術が米国を支える立場になった。当時小学校5年生だった小生は時代の変遷を感じるこの頃である。

 

—以上—

 

本稿作成の参考にした主な記事は次の通り。

Breaking DEFENSE April 20, 2017 “New Missile Defense Radar Passes Key Stage; Lockheed LRDR” by Sydney J Freedberg Jr.

Reuters 2017-05-23 “日本企業がイージスレーダーの共同開発を検討、両国の防衛強化=関係者“

Rueters 2017-08-30 “日本の陸上型イージス配備は23年度、最新レーダー搭載は不透明=関係者“

産経West 2018-02-20 “イージスアショア導入で「統合的な防衛が可能に」ロッキード・マーチン社担当フック社長インタビュー”ビュー野田敏彦

Reuters 2018-07-04 “防衛省、陸上イージスのレーダーにロッキード製選定=関係者”

TokyoExpress 2018-01-01 “イージスアショアの配備、閣議決定“

TokyoExpress 2018-01-13″航空自衛隊、超音速食う対艦ミサイル「ASM-3」を2019年から量産”

TokyoExpress 2018-07-02″リムパック2018、海自のみならず陸自も参加中”

TokyoExpress 2016-10-07 “03式中距離地対空誘導弾(改)、配備がスタート”