2019-03-10(平成31年) 松尾芳郎
平成31年2月における我が国周辺での中国軍、ロシア軍の活動は相変わらず活発でいささかの衰えも見せていない。しかし我国の国会、マスコミでは全く話題とならず、防衛省統合幕僚監部から次の「お知らせ」として簡単に公表されているのみである。
(According to the Ministry of Defense Joint Staff Japan, Chinese and Russian Forces movements around the Japanese Islands were kept high level as usual during February 2019. Four notable reports have issued.)
「お知らせ」;—
02-15 「公表」ロシア機の日本海および太平洋における飛行について
02-17 「公表」中国海軍艦艇の動向について
02-23 「公表」中国機の東シナ海および日本海における飛行について
02-25 「公表」中国海軍艦艇の動向について
以下に概要を紹介する。
02-15 「公表」ロシア機の日本海および太平洋における飛行について
この日はTu-95型爆撃機が2機ずつに分かれ、本州日本海側と太平洋側に飛来した。さらにSu-35戦闘機4機が2機ずつに分かれ、日本海側を飛ぶTu-95爆撃機2機を護衛する形で飛行した。これら合計8機はいずれも我が国防空識別圏(ADIZ) 内に侵入したが、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進し追尾、監視に当たり、領空侵犯を防いだ。
図1:(統合幕僚監部)ロシア空軍Tu-95爆撃機。2機ずつが二手に分かれて4機が日本海側と太平洋側を飛行した、写真はそのうちの1機。昨年7月13日には対馬海峡に飛来した。ツポレフTu-95型機は1956年配備開始の古い機体だが、現在は改良型Tu-95MSとなり63機が配備中。軸馬力14,800hpのクズネツオフNK-12MAターボプロップを4基装備、最大離陸重量185㌧、最高速度925km/hr、航続距離は6,400km。海軍用に対潜哨戒機Tu-142がある。Tu-95MSは、超音速対地攻撃用ラドガ(Raduga)Kh-15巡航ミサイル、射程300 kmを6発、胴体内ランチャーに搭載。派生型のTu-95MS-16型は、ラドガ(Raduga)Kh-55亜音速対地攻撃用、射程2,500 kmの巡航ミサイルをランチャーに6発と翼下面に10発、計16発を搭載できる。
図2:(統合幕僚監部)日本海側を飛行したTu-95爆撃機2機の護衛のためSu-35戦闘機4機が二手に分かれて飛来した。昨年9月にも姿を見せたことがある。Su-35はSu-27防空戦闘機から派生した機体で「フランカーE」とも呼ばれる。単座、双発で機動性に優れる。2014年2月からロシア空軍に[Su-35S]として配備が始まり、これまでに100機以上が製造された。中国空軍は2018年までに24機を輸入し広東省に配備しているが、今後は国産のJ-20に切り替える模様。
2月の中国軍、ロシア軍の我が国周辺における活動航跡
統合幕僚監部発表の図を基にして、両軍の活動内容を一つにまとめて図3として作成したので紹介する。
図3:(統合幕僚監部)ロシア軍、中国軍の2月の活動をまとめて表示した図。
02-17 「公表」中国海軍艦艇の動向について
2月15日午後7時、長崎県福江島北西100 kmの海域を北東に進むルーヤン(旅洋/Luyang) III級ミサイル駆逐艦1隻およびジャンカイ(江凱/Jiangkai) II級フリゲート2隻を発見、同艦隊はその後対馬海峡を北上、16日には日本海に入った。発見、追尾したのは海上自衛隊佐世保基地第3ミサイル艇隊所属「しらたか」と佐世保基地第13護衛隊所属護衛艦「さわぎり」(5,000 ton/平成2年就役)である。
図4:(統合幕僚監部)写真は艦番号[118]鳥魯木斎(Urumqi)、北海艦隊所属で2018年1月に就役したばかり。「旅洋(Luyang)型」は、「旅洋I型:広州級(052B型)」、「旅洋II型:蘭州級(052C型)」、「旅洋III型:昆明級(052D型)」に大別される。「旅洋I型」は試作で2隻のみ。「旅洋II型」は中国版イージス艦で僚艦防空能力を持つ、6連装回転式VLSを8基搭載し、6隻が建造された。「旅洋III型」は最新モデルで、満載排水量7,000 ton、速力30 Kt。2018年初めまでに16隻が製造中で、うち就役済みは10隻+。
図5:(統合幕僚監部)ジャンカイ(江凱)II級/ 054A型フリゲート(547)「臨淅(Linyi)」は13番艦、2012年の就役。ジャンカイ(江凱)II級は満載排水量4,500 ton、速力27 Kts、の大型フリゲート。艦橋前方には、HQ-16対空ミサイルが米海軍のMk-41 VLSと似た32セルVLS(垂直発射装置)に収められている。艦中部にはYJ-83 対艦ミサイル4連装発射機2基を搭載。YJ-83は射程200 km、最終段階での速度はマッハ1.5。HQ-16対空ミサイルを搭載したことで僚艦防空能力を持つ。1番艦「舟山(529)」が2008年就役した後27番艦「日照」まで完成、中国海軍の主力フリゲートとして整備されている。
図6:(統合幕僚監部)江凱II級フリゲート27番艦、艦番号598[日照]、就役は2018年1月の新鋭艦。他は図5説明を参照。
02-23 「公表」中国機の東シナ海および日本海における飛行について
中国空軍Y-9情報収集機1機が東支那海から我国防空識別圏(ADIZ)に侵入、対馬海峡を北上通過、日本海に入り、竹島の西の空域で反転、往路と同じ航路で対馬海峡を通り東支那海に立ち去った。航空自衛隊の戦闘機が緊急発進、監視、追尾をし、領空侵犯を防いだ。
図7:(統合幕僚監部)機首と胴体側面前後にアンテナを収める膨らみがあるので「Y-9JB」型、我が空自、海自の通信、レーダー波、などを傍受し諜報活動を行うELINT型である。基本形は空軍用中型輸送機Y-9で、全長36 m、翼幅38 m、全備重量65 ton、貨物積載量20 ton、航続距離1,000 kmとされる。
02-25 「公表」中国海軍艦艇の動向について
2月23日午後9時、上対馬東北東110 km の海域を日本海から南西に進むルーヤンIII級ミサイル駆逐艦1隻とジャンカイII級フリゲート2隻発見した。その後これら艦艇は対馬海峡を南下、東シナ海に向け航行したことを確認した。発見、追尾したのは海上自衛隊舞鶴基地第14護衛隊所属護衛艦「せんだい」(2,900 ton、平成3年就役)である。これら3隻は、2月16日に対馬海峡を北上、日本海に入ったものと同一である。従って写真は図4から図6を参照されたい。
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