令和2年9月、中露両軍の活動と我が国の対応


2020-10-04(令和2年) 松尾芳郎

 

令和2年9月、我国周辺における中露両軍の活動と、それに対応する我国自衛隊および同盟諸国軍の動きに関し、各國関係部門から多くの発表があった。以下のその項目と内容を列記する。

(On September 2020 period, there are many military exercises and threats in the Indo-Pacific region by Chinese and Russian Forces, enforcing there political issues to Japan and allied nations. Matching to the enforcements, U.S.-Japan allied forces have proceeded counter measures in the region.)

 

防衛省

9月17日 公表 瀬取りに係る関係国の警戒監視活動について

9月25日 公表 米軍再編に係る訓練移転(ヘリコプターおよびテイルトローター機等のの沖縄県外への訓練移転)に関する訓練計画概要について

 

統合幕僚監部

 

9月15日 公表 ロシア海軍艦艇の動向について

9月25日 公表 令和2年度日米共同統合演習(実動演習)「Keen Sword 21/02 FTX」について

9月25日 公表 中国機の東シナ海および太平洋における飛行について

9月28日 公表 中国艦艇の動向について

9月28日 公表 ロシア海軍艦艇の動向について

 

陸上幕僚監部

 

9月11日 公表 国内における米空軍機からの降下訓練の概要について

 

海上幕僚監部

 

9月1日  公表 日米共同訓練について

9月1日  公表 令和2年度インド太平洋方面派遣訓練の実施について

9月12日 公表 日米豪韓共同訓練( Pacific Vanguard 20)について

9月15日 公表 令和2年度インド太平洋方面派遣訓練について(追加)

9月18日 公表 日豪共同訓練について

9月25日 公表 日スリランカ共同訓練 (JA-LAN EX)について

9月25日 公表 日印共同訓練 (JIMEX)について

9月25日 公表 令和2年度グアム島方面派遣訓練(敷設艦)について

9月29日 公表 日米共同訓練について

 

航空幕僚監部

なし

 

米第7艦隊ニュース(Commander, U.S. 7th Fleet News)

 

9月19日 「2020年度強固な盾 (Valiant Shield 2020)作戦」の一つとして空軍・海軍・海兵隊3軍で退役艦カートを標的に実弾射撃訓練を実施

9月20日 「2020年度強固な盾 (Valiant Shield 2020)作戦」の一つとして駆逐艦アンテイータムがトマホーク・ミサイルの実弾射撃を実施

9月25日 日本自衛隊と米軍が10月26日から「鋭い刀 (Keen Sword)」演習を実施

 

中国China military 

 

9月 1日 「中国陸軍、ロシア軍と合同演習(International Army Games 2020)を実施」

9月24日 「中国空軍、台湾の分離独立の動きに対し警告飛行を実施」

9月30日 「中国最大の巡視船 “海巡 09”が進水」

 

ロシア海軍情報管理局ニュース

 

9月30日 「ロシア太平洋艦隊、インド-東南アジア歴訪を終えウラジオストックに帰還」

 

以下に、上記各項目について解説する。

 

防衛省

9月17日 公表 瀬取りに係る関係国の警戒監視活動について

国連安保理決議で禁止されている北朝鮮船舶の違法な活動「瀬取り」に対し、オーストラリア軍が9月下旬から1ヶ月間嘉手納基地をベースにしてP-8 哨戒機で警戒監視活動を行う。

オーストラリアP-8哨戒機

図1:(オーストラリア国防省)オーストラリア軍P-8哨戒機。「P-8」哨戒機はボーイング737型旅客機をベースに開発した哨戒機。米海軍は60年間使用してきた「P-3C」哨戒機117機を全て「P-8A」に更新する予定、すでに102機を受領している。海外からの受注も好調で54機に達している。オーストラリア空軍は12機発注済みで追加3機を発注する予定。

 

9月25日 公表 米軍再編に係る訓練移転(ヘリコプターおよびテイルトローター機等のの沖縄県外への訓練移転)に関する訓練計画概要について

10月26日から11月5日にかけて行われる令和2年度日米共同統合演習「鋭い刃/Keen Sword 21/02FTX」で、現在普天間基地に展開する第1海兵航空団第36海兵航空飛行団第265 テイルト・ローター (MV-22) 飛行隊の訓練活動を県外で実施する。

訓練に参加する他の部隊は;―

米軍:第3海兵師団第4連隊

陸自:水陸機動団、西部方面航空隊

海自:ヘリ空母「ひゅうが」、護衛艦「すずつき」、輸送艦「おおすみ」、「くにさき」

空自:第8航空団 (福岡県築城基地・F-2飛行隊 x 2)

訓練場所;―

鹿児島県鹿児島市の南200 kmにあるトカラ列島の無人島臥蛇島(がじゃじま)と周辺海空域

参加航空機の規模は;―

米軍:MV-22 テイルト・ローター機4機程度、海自鹿屋航空基地を使用

空自・陸自:攻撃ヘリAH-64  2機、輸送へりCH-47  3機、戦闘機F-2  2機

 

統合幕僚監部

 

9月15日 公表 ロシア海軍艦艇の動向について

9月14日(月)午前10時、北海道宗谷岬東北東160 kmの海域を西に向け高校するロシア海軍スラバ級ミサイル巡洋艦1せき、ウダロイI級駆逐艦1隻、ステレグシチー級フリゲート2隻、マルシャル・ネデリン級ミサイル観測支援艦1隻、およびアムール級工作艦1隻の合計6隻を発見した。発見・追尾したのは海自八戸基地第2航空群所属「P−3C」哨戒機および余市基地の第1ミサイル艇隊所属の「くまたか」である。

9月16日親衛ロシア海軍情報管理局ニュース

「ベーリング海演習「太平洋の盾-2020」に参加したロシア海軍太平洋艦隊はウラジオストックに帰投」と題して、ロケット巡洋艦「ワリヤーグ」が率いる艦隊がウラジオストックに帰還、と報じた。艦隊は基地に入る前にピヨートル大帝湾で、巡洋艦「ワリヤーグ」、測量艦「マルシャル・クルイロフ」、フリゲート「グロムキー」は3機のヘリコプターの移動訓練を行なった。

「太平洋の盾-2020」演習は、8月24日から9月1日までベーリング湾、アナドイル湾、チュクチ半島およびカムチャッカ半島で行われ、期間中海上目標への有翼ミサイル合同射撃を含む50回以上の戦闘訓練を実施した。また、チュクチ半島に対し空挺部隊と揚陸部隊の上陸演習、フリゲートからの対地艦砲射撃も行われた。

9-15 011

図2:(統合幕僚監部) ロシア太平洋艦隊旗艦・スラバ級ミサイル巡洋艦「ワリヤーグ (011)」

09-15ウダロイ648

図3:(統合幕僚監部) ロシア海軍では大型対潜艦と呼ぶウダロイI級駆逐艦「アドミラル・バンテレーエフ (548)」。ウダロイ級駆逐艦は、満載排水量7,500 ton、全長163 m、速度35 kt、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年に作られ8隻が就役中で太平洋艦隊には内4隻を配備。イージス艦に近い性能を持つ。

9-15フリゲート333

図4:(統合幕僚監部) ロシア海軍では“最新鋭コルベット”と呼ぶステレグシチー級フリゲート「グロームキー (333)」。満載排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kt、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マスト本体は最新の閉囲型で内部に各種レーダーが装備されている。兵装は、対空戦用にGSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化し12セルのVLS(垂直発射装置)に装備、対艦用に3M24ウラン対艦ミサイルを4連装発射筒2基に搭載。艦番号[333]は2017年就役の3番艦「ソベルシェンヌイ」、太平洋艦隊に配属。同型艦は6隻で、現在2隻が艤装中なので合計8隻になる。

9-15 フリゲート335

 

図5:(統合幕僚監部) ステレグシチー級フリゲート艦番号335

9-15観測艦

図6:(統合幕僚監部) ミサイル観測支援艦「マルシャル・クルイロフ」

9-15工作艦

図7:(統合幕僚監部)

 

9月25日 公表 令和2年度日米共同統合演習(実動演習)「Keen Sword 21/02 FTX」について

自衛隊と米軍は日米共同統合演習「鋭い刃 (Keen Sword 21/02FTX)」を10月26日から11月5日の間実施し、即応態勢を確認、地域の平和と安定に貢献する能力の維持強化をする。

訓練場所;―

我国周辺の海空域、特に鹿児島県鹿児島市の南200 kmにあるトカラ列島の無人島臥蛇島(がじゃじま)と周辺の海空域で実施する。

行う。種子島では自衛隊が訓練実施、臥蛇島では日米両軍で訓練実施

演習参加規模;―

米軍 :

カナダ軍:艦艇1隻

縄普天間基地に展開するの訓練活動は県外で実施する。

訓練に参加する部隊規模は;―

米軍:人員 9,000名、第3海兵師団第4連隊。MV-22 テイルト・ローター機4機程度(第1海兵航空団第36海兵航空飛行団第265テイルト・ローター 飛行隊に所属)、海自鹿屋航空基地を使用

自衛隊:人員37,000名、艦艇約20隻、航空機約170機、

陸自:水陸機動団、西部方面航空隊。攻撃ヘリAH-64  2機、輸送へりCH-47  3機、

海自:ヘリ空母「ひゅうが」、護衛艦「すずつき」、輸送艦「おおすみ」、「くにさき」

空自:第8航空団 (福岡県築城基地・F-2飛行隊 x 2)

 

米第7艦隊ニュースSept. 25, 2020 ”Japan Self-Defense Forces, U.S. military to begin exercise Keen Sword, Oct.26” ;-

「鋭い刃(Keen Sword)」演習は、1986年から日米両軍で行われている統合演習で、即応能力の強化と共同作戦能力の向上を目指している。

今年の演習では、陸自の水陸機動団 (ARDB=Amphibious Rapid Deployment Brigade)と米第3海兵師団 (III Marine Expeditionary Force)が、それぞれ個別に、あるいは共同で日本近海の複数の島々で上陸演習を行うのが特徴。

米軍は、陸・海・空・海兵隊4軍から人員9,000名が参加し、沖縄近海、日本周辺の領海域に展開して行う。

「鋭い刃(Keen Sword)」演習に参加する部隊は;―

インド・太平洋軍 (U.S. Indo-Pacific Command)

太平洋艦隊 (U.S. Pacific Fleet)

太平洋陸軍 (U.S. Army Pacific)

日本駐留の米4軍 (U.S. Forces Japan)

第3海兵師団 (III Marine Expeditionary Force)

第7艦隊 (U.S. 7th Fleet)

第94陸軍対空・対ミサイル防衛軍 (94th Army Air and Missile Defense Command)

第5戦域調整派遣司令部 (5th Battlefield Coordination Detachment)

スクリーンショット 2020-10-04 11.10.45

図8:(U.S. 7th Fleet by MC2 Kaila V. Peters)2019年にフィリピン海で行われた「鋭い刃(Keen Sword」」演習の写真。左に米海軍空母[ロナルド・レーガン(CVN 76)]、右に海自ヘリ空母[ひゅうが(DDH 181)]、上空には米空軍機と空自戦闘機が編隊で飛行。

 

9月25日 公表 中国機の東シナ海および太平洋における飛行について

9月25日(金)、中国軍Y-9情報収集機1機が東シナ海から沖縄県宮古海峡上空を通過太平洋に進出、台湾東海岸沖まで飛行、反転して往路と同じ経路を通り、東シナ海に戻り立ち去った。空自では那覇基地から戦闘機を緊急発進させ領空侵犯を防いだ。

9-25 y-9航跡

図9:(統合幕僚監部)9月25日中国軍Y-9情報収集機の飛行経路。

9-25 Y-9

図10:(統合幕僚監部)9月25日宮古海峡から太平洋に進出、台湾東岸に接近した中国軍Y-9情報収集機、緊急発進した空自戦闘機が撮影した写真。Y-9は、アントノフ(Antonov) An-12輸送機を国産化した陜西Y-8Fを基本に胴体を延長し、情報収集機に改造した機体。

 

9月28日 公表 中国艦艇の動向について

9月23日(水))午後9時半、沖縄県久米島北西100 kmの海域を南東に進む中国海軍ジャンカイII級フリゲート1隻を発見した。同艦は太平洋に進出したが、26日(土)に宮古海峡を北上、東シナ機に戻った。発見・追尾したのは沖縄基地の海自第46掃海隊所属の「ししじま」と那覇基地の第5航空群所属の「P-3C」哨戒機である。

9-28 フリゲート599

図11:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、2008年に1番艦「舟山」が就役した。満載排水量4,500 ton、全長137 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを米国のMk 41 VLSに似た32セルVLSに収めている。対艦ミサイルは艦中央部にYJ-83型を4連装発射機2基に格納している。[045A]型フリゲートは外洋艦隊用で防空能力を強化。写真は26番艦「安陽(Anyang)・599 」、同型艦は30隻建造予定で内28番艦まで就役済み。

 

9月28日 公表 ロシア海軍艦艇の動向について

9月27日(日)午後2時下対馬南西160kmの海域を東シナ海から日本海に進むロシア海軍ウダロイI級駆逐艦2隻およびボリス・チリキン級補給艦1隻の合計3隻を発見した。発見・追尾したのは海自佐世保基地第5護衛隊所属「あけぼの」および鹿屋基地第1航空群所属「P-1」哨戒機である。

9-28ウダロイ564

図12:(統合幕僚監部)「図4」を参照。ウダロイ(Udaloy)I級駆逐艦「アドミラル・トリプツ」[564]

9-28ウダロイ572

図13:(統合幕僚監部)「アドミラル・ビノグラドフ?」

9-28補給艦

図14:(統合幕僚監部)

 

陸上幕僚監部

 

9月11日 公表 国内における米空軍機からの降下訓練の概要について

9月14日と15日の両日、陸自陸上総隊第1空挺団は、米空軍第5空軍第374空輸航空団の輸送機か夜間を含むら降下訓練を実施し、空挺作戦に必要な戦術技量の向上を図る。海自厚木基地を拠点とし、降下訓練は習志野演習場で実施する。

第1空挺団は千葉県船橋市にあり、隊員約2,000名のパラシュート降下旅団。

第374空輸航空団 (5AF / 374 Airlift Wing) は横田基地に駐留し、米国が太平洋に展開する唯一の空輸航空団でありC-130Hを含む輸送機を運用している。

9−11 C-130J

図15:(U.S. Air Force Photo by Yasuo Osakabe) 横田基地で行われた第374空輸航空団の訓練「エレファント・ウオーク/Elephant Walk」で勢揃いした [C-130J-30]スーパー・ハーキュリーズ (Super Hercules) 輸送機の12機、[C-12J]連絡機 3機および[UH-1N]ヘリコプター2機。[C-130J] はロッキード・マーチン製で原型 [C-130]を改良した4発ターボプロップ機、1996年に初飛行、これまでに400機以上が作られ、12ヶ国が使っている。空自は[C-130H]を16機、海自は旧型の[KC-130R]を6機購入して使用中。エンジンはRolls-Royce AE2100 D3  4,600軸馬力を4基、プロペラは6枚羽根Dowty R391複合材製。乗員3名、空挺隊員64名を収容し、航続距離は3,300 km、最大離陸重量は74 ton。

 

海上幕僚監部

 

9月1日  公表 日米共同訓練について

8月31日(月)関東地方南方海空域で海自護衛艦「てるずき」と米陸軍ヘリコプター[UH-60L] 2機が共同で発着艦訓練を実施した。

9-01 UH-60L着艦

図16:(海上幕僚監部)護衛艦「てるずき (DD-116)」の後部甲板に着艦した米陸軍の[UH-60L]ヘリコプター。「てるずき(DD-116)」は「あきずき」級2番艦で、2013年就役、横須賀に配備中、満載排水量6,800 ton、Mk.41 VLS 垂直発射装置32セルを装備、最新の戦術システムを搭載する新鋭艦。

 

9月1日  公表 令和2年度インド太平洋方面派遣訓練の実施について

9月7日((月)〜10月17日(土)の期間、インド洋方面でインド太平洋各國海軍と共同訓練を行い、戦術技量の向上を図り、各國海軍との連携を強化する。海自が派遣するのはヘリ空母「かが (DDH-184)」、護衛艦「いかづち(DD-107)」、搭載航空機3機、補給のためスリランカ共和国に寄港する。

 

9月12日 公表 日米豪韓共同訓練 「太平洋・先陣訓練20( Pacific Vanguard 20)」について

9月12日(土)〜13日(日)の期間、米海軍、オーストラリア海軍、韓国海軍との間でグアム島周辺海空域で共同訓練を実施、戦術技量の向上を図るとともに米・豪・韓各海軍との連携を強化する。参加部隊は;―

海自 :ヘリ空母「かが (DDH-184)」、護衛艦「いかづち(DD-107)」、航空機3機

米海軍:駆逐艦「バリー」、補給艦「ジョン・エリクソン」、潜水艦、航空機

豪海軍:フリゲート「アランタ」、「スチュアート」

韓海軍:駆逐艦「イ・スンシン」、「ソエ・リユ・ソンニヨン」

米第7艦隊ニュースSept. 25, 2020 ” U.S., Allied Forces conduct Exercise Pacific Vanguard” ;-

オーストラリア、日本、韓国、および米国の海軍はグアム島周辺の海域に集合、9月12日に「太平洋・先陣訓練(Pacific Vanguard)」を実施する。これはインド・太平洋に面する4ヶ国が海上での脅威に対抗する力を強化するための演習。

米海軍からはアーレイバーク級駆逐艦(イージス艦)USSバリー(USS Barry DDG 52)と潜水艦1隻および燃料補給艦「ジョーン・エリクソン(John Erickson /T=AO 194)」、

海自からはヘリ空母「かが(DDH-184)」および護衛艦「いかづち(DD-107)」、

オーストラリア海軍からはフリゲート「アランタ(HMAS Arunta /FFH 151)」および「スチュアート(HMAS Stuart/FFH 153)」、

韓国海軍からは駆逐艦「イ・スンシン(Yi Sun-sin/DDH 975)」および「ソエ・リユ・ソンニヨン(Seoae Ryu Seong-ryong/DDG 993)」、

がそれぞれ参加する

9-12 4ヶ国訓練

図17:(海上幕僚監部)9月11日グアム島周辺海域で行われた日米豪韓4ヶ国海軍の「太平洋・先陣 20 (Pacific Vanguard 20)」に先立つ艦隊編成航行の様子。中央は米潜水艦を先頭に海自ヘリ空母「かが」、左には護衛艦「いかづち」、右側は米イージス駆逐艦「USSバリー/DDG 52」が見える。「USS Barry (DDG 52)」は米最大の前方展開をする駆逐艦隊(DESRON =Destroyer Squadron)に所属し、この駆逐艦隊は第7艦隊水上艦の大半を占めている。

 

9月15日 公表 令和2年度インド太平洋方面派遣訓練について(追加)

9月7日((月)〜10月17日(土)の期間、インド洋方面でインド太平洋各國海軍と共同訓練を行うに際し、潜水艦1隻を追加派遣する。

 

9月18日 公表 日豪共同訓練について

9月13日(日)〜17日(木)の間南シナ海で、インド太平洋各國海軍との共同訓練に向かう途上にある海自ヘリ空母「かが(DDH-184)」と護衛艦「いかづち(DD-107)」は、オーストラリア海軍駆逐艦「ホバート」、補給艦「シリウス」と共同訓練を実施した。

9-18 給油中

図18:(海上幕僚監部)豪海軍補給艦「シリウス」から給油を受けるヘリ空母「かが」と護衛艦「いかづち」

 

9月25日 公表 日スリランカ共同訓練 (JA-LAN EX)について

インド太平洋各國海軍との共同訓練に向かう海自派遣訓練艦隊は、9月24日(木)コロンボ港周辺海域でスリランカ海軍の哨戒艦「ガジャバフ」と戦術運動などの訓練を行なった。

9-25スリランカ

図19:(海上幕僚監部)左から哨戒艦「ガジャバフ」、ヘリ空母「かが(DDH-184)」、護衛艦「いかづち(DD-107)

 

9月25日 公表 日印共同訓練 (JIMEX)について

インド太平洋各國海軍との共同訓練に向かう海自派遣訓練艦隊は、9月26日(土)〜28日(月)の間、インド海軍とインド西方海空域/アラビア海で、インド海軍との連携強化を図るため[ JIMEX訓練]を実施する。これは両国間で初めてとなる軍事演習で、これを契機に一層の連携が深まることを期待する。

参加艦隊は;―

海自: ヘリ空母「かが」、護衛艦「いかづち」

インド海軍: 駆逐艦「チェンナイ」、フリゲート「タルカッシュ」、補給艦「デイパック」、および航空機

 

9月25日 公表 令和2年度グアム島方面派遣訓練(敷設艦)について

10月2日(金)〜11月15日(日)の期間、グアム島周辺海域で敷設等の訓練のため、海自は敷設艦「むろと」を派遣、米海軍の協力を受け電纜(でんらん)敷設訓練を実施する。

むろと

図20:(海上自衛隊ホームページ)三菱重工下関造船所で建造、2013年3月に海洋業務群直轄艦として編入され、呉基地が定係港。基地、港湾、戦略海域等に水中聴音監視装置を敷設するのが主任務と思われる、秘密性の高い特殊艦。ケ―ブル敷設装置や各種の水中聴音機器を装備する。艦内に大きなケーブルタンクがあり、エンジンを介してケーブル敷設をする。敷設はむき出しでなく泥中埋没式で行ので切断される恐れは少ない。満載排水量6,400 ton、全長131 m、主機はデイーゼルエンジン3基と電動機2基、出力7,500 HP、推進器は可変ピッチプロペラ、サイドスラスターを前後に装備する。速力16 kt。

 

9月29日 公表 日米共同訓練について

9月28日((月)〜29日(火)の間、ハワイ沖で遠洋練習公開中の海自練習艦「かしま」は米海軍アーレイバーク級駆逐艦(イージス艦)「チャン・フーン(Chung-Hoon / DDG-93」と戦術運動、通信訓練、発着艦訓練を実施する。

9-29 チャンフーン

図21:(海上幕僚監部)米海軍イージス艦「チャン・フーン(Chung-Hoon / DDG-93)」/ 9,200 tonと手前は海自練習艦「かしま」の乗員。

 

航空幕僚監部

なし

 

米第7艦隊ニュース(Commander, U.S. 7th Fleet News)

 

9月20日 「2020年度強固な盾 (Valiant Shield 2020) 演習」の一つとして巡洋艦アンテイータムがトマホーク・ミサイルの実弾射撃を実施

9月20日、米海軍のタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「アンテイータム(Antietam CG 54)」が、「2020年度強固な盾」演習の一つとして、「トマホーク対地攻撃巡航ミサイル(TLAM= tomahawk land attach cruise missile)の実弾射撃を行った。目標場所はグアム島近くの射撃区域 ”Farallon de Medinilla range” にある面積200エーカーの無人島。

「強固な盾」演習は米軍単独で太平洋上で行う演習で、陸海空および宇宙空間からの攻撃に即時に対処するための訓練、特に“インドー太平洋区域”の平和維持に関する米国の責任を全うするための重要な訓練と位置付けられている。

「強固な盾演習」は2006年から始まり今回は8回目となる米海軍最大規模の演習。空母「ロナルド・レーガン(CVN 76)」、空母搭載航空団(CVW 5)、原子力潜水艦「USSシカゴ (SSN 721)」、強襲揚陸艦「USSアメリカ(USS America / LHA 6)」、ドック型輸送揚陸艦[USSニューオルリンズ (USS New Orleans/LPD 18)]、ドック型揚陸艦「USSコムストック(USS Comstock /LSD 45)、および多数の水上艦艇、それに100機の航空機と各軍から11,000名の兵員が参加して実施中。

このような大規模、かつ重要な演習であるにも関わらず我国マスコミは一切報道していない。

スクリーンショット 2020-10-04 11.42.30

図22:(U.S. Navy 7th Fleet by MS 3rd class James Hong) 9月20日グアム島近くの射爆訓練区域でUSSアンテイータム(CG54)から発射されたトマホーク巡航ミサイル。「トマホーク(Tomahawk)」は、長射程、亜音速の巡航ミサイルで、米海軍と英海軍が水上艦・潜水艦で使用中。現在はレイセオンがBlock 3、Block 4を製造中、射程は1,700 km、高度30-50 mで速度マッハ0.74で飛行、着弾する。単価は約2億円。我が国でも敵基地攻撃用として導入が検討されている。

 

中国China military ニュース

 

9月24日 「中国空軍、台湾の分離独立の動きに対し警告飛行を実施」

米政府がクラック国務次官を李登輝・台湾元総統の告別式参列のため派遣したことに反発し、中国軍は台湾・米国への威嚇のため台湾海峡で大規模な演習を行なった。

9月18日と19日に行われ、18日にはJ-16戦闘機およびH-6爆撃機合計18機が、19日午前には同じく19機が台湾海峡の中間線を超え、台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入した。台湾空軍は両日ともに戦闘機を緊急発進させ領空侵犯を防いだ。

中国人民日報系の環球時報は「米国務長官などが訪台すれば、中国軍はミサイルを発射、台北の総統府上空を通過させる」と威嚇の社説を掲載した。

日経によれば、台湾海峡の中間線を越える中国軍機の動きは激しさを増している。今年は2月、8月に続き今回9月の2回を加えると4回目となり、異例の多さとなる。中間線は1950年代に中台両国で合意、設定された事実上の停戦ラインだが、昨年は8年ぶりに侵犯があったばかり。

中国外務省の王文武副報道局長は21日の記者会見で「台湾は中国の領土の一部で台湾海峡に中間線は存在しない」と主張している。

20-02 防空識別圏のコピー

図23:日本周辺の防空識別圏(ADIZ=Air Defense Identification Zone)。台湾の防空識別圏は表示してない。ただし1950年代に中台両国で台湾海峡の中間に境界線を設定、これが事実上の防空識別圏となっている。

 

9月27日 「中国陸軍、ロシア軍と合同演習[Kavkaz-2020]を実施

[カブカズ2020 (Kavkaz-2020)]演習は、ロシアが主催する最大規模の国際演習で、ロシアの「カプステイン・ヤール演習場(Kapustin Yar Range)」で中国陸軍が参加し行われたが、9月26日に終了した。

「カプステイン・ヤール演習場(Kapustin Yar Range)」は、ウクライナの東、ジョージアの北のウオルゴグラード州にある砂漠地帯の演習場。

同25日にはロシア大統領ウラジミール・プーチン(Vladimir Putin)および国防大臣セルゲイ・ショイグ(Sergey Shoigu)の両氏が両軍の実弾射撃演習を視察した。

中露軍の演習

図24:(China Military ) 中露両軍による合同演習「カブカズ2020 (Kavkaz-2020)」の様子。

 

9月30日 「中国最大の巡視船 “海巡 09”が進水」

中国海警局用の巡視船「海巡09」が、広東省広州造船所で9月29日進水式を行った。「海巡09 (Haixun 09)」は来年就役する予定で、満載排水量10,700 ton、速力25 kt、航続距離10,000 n.m. (18,500 km)、ヘリコプター発着甲板と衛星通信設備を備える。武装は明らかにしていないが、一説によれば75 mm口径速射砲を備えると云う。中国海警局はこれまで3,000 ton以上の巡視船3隻を保有しているが「海巡09」の進水でその能力が一層高まる。

海巡09

図25:(China Military)9月29日に行われた大型巡視船「海巡09」の進水式。

 

ロシア海軍情報管理局ニュース

9月30日、ロシア太平洋艦隊戦闘艦隊支隊は、8月1日からの東南アジア諸国歴訪の遠洋航海からウラジオストックに帰還した。この艦隊は、大型対潜艦「アドミラル・トリプツ」と「アドミラル・ビノグラードフ」、大型給油船「ボリス・ブトマ」の3隻。艦隊は9月4日〜6日の間、ロシア・インド合同演習「インドラ・ネービー・2020」に参加した。インド海軍からは駆逐艦「ランビジャイ (D55)」を含む4隻が参加した。

その後、途中スリランカとブルネイを訪問、アジア太平洋諸国との海軍協力に貢献した。

艦隊は2ヶ月間に12,000 n.m.を航行し、50回以上の戦闘訓練を行なった。

9-30アドミラルトリプツ

図26:(ロシア海軍情報局)大型対潜艦「アドミラル・トリプツ(564)」

ボリス部とま

図27:(ロシア海軍情報局)大型海洋給油船「ボリス・ブトマ」

 

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