令和4年12月、我国周辺における中露両軍・北朝鮮の活動と我国/同盟諸国の対応


2023(令和5年)-01-08 松尾芳郎

令和4年12月、我国周辺における中・露・北朝鮮の軍事活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。注目すべきニュースは次の通り。

  1. 北朝鮮のミサイル発射、今年1~12月の発射は合計約70発、37回
  2. 中国軍、台湾に対する軍事圧力を増大

空軍爆撃機18機が台湾防空識別圏に侵入

    海軍艦艇が台湾東部で80 kmまで接近

    空軍機71機が大陸・台湾中間線を超え台湾側に侵入

3. 中国空軍戦闘機、南シナ海で米哨戒機に異常接近

4. 中国海軍空母艦隊、大東島・沖ノ鳥島付近海域で大規模演習

5. 中国海警局艦艇、今年1~12月の間、尖閣諸島周辺海域に336日間航行

6. 陸自、九州で大規模実働対抗演習を実施予定

7. 海自、12月2〜9日および同19日、西太平洋海域で米空母艦隊と共同訓練を実施

8. 海自、「もがみ」型3番艦「のしろ」の引渡式 (9日)および、同6番艦「あがの」の進水式が挙行 (21日)

9. 空自、11月29日、沖縄周辺で米空軍F-22と戦術訓練を実施

10. 空自、12月14日、沖縄周辺で米空軍・米空母航空団・米海兵航空団と戦術訓練を実施

11. 空自、12月20日、日本海で米空軍B-52爆撃機と編隊航法訓練を実施

(Military threats from Russia, China and North Korean Forces to Japan and Taiwan, are increases ever. Countermeasures to these threats are proceeded by Japan and Allies.        Following 11 were major issues in December.

  1. North Korea launches three ballistic missiles on final day of the year, all together nearly 70 missiles in 2022..
  2. Chinese increased militant pressure to Taiwan, including 18 bombers flew into Taiwan’s Air Defense Zone, a warship sailed near Eastern coast of Taiwan, and 71 warplanes flew across the midline of Taiwan straits.
  3. Chinese fighter came within six meters of U.S. spy plane
  4. Chinese aircraft carrier strike group conducted military drill in western Pacific close to U.S. bases Guam.
  5. Chinese Coast Guard vessels enters Japanese waters near Senkakus for 334 days in 2022.
  6. Japanese Army plan a month long large scale war game in January at Southern Japan.
  7. Japanese Navy together with U.S. Carrier strike group conducted military drill several times in western Pacific.
  8. Latest model Frigate-FFM “Noshiro” enter into service, and a same class “Agano” conducted launching ceremony.
  9. Japanese Air Force fighter planes conducted air drill with USAF F-22 fighters around Okinawa air space.
  10. Japanese Air Force fighter conducted war drill with USAF, Carrier Air Wing and Marine Air Wing planes nearby Okinawan air space.
  11. Japanese Air Force fighter escort USAF B-52 flew into Japan Sea.

以下にそれぞれを紹介する。

  1. 北朝鮮のミサイル発射、今年1~12月の発射は合計37回

12月31日午前8時ごろ平壌の南60 kmの黄海北道中和付近から日本海に向けて短距離弾道ミサイル3発を発射した。いずれも最高高度100 kmで350 km飛翔して日本海・我国EEZ外に落下した。これは2022年になって37回目の発射となり、年間合計で約70発を発射したことになる。韓国国防省によると今回の発射は固体燃料式ロケット。液体燃料型に比べ固体燃料型は準備がごく短時間で済み、発射指令後すぐに発射できるのが特徴。言い換えれば、わが国にとり迎撃態勢を整えるまでの時間が短くなり、対処が著しく困難になる。

新年早々元旦に金正恩総書記は労働党中央委員会総会で「今年は戦術核兵器の大量生産を目指し、核弾頭保有数を飛躍的に増加すべし」と指示した。

  • 中国軍、台湾に対する軍事圧力を増大

習近平主席がしばしば口にする対日融和の言動とは裏腹に、中国は軍事面で南京、福州を含む「東部戦区」の戦備強化に努めている。人事で台湾侵攻を意識した体制作りを進め、昨年10月には中国軍最高機関「中央軍事委員会」のメンバーに「河衛東」前東部戦区司令官を起用した。同氏は習主席の側近で、今回は2段跳びの抜擢人事。河衛東将軍は長年浙江省や福建省を含む東部戦区に勤務した台湾問題の専門家である。

これが早くも12月での台湾(および日本)への軍事圧力の増加となって現れてきている。すなわち;―

戦略爆撃機18機が台湾防空識別圏に侵入

12月12~13両日24時間にわたって、中国空軍のH-6K戦略爆撃機18機が台湾の防空識別圏 (ADIZ)に侵入した。これは2020年以来24時間以内に侵入した中国機としては最多になる。

12~14日には、中国海軍ドンデイアオ級情報収集艦(艦番号796)が鹿児島県口永良部島西の海域から沖縄本島西へ、さらに宮古海峡を通過、太平洋に進出した。また13日午後10時に中国海軍ミサイル駆逐艦2隻と補給艦1隻が長崎県男女群島西から鹿児島県大隈海峡を通過、太平洋に進出した。

これらは自民党荻生田光一政調会長の台湾訪問時期 (10~12日)に重ねた動きとも考えられる。荻生田氏は10日に蔡英文総統と会談し、台湾・日本の基本的価値観の共有と緊密な経済関係・一層の人的往来を進める、ことで合意した。

これに対し中国政府報道官は「強烈な不満と断固たる反対」の談話を発表した。

図1:(統合幕僚監部) 12月12日~14日にかけて、鹿児島県沖永良部島西から沖縄本島西・東シナ海から宮古海峡を抜け太平洋に出たドンデイアオ級情報収集艦(艦番号796)

海軍艦艇が台湾東部で80 kmまで接近

12月20日夜から21日未明にかけて中国海軍駆逐艦1隻が台湾の太平洋に面した台東県緑島沖合約80kmに接近した。これに対し台湾軍は台東県空軍基地からミラージュ2000戦闘機、UH-60M ヘリコプター、哨戒機などを発進させて対応した。

これ以前の12日には中国駆逐艦が東部の花蓮沖に出現している。

空軍機71機が大陸・台湾中間線を超え台湾側に侵入

12月22日午前6時までの24時間に、中国軍J-16戦闘機、H−6K爆撃機、それに新型のタンカー運油20など航空機39機が台湾海峡中間線を超え台湾南西沖の防空識別圏(ADIZ)に侵入、台湾太平洋側まで回り込み飛行した。そして往路と同じコースで引き返した。

この期間、中国海軍は空母「遼寧」を沖縄東方海上に展開しており、同時に東シナ海ではロシア艦隊と合同演習を行っていた。

また12月26日には午前6時までの24時間に、中国海軍艦艇7隻とH-6K爆撃機、J-16戦闘機、対潜哨戒機など合計71機が台湾海峡周辺および中間線を超えて活動した。

図2:(2016中国国際航空宇宙博覧会)展示飛行中の「運20 (Y-20)」。これをタンカーに改造したのが「運油20」。、西安航空機は、アントノフAn-70をベースにジェット化したAn-77の共同開発を試みたが中断、これを基にして完成したのが「Y-20」である。全長47 m、翼幅50 m、最大離陸重量220 ton、航続距離7,500 kmの大型が機。40機ほどが生産されているが、空中給油機・タンカーにしたのはまだ数機のみ。

図3:(共同/中国軍東部戦区)12月26日、中国軍東部戦区がウエブサイト「微信」に載せたH-6K戦略爆撃機の写真。ロシアTu-16爆撃機を西安航空機で国産化した機体。H-6K、H-6H、H-6M、H-6Nなど各型が配備されている。H-6Kは兵装搭載量が12 tonに、機番が5桁表示になり、翼下面に巡航ミサイルCJ-10Aを6発搭載できる。

  • 中国空軍戦闘機、南シナ海で米偵察機に異常接近

米・インド太平洋軍の発表によると、12月21日南シナ海の公海上空で、米空軍RC-135電子戦偵察機が通常の偵察飛行を行っていたところ、中国軍のJ-11戦闘機が現れ米偵察機の機首前方6 mまで接近し、衝突寸前の事態になった。このため米機は回避操作をして衝突を免れた。これは、多数の船舶・航空機が往来する“自由で開かれたインド・太平洋” を護るための任務遂行中に起きた事件。米国は、直ちにこのような危険行為は止めるよう中国政府に申し入れた。

米空軍は、嘉手納基地とフィリピン・クラーク基地からRC-135V偵察機を台湾海峡および南シナ海に飛行させ、特にパラセル諸島(西沙諸島)を中心に頻繁に情報収集を行っている。中国は、南シナ海で広大な海域を自国の領海と主張、国際法に反して多数の軍事基地を展開しているのは周知の通り。

図4:(YouTube/中国軍南部戦区SNS) 中国軍J-11戦闘機が撮影した米空軍RC-135信号情報収集機。C-135輸送機をベースにした機体で、エンジンをPW TF33からCFM F108に換装している。「RC-135」にはA、B、C、D、E、M、S、U、V/W、の各型がある。このうちUとV/Wが信号情報収集機。Uは2機だけ、V/Wは17機を運用中。

図5:(YouTube/U.Sインド太平洋軍)米空軍RC-135信号情報収集機が撮影した中国軍J-11戦闘機、最接近した時の距離は6 m、衝突を避けるため米機は直ちに回避行動をとった。「J-11」はロシア「Su-27」を瀋陽航空機(SAC)がライセンス生産した機体。エンジンはAL-31Fターボファン推力13.5 ton (A/B時)を2基、アビオニクスはロシア製を使用。全長21.5 m、翼幅14.7 m、重量16.4 ton、航続距離3,600 km、各種ミサイル4 tonを搭載できる。江蘇省南京の第14戦闘機師団、四川省第33戦闘機師団などに配備されている。

  • 中国海軍空母艦隊、大東島・沖大東島付近海域で大規模演習

12月13日長崎県西の海上を南東に向け航行する中国海軍レンハイ級ミサイル駆逐艦 (102)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(124)、フチ級補給艦 (889)、の3隻を発見、その後3隻は大隅海峡を通過、太平洋に出た。

12月14日午前、ロシア戦略爆撃機Tu-95の2機および戦闘機2機が石川県能登半島沖に接近、領空侵犯はせずに立ち去った。

12月15日早朝、中国海軍ソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦 (138)が東シナ海から宮古海峡を通過、太平洋に進出した。

12月15日、長崎県西・東シナ海を南に進む中国艦隊、空母遼寧 (16)、ジャンカイII級フリゲート (542)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦 (120)、レンハイ級ミサイル駆逐艦 (103)、フユ級高速戦闘支援艦 (901)の5隻を発見した。5隻は宮古海峡を通過、太平洋に進出、レンハイ級ミサイル駆逐艦 (104)と合流した。

12月17日、沖大東島(次図では南大東島と表示)の南を航行、途中艦載戦闘機J-15などの発着訓練を頻繁におこなった。

12月20~22日の間、これら中国艦隊は大東島諸島の東の広大な海域で演習を行い、空母遼寧での艦載機発着回数は17日からの合計で320回となった。

中国艦隊の大演習に対し、海自はヘリ空母「いずも」、護衛艦「ありあけ」、「きりさめ」などおよび哨戒機を連日派遣し、警戒監視を行った。また、艦載機の活動に対しては空自戦闘機を緊急発進させ、対応した。

1月2日、防衛省は、12月中旬から大東諸島南東の海上での中国海軍遼寧を含む艦隊の活動は終了し、艦隊は東シナ海に戻った、と発表した。

中国政府が読売新聞を通じて明らかにしたところによると、今回の艦隊行動は、日本政府が過日定めた安全保証・防衛戦略に関わる3文書に対抗する措置で、習近平氏が「南西諸島を攻撃する訓練」として命じたものと云う。我が国に対する中国の敵意が露わになった行動だ。

図6:海上保安庁発行の領海・接続水域の地図に統合幕僚監部発表の12月における中国艦隊およびロシア空軍機の活動内容を転記した地図。

図7:(統合幕僚監部)「遼寧」の飛行甲板。発艦は、カタパルトがないので14度の上向傾斜角のあるスキージャンプ甲板から行う。着艦は開角7度のアングルド・デッキを使う。甲板には4本のアレステイング・ワイヤがあり、着艦時はこれにフックを掛け制動する。搭載機は標準で、J-15戦闘機24機を含み各種ヘリココプターなど合計36機とされる。

艦容は、満載排水量67,500 ton、全長305 m、最大幅74 m、エレベーターは2基。主機は蒸気タービン出力20万馬力、速力は30 kts。写真は海自哨戒機が撮影したもの。

図8:(統合幕僚監部)中国海軍空母「遼寧 (16)/Liaoning」は、ロシアのクズネツオフ級空母の未完成品をウクライナから購入、黒海から大連まで曳航、中国造船所により空母として完成した艦で、就役は2012年9月。2016年12月に初めて沖縄本島―宮古島の間「宮古海峡」を通過、太平洋に進出した。以後頻繁に同海峡を通り訓練をするようになる。

図9:(統合幕僚監部)上向角14度のスキージャンプ甲板から離艦する「J-15」戦闘機。海自護衛艦がかなり接近して撮影したことを伺わせる。

図10:(統合幕僚監部)J-15艦上戦闘機。ロシア製Su-33の試作機 [T-10K-3]をウクライナから輸入、これを基本にして瀋陽航空機が開発した。初飛行は2009年、2013年から運用開始、これまでに65機以上が生産されている。機体構造はSu-33とほぼ同じ、全長22.3 m、翼幅15 m、折畳み時は7.4 mになる。エンジンはAL-31Fターボファン・推力12.5 tonを2基。最大速度マッハ2.4、航続距離3,500 km、ハードポイントは12箇所あり爆弾ミサイル等数トンを搭載する。

図11:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦。「055型・南昌級駆逐艦」は満載排水量13,000 tonの大型、NATOはミサイル巡洋艦と位置付けている。空母の直衛艦として、あるいは艦隊の旗艦として活動するのが主任務。垂直ミサイル発射機・VLSを2基/合計112セルに対艦ミサイル「YJ-21」、対空ミサイルを搭載。「YJ-21」は射程1,000~1500 kmで空母打撃群攻撃や対地攻撃ができる、戦略爆撃機「H-6N」にも搭載が可能。写真は5番艦「鞍山 (Anshan)・103」北海艦隊所属。同級は7隻が配備中で、さらに少なくとも3隻が建造中だ。

図12:(統合幕僚監部)7番艦「無錫 (Wuxi)・104」、北海艦隊所属。説明は前図参照。

図13:(統合幕僚監部)ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦 (120) 「成都 (Chengdu)」は、2019年就役でやはり北海艦隊所属。「旅洋III級/052D型 昆明級駆逐艦で、中国版イージス艦である。同型艦10隻を配備、追加7隻を艤装中。満載排水量7,500 ton、全長156 m、速力29 kts。VLS(垂直ミサイル発射装置)64セルに対空/対艦ミサイルを装備。

図14:(統合幕僚監部)「ジャンカイII/江凱II」型は「054A」フリゲート、満載排水量4,000 ton、全長134 m、速力27 kt、HQ-16対空ミサイルを32セルVLSに収納。対艦ミサイルは艦中央にYJ-83型を4連装発射機2基に搭載。本型は外洋艦隊用で防空能力を強化している。写真は「棗荘 (Zaozhuang)・542」、同型艦30隻が就役済み。海自フリゲートFFM「もがみ」級よりやや小型。

図15:(統合幕僚監部)中国海軍は2000年代に903型補給艦 (福池/フチ級)2隻を建造、2013年から改良した903A型を7隻を追加した。続いて写真の空母艦隊に随伴する高速支援艦「フユ級」2隻を建造、2017年から就役中。これは「フチ級」よりはるかに大型で満載排水量48,000 ton、全長241 m、速力25 kts、中部甲板に門型ポスト3基を備えている。艦尾の甲板にはヘリ2機を搭載する格納庫がある。兵装はH/PJ-13 30m CIWS対空機関砲システム4基を備えている。写真は「呼倫湖 (Hulun-hu)・901」。

ロシア艦隊、東シナ海で中国艦隊とミサイル発射演習

12月21~27日の間、ロシア太平洋艦隊4隻は、ウラジオストクを出港、日本海から対馬海峡を南下、東シナ海に進出した。ここで中国海軍駆逐艦2隻と共同でミサイル射撃と砲撃訓練を実施した。ロシア側から参加したのは、太平洋艦隊旗艦のスラバ級ミサイル巡洋艦「ワリヤーグ(011)、ウダロイ1級駆逐艦 (543)、ステレグシチー・フリゲート (333)および (339)の4隻。ロシア艦隊は演習終了後、対馬海峡を北上し日本海に入った。

図16:(統合幕僚監部)太平洋艦隊旗艦スラバ級ミサイル巡洋艦「ワリヤーグ(011)」。1989年就役、2008年に近代化改修完了。満載排水量11,300㌧、強力な防空力と打撃力で敵空母打撃群を攻撃するのが主任務。3隻あったが、黒海艦隊旗艦「モスクワ」が撃沈されたため、現在は北海艦隊の「マーシャル・ウスチノフ」と2隻になった。両舷に見える4本ずつの筒の中には、射程距離700 km、速度マッハ2の「P-1000ブルカーン(Vulkan)」対艦ミサイルを格納、各筒に2基ずつ合計16発を搭載。

図17:(統合幕僚監部)大型対潜艦・ウダロイ級駆逐艦、満載排水量7,500 ton、全長163 m、速度35 kts、強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、ヘリコプター2機、SA-N-9型個艦防空ミサイルを装備。1980-1991年建造で8隻が就役中、太平洋艦隊に4隻配備。

図18:(統合幕僚監部)満載排水量2,200 ton、全長104,5 m、速力27 kts、マスト頂部はSバンド3次元レーダー、マストは閉囲型で各種レーダーを内臓。兵装は、対空用GSh-630M 30 mm ガトリング砲 2基、陸上用対空ミサイルS-400を艦載化し12セルのVLS(垂直発射装置)に装備、対艦用3M24ウラン・ミサイル4連装発射筒2基を搭載。同型は6隻で追加2隻が艤装中。写真は「ソベルシェンヌイ (333)」、太平洋艦隊所属。

図19:(統合幕僚監部)「アルダー・ツイデンジャポフ (339)」、太平洋艦隊所属。

  • 中国海警局艦艇、今年1〜12月の間、尖閣諸島周辺海域に336日にわたり出現

12月31日、尖閣諸島周辺の領海外側・接続水域内を中国海警局の艦艇3隻が航行しているのを海上保安庁の巡視船が確認した。尖閣周辺で海警局艦艇が遊弋しているのは今月で13日間連続、2022年1年間では計336日となり、これまでの最多を更新した。

領海への侵入時間も長くなり、12月25日にはほぼ3日間、73時間近くも居座り続けていた。

中国は尖閣周辺に艦艇を「常駐」させることで管轄権を既成事実化し、実効支配を演出しようとしている。

習近平主席は、かって2016年に開かれた軍幹部との非公式会議で、尖閣諸島と南シナ海の権益確保は「我々世代の歴史的重責」だと述べている(共同通信2022/10/29)。この発言の3ヶ月後に中国軍艦が初めて尖閣周辺の接続水域に侵入した。

このまま中国の横暴を放置し、我国政府が“遺憾の意表明”や“抗議”をするだけでは、間も無く尖閣諸島は中国に奪取されるのではないか。極めて憂慮すべき事態と言える。

図20:(第11管区海上保安本部)11月25日尖閣諸島領海に侵入、我が国漁船を追尾した海警局艦艇4隻に内の1隻「海警2204」、76 mm砲を搭載している。

図21:尖閣諸島の一部の写真、上から「魚釣島」、「北小島」、手前が「南小島」。「魚釣島」が最も大きく「北小島」はそこから南東へ5 kmにある。付近海域は好漁場で、たくさんの海鳥の生息地になっている。「魚釣島」から南東170 kmに石垣島、南西170 kmに台湾がある。

  • 陸自、実働対抗演習を実施

12月16日陸上幕僚監部は「令和4年度北海道訓練センター第5回実働対抗演習」を実施すると発表した。北海道ではなく大分県演習場を中心に実施する。期間は2023年1月10日〜2月2日、参加部隊は第6師団および第15旅団で、大分県玖珠郡、由布市、宇佐市に広がる「日出生台(ひじゅうだい)演習場」、面積4,900 haで行われる。

参加部隊は次の通り。

第6師団;―山形県神町駐屯地に司令部を置く機動師団、第22即応機動連隊および第20普通科連隊と第44普通科連隊を基幹とする人員7,000名の師団である。第22即応機動連隊は、16式機動戦闘車、96式装輪装甲車、軽装甲機動車を装備する2個中隊、および93式近距離地対空ミサイルを装備する1個高射小隊、を配下に持つ。

第15旅団;―沖縄県那覇市那覇駐屯地にある陸自西部方面隊直轄の旅団、第51普通科連隊、第15高射特科連隊、第15ヘリコプター隊、宮古警備隊で編成され、人員は2,500名。第15高射特科連隊は「03式中距離地対空ミサイル」を装備する陸自唯一の部隊である。第15ヘリコプター隊は、2個飛行隊編制でUH-60JAヘリとCH-47J/JAヘリを運用する。第15旅団は近く1個普通科連隊を追加して第15師団なる予定。

今回の演習:―中国、ロシア両軍の我が国周辺での活動が活発化する中で、不測の事態が発生した場合に備え、対処する戦力を強化するため実施するもの。

具体的には、第6師団(山形県)および第15旅団(沖縄県)から戦車部隊、高射特科部隊および普通科部隊を、大分県日出生台演習場に展開して実働対抗演習を行い、指揮幕僚活動の数値的評価を行う。これで戦闘力の組織化等に必要な練度の向上を図る。

発表された実施要領は次の表の通り。

  • 海自、12月2〜9日の間および同19日、西太平洋海域で米空母艦隊と共同訓練を実施

中国海軍空母「遼寧」を含む艦隊が演習を開始する直前、12月2~9日の間、海自ヘリ空母「いずも」および哨戒機「P-1」、それに潜水艦1隻が、関東南方の太平洋海域で米海軍哨戒機「P-8A」、対潜ヘリコプター「MH-60R」と、対潜水艦戦の演習を行なった。

図22:(海上幕僚監部)米海軍対潜哨戒ヘリコプターMH-60Aに潜水艦探知用ソノブイを装填しているところ。

また同期間中、海自護衛艦「いかずち」は、米海軍空母「ロナルド・レーガン」、ミサイル巡洋艦「シャイロー」および補給艦「ジョン・エリクソン」は、同じ太平洋・フィリピン海海域で、対水上戦、洋上補給訓練を実施した。

図23:(海上幕僚監部)米海軍補給艦「ジョン・エリクソン」(左)と給油を受ける海自護衛艦「いかずち」

  • 海自、「もがみ」型3番艦「のしろ」の引渡式 (9日)および、同6番艦「あがの」の進水式を実施 (21日)

12月9日に海自護衛艦FFM「もがみ」型の3番艦「のしろ・FFM-3」の引渡式が三菱重工長崎造船所で行われ、「のしろ」は同月15日に佐世保基地に回航され護衛艦隊・第13護衛隊に編入された。

12月21日には、同じ三菱重工長崎造船所で、FFM「あがの・FFM-6」の進水式が行われた。今後艤装工事と海上での公試運転の後、2024年3月に就役する予定である。

「もがみ」級フリゲートは、日本周辺で増大する軍事圧力に対抗するために開発された護衛艦・フリゲートで、対潜戦、対空戦、対水上戦、対機雷戦、対電子戦、に対処できる多機能艦とされる。従来の護衛艦とは一線を画した新たな護衛艦で、ステルス性、コンパクト化、建艦コストの削減、省人化、などで優れた設計になっている。

2022年3月と4月に「FFM-2くまの」と「FFM-1もがみ」が就役したのを始めとし、今回の「FFM-3のしろ」が就役、現在「FFM-4みくま」、「FFM-5やはぎ」、そして今回の「FFM-6あがの」が艤装中で、合計22隻を建造する計画。建造費は今回の2隻で計950億円弱。12月に決まった防衛力整備計画では「12式地対艦誘導弾・能力向上型」を搭載することが決定した。

「もがみ級」は、満載排水量5,500 ton、全長133 m、最大速力30kts、乗員90名、特徴の一つは推進方式で海自では初めてCODAG方式を採用している。乗員は、3隻に対し4組編成とし、3組が勤務、1組が休養する方式で、艦の運用効率を向上させる。

主機については、現代の軍艦は高速航行時と巡航時で、異なる主機を搭載して(複合推進方式という)、使い分けたり併用したりして効率的に軍艦を動かすようにしている。複合推進方式には「CODAG」や「COGAG」など略称が使われるが、これらは使われる主機の組合わせを示している。例えば;―

CODAD:Combined Diesel and Dieselつまりデイーゼルを2台または2種の組合わせ

COGAG:Combined Gas Turbine and Gas Turbineつまりガスタービン2台または2種の組合せ(海自「こんごう」などミサイル駆逐艦やヘリ空母で採用)

CODAG:Combined Diesel and Gas Turbineつまりデイーゼルとガスタービンの組合せ(海自「もがみ級」や米海軍LCS・沿岸戦闘艦で採用)

「もがみ級」では、巡航時にはデイーゼルを使い、急加速や高速時にはガスタービンを併用する。高速回転のガスタービンと回転数の遅いデイーゼルをスクリュー(推進軸)に接合する減速ギアの構造が複雑になる。「もがみ級」では、主機はドイツ/MAN社デイーゼル(川重のライセンス生産』2基と英RR MT30ガスタービン1基、それに減速ギアは川崎重工が開発、製造している。

図24:(海上幕僚監部)佐世保基地に到着した「のしろ・FFM-3」。

  • 空自、11月29日、沖縄周辺で米空軍F-22と戦術訓練を実施

12月1日航空幕僚監部は、前月11月29日に東シナ海を含む沖縄周辺空域で、空自戦闘機が米空軍、米海軍及び海兵隊航空団戦闘機と戦術訓練を実施した、と発表した。参加した部隊は;―

空自:那覇基地第9航空団所属のF-15戦闘機4機

米空軍:アラスカ州エレメンドルフ・リチャードソン統合基地 (Joint Base Elmendorf-Richardson)にある第3航空団 (3rdWing)所属のF-22戦闘機2機、および嘉手納基地第18航空団所属のKC-135給油機1機、

米海軍:岩国基地第5空母航空団所属のEA-18Gグロウラー電子戦機2機

米海兵隊:岩国基地第1海兵航空団所属のF-35B戦闘機4機

エレメンドルフ基地第3航空団には、F-22戦闘機部隊として第90戦闘機中隊および第525戦闘機中隊が配備されている。

米空軍は、沖縄にF-15C/D戦闘機を50機配備しているが、2022年12月から2024年末までに全機沖縄から撤収・退役させる計画である。代わりにエレメンドルフ基地のF-22A戦闘機をローテーション方式で巡回配備する予定という。今回のF-22A派遣はこの一環かと思われる。これで日本・韓国を守る米第5空軍は、配下の嘉手納基地第18航空団から戦闘機部隊がなくなり、戦闘機部隊は三沢基地の第35航空団(F-16戦闘機)のみとなる。米空軍戦闘機部隊の減勢を我が空自の増強で補完できるのか、いささか心配だ。

  1. 空自、12月14日、沖縄周辺で米空軍・米空母航空団・米海兵航空団と戦術訓練を実施

12月14日東シナ海を含む沖縄周辺空域で、空自戦闘機は米空軍、米海軍および米海兵隊の航空機と各種戦術訓練を実施した。参加した部隊は;―

空自:那覇基地第9航空団所属のF-15戦闘機4機とレーダー担当の那覇基地南西航空警戒管制団

米空軍:嘉手納基地第18航空団所属のF-15C戦闘機1機、KC-135空中給油機2機

米海軍:岩国基地第5空母航空団所属のEA-18Gグロウラー電子戦機2機

米海兵隊:岩国基地第1海兵航空団所属のF-35B戦闘機2機

  1. 空自、12月20日、日本海で米B-52爆撃機と編隊航法訓練を実施

12月20日日本海上空の空域で空自戦闘機は米空軍爆撃機と編隊訓練を実施した。参加した部隊は;―

空自:小松基地第6航空団所属のF-15戦闘機4機および築城基地第8航空団所属のF-2戦闘機4機、それにレーダー担当の入間基地中部航空警戒管制団および春日基地西部航空警戒管制団

米空軍:B-52戦略爆撃機2機およびC-17大型輸送機1機

図25:(航空幕僚監部)12月20日、日本海上空でB-52戦略爆撃機2機、C-17大型輸送機1機と編隊飛行をする空自F-2戦闘機2機

これとは別に、当日20日には韓国済州島付近の空域で、韓国空軍F-35A及びF-15K戦闘機がB-52爆撃機及びF-22戦闘機と共同訓練を実施した。韓国軍は、北朝鮮の連日に渡るミサイル発射威嚇に対抗した措置として行った演習、としている。

その他

12月21日

青森県西方の日本海上空の空域で空自戦闘機は米空軍機などと戦術訓練を実施した。参加した部隊は;―

空自:三沢基地第3航空団所属のF-35A戦闘機3機および三沢基地レーダー担当の北部航空警戒管制団

米空軍:三沢基地F-16戦闘機14機

米海軍岩国基地第5空母航空団所属のFA-18Gグロウラー電子戦機2機

―以上―