令和5年11月、我国周辺での中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応


令和5年11月、我国周辺での中露両軍の活動と我国/同盟諸国の対応

2023(令和5年)-12-12 松尾芳郎

令和5年11月、我国周辺における中露両軍および北朝鮮の活動と、我国および同盟諸国の動きに関し各方面から多くの発表があった。今月の注目すべきニュースは次の通り。

(Military threats from Chinese, Russian Forces and North Korea are tensed up in November. Japan and Allies conducted multiple large scale exercises for retaliation. Following were main issues.)

1.11月1日:米第7艦隊ミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ(USS Rafael Peralta/DDG 115)」とカナダ海軍フリゲート「オタワ(HMCS Ottawa/FFH 341)」は11月1日に台湾海峡を通過、航行の自由作戦を実施

2.11月2日:米第11海兵機動展開隊等と比海兵隊が11月9日~20日の間、主にフィリピンでに行う実動訓練(カマンダグ23)に、陸上自衛隊水陸機動団等が参加

3.11月3日:米第7艦隊ミサイル駆逐艦「デユーイ(USS Dewey(DDG 105)は、11月3日に中国が不法占拠する南シナ海スプラトリー諸島(Spratly Islands)で航行の自由作戦を実施

4.11月6日:中国海軍空母「山東」を含む艦隊、宮古島南東・台湾/フィリピン東方の太平洋上で10月下旬から約1週間演習を実施

11月6日:海上自衛隊ヘリ空母「ひゅうが」、米海軍「ロナルド・レーガン」、「カール・ビンソン」など空母打撃群と沖縄南方・フィリピン海で4日間の演習を実施

5。11月7日:航空自衛隊の西部高射群隷下の高射部隊は11月4日、米国ニュー・メキシコ州マクレガー射場で、米陸軍第11防空砲兵旅団と実弾射撃を含む共同演習を実施

6.11月7日:17日~27日の間日向灘海空域で、海上自衛隊は掃海艇15隻を含む艦艇20隻と掃海ヘリMCH-101 2機を派遣、米海軍掃海艦2隻と掃海ヘリMH-53E 2機等と協力して令和5年度機雷戦訓練を実施

7。11月8日:航空自衛隊第9航空団F-15戦闘機4機(那覇基地)は、沖縄周辺の東シナ海・太平洋空域で米空軍B-52爆撃機2機と米海軍F-35C戦闘機4機・F/A-18戦闘機12機、米海兵隊F-35B戦闘機4機を含む約30機と共同訓練を実施

8。11月11日:オーストラリア、カナダ、日本、米国の4ヶ国海軍はフィリピン海で海自が隔年で主催する共同演習「2023年次演習(ANNUALEX= Annual Exercise 23)」を実施

9。11月13日:中国海軍ミサイル駆逐艦など4隻、奄美大島と横当島間の海域を太平洋から東シナ海に向け通過

10。11月15日:中国海軍ミサイル駆逐艦など3隻、種子島と鹿児島県大隅半島間の大隅海峡を抜け、太平洋から東シナ海に向け通過

11。11月15日~30日:中国海軍情報収集艦1隻、日本海から対馬海峡を経由、奄美大島と横当島間の海域を南西に進み、宮古島の北から太平洋に進出

12。11月16日:陸上自衛隊特殊作戦群をオーストラリアに派遣、オーストラリア陸軍特殊作戦コマンドと共同訓練を実施

13。11月19日:中国軍機8機と艦艇6隻、台湾海峡周辺で活動

14。11月21日:米軍、台湾有事に備え嘉手納基地のF-35戦闘機を増強/エレファント・ウオークを実施

15。11月22日:海自護衛艦1隻は米海軍「カール・ビンソン」空母打撃群(ミサイル巡洋艦1隻とミサイル駆逐艦4隻を含む)と本州南方の太平洋および東シナ海海空域で戦術訓練を実施

16。11月22日:海自護衛艦1隻と潜水艦1隻それにP-1哨戒機は、オーストラリア海軍艦艇2隻とP-8A哨戒機および米哨戒機と四国南方の太平洋から東シナ海の海空域で共同訓練(Trident 23-2, -3)/ISRミッションを実施

17。11月22日:米第7艦隊はフィリピン国防軍と共同して、南シナ海の領有権問題に対処開始

18。11月22日:北朝鮮11月21日深夜、軍事偵察衛星打上げに成功

11月22日、空自第2航空団(千歳基地)戦闘機4機と米空軍(三沢基地)戦闘機4機は日本海上空で戦術訓練を実施

19。11月25日:米第7艦隊ミサイル駆逐艦は、南シナ海で航行の自由作戦を実施

20。11月29日:中国習近平主席、武装警察部隊海警総隊東シナ海担当指揮部を視察、激励

上記20項目のうち太字で示す項目を以下に解説する。

4.11月6日:中国海軍空母「山東」を含む艦隊、宮古島南東・台湾/フィリピン東方の太平洋上で10月下旬から約1週間演習を実施

11月4-8日の間、海上自衛隊ヘリ空母「ひゅうが」、米海軍「ロナルド・レーガン」、「カール・ビンソン」など空母打撃群と沖縄南方・フィリピン海で4日間の演習を実施

中国海軍は、10月28日~11月5日に掛けて空母「山東(17)」を含む複数の艦艇が、宮古島の南1,000 kmの海域・フィリピン海で、艦載戦闘機の離発着、艦載ヘリの離発着訓練を合計570回実施した。「山東」に随伴して行動した艦艇は、「レンハイ級ミサイル駆逐艦(大連/105)、(延安/106)」の2隻、「ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(132)、(164)、(173)」の3隻、「ジャンカイII級フリゲート(529)、(536)、(570)」の3隻、「フユ級高速戦闘支援艦(905)」の1隻、の合計9隻、「山東」を加え全部で10隻の大艦隊がフィリピン海で演習を行なった。ここでは「J-15」艦上戦闘機が420回、艦載ヘリが150回、それぞれ離発着訓練を行なった。その後同艦隊は分散、「山東」ほか数隻は台湾・フィリピン間のバシー海峡を抜け南シナ海に向かった。

「山東」艦隊とは別に、10月29日-30日に奄美大島と横当島間の海峡を通過・太平洋に出ていたレンハイ級ミサイル駆逐艦(101)、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦(122)、ジャンカイII級フリゲート(550)およびフチ級補給艦(903)の4隻が11月12日に往路と同じ経路を通過東シナ海に戻った。

図1:(統合幕僚監部)手前はジャンカイII級フリゲート(570)と、奥は空母「山東(17)」、左端には「山東」から発艦した「J-15」艦上戦闘機が見える。

図2:(統合幕僚監部)レンハイ級ミサイル駆逐艦055型「南昌(101)」。満載排水量13,000 ton、兵装は各種ミサイル発射可能な垂直発射装置・VLSを艦首甲板に64セル+中部甲板に48セル、合計112セルを装備する。同型艦は「山東」に随伴した上記「大連/105」、「延安/106」を含め8隻ある。

図3:10月28日-11月5日に中国空母「山東」を含む艦隊が演習を行なった海域/フィリピン海を赤枠で示す。我国および台湾に圧力を加える目的とされる。これに対抗して11月4日-8日には米海軍空母「カール・ビンソン」、「ロナルド・レーガン」、および海自ヘリ空母「ひゅうが」が同じ海域で演習を行なった。

11月4-8日の間、米海軍「カール・ビンソン(Carl Vinson/CVN 70)」空母打撃群と「ロナルド・レーガン(Ronald Reagan/CVN 76)」空母打撃群は、沖縄南方の太平洋上/フィリピン海で、海上自衛隊ヘリ空母「ひゅうが(DDH 181)」と共同演習「マルチ・ラージデッキ・エベント(MLDE=Multi-Large-Deck Event)」を実施した。これは中国空母「山東」の演習に対抗した動きと見られる。

「カール・ビンソン」は第1空母打撃群(CSG 1=Carrier Strike Group 1)、「ロナルド・レーガン」は第5空母打撃群(CGS 5=Carrier Strike Group 5)、のそれぞれの旗艦。

今回の2国海軍空母の合同演習「MLDE」は、相互の通信連絡、対空戦闘の協力、搭載ヘリの相互運用、などの技量を向上させ、有事に対し即応体制を強化するために行われたもの。

図4:(US Navy Photo by Mass Comm. Specialist 3rd class Timothy Dimal) 2023年11月7日フィリピン海で撮影された日米両海軍の空母演習「MLDE」の様子。左の大型艦は海自「ひゅうが/DDH 118」、後ろの大型艦2隻は米海軍空母「カール・ビンソン/CVN 70」と「ロナルド・レーガン/CVN 76」。随伴する艦艇は、ミサイル巡洋艦「アンテイータム(USS Antietam/CG 54)、同「ロバート・スモールス(USS Robert Smalls/CG 62)、ミサイル駆逐艦「ステレット(USS Sterett/DDG 104)、同「キッド(USS Kidd/DDG 100)」の4隻。

7.11月8日:航空自衛隊第9航空団F-15戦闘機4機(那覇基地)は、沖縄周辺の東シナ海・太平洋空域で米空軍B-52爆撃機2機と米海軍F-35C戦闘機4機・F/A-18戦闘機12機、米海兵隊F-35B戦闘機4機を含む約30機と共同訓練を実施

11月7日、フィリピン海で日米両海軍の空母合同演習「MLDE」が行われていたが、同時期に空自那覇基地の第9航空団戦闘機と南西航空警戒管制団レーダーは、米空軍B-52爆撃機など、米海軍戦闘機および米海兵隊戦闘機等と沖縄周辺(東シナ海、太平洋を含む)の空域で、合計30機が参加して大規模な各種戦術訓練を実施した。

参加したのは;―

航空自衛隊:第9航空団F-15戦闘機4機

米空軍  :B-52H爆撃機2機、KC-135空中給油機2機、およびKC-46A輸送機2機、

米海軍  :F-35C艦載戦闘機4機、F/A-18艦載戦闘機12機およびEA-18Gグローラー電子戦機2機、

米海兵隊 :F-35B戦闘機4機、

米空軍B-52H爆撃機は、1962年から102機生産され現在配備されているのは72機、配備部隊は、ノースダコタ州ミノット空軍基地(Minot AFB, North Dakota)第5爆撃航空団(5th Bomb Wing)、ルイジアナ州バークスデイル空軍基地(Barksdale AFB, Louisiana)の第2爆撃航空団 (2nd Bomb Wing)、それにバークスデイルの予備空軍麾下の第307爆撃航空団の3部隊である。第2爆撃航空団は「米空軍全地球打撃軍/USAF Global Strike Command」の指揮下にあり、ここの機体がグアムや嘉手納基地に頻繁に飛来、先月19日には韓国忠清北道の清州空軍基地に着陸、北朝鮮に睨みを利かした。こうしたB-52Hの活動を通じて空自や韓国空軍と共同、中国・北朝鮮の脅威に対処している。

図5:(USAF)テキサス州上空を飛ぶバークスデイル空軍基地第2爆撃航空団所属のB-52H。燃料タンクを増設したB-52Gとほぼ同じだが、エンジンをJ57ターボジェットからTF33-P3ターボファン推力17,000lbsに換装、ECMアビオニクスを近代化、尾部銃座を20 mm M61バルカン砲搭載に変更してある。乗員5名、全長48.5 m、翼幅56.4 m、高さ12.4 m、最大離陸重量221 ton、戦闘行動半径14,200 km。爆弾、ミサイル、機雷等の搭載量は32 tonに達する。

14。11月21日:米軍、台湾有事に備え嘉手納基地のF-35戦闘機を増強/エレファント・ウオークを実施

11月20日、米空軍第4戦闘航空団(4th Fighter Sq., Hill Air Force Base, Utah)所属のF-35A戦闘機(機数は未公表)がユタ州ヒル空軍基地から沖縄県嘉手納空軍基地に到着した。 これは退役が進む嘉手納基地の第18戦闘航空団のF-15C/D戦闘機の更新として飛来したもので、今年3月から嘉手納に展開済みのアラスカ州イールソン空軍基地(Eielson AFB., Alaska)から派遣された第356戦闘航空団F-35Aに加わることになる。

図6:(USAF Photo by Staff Sgt. Jessi Roth)ユタ州ヒル空軍基地第4戦闘航空団所属のF-35A戦闘機が11月20日嘉手納空軍基地に到着した。

嘉手納には、これまで40年以上の間、旧型のF-15C/D戦闘機48機が配備されてきたが、退役が開始され逐次F-35Aに更新されつつある。嘉手納は台湾から僅か640 kmの位置にあり、ここに米空軍の第5世代戦闘機が配備されることは、中国の野望に対する抑止力として重要な意味を持つ。嘉手納は西太平洋の要となる位置にあり、米空軍は戦闘機部隊だけでなく、空中給油機、早期警戒管制機、救援ヘリコプターなどの諸部隊を配備して戦闘機部隊の活動を支援している。

F-15C/Dは、来年9月までにカリフォルニア州エア・ナショナル・ガード第144戦闘航空団およびルイジアナ州第159戦闘航空団に復帰するが、1部はアリゾナ州にある飛行機の墓場に廃棄される。

図7:(USAF Photo)嘉手納空軍基地には戦闘機を収容する鋼鉄製簡易掩体壕が数十基設置されている。

図8:(USAF Photo)嘉手納基地上空を飛ぶF-35A戦闘機。多用途戦闘機(multi-roll fighter)で制空戦闘・各種攻撃戦闘・偵察の任務を遂行する。A型は通常離発着型、B型は短距離離陸/垂直着陸(STOVL)型、C型は艦上機型の3種がある。これまでに約900機が製造済み、米空軍・海軍・海兵隊は合計2,440機を調達する予定。英国、日本、イスラエル、ノルウエイ、イタリア、韓国、オーストラリアなど世界中の需要は5,000機を超えると見られる。我航空自衛隊はF-35Aを63機、F-35Bを42機と関連装備を約231億ドルで購入中。

F-35A戦闘機の到着の翌日11月21日に、米空軍と米海軍航空隊は嘉手納基地ランウエイで33機が参加する“エレファント・ウオーク”(示威行進)を開催した。嘉手納基地には100機以上の航空機が在籍するが、参加したのは次の通り。

先頭集団には;―

HH-60Gペイブ・ホーク・ヘリコプター 救難機  2機

MQ-9リーパー(Reaper)無人偵察機       1機

F-15C/D戦闘機およびF-35A戦闘機

E/A-18Gグロウラー(Growler)電子戦機

後方集団には;―

RC-135リベット・ジョイントISR偵察機

KC-135空中給油機

図9:(USAF Photo)11月21日に嘉手納基地ランウエイで開催された「エレファント・ウオーク」、33機がランウエイ上をゆっくりと進む示威行進だ。先頭の2機はHH-60Gペイブ・ホーク救難ヘリ、その直後はMQ-9リーパー無人偵察機、その後ろには戦闘機群が続く。真ん中はE/A-18G電子戦機、向かって左はF-35A戦闘機、右は F-15C/D戦闘機らしい。最後尾には大型機RC-135やKC-135が見える。

16。11月22日:海自護衛艦1隻と潜水艦1隻それにP-1哨戒機は、オーストラリア海軍艦艇2隻とP-8A哨戒機および米哨戒機と四国南方の太平洋、フィリピン海から東シナ海を含む海空域で共同訓練(Trident 23-2, -3)/ISRミッションを実施

11月19日-22日の4日間、海自護衛艦「さざなみ(DD-113)」、潜水艦1隻、P-1哨戒機およびP-3C哨戒機は、四国南方の西太平洋から東シナ海にまたがる広範な海空域でオーストラリア海空軍と米海軍と共同訓練「トライデント23-2および23-3(Trident)」を実施した。オーストラリア海空軍からはミサイル駆逐艦「ブリスベーン(HMAS Brisbane)」、補給艦「ストルワート(HMAS Starwart)」、哨戒機「P-8A」、フリゲート「トウーンバ(HMAS Toowoomba)」。

米第7艦隊発表では19日-20日の訓練には、第7艦隊支援が任務の第1警戒/偵察/監視航空隊「CTF 72」所属の哨戒機「P-8A」ポセイドン、オーストラリア空軍の哨戒機「P-8A」および海自の哨戒機「P-1」、各1機が参加し「ISR/情報・監視・偵察」に関わる任務の一層の技量向上を図った、と報じた。

図10:(海上自衛隊)日豪海軍共同訓練「トライデント23」に参加した艦艇。左手前は海自護衛艦「さざなみ」([たかなみ型]満載排水量6,300 tonの4番艦)左上は豪海軍補給艦「ストルワート」、右端は海自潜水艦「おやしお型」3,500 tonのように見える。

図11:(海上自衛隊)那覇基地を離陸する海自P-3C哨戒機。

18。11月22日:北朝鮮11月21日深夜、軍事偵察衛星打上げに成功

11月22日、空自第2航空団(千歳基地)戦闘機4機と米空軍(三沢基地)戦闘機4機は日本海上空で戦術訓練を実施

11月22日時事通信は、朝鮮中央通信が北朝鮮国家宇宙技術総局が北鮮北西部の東倉里の「西海衛星発射場」から軍事偵察衛星「万里鏡1号」を搭載した打上げロケット「千里馬1型」を打上げ成功したと伝えた。そして衛星を地球周回軌道に正確に進入させた、と述べた。

今回の軌道は、南北の極近くを通り赤道を90度に近い大きな角度で横切る極軌道で、高度は約500 kmの低高度で80~100分ほどの短い周期で地球を周回、地表を観測する。これで地球上あらゆる地点を1日2回程度スキャン、解像度の良い写真撮影ができる。

同通信は、ロケットは21日午後10時42分に打上げられ、同54分に衛星を軌道に乗せた、と報じた。そして偵察衛星の軌道投入成功は戦争準備態勢の強化に大きく寄与する、と強調した。

世界では、米国239基、中国140基、ロシア105基、を始めとし、フランス18基、イタリア13基、イスラエル11基、日本/インド各9基、ドイツ7基、英国/スペイン各6基などの偵察衛星が軍事情報を監視している。

図12:(Yahoo/JiJi.com)11月21日午後10時過ぎ北朝鮮が打上げた「偵察衛星」の軌道を示す図。

図13:(JAXA) 偵察衛星や地球観測衛星には、南極・北極の近くを通る「極軌道13」の一種「太陽同期準回帰軌道」が使われる。今回は高度500 kmで分ほどで80~100分で地球を周回、1日2回ほど同じ場所を偵察するようだ。

11月22日、北鮮の偵察衛星打上げの直後、北朝鮮への警告の意味を含めて、空自戦闘機と米空軍戦闘機は日本海上空で各種戦術訓練を実施した。参加したのは空自千歳基地第2航空団所属のF-15J戦闘機4機と米空軍三沢基地第13戦闘航空団(13th TFS)所属のF-16 Block 50戦闘機4機である。

図14:(統合幕僚監部)左は千歳基地を離陸する空自第2航空団F-15J戦闘機。右は日本海上空を飛行する日米戦闘機。

図15:(nabe3saviation.web.fc2.com)三沢基地のF-16 Fighting Falcon戦闘機。尾翼のマークは「MJ」から現在『WW= Wild Weasels(いたち)』に変わっている。F-16は初飛行1974年General Dynamics社製、現在はLockheed martin社に変更、これまでに5,000機以上が作られている。

20。11月29日:中国習近平主席、武装警察部隊海警総隊の東シナ海担当指揮部を視察、激励

図16:(共同通信)2023年1月撮影、浙江省の北東、上海に隣接する舟山市の基地に停泊する海警局の大型艦艇、中国海軍から移管されたコルベット艦22隻の一部。

消息筋によると、中国海警局は、海軍から移管された056型コルベット艦(排水量1,500 ton級)22隻の改修を2023年12月中旬までに完了し、千トン以上の艦艇約150隻の実動体制が始まった。日本の海上保安庁が保有する大型巡視船は約70隻なので、2倍を超える規模となる。

これに加えて、海警局には中型排水量500~1000トンの船が120隻以上ある、また500トン以下の小型船は450隻以上ある、と米国防総省の報告書に記載されている。

中国国内法で海警局の武器使用を認めた海警法施行から2年を経過し、海警局の第2海軍化が加速している。海軍から移管された056型コルベット艦は口径76 mm速射砲[H/PJ-15]を装備するのが確認されている。コルベットとは言うものの速力は25ノット出るし実質は「江凱II型(054A型」フリゲートに相当する艦である。中国海警局には渤海と黄海北部担当の北海分局・東シナ海と黄海南部担当の東海分局・南シナ海担当の南海分局の3つがある。

尖閣諸島周辺海域に出没する海警局艦艇は、担当の「東海分局」所属だけでなく「北海分局」や「南海分局」所属の船もしばしば確認されている。

海警局艦艇は、尖閣諸島周辺を航行している日本の漁船や海上保安庁の巡視船に対し、頻繁に「中国が領有する海域に侵入した」と主張「直ちに退去すべし、然もなくば必要な取締りを行う」と警告をしている。その上最近では「中国の管轄する海域で海洋権益の保護と法執行活動を行なっており、日本側がとやかく言う権利はない」と強調するようになってきている。

図17:(共同通信)尖閣諸島、手前から南小島、北小島、奥が魚釣島。9月23日ごろ中国海洋調査船「向陽紅22」が魚釣島の北西80 kmの日中中間線の日本側域内にブイ(直径10 m)を設置し、領有権を主張した。

11月29日には習近平国家主席が武装警察部隊海警総隊の東海分局指揮部を視察、所属艦艇を訪問した後、幹部を集めた会議の席上「中国の領土主権と海洋権益を断固として守る必要がある。このため本分局所属の幹部は、日夜訓練に励み有事に備え技量向上に努力されたい」と訓示した。

図18:(China Military)11月29日、習近平主席は武装警察部隊海警総隊の東海分局指揮部で幹部を招集、「中国の領土主権と海洋権益を断固守るべし」と訓示した。

図19:(China Military)11月29日、習近平主席武装警察部隊海警総隊の東海分局指揮部視察時の記念写真。

―以上―