2018-10-27(平成30年) 松尾芳郎
図1:(Boeing)名古屋中部空港「セントレア」の展示館「フライト・オブ・ドリームズ」1階フロアに“ボーイング787”試作1号機が展示された。空港ターミナル・ビルから”動く歩道“で直接アクセスができる。ここは、787を中心にシアトルをテーマにした「シアトル・テラス」が併設され、シアトルに本拠を持つ店舗、レストランなどが並んでいる。
去る10月12日(金)に、新しく完成した展示館“フライト・オブ・ドリームズ(Flight of Dreams)”の中央にボーイング787試作1号機「ZA001」が展示された。ボーイングによると、これは、単に飛行機を展示するだけでなく、長年にわたるボーイングと日本の特別な協力関係に応える意味で展示したもの。
「ZA001」は2007年7月8日に外観が完成し、世界中から顧客、協力企業など関係者を招いてエベレット工場で式典が行われた。しかし初飛行は、2009年12月15日まで待たねばならなかった。2011年8月に787-8型機はFAAの型式証明を取得、翌9月にローンチ・カストマーであるANAに引き渡された。
787は国際協力で作られ、特に日本は機体構造の35%を担当し最大の協力国となっている。日本のANAおよびJALは、世界に先駆けて787を導入し、合計で100機以上を運航している。
展示中の「ZA001」の周囲には、ほぼ垂直に離陸する飛行を体験できるフライト・シミュレーターやエベレット工場の787製造工程を示す模型、などが置いてある(この部分のみ入場料\1,200が必要)。展示館の2階、3階部分は・シアトル・テラス(Seattle Terrace)と呼ばれるフロアがあり、そこには店やレストランが多数並んでいる。これらの店舗は、シアトルを本拠とする有名店、スターバックス(Starbucks)、パイク・ブリューイング(Pike Brewing)、フランズ・チョコレート(Fran’s Chocolates)、ビーチャーズ・ハンドメイド・チーズ(Beecher’s handmade Cheese)、エタン・ストーウエル・レストラン(Ethan Stowell Restaurants)、ボーイング・ストア(Boeing Store)などに加え、寿司屋“シロウ・カシバ”までである。
12日に行われた展示館の開会式には駐日米国大使を含む400名が出席、シアトル副市長シェファリ・ランガナサン(Shefali Ranganathan)氏が祝意を表した。
建設工事は昨年スタートしたが、空港会社の幹部は「展示館にはボーイングの生まれたシアトルの雰囲気を醸し出したい」と語っていた。
787の主翼は、名古屋にある三菱重工で作られ、ボーイング747貨物機を改造し主翼2枚を搭載できる特別製貨物機「ドリーム・リフター」で、ほとんど毎日のように午後、ここからボーイングの787組立工場があるエベレット(Everett)あるいはチャールストン(Charleston, S.C.)に送られる。
787の型式証明取得のための試験飛行が完了した後、ボーイングは試験飛行に使った6機のうちの3機を寄付することにした。まずシアトルの「ミュージアム・オブ・フライト(Museum of Flight)」に3号機、アリゾナ州タクソン( Tucson, Ariz.,)の「ピマ・エア・アンド・スペース・ミュージアム(The Pima Air and Space Museum) に2号機、そして日本の名古屋中部セントレア空港に1号機ZA001 を寄付したのである。
ご存知のように名古屋中部国際空港セントレアは伊勢湾にある知多半島西側の人工島にある。メインターミナル・ビルの東側には南に延びる長い歩道橋があり、その端に787の展示館「フライト・オブ・ドリームズ」がある。この上からはランウエイを離着陸する飛行機が眺められる。
さらに空港では、この近くに第2ターミナルを建設中で来年には完成する。そうなれば展示館へのアクセスは一層便利になる。
空港会社の幹部は次のように話している。「飛行機の展示館は、マニアは別として一般の人々にとってそれほど魅力的ではない。従ってここには、シアトルの町並みを再現させ、多数の人々が来訪、楽しめる施設としたい。」
図2:「フライト・オブ・ドリームズ」の外観。「動く歩道」から撮影したもの。
図3:「シアトル・テラス」2階から787「ZA001」の右翼とエンジンナセルを眺めた写真。
ボーイング787ドリーム・ライナーは、双発、広胴型の中型機、2クラスで242名から330名の旅客を運ぶことができる。機体構造に炭素繊維複合材を多く使った最初の旅客機である。それまでの767型機に比べ燃費が20 %改善されている。787には「-8」の他に胴体延長型の「-9」、「-10」の3つがある。
図4:(Boeing) ボーイングが公表している787系列機3機種の概要。
図5:(Wikipedia) ANAは、787-8を36機、-9を44機、-10を3機、合計83機を発注済み、うち受領したのは787-8を36機、-9を30機の合計66機である。JALは787-8を29機、-9を20機、合計49機を発注済み、うち受領したのは787-8を25機、-9を14機、合計38機である。
図6:(日本航空機開発協会)787に対する日本の重工3社(三菱、川崎、すばる)の担当部分。
図7:(日本航空機開発協会)787に部品を供給している日本企業一覧。
図8:(Wikipedia) 中部国際空港セントレアは、名古屋市中心部から35 km南の知多半島常滑市西岸の人工島に作られた空港。ランウエイは「18」、「36」の南北方向、長さ3,500 mの1本、その東側にターミナル・ビルがある。「787展示館[Flight of Dreams]」は、ターミナル・ビルから伸びる「動く歩道橋」の南端に建設されている。
—以上—
The Seattle Times October12, 2018 “A taste of Seattle and Boeing in Japan as first Dreamliner goes on display” by Dominic Gates
Boeing.com October 19, 2018 “The first 787 Dreamliner, helping aviation dreams take flight”
国土交通省航空局平成25年6月21日“ボーイング787型機の運航再開について”