令和3年3月、我国周辺における中露両軍の活動と我国/同盟国の対応(その2)


2021-04-08(令和3年) 松尾芳郎

 

U.S. Naval Today. Com

3月03日発表  海上自衛隊、次世代型多目的フリゲート「もがみ」が進水

3月3日(水)に三菱重工長崎造船所で平成30年度計画護衛艦の1番艦「もがみ(FFM-1)」の命名式・進水式が行われた。

この艦は従来とは異なる多機能・コンパクトなフリゲート(Frigate)で、艦種名称は「FFM」となる。「もがみ(FFM-1)」は2022年3月に就役予定。満載排水量5,500 ton、全長133 m、最大速力30 kt、兵装は、Ml.41 VLS 16セルに対空ミサイルSM-6を搭載、さらに中近距離迎撃ミサイルSea RAM 1基、17式対艦ミサイル4連装発射筒2基などを備える。同型艦2番艦「くまの(FFM-2)」は昨年11月に進水式を終了、現在艤装中。「もがみ」型フリゲートは、これまでの汎用護衛艦の後継として22隻の建造が予定されており、「もがみ」、「くまの」に続いて令和元年度、同2年度で4隻の建造が始まっている。

 

3月04日発表  海上自衛隊、音響測定艦「ひびき」級の3番艦「あき」が就役

3月4日(木)に三井E&S造船玉野艦船工場で、音響測定艦「あき」の引渡式・自衛艦旗授与式が行われた。「あき/ AOS-5203」は「ひびき」型音響測定艦の3番艦で、三井E&S玉野艦船工場で建造。満載排水量3,800 ton、全長67 m、全幅30 m、ヘリコプター発着甲板を備える。護衛艦の中で唯一の双胴型船。艦尾のスクリュウ、艦首の錨、は双方の胴体に1基ずつある。任務は、中国、ロシアなどの仮想敵国潜水艦の音響を測定、分析して特定すること。

 

3月16日発表  海上自衛隊、掃海艦「あわじ」級の3番艦「えたじま」が就役

前掲、「海上幕僚監部発表「3月12日発表  掃海艦「えたじま」の引渡式・自衛艦旗授与式について」を参照。

 

3月23日発表  海上自衛隊、イージス駆逐艦「まや」級の2番艦「はぐろ」が就役

前掲、「海上幕僚監部発表「3月12日発表 護衛艦「はぐろ(DDG-180)」の引渡式・自衛艦旗授与式について」を参照。

 

3月26日発表  米海軍、最初の次世代型巡航ミサイル「トマホークBlock V」を受領

米海軍はこのほどレイセオン・ミサイル&デフェンス社から、最初の次世代型巡航ミサイル「トマホークBlock V」を受領した。Block Vは従来型より後方と通信機能が改良さrている。「トマホーク」は水上艦および潜水艦から発射するGPS誘導のミサイルで、厳重な防空網を突破し1,600 km以上離れた目標に正確に着弾できる。

米海軍ではBlock Vで開発された技術を、すでに配備済みのトマホークBlock IVに適用・改良し、Block Vとして寿命を15年延長する。

トマホークV

図23:(U.S. Navy) 米海軍ミサイル駆逐艦「チャフィー(Chafee)/DDG 90」がカリフォルニア州沿岸で「トマホークBlock V」を発射したところ。

 

米海軍第7艦隊ニュース

 

3月03日発表  セオドア・ルーズベルト空母打撃群は海上自衛隊艦隊と共同演習

2月28日、太平洋上グアム島付近の海域で、セオドア・ルーズベルト空母打撃群(TRCSG) は海自艦隊と共同演習を行なった。参加したのは、米側から空母「セオドア・ルーズベルト/Theodore Roosevelt (CVN 71)」、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「バンカー・ヒル/USS Bunker Hill (CG 52)」、海自から護衛艦「ゆうぎり(DD 153)」、練習艦「はたかぜ(TV 3520)」、「せとゆき(TV 3518)」、である。空母「セオドア・ルーズベルト/Theodore Roosevelt (CVN 71)」には「第11空母航空団(CVW=Carrier Air Wing 11)」が乗艦し参加した。

3-03 海自ヘリ

図24:(7th Fleet) 空母セオドア。ルーズベルト甲板に着艦する海自ヘリコプターSH-60K。

 

3月05日発表  米海軍・海上自衛隊共同訓練を通じ同盟を強化

3月1日-3月6日にかけて、米海軍と海自艦艇は「共同先進実戦訓練 (BAWT=bilateral advanced warfighting training) 2021」を行なった。この訓練は日米両海軍の鉄壁の連帯をさらに強化するためで、あらゆる領域で戦略・戦術両面で行われた。

米海軍からは第15駆逐艦隊 (DESRON 15)のミサイル駆逐艦「ジョンS. マケイン(USS John S. McCain / DDG 56)」、「ベンフォールド(USS Benfold / DDG 65)」が参加、海自からはヘリ空母「いせ(DDH 182)」、ミサイル護衛艦「しらぬい(DDG 120)」、護衛艦「はるさめ(DD 102)」が参加した。

訓練は、実戦的シナリオで、対艦訓練だけでなく複雑な対潜水艦訓練から対空訓練を含み行われた。

3-05 BAWT

図25:(7th Fleet) 3月1〜6日に行われた日米共同の「BAWT 2021」演習の一コマ。手前から海自ミサイル護衛艦「しらぬい(DDG 120)、米ミサイル駆逐艦「ジョンS. マケイン(USS John S. McCain / DDG 56)」、そして奥の黒く見えるのは海自ヘリ空母「いせ(DDH 182)」、の順。

 

3月10日発表  第7艦隊ミサイル駆逐艦が台湾海峡を通過

3月10日、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ジョン・フィン(USS John Finn /DDG113)」は台湾海峡を通過した。

3-10ジョンフィン

図26: (US 7th Fleet) 台湾海峡を通過するミサイル駆逐艦「ジョン・フィン/DDG113」。アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦の63番艦で、戦闘システムは「フライトIIA」、2017年7月に就役。2020-11-17には、太平洋上で最新の迎撃ミサイルSM-3 Block IIAを発射、飛来する模擬ICBNを迎撃、撃墜に成功した。満載排水量9,200 ton、速力31 kts.

 

3月16日発表  セオドア・ルーズベルト空母打撃群がインド洋で実弾射撃訓練を実施

3月12日、セオドア・ルーズベルト空母打撃群(TRCSG)はインド洋上で、設定した浮遊目標に対し、実弾射撃演習を行なった。第87(VFA 87)及び第146戦闘攻撃中隊(VFA 146)

のF/A-18E戦闘攻撃からは模擬爆弾を投下、駆逐艦「バンカー・ヒル/Bunker Hill (CG 52)」及び「ラッセル/Russell (DDG 59)」はそれぞれMk 45  5 inch砲から模擬弾を発射した。これは、水上目標に対し空海両方から共同で攻撃を加える演習で、戦技向上に寄与するところが大きかった。

 

 

3月19日発表  日本とハワイ駐留の海兵隊、「EABO」ネットワークを通じ共同射撃訓練

今年3月、日本とハワイに駐留する第3海兵師団は、遠征部隊連絡網である「EABO= Expeditionary Advanced Base Network」を使って、5つの島嶼に対し上陸作戦を行うという想定で訓練を行なった。実動演習はハワイで行われたが、ここでは艦砲射撃の支援を受けた海兵隊員が、要衝の奪取・防衛、隠密行動で敵を制圧する訓練が行われた。

日本駐留の第3海兵師団第12連隊R・レモンズ中佐は「この演習は、インド・太平洋のあらゆる島々で将来起こり得る実戦に適用できる訓練であった」と語っている。

演習には陸・海・空3軍が参加し、複雑な統制下で行われた。海兵隊第12連隊を中心に、海軍からミサイル駆逐艦「ハルゼー(USS Halsey/DDG 97)」、空軍から「C-17グローブ・マスターIII」輸送機、陸軍から第25歩兵師団、第1高射連隊、などが参加した。

演習のシナリオは;―

敵地後背には夜間にMV-22Bオスプレイが侵入し滑走路を占領、そこに海兵隊第121戦闘攻撃中隊のF-35Bが進出、参加する。続いて、多数のMV-22BオスプレイとCH-53Eスーパー・スタリオン・ヘリコプターに分乗した数百名規模の海兵隊員が着陸、占領地域を確保する。敵地に対しては、海兵隊からの情報で艦砲の遠距離精密射撃が行われ、制圧する。

このように殆ど実戦そのままの演習が実施され、米海兵隊を中心とする島嶼奪回作戦の技量向上に有益であった。

3-19 海兵隊演習

図27:(7th Fleet) [EABO]ネットワーク演習で、CH-53Eスーパー・スタリオン・ヘリコプターから敵の後背地に着陸した海兵隊兵士。

 

3月30日発表  USSブルーリッジ、海自艦艇と共同訓練を実施

前掲の海上幕僚監部「3月30日発表  日米共同訓練について」を参照のこと。

 

ロシア海軍情報管理局ニュース

 

3月27日発表  ロシア海軍北方艦隊の原子力潜水艦3隻は同時に北極の氷上に浮上

 

3月26日、ロシア海軍は、原子力潜水艦3隻が、北極海に面したフランツ・ヨシフ諸島とゼムリヤ・アレクサンドル島に隣接した海域で、零下25~30度、氷の厚さ1.5 mの環境下で、同時浮上を含む演習を実施した。浮上はあらかじめ設定した半径300 mの範囲内で同時に実施された。演習では原子力潜水艦から魚雷を発射、目標到着地点でこれを回収した。

艦種は公表されていないが写真から「デルタ」型のように見える。また同時期に北極自動化射撃旅団が新開発の二人乗り雪上オートバイ多数を使って戦闘演習を実施した。

これら演習の模様は、ロシア海軍総司令官ニコライ・エフメノフ大将からプーチン大統領に報告された。

米国防総省は本件に注目、アラスカを含む北米全域に配備する弾道ミサイル防衛網の強化、再検討に乗り出している。

ロシア北方艦隊は、太平洋艦隊、黒海艦隊、バルト海艦隊、などで構成するロシア海軍中、最大・最強の艦隊で、ムルマンスクに司令部を置く。タイフーン型(水中排水量40,000 ton)、デルタ型(12,000 ton)、最新のボレイ型(24,000 ton)を含む多数の原子力潜水艦を6個潜水艦師団に分けて配備している。これら原潜は、いずれも多弾頭・核弾頭付き弾道ミサイルを12-20基装備している。

北方艦隊には、2020年就役した「ボレイ」級原潜「クニャージ・ウラジミール」が配備されている。長さ170 m、幅13 m、潜航深度400 m、騒音が少なく探知はほぼ不可能と言われる。「RSM-56ブラバ」多弾頭弾道ミサイルを搭載、核弾頭1基あたりの爆発力は100-150 キロトン(広島型の10倍)。同級の「ユーリー・ドルゴルスキー」も北方艦隊に配属されている。

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図28:(ロシア海軍情報管理局/YouTube)ロシア北方艦隊の原子力潜水艦3隻が至近距離で北極海の氷を破って同時浮上をしたところ。

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図29:(ロシア海軍情報管理局/YouTube)氷を破って浮上した原潜、艦橋から姿を見せた乗員。氷の厚さがわかる。デルタ級原潜のようだ。

 

China Military com.

 

3月11日発表  中国海軍ミサイル駆逐艦隊、東シナ海で演習

2021年1月末に、中国東部軍管区東海艦隊に所属するミサイル駆逐艦「寧波Ningbo(139)」、「太原/Taiyuan(131)」およびミサイル・フリゲート「南通/Nantong(601)」の3隻は、東シナ海で艦隊訓練を行なった。訓練は実弾射撃を含め将兵の戦技向上を図るため。

「寧波Ningbo(139)」:2006年就役、東海艦隊、ソブレメンヌイ級駆逐艦でロシアから輸入した4隻中の4番艦 [956EM型]。対空、対水上戦を重視、外洋航海能力を有する駆逐艦で、満載排水量8,000 ton、速力32.7 kts。対艦兵装の主力は3M80E対艦ミサイル「モスキート」、射程120 km、速度マッハ2.5、艦橋の両側面にある4連装発射筒に合計8発が収められる。対空ミサイルはロシア製9M38M2中距離対空ミサイル「シュチーリ1」、射程50 km、速度マッハ4、を装備する。艦の前後に2基の発射機があり、合計48発を装填する。主砲はAK-130 54口径130 mm 水冷式連装砲、発射速度は毎分90発前後と極めて高い。射程は23 km、これは島嶼上陸作戦で有力な火力支援の武器となる。

03-11 寧波139

図30:(日本周辺の軍事兵器―ソブレメンヌイ級駆逐艦(現代級/956型)) 「寧波Ningbo(139)」はロシアから輸入したソブレメンヌイ級駆逐艦。前甲板にはAK-130 54口径130 mm 水冷式連装砲、艦橋側面には3M80E対艦ミサイル「モスキート」4連装発射筒が見える。

 

「太原/Taiyuan(131)」:2018年就役、東海艦隊、中国海軍最新の僚艦防空能力を持つ052D型駆逐艦「昆明/Kunming(172)」級の10番艦。同型艦は16隻が完成、建造中が7隻ある。満載排水量7,500 ton、速力29 kts。ミサイル垂直発射システムVLSは、艦前部32セル+後部32セル=64セルを装備する。主砲は艦前部にH/PJ-45A型70口径130 mm単装砲1門。近接防空用として1130型30 mm CIWS自動機関砲を艦橋前に1基と、ヘリコプター格納庫上にHQ-10対空ミサイル24連装発射機1基を備える。電子装備は、艦橋4面に貼り付けられた346A型多機能APARフェイズド・アレイ・レーダー。

03-11 太原

図31:(日本周辺の軍事兵器―052D型駆逐艦)052D型駆逐艦の1番艦「昆明(172)」。10番艦「太原(131)」もほぼ変わらない。

 

ミサイル・フリゲート「南通 /Nantong(601):」:054A型フリゲート「江凱II型」の同型艦30隻中の29番艦、就役は2020年初め、東海艦隊所属。本型は満載排水量4,500 ton、幅広で主機はフランスまたはドイツのMTUデイーゼル4基、最高速度は28 kts、航続距離は3,800 n.m.、兵装は艦橋前に32セルVLSにHQ-16対空ミサイル(紅旗16)を搭載する。HQ-16の改良型HQ-16Cは射程70 km、でこちらの配備が進んでいる。艦中央部にはYJ-83対艦ミサイルを4連装発射機2基に装填する。YJ-83は射程200 km、ターミナル段階でマッハ1.5に加速・着弾する。艦首部ににはロシア製AK-176 76.2 mm単装砲を国産化したPJ-22 76.2 mm単装砲を装備、対空近接防御には1130型30 mm CIWSを1基搭載している。僚艦防空機能に重点を置いたフリゲートである。

03-11 054Aフリゲート

図32:(日本周辺の軍事兵器―054A型フリゲート)054A型/江凱II型フリゲートは外洋航海性能を高め、僚艦防空機能を備えた4,500 ton級の大型フリゲート、2008年就役の「舟山(529)」から30隻が建造された。艦首には、前から「87型対潜ロケット5連装発射筒」、「76.2 mm単装砲」、「HQ-16対空ミサイル用VLS」32セル。艦橋上部に730型30 mm CIWS対空機関砲、もう一つは後部ヘリ格納庫上にある。艦中央部には「YJ-83対艦ミサイル4連勝発射筒」がある。

 03-11発表、1月末の演習

図33:(China Military) 先頭からミサイル駆逐艦 「太原/Taiyuan(131)」、ミサイル・フリゲート「南通/Nantong(601)」、ミサイル駆逐艦「寧波/Ningbo(139)」、の順。

 03-11東シナ海

図34:(China Military)ミサイル駆逐艦「寧波/Ningbo(139)」の主砲「AK-130 54口径130 mm 水冷式連装砲」の実弾射撃。

 

3月17日発表  中国海軍、上陸用エアクッション艇を使い南シナ海で実戦演習

今年2月末に、中国南部軍管区に所属する艦隊は、強襲揚陸艦「五指山 Wuzhishan(987)」を含む艦隊を編成、南シナ海で主砲の実弾射撃、対空機関砲CIWSの実弾射撃、上陸用エアクッション艇の編隊訓練を含む上陸作戦演習を行なった。

071型ドック型揚陸艦「五指山/Wuzhishan (987)」:中国海軍最大で初のドック型揚陸艦「崑崙山(998)」級の6番艦、2020年初めに就役、南海艦隊に配属する最新艦。満載排水量17,600~20,000 ton、主機はデイーゼル4基、2軸、47,000馬力、速力20 kts、航続距離6,000 n.m.。煙突は左右両舷に1基ずつ、後部にZ-8輸送ヘリコプター2機を納める格納庫と2機が同時に離着艦できる飛行甲板を備える。車両甲板の後部にあるウエルドックは艦全長の3分の2にもなり、726型エアクッション揚陸艇を4隻搭載できる。上陸用兵員400~800名、戦闘車両15~20両を搭載する。

兵装は、PJ-25 60口径76.2 mm単装砲1門とAK-630 30 mm CIWS 4基を搭載。また対艦ミサイルの来襲に備えて726-4型 18連装デコイ発射機4基が装備されている。

同型艦は、7番艦まで完成し8番艦が間も無く就役する。これだけ数が揃えば中国海軍の上陸作戦能力は飛躍的に向上し、台湾や沖縄諸島への侵攻の実現性が一段と高まる。

03-17 071型揚陸艦

図35:(日本周辺の軍事兵器―071型ドック型揚陸艦)1番艦「崑崙山(998)」。満載排水量20,000 ton級で、大型輸送ヘリ2機およびエアクッション揚陸艇4隻を搭載、数百名の兵士・車両を迅速に揚陸する。

03-17 エアクッション艇

図36:(China Military) 強襲揚陸艦「五指山Wuzhishan (987)」の艦尾ウエルデッキから発艦した上陸用エアクッション艇の編隊訓練。

 

3月26日発表  中国海軍、遠方海域(南シナ海?)で実弾射撃演習、

中国南部軍管区に所属する強襲揚陸艦「五指山/Wuzhishan(987)」、補給艦「査干湖/Chaganhu(967)」は小艦隊を組み、遠方海域(南シナ海?インド洋?)で訓練を行なった。この訓練を含む航海は8,000 n.m.、日数は30日間に達した。訓練は、対空・対ミサイル射撃を主に、海賊対策、救難訓練など。

071型ドック型揚陸艦「五指山/Wuzhishan (987)」:前項を参照のこと。

901型 補給艦 「査干湖/Chaganhu(967)」:2019年就役、南海艦隊に所属。同型艦「呼倫湖/Hulunhu (965)」/北海艦隊所属、の2番艦である。中国海軍最大で満載排水量48,000 ton、主機はフランス・ピルシテイク製デイーゼルの国産化型4基の2軸式で、最高速力25 ktsで航行する。中国が整備を進める空母打撃群に随伴して支援するための補給艦である。

洋上補給のため、中部甲板に門型ポスト3基を備え、前と後ろの2基が液体用(燃料・飲料水)、中央はドライ・カーゴ用となっている。後部液体用ポストの前左側に空母専用の補給ダクトがあり、高速で燃料補給を行える。艦尾甲板はヘリコプター用でZ-8とZ-18ヘリを搭載できる。兵装としてH/PJ-13 30 mm CIWSを4基装備する。

03-26 901補給艦

図37:(Wikiwand) 901型補給艦「呼倫湖/Hulunhu (965)」の全景。中国海軍最大の補給艦、主任務は空母打撃群の随伴して遠洋で補給業務を行う。

03-26, 南シナ海で実弾射撃演習

図38:(China Military)左から大型補給艦「査干湖/Chaganhu(967)」、強襲揚陸艦「五指山/Wuzhishan(987)」、艦種不詳(857)の順。

 

 

フォーカス台湾ニュース

 

3月26日発表  中国軍機、過去最多の20機が台湾防空圏に、台湾米国の覚書締結後

台湾国防相は26日、中国軍機20機が台湾南西の防空識別圏に侵入したと発表した。台湾空軍は哨戒機部隊が緊急発進、無線で警告すると共に地対空ミサイルで監視・追跡し対応した。侵入した中国軍機は、Y-8対潜哨戒機2機、KJ500早期警戒管制機1機、H-6K爆撃機4機、J-16戦闘機10機、J-10戦闘機2機、Y-8偵察機1機の合計20機。1日に飛来する機数としてはこれ迄の最多となる。この日は台湾と米国が沿岸警備の連携強化に関する覚書( the Coast Guard Agreement)を締結した翌日だった。中国はこれに抗議する意図でADIZ侵犯飛行を行った。中国政府系の環球時報は、本件について次のように報じている;―

中国南部軍管区高官でTVコメンテーターを勤める宗(Song Zhongping)氏は「いつ戦闘が始まってもおかしくない、戦闘になれば中国軍はさらに大量の航空機を動員、台湾西海岸のみならず東海岸の都市を攻撃、壊滅できる。海軍は空母以下多数の艦艇が進出、台湾防衛に駆けつける米国および日本から援軍を粉砕するだろう。」と述べた。

 

3月30日発表  中国軍機10機、台湾防空圏侵入、空軍が対応

 

3月29日、中国軍戦闘機など10機が台湾南西部の防空識別圏(ADIZ)に侵入、一部は台湾南東部に回り込む形で飛行した。飛来したのは戦闘機J-16およびJ-10が4機ずつと、対潜哨戒機Y-8が1機、早期警戒機KJ-500が1機。台湾空軍機が緊急発進し対応した。これは3月28日から太平洋のパラオ共和国ウイップス大統領が台湾を訪問中で、これに駐パラオ米国大使ヘネシー・ナイランド氏が同行していた。これは3月26日の台湾・米国の沿岸防備に関わる覚書締結に対するADIZ侵犯と同様、台湾・米国の協力に対する威嚇と受け止められている。

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図39:(JB press/台湾空軍)台湾ADIZに侵入したJ-16戦闘機。「J-16」はロシア製「Su-30MKK」のエンジンを国産のWS10A型に換装、アビオニクスなどを近代化した中国製の戦闘機。2014年から配備が始まり140機ほど配備されている。

 

終わりに

2021年3月発行のマスコミは相次いで「東アジアにおける米優位の軍事均衡が崩れる」と報道した。東アジアでは中国軍の拡張が著しく、保有する艦艇は750隻、作戦航空機は3,000機に達し、さらに日本を射程に収める地上配備型の各種中距離ミサイル1,250基を保有していいる。本文中に示した2万トンクラスの071型ドック型強襲揚陸艦は7隻が完成、台湾、沖縄への上陸作戦準備が整いつつある。

これに対し日本は、各種艦艇140隻、作戦航空機380機、その内200機は30年を経過した旧式のF-15戦闘機で近代化改修が検討されたが予算高騰で中止となった。そして中距離ミサイルは皆無。日米同盟で支援を約束する在日米軍は、第7艦隊の艦艇が最大70隻と航空機150機、これに空軍の作戦機が若干加わる。劣勢は明らかである。

バイデン大統領から次期インド太平洋軍司令官に指名されたジョン・アキリーノ海軍大将は3月23日の上院軍事委員会・指名公聴会で次のように証言した;―

「中国の台湾侵攻は極めて間近に迫っている(2022年2月北京冬季オリンピックの終了後か?)。これを抑えるため議会に対し2022年会計年度(2021年10月~2022年9月)から6年間で2兆9千億円(270億ドル)の支出を要求する。同盟国日本は、ミサイル防衛と制空権、海上安全保障の分野で一層能力を高める必要がある。」

危機は目前に迫っている。我国は防衛体制の増強に一刻の猶予も許されない。

 

―以上―

 

本稿作成の参考にした資料は多数のため省略する。