アラスカ沖に進出した中国艦隊、沖縄列島を通過し基地に帰還


2015(平成27年)-09-14 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表によると(27-09-11)、去る9月11日(金)午前11時、5隻からなる中国艦隊が二手に分かれて沖縄列島を通過、東シナ海および南シナ海に向かった。すなわち;—

1)      宮古島の北東110kmの海域を北西進するルージョウ(旅州)級ミサイル駆逐艦1隻、ジャンカイ(江凱)II級フリゲート1隻、およびフチ(福池)級補給艦1隻、計3隻を確認。発見したのは那覇基地海自第5航空群所属哨戒機P−3Cと舞鶴基地第3護衛隊所属の護衛艦「あたご」。

 

(注)「あたご」は基準排水量7,700トン、満載排水量10,000トンの最新型イージス艦である。

 

2)      与那国島の南290kmの海域を南西進するジャンカイ(江凱)II級フリゲート1隻、ユージャオ(玉昭)級揚陸艦1隻の2隻を確認。発見したのは同じく那覇基地所属の哨戒機P-3C。

 

この中国艦隊は、1ヶ月前の8月17日に対馬海峡を北上、日本海でロシア海軍と沿海州付近で島嶼上陸演習を行い、その後8月29日に北海道宗谷岬沖を通過オホーツク海に入った。艦隊は、それから千島列島を抜け太平洋を経由し、米軍発表によると、9月2日にはアリューシャン列島からアラスカ沖のベーリング海に入り、アリューシャン列島では米国領海を侵犯している。同艦隊はその後太平洋を南西に進み9月8日に小笠原諸島西ノ島の北150kmの海域で陣形運動をしながら南西に航行、沖大東島の南東190kmで洋上補給をしているのを確認している。

ベーリング海進出までの経緯については次の既報記事を参照されたい。

1)「中国海軍とロシア海軍、日本海で島嶼上陸の合同演習開始」2015-08-22

2)「中国艦隊、日本海での島嶼上陸演習を終了し大半は宗谷海峡を東進」

2015-09-01

3)「中国艦隊、日本海の上陸演習を終えアラスカ沖ベーリング海に進出」

2015-09-03

 

今回の統幕監部の発表で明らかになったのは、8月中旬に東シナ海あるいは南シナ海の基地を出発した中国艦隊が、演習を繰り返しながら日本海からオホーツク海を抜けアラスカ沖ベーリング海まで進出したこと。帰路は、太平洋を南西に進み小笠原諸島を経て、沖大東島海域を通り沖縄列島を通過して帰還すると云う1か月に達する大航海を成し遂げたことである。これで中国海軍は今や日米両海軍に匹敵する外洋艦隊に成長したことを内外に印象付けた。

 

以下に中国艦隊の推定航路と我国の領海・防空識別圏を示す。また統合幕僚監部が発表した沖縄列島通過時の中国艦の写真と沖大東島付近での洋上補給行動の写真を併せて示す。個々の中国艦の説明は前掲の記事にあるので省略する。

中国艦隊航路

図1:(Google)5隻編成中国艦隊の8月中旬から1ヶ月間の推定航路。

日本領海ADIZ

図2:(平成26年度防衛白書)我国の領海と防空識別圏(ADIZ)。中国と韓国は2013年に自国のADIZの拡大を宣言したため、我国ADIZと重なる空域が生じることとなった。

ルージョウ級115

図3:(統合幕僚監部)ルージョウ「旅州(Luzhou)」級ミサイル駆逐艦、艦番号115、「瀋陽(Shenyang)」。2006年秋の就役。

ジャンカイ級547

図4:(統合幕僚監部)ジャンカイII「江凱II」級フリゲート、艦番号547「臨析」(Linyi)は2012年末に就役した新鋭艦。満載排水量約4,000㌧同型艦は20隻ある。

フチ級889

図5:(統合幕僚監部)フチ「福池(Fuchi)」級補給艦の3番艦で艦番号889「太湖(Taihu)」で2012年就役。中国海軍最新最大の補給艦で4隻就役中の1隻。満載排水量23,000トン。今回の遠洋航海を支えた艦。

ジャンカイ568

図6:(統合幕僚監部)ジャンカイII「江凱II」級フリゲート、艦番号568「衡陽」2008年就役。

ユージャオ989

図7:(統合幕僚監部)ユージャオ「玉昭(Yuzhao)」級ドック型揚陸艦の3番艦、艦番号989「長白山」で2012年秋に就役した新鋭艦。満載排水量は18,500トン、大型揚陸艇4隻を搭載する。

洋上補給1

図8;(統合幕僚監部)右中央の補給艦「太湖」から洋上補給を受けるミサイル駆逐艦「瀋陽」(上)とフリゲート「衡陽」(下)およびフリゲート「臨析」(左)。

洋上補給2

図9:(統合幕僚監部)補給艦「太湖」(右)から洋上補給を受けるミサイル駆逐艦「瀋陽」。

 

-以上-