防衛省、今年度上半期のスクランブル実施状況を公表


ー対中国機は依然高水準。前年同期比80回増ー

2013年10-09    小河正義

防衛省統合幕僚監部は10月9日、『平成25年度上半期のスクランブル実施状況』を公表した。最多は対中国機で149回と全体の48%に達した。前年同期に比べ80回の増加。この中には第一列島防衛線・横断往復飛行の初確認や尖閣列島周辺への無人機初出動等、中国人民解放軍の動きは一段と積極さが目立つ。同幕僚監部は中国機へのスクランブル対象機は戦闘機が大半(詳細未公表)分析、那覇基地の南西航空混成団の戦力増強は領空侵犯阻止で急務だ。

航空方面隊配置

 

図(Wikipedia/航空自衛隊)

航空方面隊とは担当空域の防空を担う戦闘航空部隊で、規模の小さいものを航空混成団と呼ぶ。それぞれの戦闘航空団は2個飛行隊、高射部隊、航空警戒管制部隊、その他の直轄部隊で構成する。

北部航空方面隊、中部航空方面隊、西部航空方面隊の3つがある。那覇を基地とする南西航空混成団は戦闘航空団として1個飛行隊のみで他の方面隊より規模が小さい、その他は方面隊と同じ構成である。

 

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図:(防衛省)過去5年間の航空方面隊別のスクランブル回数を示す表。表中の北空/北部航空方面隊、中空/中部航空方面隊、西空/西部航空方面隊、南混/南西航空混成団の略である。方面隊別の数値の左は年度合計、右列は上半期を示す。25年度上半期では南混の160回が突出している。

ロシア機接近_0004

 

図:(防衛省)スクランブルの対象となった中国機、ロシア機、北朝鮮機の飛行パターン。オレンジで示す中国機の接近が最も多くなっている。ところがこの空域を担当する南西航空混成団の勢力は他の方面隊と比べ半分でしかなく、増強が緊急の課題と云える。

発表によると平成25年度上半期(4月1日~9月30日)のスクランブル(緊急発進)の件数は308回。前年度同期比で99回増えたという。最多は中国機で149回と全体の48%。前年同期に比べ80回増だったが、前期よりは88回減少している。次いでロシア機が136回(全体の44%)で前年同期比2回増だった。北朝鮮は同3%、その他、5%。

防衛省統合幕僚監部が注視しているのは中国軍機の飛行パターンの積極さだ。第一列島防衛線横断の飛行が初めて確認され7月24日、ターボプロップ偵察機Y-8、9月8日、中国空軍随一の戦略爆撃機、H-6『轟』がそれぞれ強行した。さらに無人偵察機が尖閣列島周辺へ初めて登場(9月9日)、航空自衛隊パイロットを面食らわせた。在京国際軍事筋は中国が今後、最新鋭戦闘機の日本領空接近等より大胆な行動に出るのは時間の問題と見ている。

航空自衛隊防空管区別の出動回数を見ると尖閣列島を抱える南西航空混成団が160回と最多。次いでロシア機との対峙ケースが多い、北部航空方面隊が110回で第2位。中部、西部各方面隊は出動回数が日本を取り巻く国際情勢の変化で減少している。

防衛省は南西航空混成団の戦力増強で空中警戒機E2C『ホークアイ』の前進部隊の那覇基地派遣等を実施したが、今後F-15戦闘機の増派など領空侵犯阻止の断固たる姿勢を戦力強化で内外に示すべきだろう。

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