水面下で進む次期ボーイング・トップ選び


2014-1-08        マーク・デブリン(米フロリダ州マイアミ)

世界最大の航空宇宙関連企業、ボーイング社で次期経営首脳陣選びが進行している。同社を率いるジェームス・マクナニー会長兼CEO(最高経営責任者)が今年、引退すると見られるからだ。ボーイングにはトップの定年が65歳という不文律があり、マクナニー会長も今年が該当年だ。後継者選定を睨んだ、重役陣の役割分担変更が昨年末、すでに発令され、業界では新年早々からポスト・マクナニー体制構築の動きが活発化するとみる。

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写真:(Boeing) スキャンダルの危機からボーイングを立て直したジェームス・マクナニー(James McNerney)会長兼CEO。

マクナニー会長が後継社選びの道筋ずくりで昨年暮れ発令した次世代”3羽ガラス”は次の通りだ。

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写真:(Boeing) ジェームス・マクナニーの最有力後継者、デニス・ミュレンバーグ(D. Muilenburg)副会長兼COO。

同社No2の副会長兼COOに抜擢したのはデニス・ミュレンバーグ(49)。防衛部門の生え抜きで仕事ぶりは厳格で手堅い。アイオワ州立大卒の電気工学専攻の根っからの技術者。ボーイング伝統の会社イメージにぴったりと見られる。海外を含む70ヶ国で事業を展開、174,000人を雇用し、全米第一の輸出企業である同社トップは”米産業界の顔”。3人に中で最年少はむしろ経営にスピード感が欠かせぬ21世紀の経営にはふさわしい。

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写真:(Boeing) 最大のライバル、レイモンド・コナー(Reymond Conner)副会長兼民間航空機部門CEO。

先行するミュレンバーグ副会長を追うのは副会長を射止めた民間航空機部門CEOのレイモンド・コナーだ。エアバスとの次世代省エネ売り込みでの凄腕セールスマンの評価は万人が認める。ボーイング入社時は整備工で、実力があれば学歴無縁の米人が好むサクセス・ストリーの象徴だ。ただボーイングは会長兼CEOは10年間続投の伝統があり、現在58歳のコナーにとっては不利な条件だ。

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 写真:(Boeing) 次世代新型爆撃機プロジェクト等防衛部門の社長兼CEOに就任したクリストファー・チャドウィック(Christopher Chadwic)。

クリストファー・チャドウイック(53)の存在も目が離せない。マクナニー会長が昨年暮れの後継者を睨んだトップ人事でチャドウイックをボーイングの2本柱の一つ防衛部門の社長兼CEOに選んだことでうかがえる。アイオワ州立大卒はフランク・シュロンツ元会長の後輩で有利に働くかもしれない。

ジェームス・マクナニー体制はコンディット、ストンサイファーと2代続いたスキャンダル地獄からボーイングを本来の姿に復活させた。パンチ力に欠けるとの人物評もあるが、2013年度経営実績は目を見張るないようだ。

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