三菱航空機、MRJ『静強度試験』の準備。機体を技術試験場へ移動


2014年5月8日(JST.13:30)     小河正義

2014-05-09   Revised

今後の、日本の旅客機機製造で”希望の星”となる、三菱航空機の『MRJ』双発小型ジェット旅客機が、機体の安全性確認で”関門”となる『全機静強度試験』準備で機体を技術試験場へ移動した。三菱航空機、三菱重工が5月7日に発表した。

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図:(三菱重工、三菱航空機)小牧南工場内の最終組立工場から”技術試験場”に移動中の”静強度試験”用のMRJ。

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図:(三菱重工、三菱航空機)”技術試験場”に搬入されるMRJ。MRJとしての2号機で、地上静強度試験用のため飛行に必要なシステム等は取付けていない。

 

これは、去る2月に胴体が完成し現在最終組立て段階にある飛行試験用の初号機に続く2号機でとなる。構造強度を試験するための機体なので飛行に必要なシステム等は取付けていない。三菱では強度試験用としてもう1機を製作、計2機で必要な強度試験を行う。

飛行試験は、4~5機を使って米国と日本で並行して行われると云う。

三菱の”技術試験場”では、これから搬入した2号機を使って、強度試験のためのを鉄骨装置を設備し、これに試験に必要な荷重負荷用の装置を取り付け、今年夏からテストを開始する予定。

今回行われる“全機静強度試験”(static proof test)とは一般に次ぎのような荷重試験を云う。

飛行機が自重の何倍まで耐えられるかを示す数値を「制限荷重」と云い、輸送機では「2.5」を使う。つまり自重の2.5倍の力が加わっても壊れないように、翼、胴体、尾翼などが作られている事を証明するために行なうのが“静的強度試験”あるいは”全機静強度試験”である。これは、地上試験用機体に「制限荷重」x 安全率1.5= [終極荷重]を加えて、3秒間持ちこたえられれば良い、とされる。

『MRJ』の今回の試験目的は『設計、製造した機体の強度が安全飛行の必要な基準を満足させることを検証する』ことである。機体構造試験には『静強度試験』と『疲労強度試験』の2種類があり、旅客機として航空局/JCABが安全性を担保する『型式証明』や『耐空証明』取得に欠かせない”関門”である。

『MRJ』は次世代の近距離ジェット旅客機として官民合同のプロジェクトとして、日本のジェット旅客機製造の実力を世界に問うものだ。

世界最先端の空力設計技術、次世代エンジンの搭載、騒音解析技術の適用、最新省エネエンジンの搭載で際立った運航経済性が売り。

『MRJ』は最大旅客数90人。最高速度、マッハ0.78(時速965㌔)で3,310㌔の無着陸飛行が可能。

しかし、このカテゴリーのライバル機は強力。カナダのボンバルディア(CRJ-700/900)、ブラジル・エンブラエル(ERJ)、露スホーイ、スーパージェット100等が市場で先行している。中国も『C919』、『ARJ』の開発で立ちはだかろうとしている。

全日空、トランス・ステーツ、スカイウェストから確定発注170機、仮発注160機の注文があるが最終目標の3,500機の売り込み達成には強力な販売ネットワーク構築、資金調達が重くのしかかる。

–以上−