露中共同の次世代広胴型旅客機開発の行方(No2)


2014年6月22日(JST.15:40)                                 John Bosnitch

世界最大の航空機を開発したのは、旧ソ連時代のアントノフ設計局とは航空関係の一部が知るところだ。アントノフAn225『ムーリエ』の名称で1機が現存、現役機として超重量貨物輸送にかり出される事をご存知の方は少ないはずだ。

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[(Buran)旧ソ連時代にロシアのスペースシャトル”ブーラン”空輸任務が開発の端緒]

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[(BURAN)ロシア版スペースシャトル”ブーラン”の空中発射概念図]

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[(BURAN)An225″ムーリエ”の三面図]

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[(BURAN)アントノフAn225″ムーリエ”のブーラン空輸時の積載方]

『”ブーラン”をカザフスタン・バイコヌール宇宙基地に直接空輸するのに200~250㌧の輸送能力が必要。旧戦略爆撃機、ミヤシンチョフ『バイソン』4発ジェット機”改修型のVM-T”Atlant”では力不足だった』(露宇宙ロケット、航空関係者)。

既に旧ソ連軍は米軍の世界最大の輸送機、ロッキード・マーチンのC5A『ギャラクシー』の対抗機、アントノフAn124『ルスラン』を保有。そこで、同機を基にエンジンを6発装備するストレッチ型へ改造したAn225を1988年初飛行させた。ちなみに同機の愛称『ムーリエ』はウクライナ語で”夢”。アントノフ設計局の本拠が当時のウクライナ共和国にあったからだ。

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[(BURAN)しゃれた機体塗装のAn225″ムーリエ”]

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[(BURAN)ボルガ川沿いのウィリヤノフスク工場でロールアウトするAn225″ムーリエ”第1号機]

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[(VOLGA DNIEPR)アントノフAn225″ムーリエ”の開発母体、An124″ルスラン”]

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[(US AIR FORCE 、LOCKHEED MARTIN)アントノフAn124″ルスラン”のライバル、ロッキード・マーチンのC5M”スーパー・ギャラクシイー”]

旧ソ連の崩壊、ロシア連邦誕生でAn225『ムーリエ』の本来の出番は失われたが、航空界に訪れた超重量貨物(アウトサイズドカーゴ)時代到来で、持ち前の力相撲を発揮した。An124型でも対応不可能になると荷主からお声がかかった。長さ84㍍全幅88.4㍍、高さ8.1㍍の巨大な機体が御まかせとばかり、目下世界の空を飛び回っている。

こうした旧ソ連時代以来の巨人機製造の歴史を回顧すると露中共同の次世代省エネ広胴型旅客機開発の基礎技術力が十分蓄えられていると見ていいだろう。

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[(ILYUSHIN JSC)失敗作だったイリューシンIL96-300型、露随一の2通路型旅客機]

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[(ILYUSHIN JSC)同上機が母体のプーチン大統領専用機、IL96-300PU]

問題点ありとすれば、旅客機の設計、製造、その後の継続的運航支援のエンジニアリングのノウハウ。客室の設計等は旧ソ連製に搭乗の機会があったならお粗末の一言につきる。コンピューターを軸にした各種システムもアビオニクス技術の遅れで簡単に追いつけそうににない。

米国のエンジンメーカー、P&Wやボーイングの手助けで誕生したイリューシンIL96-300型機も少数がアエロフローチ航空に納入され、現在は現役から完全に退いた。プーチン大統領の専用機として国威発揚もかね使用中だが、一時、飛行安全上の問題で飛行差し止めになったという。果たして、航空市場が簡単に露中共同開発の次世代省エネ広胴旅客機を受け入れるか、疑問点は多い。

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[(FSB HP)露中航空プロジェクトの露側代表、ドミトリー・ロゴージン副首相]

今回の航空共同プロジェクトを推進するドミトリー・ロゴージン副首相は意気軒昂。『13億人を抱える、中国市場がある』。最低でも70~80億㌦の開発費の分担をどうするか。スタート直後から難問山積の様に見えるが。