ロシア艦艇12隻が次々と宗谷海峡を西へ航行–10月2日、3日


2014-10-06 松尾芳郎

 おおよど

図:(海上自衛隊)大湊基地第15護衛隊所属の「おおよど」艦番号231。1991年就役の護衛艦で基準排水量2,000㌧、満載排水量2,900㌧、「あぶくま」型6隻の内の3番艦。

 

防衛省統合幕僚本部の発表(2014-10-03)によると、10月2日午前6時頃から3日午前8時頃にかけて、大型艦を含むロシア海軍艦艇が次々と宗谷岬近くを西、つまり日本海に向けて通過した。八戸基地第2航空群所属の「P-3C」哨戒機と大湊基地第15護衛隊の護衛艦「おおよど」が、合計12隻におよぶ艦艇が次の順で航行するのを発見した。

1 ) 10月2日午前6時頃、宗谷岬北東約40-60kmを西進するウダロイI級ミサイル駆逐艦2隻、オビ級病院船1隻およびネフテガス級航洋曳航船1隻

2 ) 10月2日午前8時半頃、宗谷岬北東約90-120kmを西進するグリシャV級小型フリゲート間1隻、およびアルタイ改級補給艦2隻

3 ) 10月2日午後1時頃、宗谷岬北東約80kmを西進するスラバ級ミサイル巡洋艦1隻(本艦はロシア太平洋艦隊の旗艦)

4 ) 10月2日午後3時頃、宗谷岬北東約80kmを西進するグリシャIII級小型フリゲート艦1隻

5 ) 10月2日午後11時頃、宗谷岬北東約80kmを西進するユグ級海洋観測艦

6 ) 10月3日午前8時頃、同じ海域を西進するソブレメンヌイ級ミサイル駆逐艦1隻およびソルム級航洋曳航船1隻

 

既報した9月下旬の小型艦艇12隻からなる艦隊の通過と、本稿の大型艦などの行動は、ともに我国に対する無言の威圧、脅しと見られる。ウラジオストックに軍港があることを考慮に入れても、これ等の艦隊行動はプーチン政権が主張する“強いロシアの復権”の一つであり、“日本に対し断じて譲歩はしない”との意思表示と受け止めてよい。

しかし我国の外交当局を含め、マスコミなどは本件を殆ど問題視せず、相変わらず首脳会談の実現とか経済友好の推進とかを話題にしているだけ。

仮に我が海自艦艇が宗谷海峡を通過しオホーツク海に進出したり、あるいは北海道東方水域の公海上で演習を行ったりしたらどうなるか。忽ちロシア政府は強い抗議をするだろう。そして恐らくは日本の親露派の政治家、識者たちはこぞって“行き過ぎだ”と非難する。

戦後70年、米国の庇護のもとで安逸を享受してきた我国だがようやく「自分のことは自分で守る」のに気付くべき時が来たようだ。

 

以下の写真は一部を除き全てP-3C哨戒機が撮影したものである。

ウダロイI級駆逐艦548

図:(海上自衛隊)ウダロイ(Udaloy)I級ミサイル駆逐艦は満載排水量8,500㌧の大型対潜艦。強力なソナー、長射程の対潜ミサイル、対潜ヘリコプター2機、それにSA-N-9型個艦防空ミサイル、を装備する。1980年から1991年にかけて12隻が就航し、現在8隻が現役である。

ウダロイI級駆逐艦572

図:(海上自衛隊)

オビ級病院船

図:(海上自衛隊)太平洋艦隊に配備されている「イルテイシュ」。一時期稼働していなかったが、搭載機器の整備と近代化改修が完了し稼働状態にある。同型船は黒海艦隊、北方艦隊に配備、計3隻がある。満載排水量11,000㌧、全長154m、ベッド数100、手術室7を備え、ヘリコプター1機を搭載。

ネフテガズ航洋曳船

図:(海上自衛隊)

グリシャV級フリゲート艦350

図:(海上自衛隊)

アルタイ改級補給艦

図:(海上自衛隊)

アルタイ改級補給艦2

図:(海上自衛隊)

スラバ級巡洋艦011

図:(海上自衛隊)1989年就役「バリヤーク」と呼ばれロシア海軍太平洋艦隊の旗艦、2008年にオーバーホールを完了ウラジオストック基地に配備されている。基準排水量9,300㌧、満載排水量11,300㌧、強力な防空力と打撃力で空母機動部隊攻撃を主任務とする。3隻が現役配備中。両舷に見える4個の筒は、射程距離700km、速度マッハ2の「P-1000ブルカーン」対艦ミサイル発射筒、各筒に2基ずつ、合計16基を搭載している。

グリシャIII級小型フリゲート369

図:(海上自衛隊)

ユグ級観測艦

図:(海上自衛隊)

ソブレメンヌイI級駆逐艦715

図:(海上自衛隊)基準排水量6,500㌧、満載排水量8,000㌧、17隻竣工した内現役は9隻、ほかに4隻を建造、中国海軍に売却「杭州」級として運用中。対空、対艦戦闘に主眼を置いた艦で、24連装対空ミサイル1基と4連装対艦ミサイルKT-190を両舷に搭載する。

ソルム級航洋曳船

図:(海上自衛隊)–以上−