「オライオン」宇宙船用「デルタIVヘビー」を打上げ台に設置


2014-10-10 松尾芳郎

2014-10-14  改訂

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図:(NASA/Daniel Casper)ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の「デルタIVヘビー・ロケット」探査飛行試験-1号機(EFT-1=Exploration Flight Test-1)が、10月1日ケープカナベラル空軍基地の打上げ施設37に搬入され、垂直位置にセットされた。

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図:(NASA/Dimitri Gerondidakis)9月30日に「デルタIVヘビー・ロケットEFT-1号機」が打上げ施設37に搬入され、垂直に立ち上げられたところ。「デルタIVヘビー」は、1段目ロケットの両脇に同じ「RS-68A」ロケットをブースターとして取付けるので大型ロケットが3本並列となる、従って1段目の幅は15mにもなる。

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図:(NASA/Daniel Casper)打上げ施設37の移動整備棟で、垂直位置にセットされた「デルタIVヘビー・ロケット」、10月1日。これから「オライオン(Orion)」宇宙船初号機が「デルタIV」の先端に取付けられる。

 

ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)の「デルタIVヘビー・ロケット」探査飛行試験-1号機(EFT-1=Exploration Flight Test-1)は、9月30日夕刻に打上げ施設37の近くにある水平組立工場(Horizontal Integration Facility)から姿を現し、移動台車で打ち上げ施設に向かった。

翌日早朝、全長60mのロケットは、打上げ台備え付けの専用持ち上げ機で垂直にされ、37番パッド付属の整備棟に収まった。これで打上げの最終段階に入ったことになる。打上げられる宇宙飛行用カプセル「オライオン(Orion)」は殆ど完成し、これから64日後に予定されている探査飛行試験“ETF-1ミッション”に向けNASAとULAの担当部門は、綿密に協力しながら最後の準備に入る。

 

「オライオン」宇宙船:

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図:(NASA) 「オライオン」宇宙船は、NASAの要求でロキードマーチンが月、小惑星、火星探査用として開発し、4人用だが最大6名が乗り込める。宇宙船の後部に接続される“サービス・モジュール”はESA向けとしてエアバス宇宙防衛部門(Bremen, Germany)が作る。2014年12月に初の無人探査飛行試験”ETF-1”を行い、最初の有人飛行試験は2020年以降になる。

 

上図右端のコーン型の宇宙船オライオン部分は、直径5m、内容積は約9m3、重量約9㌧、“サービス・モジュール”を含む全体の重量は約21㌧になる。 “サービス・モジュール”の後部には推進ロケットが付き、宇宙船の軌道修正などに使われ、このための燃料8㌧が搭載される。帰還時にはサービス・モジュールは分離され、コーン部分のオライオンのみとなる。

オライオン宇宙船の頂部には海上回収用の大型パラシュート3個が収納されている。また、発射時には宇宙船の先端に発射時脱出システム(LAS)が取付けられる。

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図:(NASA)空軍の大型輸送機C-17からオライオン・カプセルを投下する試験(2012-07-18)。陸軍のユマ(Yuma, Arizona)演習場上空高度25,000㌳から投下され、3個のパラシュートのうち1個が先ず開き、それから残りが開くことを確認した。

 

「オライオン」宇宙飛行カプセルには、9月11日にサービス・モジュールが取付けられた。12月4日予定の打上げに先立って、燃料のアンモニア(ammonia)とヒドラジン(hydrazine)、それに高圧ヘリウムが搭載された。また9月28日には「オライオン」に「発射時脱出システム(LAS=launch Abort System)」が装着された。

12月4日の”ETF-1ミッション”では、打上げられた無人の「オライオン」宇宙船は高度5,800km (3,600 miles)を飛行し、地球大気圏に時速32,000km (20,000miles)で再突入する。この際「オライオン」は2,200℃(4,000F)の高温になる。この飛行試験は、「オライオン」の耐熱シールド、発射時脱出システム(LAS)、や回収用パラシュート・システムなどの、重要システムが正常なタイミングで間違いなく作動することを確認する、のが目的。

「オライオン」の回収は、本体だけでなくパラシュート・システムを含め、太平洋上で行われる予定である。このためNASA、ロキードマーチン、および米海軍では綿密な事前検討を行っている。

”ETF-1ミッション”は無人だが、将来は有人で深宇宙探査飛行を行い安全に地球に帰還できることを目標にしている。

 

「デルタIVヘビー・ロケット」

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図:2013-08-28バンデンバーグ空軍基地(Vandenberg Calif. AFB)から打上げられる「デルタIVヘビー」ロケット。直径5mx 3基、ペイロードを含む高さは72m、打上げ時の総重量は約733㌧。

 

「デルタIV」ロケット系列には「デルタIV M」、「デルタIV M+」3種類、それに「デルタIVヘビー(Delta IV H)」の計5種類があって、米空軍(USAF)、米国家偵察局(NRO)、NASA、その他民間需要の衛星や探査機等の打上げに使われている。

「デルタIVヘビー(Delta IV H)」は系列中最も大型で、2004年12月に初号機が打上げられ、以来7回のうち6回成功している。

2段式ロケットで、燃料は両段とも液体水素(LH2)と液体酸素(LOX)を使う。

1段目はエアロジェット・ロケットダイン製RS-68A推力3,130kN (710,000lbs)、これに同じエンジン2基をブースターとして取付ける。打上げ能力は、地球周回低軌道(LEO=高度約200km)の場合は約28㌧、地球周回静止軌道(GTO=高度約36,000km)では約14㌧。

1段目の3基のエンジンは、離昇時は3基とも最大推力を出す、44秒後には、左右のブースターは全開のままだが中央のエンジンは推力を55%に絞り燃料を節約する。そして発射後242秒後にはブースター・エンジンは燃料を使い切って停止、本体から分離落下する。本体のエンジンは再び全開となり86秒間推力を持続する。それから第2段ロケット、エアロジェット・ロケットダイン製RL10-B-2、推力110kN(25,000 lbs)の力で所定の軌道に上昇する。

–以上−

 

本稿作成の参考にした記事は次ぎの通り。

NASA News Oct.2, 2014“Delta IV Heavy Rocket Rolls to Launch Pad for Orion’s First Flight Test”

NASA News Sept. 11, 2014 “NSASA’s Orion Spacecraft Nears Completion, Ready for Fueling”

NASA News “Orion parachute Test, July 18

United Launch Alliance DELTA IV “the 21st Century Launch Solution”