4月〜12月、空自機の緊急発進が大幅に増加–対中国軍機が急増


2015-01-21 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部によると(2015-01-20)、昨年4月1日から12月31日まで我国に接近した軍用機(中露機が主)に対し、領空侵犯を防ぐために行った航空自衛隊戦闘機の緊急発進回数は、前年同期間に比べ著しく増加した。

すなわち、2014年第3四半期までの緊急発進回数は744回に達し、前年(2013)の同期間と比べて181回の大幅増となった。対象は中国軍機とロシア軍機で折半する形となった。

地域別では、北部航空方面隊/213回、中部航空方面隊/87回、西部航空方面隊/65回、そして沖縄那覇基地の南西航空混成団/379回、の緊急発進を行った。ここで注目しなければならないのは、各航空方面隊所属の各航空団は2個飛行隊編成であるのに対し、最も負担の大きい南西航空混成団は1個飛行隊のみ。2015年度中にこれを2個飛行隊体制に改め、名称も南西航空方面隊第9航空団となる予定である。

この期間の特徴は、

①   中国軍機に対する緊急発進回数が371回となり、前年同期比で84回増加した。戦闘機に対する緊急発進が多かったが、中には東シナ海から太平洋に飛ぶ大型機の長距離飛行13件を含んでいる。

②   ロシア軍機に対する緊急発進回数は、これも前年同期比123回増の369回に達した。こちらは情報収集機に対するものが多かった。

③   なお我が空自機の適切な対応で期間中の領空侵犯は無かった。

この傾向が続けば2015年3月末までの年間緊急発進回数は、過去最大の944回(昭和59年/1984年度)を超え1000回に近くなりそうだ。

ロシア軍機の動きは、最近のプーチン大統領によるクリミア半島占領や“強いロシア”の発言を踏まえて、アラスカや北欧諸国領空への示威あるいは侵犯飛行を増加している。

中国は、尖閣諸島の領有権主張や“米中による太平洋分割”提案など中央政府の強硬な意向を背景にして、我国周辺への威嚇飛行を増やし、今後もこの傾向を継続すると見られる。

外敵による我国の領土、領空、領海への侵犯を許さず、その脅威から国民の生命財産を守るため、我が防衛当局にはこれまで以上の努力が求められる。

スクランブル推移

図:(統合幕僚監部)各年4月から翌年3月末の年度別緊急発進回数の推移を示すグラフ。これまでの最多は横軸中央付近の昭和59年度(1984)の944回、一番右は平成26年第3四半期までの回数744回を示している。この傾向が続くと今年3月に終わる平成26年度(2014)の緊急発進回数は過去最大となりそう。

飛行パターン

図:(統合幕僚監部)緊急発進の対象となったロシア軍機および中国軍機の飛行パターン。ロシア軍機はIL-20電子戦情報収集機やTu-95戦略爆撃機など大型機がほとんどだった。中国軍機はY-8、Y-9などの情報収集機、H-6大型爆撃機、さらには戦闘機による我が海自機への接近飛行などがあった。

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図:(防衛省)我が航空自衛隊の配備概況、平成27年度予算(2015)で、那覇基地の南西航空混成団の第83 航空隊(第204飛行隊)は第9航空団に改められ、F-15戦闘機2飛行隊体制(第204飛行隊、第304飛行隊)に強化される。304飛行隊は西部航空方面隊第8航空団から抽出されるので、ここは第6飛行隊(F-2)のみと減勢になる。

 

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