中国空軍爆撃機が沖縄宮古海峡を通過、訓練を実施


2015-05-24(平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表(2015-05-21)によると、5月21日、中国空軍のH-6爆撃機2機が沖縄本島-宮古島間の宮古海峡上空を通過し西太平洋に進出、訓練を行い再び宮古海峡を西進、中国本土に飛び去った。那覇基地所属の航空自衛隊F-15戦闘機が緊急発進し、領空侵犯を防いだ。

翌日(2015-05-22)の中国国防省の“China Military Online”は「中国空軍機、宮古海峡上空を通過、訓練を実施:合法かつ適切な飛行」と題して次のような発表を行った;—

「中国空軍機としては初めて宮古海峡を通過、西太平洋上で訓練を行い、訓練終了後無事に基地に帰投した。また、今年3月30日には、バシー海峡(Bashi Channel)を抜けて西太平洋上で同じ空軍機が訓練を行った、この二つの遠距離訓練により中国空軍の技量が世界水準に達していることを実証した。宮古海峡は幅250kmほどあり、中国にとり西太平洋への重要な進出路となっている。この海峡は公海であり、通過は合法的で非難を受けるいわれはない。中国軍は今後とも対米防衛ラインとして設定した“第一列島線”を超える訓練を活発に実施する。(第一列島線とは、九州-沖縄-台湾-フィリピンを結ぶラインを云う)」

これまで我が国メデイアは、中国やロシア機による領空接近/侵犯に関するニュースに余り関心を寄せてこなかったが、今回は朝日や日経など日頃“日中友好”ムード盛り上げに肩入れしている新聞も報道したことに注目したい。

習近平主席は、数週間前にオバマ大統領に対し「太平洋は二つの大国が生きるのに十分な広さがある」と言い、一方で「南沙諸島埋め立て地に米軍の接近を許さない」と警告を発したりしている。今回の飛行は、これらに関係する示威と受取めてよい。

時あたかも自民党親中派の頭目、二階総務会長が3000人の経済人を連れての訪中の出来事となり、この飛行は両国関係に冷水を浴びせる形になった。ところが習主席は昨日二階氏率いる経済人との会議に出席、素知らぬ顔で訪中団を歓迎し、両国の経済交流の促進を促し愛想を振りまいている。

我々は、硬軟両様、飴と鞭、を使い分ける中国のしたたかな外交戦略に惑わされてはいけない。

中国H-6 21日

図1:(防衛省統合幕僚監部) 21日、宮古海峡を通過中の中国空軍H-6K型爆撃機2機の内の1機。H-6爆撃機 (轟炸6、Hong-6)は、1969年から配備が始まり各種派生型を含み現在120機ほどが運用されている。原型はロシアのツポレフTu-16で、西安航空機が国産化している。当初は核爆弾(20 kt級)搭載用であったが、弾道ミサイル(ICBM)の実用化で核爆撃機としての効用が薄れてしまった。現在は対艦用巡航ミサイル(ASM)発射母機や機雷投下用母機として使われている。

乗員2名、全長35m、翼幅34.4m、最大離陸重量76トン、エンジンWP8推力約10トンを2基、巡航速度790km/he、戦闘行動半径3,500km、兵装搭載量は9トン。

射程2,500kmの空対地ミサイル“長剣10 ”を搭載するH-6K型は、エンジンをロシア製D30KPに換装してあり航続距離を伸ばしている。日本全土はもちろんグアムやハワイも攻撃圏内に入る。

中国機21日

図2:(防衛省統合幕僚監部) 5月21日、沖縄本島-宮古島間の海峡を往復した中国空軍H-6爆撃機の飛行経路。本文中にあるバシー海峡とは、台湾とフィリピンの間の海峡で「ルソン海峡 (Luzon Strait)」とも云う。

 

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