中国海軍艦艇が与那国島に接近、太平洋から東シナ海に向け航行


2015-08-03(平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部の発表(27-08-01)によれば、8月1日(土)午前5時頃、中国海軍艦艇3隻が沖縄列島与那国島の南南東約83 kmの接続水域を、太平洋から東シナ海に向け航行するのを発見した。

発見したのは、この海域の警戒に当たっていた海上自衛隊舞鶴基地第7護衛隊所属の護衛艦「ふゆずき」と那覇基地第5航空群所属の「P-3C」哨戒機である。

3隻の中国艦艇は、その後8月1日午前9時頃、与那国島の北北東約46 kmの海域で、接続水域を離れ東シナ海に入った。

これら3隻の艦艇は、去る7月18日(土)に沖縄本島—宮古島間を通過、南東に向かったものと同じである。(「中国艦艇、宮古海峡を通過し太平洋に進出」2015-07-22を参照) すなわち;—

ルーヤンII「旅洋II」級ミサイル駆逐艦1隻

ジャンカイII「江凱II」級フリゲート艦1隻

フチ級大型補給艦1隻

発表の写真はいずれも護衛艦「ふゆずき」が撮影したもので、朝日を浴びた艦影がくっきり浮かび、背景の与那国島が霞んで見える。中国艦が我が国固有の島嶼にここまで接近して示威航行したのには驚かされる。

旅洋II 8-01

図1:(統合幕僚監部)「旅洋II」(Luyang II) 型/052C型ミサイル駆逐艦「長春」艦番号150、2013年就役したばかりの新鋭艦。中国版イージスと呼ばれる最新の防空艦で6隻が就役中。満載排水量7,100トン、長さ155.5 m、速力29ノット。

 江凱II 8-01

図2:(統合幕僚監部)「江凱II」型フリゲートの一隻、「常州」艦番号549。2011年就役の新鋭艦、満載排水量約4,000㌧。現在同型艦は20隻が就役中で北海、東海、南海、の各艦隊に配備されている。対空ミサイル短SAM HHQ-16 は米海軍と似た32セルのVLS(前部甲板)に納められている。

フチ補給艦8-01

図3:(統合幕僚監部)中国海軍最新の大型補給艦で4隻就役中の1隻で艦番号890(艦名不詳)は2013年就役の新鋭艦。満載排水量23,000トンの大型艦で、燃料10,500トン、真水250トン、弾薬等の貨物680トンを搭載し、優れた外洋行動能力を持つ。前部の補給ポストは給油用、後部はドライカーゴ用ポストである。

3隻の艦隊8−01

図4:与那国島の南南東83 kmから北北東46 kmにかけての接続水域を航行する3隻の中国海軍艦艇。

Okinawa_pref3-1

図5:与那国島は沖縄列島の最も西にある島で、石垣島や西表島などのある八重山列島の最西端に位置する(図5の左下)。八重山列島石垣島の北北西約170 kmには尖閣諸島がある。沖縄本島と尖閣諸島の距離は約410 kmである。与那国島は面積29 km2、小笠原諸島の父島より少し大きい、住民1,700人、これまで警察官2名が常駐するだけだったが、昨年陸上自衛隊沿岸監視部隊の配備が決定、今年末までに監視レーダーの設置と150名規模の陸自隊員が配備に着く。

ふゆずき

図6:(海上自衛隊)8月1日(土)、与那国島接続水域で太平洋から東シナ海に向かう3隻の中国艦隊を発見、監視に当たった護衛艦「ふゆずき」艦番号DD-118。「あきずき」型護衛艦の4番艦として2014年3月に就役した新鋭艦である。満載排水量6,800トン、速力30 kt、兵装はMk.45 62口径5 inch単装砲1基、90式SSM 4連装発射機2基、対空、対潜ミサイルを発射するMk.41 VLS 32セル、などを装備する。最新の海軍戦術情報システムを備え、レーダーはFCS-3A多機能型、OPS-20C対水上型を装備する。三井造船玉野事業所で建造された。

 

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