中国軍機、沖縄本島—宮古島間を連日往復


2015-07-31(平成27年) 松尾芳郎

 

防衛省統合幕僚監部によれば(27-07-29、同-30)大型爆撃機を含む中国軍機が連日にわたり沖縄本島と宮古島間の空域に飛来、東シナ海と太平洋を往復した。これに対し航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させて警戒に当たり、領空侵犯を防いだ。

中国軍機の行動は次の通り。

2015-07-29(水);—

Y-9型情報収集機  1機

Y-8型早期警戒機  1機

H-6型爆撃機    2機

2015-07-30(木);—

Y-9型情報収集機  1機

Y-8型早期警戒機  1機

H-6型爆撃機    2機

中国軍機の航跡は29日および30日は同じだったので、航跡を示す図は1枚とした。

空自機が撮影した写真によると、3機種のうちY-8早期警戒機は両日で異なる機種(Y-8JとY-8W)、またY-9情報収集機とH-6型爆撃機は同一機であったようだ。

両日に渡る中国軍機の行動は、去る7月18日(土)に同じ宮古海峡を通過し西太平洋に進出した中国海軍艦艇の3隻、すなわち「江凱II」フリゲート、「旅洋II」ミサイル駆逐艦、「フチ」級大型輸送艦、の西太平洋上での行動と何らかの関係がありそうだ。

南シナ海での島嶼埋め立て/軍事基地化、東シナ海・日中境界線付近でガス採取用プラットフームの大量建設、尖閣諸島領海への連日の侵犯行為、など活発化する中国軍の動きには目が離せない。

折から参議院では延々と続く安全保障法改正論議、実体論には目を瞑りもっぱら違憲論議に終始しているのは、中国側のソフト戦略に乗せられているのではないか、と邪推したくなる。

29日中国機行動

図1:(統合幕僚監部)7月29日および同30日の中国軍機の航跡。

29日Y-9

図2:(統合幕僚監部)29日飛来のY-9型情報収集機。陜西(Shaanxi) 航空機が製造中の「Y-9」4発中型輸送機に電子装備を施した情報蒐集機。「Y-9」輸送機は「Y-8」を改良し航続距離を伸ばした機体で、初飛行は2010年の新鋭機。最大離陸重量77㌧、航続距離は5,700km。今年の2月14-15両日1機ずつが宮古海峡を往復している。昨年も12月6日から3日間連続して同じ空域を通過した。

29日Y-8

図3:(統合幕僚監部)29日飛来のY-8型早期警戒機。形状から、2012年から配備が始まった中国海軍の対潜哨戒能力を持つ哨戒機「Y-8J」あるいは「Y-8GX8」と呼ぶ機体。北海艦隊だけでなく東海艦隊などにも配備されている。Jane航空年鑑では、胴体と主翼は原型機Y-8の金属製から複合材製に改められ、エンジンはWJ-6C型ターボプロップ、6翅プロペラ付き、としている。機首下面には大型の洋上監視レーダー(英国製Skymaster lightweight airborne early warning Systemらしい)、その後ろには電子-光学(Electro-optical)センサーがある。航続距離はおよそ6,700km。

29日H-6

図4:(統合幕僚監部)29日飛来のH-6型爆撃機(機体番号81218)、本機は去る5月21日宮古海峡を通過したのと同一機で、H-6K型機2機の内の1機。H-6爆撃機 (轟炸6、Hong-6)は、1969年から配備が始まり各種派生型を含み現在120機が配備中。原型はロシアのツポレフTu-16で、西安航空機が国産化している。当初は核爆弾(20 kt級)搭載用であったが、弾道ミサイル(ICBM)の実用化で核爆撃機としての効用が薄れ、現在は対艦用巡航ミサイル(ASM)発射母機や機雷投下用母機として使われている。

乗員2名、全長35m、翼幅34.4m、最大離陸重量76トン、エンジンWP8推力10トンを2基、巡航速度790km/he、戦闘行動半径3,500km、兵装搭載量9トン。

射程2,500kmの空対地ミサイル“長剣10 ”を搭載するH-6K型は、エンジンをロシア製D30KPに換装済みで航続距離を伸ばし,日本全土はもちろんグアムやハワイも攻撃圏内に入る。

30日Y-9

図5:(統合幕僚監部)30日飛来のY-9型情報収集機。29日と同一機。

30日Y-8

図6:(統合幕僚監部)30日飛来のY-8型早期警戒機。29日の「Y-8J」と異なり、「KJ-200」あるいは「Y-8W」と呼ばれる機体。胴体上部にカヌー型の電子スキャン式フェイズド・アレイレーダーを装備する。これだけでは全周囲をカバーできないので、機首、翼端、垂直尾翼先端にそれぞれレーダーを追加している。現在空軍と海軍でそれぞれ5-6機ずつ所有している模様。

30日H-6

図7:(統合幕僚監部)30日飛来のH-6型爆撃機の2機のうちの1機、29日飛来のものと同一機。

 

-以上-