サウスウエスト航空737エンジン爆発・ノーズカウル脱落の続報


2016-09-16(平成28) 松尾芳郎

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図1:(Peter Lemme)サウスウエスト航空737左エンジンCFM56-7Bのファン部分の大破、地上で撮影

 

去る8月27日、ニューオリンズからオーランドに向け飛行中のサウスウエスト航空737-700型機の左エンジンからノースカウルが破断・脱落したため、航路途中のペンサコーラに緊急着陸する事故があった。

この調査に当たっているNTSBは、Aviation Heraldから事故直後にあった「ファンブレード1枚が破断している」との強い指摘を受け、9月12日に至り漸く「本事故は“エンジン爆発、つまりアンコンテインド・エンジン・フェイラー(uncontained engine failure)」と認定した。それによると、原因はCFM56エンジンのファンブレード1枚が金属疲労で破断したためとされる。

ファンブレードは回収されていないが、ファンハブに残っていたブレード付け根を調べた結果判った。ファンブレードはチタン合金製で、ルート部は銅・ニッケル・インジウム合金でカバーされている。「残っているブレード付け根(ルート部)の破断面には、組成上の異常はないが疲労破壊の痕跡が認められた。疲労破壊の区域は長さ1.14 inch深さ0.217 inchであった」とNTSBは述べている。

飛行中にブレードが破断・飛散したため、エンジンがアンバランスとなりこれが原因でインレットが破断・脱落した。この時の破断部品が胴体左側面に衝突、5 inch x 16 inchの穴を開けたため機内与圧が低下した。しかし客室内には胴体に穴を開けた破損部品は残っていなかった。ファンブレード周囲のファンケースには飛散防止用のリングがあり、これでブレード破片を食い止める構造になっている。これは型式照明取得時に実証試験済みだったが、これが旨く役目を果たさなかった、理由は不明である。

目視検査では、主翼付け根のフェアリングに皺が入り、左水平尾翼の前縁に凹みが生じ、左主翼先端のウイングレット前縁にも凹みがあった。

乗客(複数)の話では、離陸後13分、メキシコ湾上空31,000 ftに達した頃、CFM-56-7Bエンジンから大きな爆発音が聞こえたと云う。そして機はすぐにペンサコーラ(Pensacola, Florida)に緊急着陸、無事だった。

NTSBではこれから他のファンブレードの取り付け部分詳細な検査、ファンブレードの非破壊検査、エンジンの整備記録の調査などを予定している。

FAAによるとCFM56-7Bエンジンに対する耐空性改善通報(AD)は1998年以来15件発行しているが、ファンブレードに対するものは1件もない。

 

CFM56-7BはGEとSNECMAが折半出資するCFM Internationalが製造する推力20,000 lbs級のエンジン。CFM56シリーズ全体は1974年以来、ボーイング737、KC-135タンカー、エアバスA320などに採用され、3万台が供給されている。担当は、GEが高圧コンプレッサーとタービン及び燃焼室、SNECMAがファンとギアボックスそれに低圧タービンで、組立は両社で行われている。

ファンブレードは24枚で、いわゆる「ワイドコード(幅広型設計)」でルート部は一般的なダブ・テール構造になっている。3段の低圧コンプレッサーと同軸で、低圧タービンの力で回転している。

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図2:(SNECMA) CFM-56Bエンジンのファンブレード取付け作業の様子。ワイドコード・ブレードの取付け手順を示すSNECMA社が出している教材動画から転用した写真。取外し工程にも別の動画あり、SNECMAは、エンジン整備に際し、これを遵守するよう求めている。

 

—以上—

 

本稿さ育成の参考にした主な記事は次の通り。

 

Aviation Week network Sept. 12, 2016 “NTSB: Metal Fatigue Complicit in Southwest Engine Fail” by John Croft

Aviation Herald.com updated Sept. 13th 2016 “Accident: Southwest B737 near Pensacola in Aug 27th 2016, uncontained enginee failure” by Simon Hradecky

TokyoExpress 2016-09-02 “サウスウエスト航空737のCFM56エンジン破損、NTSB調査開始”