右往左往の民進再編劇 ‼‼ 有権者無視のドタバタ


2018-05-09(平成30年) 元・文部科学大臣秘書官 鳥居徹夫

 

民進・希望が合流したが、野党第一党になれず 

 

民進党と希望の党が合流し、「国民民主党」として、5月7日に発足した。この新党「国民民主党」は、民進党の大塚耕平代表が、総選挙で枝分かれした同党出身者の再結集を呼びかけ、希望の党は応じたが立憲民主党は拒否した。この「国民民主党」は、大塚耕平、玉木雄一郎両代表が暫定的な「共同代表」を務めるが、代表選を9月に実施する方向という。

「国民民主党」は、両党の合流で野党第一党を目指したが、離党者が続出し、衆議院では野党第二党のまま。希望の党では、発足時メンバーである松沢成文らが分党の手続きに入り「希望の党」の政党名を継承した。

また「国民民主党」への不参加を理由に、民進党や希望の党の議員から離党者が27人(衆院9人、参院18人)で、うち10人は立憲民主党に入党届を提出した。

とりわけ参議院の民進党は、新党不参加で小川敏夫元法相ら18人が離党した。そのため国民民主党の23名にとどまり、野党第1党になったものの、参議院全体の第2会派は25名の公明党となった。

民進党を離党した議員が立憲民主党に加わるとか、無所属のまま立憲民主党と同一会派を組むことになれば、参議院においても野党第一会派が立憲民主党系となるであろう。

衆議院においても、大串博志、小川淳也など希望の党の離党者に加え、「(民進党籍のある)無所属の会」の野田佳彦、岡田克也、安住淳、玄葉光一郎などの重鎮は、民進党を離党し無所属となる。この議員たちは国民民主党とも立憲民主党とも距離を置き様子見をつづける模様である。

岡田克也ら重鎮議員たちはプライドが高く、枝野幸男や玉木雄一郎、大塚耕平らを小僧扱いする。今後、立憲民主党と国民民主党が合流という展開になったときこそ、自分たちの出番と思っているようである。

一部報道によると、岡田克也は「立憲民主党と、国民民主党の距離を縮める努力をするのが、私の役割だ」と述べ、野党結集の『橋渡し役』となる考えを示したという。

民進党53人(衆院14人、参院39人)と希望の党54人(衆院51人、参院3人)のうち新党「国民民主党」に参加したのは62人(衆院39人、参院23人)に過ぎなかった。つまり「1+1」が「1に若干プラス」になった。

立憲民主党は地方でも、北海道、埼玉、東京、神奈川、大阪などで、多くの民進党の地方議員を引き抜いている。枝分かれした民進党は、ようやく国会議員数で野党第一党を維持した立憲民主党と、国民民主党に収斂されることになった。

 

政策も信念もない政治家が右往左往 

 

これまで民進党で一応まとまっていた連合推薦の議員や候補者の所属政党が、バラバラになったのは昨年秋の総選挙をめぐる政治動向で、候補者ばかりでなく、支持団体の連合も国民も、そして候補者やマスコミまでもが、大きく振り回された。

昨年のニュースの主役は、何といっても小池百合子都知事で、小池知事が政局の中心であった。小池知事本人の浮沈も、まさしくジェットコースターそのもの。

小池百合子は、都知事選で「ホップ」、次の都議選で「ステップ」と跳躍したが、ジャンプを目指した昨秋の衆議院総選挙では「ドボン」と沈んだ。

勝ち馬に乗ろうとして大量落馬し、そこから排除されハグレた穴馬が思いもかけず大好走し、モリカケでザルとなり傷だらけの駄馬が競り勝っていたというレースとなった。

候補者は当選のために、風向きのよさそうな政党につくというのは有権者を愚弄していると言っても過言ではない。まさしく政策も信念もない政治家が右往左往したのが、昨年秋の総選挙であった。

 

合流した「国民民主党」は、平和・安保法制にも憲法改正にも反対 

 

民進党と希望の党は、「国民民主党」の基本政策と綱領についても合意した。

基本政策では、平和・安全保障法制について「違憲と指摘される部分を白紙撤回することを含め、必要な見直し」と盛り込んだ。憲法改正に関しても、9条への自衛隊明記に反対を示した。

希望の党は、昨年秋の衆院選公約で「与野党の不毛な対立から脱却する」とし、安保関連法を是認し、また憲法9条の改正論議を進める立場も取っていた。

東京都知事の小池百合子は4月25日の記者会見で、自身が立ち上げた希望の党が、民進党と合流し国民民主党となることについて、「元のさやに収まるのは多くの方には理解が難しいと思う。こんな形になるのはとても残念だ」と述べた。もちろん小池知事は国民民主党には参加しない。

希望の党は、左翼バネが幅を利かせ「ニワトリがアヒルになった」という状況で、何でも反対の民進党に先祖返りしてしまった。

国民民主党は、将来的には野党第1党の立憲民主党を含めた再結集を目指したいが、立憲民主党は、左翼諸団体との連携を強め、野党共闘路線を維持する方針と伝えられる。来年夏の参院選を前に、路線対立が再燃するのではないだろうか。

枝分かれ前の民進党綱領(2016.03.27)には、「生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立つ」「国民とともに進む改革政党」とあったが、国民民主党では消えた。もちろん立憲民主党にこの表現はない。

これらの理念が綱領から蒸発した国民民主党、立憲民主党では、労働団体の「連合」すらもドン引きする。

 

理念や政策を宗旨替えし、希望の党を変質させた民進党出身議員 

 

昨年の総選挙は、憲法改正の是非が争点にされ、希望の党は改憲勢力と報道でもカウントされた。そもそも希望の党を支持していたのは小池百合子に期待し、憲法改正や平和安保法制の効果を期待していた有権者であった。

選挙結果は自民・公明・希望・維新の改憲を旗印にする与野党で374議席を獲得、465議席のうち8割を占め、憲法改正が国民の総意とされた。

ところが選挙後の希望の党は、憲法9条の改正反対などと宗旨替えし、有権者を大きく裏切った。

総選挙では民進党の看板では大惨敗が予想された。東京都議選挙の惨敗、離党者の続出、支持率の急落などから、民進党出身者は、生き残りをかけて希望の党に駆け込み、小池百合子ブランドに希望をつないだ。そして小池ブランドによって、比例は968万票・32議席を獲得した。

ところが民進党出身の候補者は、「比例は希望」という呼びかけをほとんど行わず、逆に選挙ポスターから希望の党公認の文字を隠した候補者も多かった。

「希望の党」で当選した民進党出身の候補者は、衆院選の公約を平気で翻した。当選後に公約と正反対の主張をする政党に変質させたのが、民進党出身の希望の党所属議員であった。それは有権者への背信にほかならない。

とりわけ比例復活当選者は、「希望の党」に期待した比例票によるものであり、憲法改正や安保法制容認など基本政策への投票にほかならない。希望の党の当選者は、選挙公約を踏みにじったのである。(敬称略)

 

ー以上ー