4月から施行された働き方改革関連法


2019(平成31)-04-04  元 文部科学大臣秘書官  鳥居徹夫

罰則付きの長時間労働の規制が法制化

 

昨年の国会で、働き方改革関連法と外国人労働力の受け入れ拡大のための改正入管法が成立し、いずれも4月から施行されている。

これらは、労働の現場ばかりでなく日本社会を大きな変貌を余儀なくされる転換期の到来を予感させる。

 

働き方改革関連法は、①罰則付き長時間労働の規制、➁同一賃金・同一労働の法制化、③高度プロフェッショナル制度の創設、④年休の計画的付与と取得、⑤労働者の健康確保措置および安全配慮義務、などである。

とりわけ「同一賃金・同一価値労働」と「時間外労働(残業)の上限規制に抵触した場合の罰則規定が法律に明記された。

残業規制や有給休暇の取得義務は、違反すると企業に「6か月以下の懲役」や「30万円以下の罰金」が科される。

 

残業の上限規制は、原則として月45時間かつ年360時間(臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度)」と明示され、これまで事実上「青天井」だった残業時間を初めて罰則付きで規制する。

なお中小企業は、1年遅れて適用対象となる。

 

「過労死促進法」と喧伝していた抵抗野党

 

この法律は、時間外労働の上限規制を、罰則つきで設けたことは、戦後の労働基準法制定(1947年)以来の71年目の大改革となる。

昨年の通常国会での法案審議では(維新を除く)民進党系などの野党は、高度プロフェッショナル(専門職)に労働時間除外があることを理由に、過労死促進法案などと事実を歪め、反対のための反対に終始した。

野党は採決をさせないため、国会欠席戦術や厚生労働委員長解任決議案、そして厚生労働大臣不信任案を提出するというありさま。

昨年の野党の国会ボイコットは5月のゴールデンウィークをまたいだことから、野党支持者からも「大型連休(ゴールデンウィーク)は最大9日間なのに、野党議員は18連休」との批判もされた。

 

労働団体の連合も、この野党の国会欠席戦術を批判した。

また参議院では立憲民主党と国民民主党との戦術の違いが表面化した。

徹底抗戦の立憲民主党に対し、国民民主党は「法案が気に入らないから(厚生労働委員長)問責などを出すという対応はとるつもりはない」と採決に応じ、昨年6月29日に47項目の付帯決議を付して成立し、今年4月1日より施行されている。

 

「働き方改革関連法」を評価した労働団体の連合

 

民進党系諸政党や抵抗野党は、働き方関連法案にある高度プロフェッショナル制度について、「過労死促進になる」と非難し削除を求めていた。

この高度プロフェッショナル制度については、運用の厳格化で何より本人が制度を理解して、個々に書面等により同意していることとしている。つまり本人の同意がなければ制度は適用できなくなった。

新たに法律に盛り込まれ制度化された、高度プロフェッショナル制度については、4月時点で実際に導入を表明した企業はなかった。

 

労働団体の連合は、「罰則付き時間外労働の上限規制」「同一賃金・同一労働」が法律に盛り込まれたことや、新設された高度プロフェッショナル制度についても国会での付帯決議などを受け運用も厳格となることから、働き方関連法の成立に前向きであった。

 

ところが民進党系の抵抗野党は、連合が評価する「罰則付き時間外労働の上限規制」「同一賃金・同一労働」「年休の計画的付与と取得」「労働者の健康確保措置および安全配慮義務」が法律に盛り込まれているにも関わらず、審議の引き延ばしで廃案を目指したのであった。

 

このような抵抗野党による、はじめに反対ありきの抵抗戦術では「タライの水ととともに、赤ん坊まで流してしまう」ことになってしまう。

この法律の施行により、過労死・過労自殺が激減する結果となったならば、これら民進党系の諸政党や抵抗野党はどう弁明するのであろうか。

 

抵抗野党と連合がねじれ、連合要請を受け入れた自民党 

 

この働き方改革関連法が成立したことから、当初は労働者保護が後退したかのような錯覚をが、事業者の一部に持たれていたという。

それは野党が猛抵抗し、過労死促進法と事実に反する宣伝がマスコミを通して展開されたからである。

 

この抵抗野党の猛反対が功を奏し廃案となっていたならば、(経団連加盟でない)新興の経営者や人件費抑制のため外国人労働に置き換えようとする中小企業者は歓迎することになったであろう。

つまり低い人件費で経営したい事業者と民進党系の野党の利害が一致するのである。

 

一方、連合の主張に沿った法体系の整備は、政府自民党の進める一億総活躍社会の理念と方向性は同じであった。

ねじれが生じているのは、一部の経済界と自民党だけではない。連合と抵抗野党の間も同様である。

こともあろうに、連合と自民党の思惑が一致していた。